2007年12月アーカイブ

良いお年を!

 来年もよろしくお願いします。

 ということで、今日は飲んで寝ます。←いつものことじゃん

覚書 071230

猿渡英明「SRI欧州経済ウォッチ <ユーロ圏・英国> 08年は概ね潜在成長率程度の成長を予想」新光総合研究所『欧州経済概観』No.07-31、2007年12月18日。
・英国景気は、これまで個人消費や固定投資といった内需を軸に堅調な回復を続けてきたものの、1.BOEが昨年8月から利上げを継続してきたこと、2.米サブプライム問題を背景とした金融市場の混乱が続いていること、などにより、やや減速の兆しが出始めている。新興諸国などの海外需要には期待しづらいことに加え、英国経済は消費のウェートが高いため、消費が鈍化すれば、企業の投資活動にも影響が出やすい。このため、2007年末から2008年半ばにかけては、内需を中心とした緩やかな減速局面が続くことになろう。もっとも、英国は製造業部門のウェートが低いため、景気循環が大きく波を打つことはまれであり、景気が大きく減速するとはみていない。サブプライム問題の動向にもよるが、景気は2008年末から2009年に向けて再び持ち直しの動きに転じよう。
・BOE(イングランド銀行)は12月の金融政策決定会合において、0.25%の利下げを決定した。市場予測よりも速い利下げとなった。今後も、なお景気減速懸念が続いていることを踏まえると、2008年年初に追加利下げが実施される公算が大きい。
・米サブプライム問題に対して様々な対応がとられているが、1.証券化商品のリプライシングが十分でないこと、2.原資産の価格が底打ちしないこと、により、サブプライム問題による損失が確定されていないことが根本的に問題か。そして、金融機関の損失が確定できていないことが、銀行間金利の上昇や資本不足の懸念を生み、それが景気悪化懸念へとつながっている。(覚書注:日本の不良債権とまったく同じ構造である。おそらく対応策としても日本のように塩漬けが中心となるだろう。)
・BOE金融政策決定会合(12/5〜6)。政策金利を0.25%引き下げ、5.50%にすると決定。過去2年間に渡って拡大し続けてきた支出行動に減速の兆しが現れている。金融市場の混乱や信用の引き締まりにより、景気がさらに下押しされるリスクがある。CPIは短期的には2%を超えて推移するものの、需要鈍化により中期的にはターゲット近辺での推移となろう。
・インフレ懸念が続くなか、景気減速懸念が優先されるかたちに。景気減速による需給ギャップの緩和により、インフレ圧力が低下するとされる。
・消費関連指標には、個人消費の減速はさほど明確に現れていないものの、急速な価格低下は需要低下のサインか。

小宮隆太郎「西北欧諸国と英国の経済的躍進 経済問題:WHY?」経済産業研究所、2007年12月18日。
・私が1986年に英国に2ヶ月間滞在した当時、英国では他の欧州諸国に比べてマクロ経済パフォーマンスが著しく悪く、その頃までの英国は慢性の「英国病」(British disease)患者だといわれていた。
・サッチャー首相が1978−79年、1984−84年の炭坑労働組合の2度の長期ストを一歩も譲歩することなく乗り越えてから、15−20年の間に、慢性の「英国病」の患者だった英国経済はすっかり蘇ったのである。インフレ率・失業率は劇的に低下し、経済成長率はほぼ一貫して大陸諸国よりも高かった。そして英国の所得水準は今やドイツ・フランスのみならず日本をも追い越す高水準に達している。
・1980年代中頃の英国の大学人・知識人のサッチャー批判は、基本的に間違っていたのではないか? また日本では、サッチャーと米国のロナルド・レーガンと一纏めにして「新自由主義」というレッテルを貼り、小泉元首相はその亜流だと批判する論者が少なくなかった。そういう「分類学」ではサッチャー革命の大部分を継承した労働党のトニー・ブレアも「社会主義者」ではなく「自由主義者」になってしまうが、それはかなり見当違いではなかろうか?

