『中国の環境問題』

 今日は井村秀文・勝原健編著『中国の環境問題』(1995年、東洋経済)を読みました。

 あまり焦点が当てられてこなかった中国の環境問題について包括的にまとめた本です。目次は以下のようになっています。

はじめに
序章 成長のアジアと中国の環境問題
第1章 中国の経済発展と環境問題:その軌跡と将来
第2章 中国の環境行政:法と制度
第3章 中国の環境財政
第4章 中国のエネルギーと環境問題
第5章 中国の大気汚染問題
第6章 中国の水環境問題
第7章 中国の廃棄物問題
第8章 中国の鉄鋼業と環境問題
第9章 中国の電力業と環境問題
第10章 日中環境協力の現状と課題
第11章 経済発展に秘められた可能性と問題点
第12章 おわりに:日本の経験と中国の環境対策

 各章の子細に入ることはしませんが、中心となる論点は第3章の財政問題です。環境対策には一定の財政的支援が必要となりますが、その財源が不十分であることが核心的な問題点です。これは発展途上国である中国のみならず先進国でも同様です。が、中国の場合、途上国であるが故に財政問題が焦点とならざるをえません。

 先進国では経済成長が優先され、ある程度発展したところで環境問題へと手が回るようになりました。中国でも同じ道を歩むことになる可能性が高いです。中国は経済成長を優先し、高い経済成長率で世界経済での地位を向上させようとしています。環境対策にしろ安全対策にしろ、余力がなければ何もできません。強力な経済力に裏付けられた一定規模の財政資金があるからこそ、環境問題へ取り組むことができます。

 とはいえ、先進国の経験は事後的です。中国は先見性を発揮することもできます。実際、中国は排汚費のような先進的な環境政策手法を導入しています。排汚費とは、汚染物質を排出した企業や事業者が汚染の度合いに応じて国家に納める費用です。国家はこれを財源として環境損失を補償することになります。簡単に言えば環境税であり、先進国でも導入例が少ない手法です。

 しかしながら、排汚費によって徴収される金額は少なく、環境対策に投入する資金としては規模が不十分です。これは経済活動の妨げにならないようにとの配慮からですが、排出した汚染物質に対する費用負担となっていないという点から見れば、排汚費は事実上の免罪符となっていると言えるでしょう。

 中国は環境対策費を拡充することが求められます。先進国が資金援助をすることもできるでしょう。が、こうした外部資金は一時的なものでしかありません。自律的な対策とするためには、中国自身による本格的な財政資金の投入が不可欠です。どこまで中国政府が本気で環境問題に取り組むのか。

 環境汚染の被害を受けた中国の住民たちの公害反対運動が日本でも報道されるようになりました。従来は中国政府が鎮圧して情報操作したのでしょうが、それでも漏れてしまうくらい住民が危機に晒されているということでしょう。中国政府は自国住民の声を聞くことができるのかどうか。世界が注目しています。

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benyamin ♂

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