倉橋透「イギリス、オーストラリアにおける住宅金融市場の証券化の歴史と現状(上)」『海外金融セミナー』2007年秋。
・今回の稿では、イギリスにおける証券化のストラクチャー、歴史、現状(プレーヤー、証券化の目的、規模、プライム市場及びノンコンフォーミング市場の状況、証券化のメリット及びデメリット)について述べる。
・Hoimans, Alan, Noah Kofi Karley and Christine Whitehead [2003] "The mortgage backed securities market in the UK: overview and prospects", The Councile of Mortgage Lenders.
・Datamonitor [2005] "Mortgage funding and securitization in the UK: The last battle in the mortgage market".

総務省情報通信政策局情報通信利用促進課「諸外国における高度ICT人材育成」2007年12月17日。
・ICT市場の規模・成長率:ICT支出額は1,615億ドル(2005年)。
・Cabinet Office, Transformational Government, 2005:政府および公共セクターにおけるITプロフェッショナルの育成。
・CIO Council:Chief Information Officer。2005年にブレア政権下の内閣府によって設置。ITによって政府の変革を推進し、効率的な公共サービスの提供を目指す。上記報告書にある人材育成を主たる活動とする。
・The Confederation of British Industry, Building a globally Competitive IT services Industry, 2006:ITサービス産業の競争力強化に関する提言。国内では、高付加価値業務に重点をシフト。高付加価値業務を担う人材育成の必要性を提言。
・Sector skills Councils:政府が各産業分野毎に認定・助成したSSCが、各産業分野における労働者の技能開発を担当。
・e-skills UK:非営利の業界団体。IT分野のSSC。戦略立案と能力開発が活動内容。

同和減免

 今日は同和減免です。

 同和減免とは同和地区の人を対象にした各種の減免制度です。とくに公的負担に関する減免が中心です。

 なぜか市職員が同和減免を受けていることもあります。たとえば、保育料を減免されています。その減免された金額すら払っておらず、滞納している職員もいます。

 先日、保育料を滞納している京都市職員のうち、13世帯が時効となり、支払いを事実上免除されました。13世帯のうち11世帯が同和減免を受けていました。

 市職員の給料であれば、保育料は十分に支払い可能です。だのに、市当局が彼らに請求することをしなかったので、時効が成立してしまったのです。

 同和減免はすでに必要のないものです。根拠のない制度に依存しながらも、最終的に支払っていません。二重に間違っています。

 徒に政治家を批判するよりも、「市民」の不正に目を向けるような姿勢が、自称ジャーナリストたちに求められています。

WEB素行調査

 今日はWEB素行調査です。

調査結果:benyamin

 なんとも言いにくい結果が出ました。アクセスするたびに結果が若干変わりますが、構成要素は同じようです。Googleなどの検索サイトを参照して出力しているのでしょうか。結果があまり面白くないのは、ネット上でのbenyaminが面白くないことの証左でしょうか。チクショー!

 ということで、大事にしていたサングラスを落としてしまったので、ちょっと落ち込んでいるbenyaminです。雨のバカヤロー!

 血圧:113/74mmHg(21:31)

2008年度政府予算案

 今日は2008年度政府予算案です。

平成20年度一般会計歳入歳出概算単位:百万円/( )は前年比伸び率

歳入
租税・印紙収入:53,554,000(0.2)
  その他収入: 4,159,340(3.7)
    公債費:25,348,000(-0.3)
   合計  :83,061,340(0.2)
歳出
      国債費:20,163,230(-4.0)
地方交付税交付金等:15,613,609(4.6)
     一般歳出:47,284,501(0.7)
    合計   :83,061,340(0.2)

    社会保障関係費:21,782,434(3.0)
  文教及び科学振興費: 5,312,188(0.5)
        国債費:20,163,230(-4.0)
      恩給関係費: 852,227(-7.7)
   地方交付税交付金:15,140,120(3.6)
    地方特例交付金: 473,489(51.8)
      防衛関係費: 4,779,650(-0.5)
    公共事業関係費: 6,735,151(-3.1)
      経済協力費: 665,983(-3.7)
    中小企業対策費: 176,051(7.3)
   エネルギー対策費: 865,509(0.1)
  食糧安定供給関係費: 858,179(0.3)
産業投資特別会計へ繰入:    −( − )
   その他の事項経費: 4,907,129(-0.6)
        予備費: 350,000(0.0)
     合計    :83,061,340(0.2)

出所:財務省PDF

 全体としては前年度からやや増加となりました。ただ、これくらいの増加であれば、ほぼ前年水準に抑えたと言えるのではないかと思います。公債費もわずかながら前年比でマイナスとなっています。

 歳出では社会保障関係費の増加が目立ちます。項目の規模も20兆円と膨大なものです。国債関係の項目を抜いて考えると、60兆円の歳入のうち20兆円が社会保障に投入されています。3分の1です。これが今後も増加していくのです。私が予算担当者なら逃げ出したくなります。

 社会保障関係費よりも地方関係の項目でも増額が見られます。これは都市と地方との格差是正のためでしょうが、はっきり言えば、来る選挙に向けての対策でしょう。2008年度には解散総選挙が予想されていますので、そのための用意です。

 これをばらまき政治の復活だと批判することもできます。が、こうしたばらまきを切り捨てていた小泉政権も強く批判されてたように思います。いったい何を批判したら良いのでしょう。批判合戦に明け暮れるだけのような気がします。

 いずれにせよ、今回の政府案では福田内閣の独自性は発揮されていないと思います。緊縮財政を強行するのでもなく、大型景気対策を講じるわけでもなく、普通に予算を組んでいる印象を受けました。普通の人と呼ばれる所以でしょうか。

 なお、財政投融資計画も発表されています。

平成20年度財政投融資計画の概要単位:億円/( )は前年比伸び率

         公庫等: 42,514(7.3)
教育・福祉・医療関連機関: 8,763(5.5)
 その他の独立行政法人等: 35,863(-7.0)
      その他の機関: 11,449(-17.3)
     小計     : 98,589(-1.7)
          地方: 40,100(-2.9)
     合計     :138,689(-2.1)

出所:財務省PDF

 こちらは著しく減少しています。意味がある減少だと思います。道路や港湾に投入する費用が減り、国民向け融資や教育関係への支援が増えています。こちらの財政投融資も含めて、政府の予算に対する姿勢は考えなければならないでしょう。

『火星からの侵入』

 今日はH・キャントリル(斎藤耕二・菊池章夫訳)『火星からの侵入』(1971年、川島書店)を読みました。

 題名だけ見るとSF小説に見えますが、実のところ心理学の本です。原題はThe invasion from Mars : a study in the psychology of panicとなっています。パニック行動に関する研究書です。といっても、難しい本ではありません。一般市民がパニックに陥ったある事件に関して心理学の観点から調査し、その結果を丁寧にまとめた本です。

 ある事件は1938年10月30日にアメリカで発生しました。ラジオ放送で流れたドラマ「宇宙戦争」を聞いた人々が、これを事実だと思い込んでしまったのです。ドラマの内容は火星人がアメリカに飛来し、地球侵略を開始するというものでした。効果音や演出によって臨場感たっぷりのドラマに仕上げられていました。

 ラジオを聞いていた人々は次々とパニックになっていきます。荷物をまとめて家から逃げ出したり、もう終わりだと諦めて静かに最後を待ったり、まさにパニックです。このような人々がなぜラジオドラマを信じてしまったのか、事後に調査がなされました。

 ドラマの視聴者は約600万人でした。そのうち、約170万人がドラマではなくニュースだと思ってしまい、約120万人が驚いて興奮してしまいました。ドラマの最初と最後には「これはドラマである」と明確に説明されていたにもかかわらずです。

 かくも多くの人々がなぜドラマを事実と受け止めてしまったのか。普通に考えてみて、最初に思い浮かぶ要因は教育水準でしょう。知的訓練を受けていないから騙されてしまったのだと誰もが言いそうになります。

 が、調査の結果、教育水準はそれほど関係がないことが明らかにされました。高校卒業の集団では36%がドラマをニュースと解釈した一方で、大学卒でも28%が同様の解釈をしています。学歴は直接に教育水準を現さず、年齢と経済状態を加味しなければなりませんが、それでも教育の程度が決定的要因ではありませんでした。

 調査結果によれば、中心となる要因は時代状況と個人状況でした。これは統計的な調査ではなく、主に面談による聞き取り調査から判明したことです。まず時代状況ですが、当時の1938年は第二次世界大戦が勃発する前年です。戦争の危機という緊張感のなかで火星人の侵入というドラマを耳にしたため、気持ちが先走ってパニックになってしまったということです。

 一方の個人状況ですが、これは各自が日常生活のなかで悩みを抱えていたために、冷静な判断ができなかったのです。日常的に欲求不満を感じており、社会の脅威に対して受け身に構えている人々は判断能力が低下していました。心理的に不安定であったため、ドラマで語られた内容にショックを受けてしまったのです。

 本書で展開されるパニック行動に関する研究は、非常に空恐ろしいと感じました。高度な教育を受けても、一定の状況のもとではドラマとニュースを判別することができないことが示されているからです。もっと端的に言えば、私たちを取り巻く状況次第で誰でもパニック行動をとってしまうということが明示されていると思いました。

 こうした研究成果は人間心理の解明にとって意義があります。と同時に、この到達点を踏まえて、人の心に作用することもできてしまうところに恐さを感じます。心理的に不安にさせて判断能力を喪失させることで、任意の事柄を人々に信じ込ませることもできます。大変だ大変だと喧伝されつづけると、誰しもが的確な判断ができなくなってしまうのです。

 ではどうしたら良いのか。本書ではやはり教育しかないだろうと言っています。教育水準がパニック行動に与える影響が大きくはないとはいえ、小さくもありません。先に示した数値では大卒のほうが高卒よりも3割くらい騙された比率が低いのです。この事実に本書は期待を寄せています。

 教育により十分な知識を身につけ、いろいろな角度から物事を考えられることが、事実とウソを区別する判断に必要となります。パニックに陥ることを予防するにも教育が有効であり、また、実際に危機的状況になったときに適切な行動をするためにも教育が重要となります。

 パニックへの対応策として教育を位置づけるところに、本書の示唆があると思いました。

大統領制

 今日は大統領制です。<参考Wikipedia

 大統領制は通常、立法府から独立した行政府の長を指します。立法府と行政府との権力分立を体現した政治制度です。典型例はアメリカ合衆国でしょう。一般に大統領制と言われて真っ先に思い浮かぶ国がアメリカです。

 その一方で、同じように大統領がいる国であっても、内実は大統領制ではない政治制度もあります。例えば、ドイツやイタリアのように大統領が国家元首として儀礼的な地位しか有していない国もあります。この場合、行政府の長は議会が選出した首相が就任するため、実質的には議院内閣制の政治体制となります。<参考Wikipedia

 また、フランスやロシアでは逆に議院内閣制であるにも関わらず、権限が大きい大統領がいます。首相もいますが、任命権は大統領が持っています。こうした政治体制は大統領制と議院内閣制の混合という意味で、半大統領制あるいは大統領制的議院内閣制と呼ばれます。<参考Wikipedia

 半大統領制は大統領制よりも大統領の権限が広く強いにも関わらず、「半」とはおかしな表現です。ただ、英語ではsemi-presidential systemとなっているので、準大統領制とでも訳出するとわかりやすいかもしれません。私なら元の英語もneo-presidential systemとすべきだと主張して、超大統領制とでもしますが。

 いずれにせよ、大統領制は行政府の長が大統領である政治体制です。そのため立法府である議会と牽制し合う関係にあります。これに対して、議院内閣制は立法府の長である首相が行政権をもっています。ですから、行政府と立法府は相互に協力し合う関係になっています。権力分立としては同様ですが、行政と議会との関係の制度的在り方に差異があります。<参考Wikipedia

 ということで、ふと疑問に思ったことをWikipediaさんに尋ねてみたというわけです。

覚書 071218

「経済マンスリー 西欧」三菱東京UFJ銀行、2007年12月13日。
●英国
・英国の経済指標をみると、ここにきて、減速、あるいは、悪化を示す指標が増えてきた。小売り売り上げは、雇用状況が良好な中、10月の伸び率が前年比4.4%と前月の同5.5%と減速した。また、11月の住宅価格上昇率は前年比3.2%と、2005年8月以来の低い伸びとなった。住宅価格は、前月比では3ヶ月連続してマイナスを示しており、ピークアウトしたと捉えることができよう。
・住宅市場が低迷すると、家具などの耐久消費財をはじめとする個人消費に悪影響を及ぼす。実際に11月の消費者信頼感指数は急落しており、この先、個人消費の減速は免れないであろう。
・企業に関しては、11月の製造業PMI景況感指数は前月比上昇したものの、サービス業は1.2ポイント低下した。金融など主要産業を含むサービス業は3ヶ月連続の低下となっており、今後、企業活動が鈍化する可能性が高まってきた。
・10月の消費者物価上昇率は、前年比2.1%と前月より0.3ポイント上昇した。こうした状況は当面続くとみられ、消費者物価上昇率は、イングランド銀行(BOE)がターゲットとする2.0%を上回る水準で推移するとみられる。
・こうしたなか、BOEは12月6日の金融政策委員会(MPC)で、政策金利であるレポ金利を0.25%ポイント引き下げ、5.50%とした。BOEは依然景気下振れリスクを警戒しており、今後の経済指標の動向次第では、さらなる利下げの可能性もある。一方で、原油価格や穀物価格高騰に伴うインフレ圧力は今後も続くことから、BOEは難しい金融政策運営を迫られることになろう。

覚書 071217

「イギリスの仕事をイギリス人労働者に 首相発言をめぐり論争広がる」労働政策研究所・研修機構『海外労働情報』2007年12月。
・ブラウン首相は9月、英国労働組合会議(TUC)の大会や労働党大会などで、「イギリスの仕事をイギリス人労働者に(Brtish jobs for British workers)」との方針を表明し、イギリス人に優先的に雇用を割り当てる一連の政策案を発表した。これに対し野党からの批判が相次ぎ、また労働党内部からも異論の声があがっている。
・ブラウン首相はTCU大会での挨拶で、現在イギリス国内にある60万人を超える求人が、技能のミスマッチや企業と求職者の間のマッチングの不十分さから充足されていないと主張し、失業者や労働市場から離れているイギリス人への優先的な雇用の斡旋などで、今後数年で50万人の雇用創出を目指す、との方針を示した。
・その中核は、「雇用パートナーシップ」協定だ。企業との間に長期失業者を雇用する約束を取り付け、その協力をえながら、就労に適した訓練などを政府が行なうという政策で、2010年までに25万人の雇用創出を見込んでいる。既に、10月末までに100社以上との締結が完了した、と政府は発表している。
・政府がイギリス人優遇を打ち出す理由の一端には、近年の移民増加に伴う雇用や治安などの問題に関する国民の不安の高まりを緩和するねらいもあるといわれている。
・これに対して、野党からは、一連の政策案が人種差別的・排外主義的であるとの批判や、その効果自体を疑問視する声が出ている。
・会計監査院(National Audit Office)が先頃公表した調査結果によれば、求職者給付から就業した人々の4割が、半年後には再び失業して受給者となっており、こおうした反復受給者が毎年新規に申請される240万件の約三分の一を占めるという。さらに、失業給付の受給と就業との間を行き来する人々の割合は、1980年代から変わっていないとの結果が明らかとなった。この10年で失業者自体は減少したものの、継続的な就業には必ずしも結びついていなかったことが判明した格好だ。(報告書を探しておく)

鳥毛拓馬「英国のキャピタル・ゲイン課税の見直し」大和総研『制度調査部情報』2007年12月12日。
・英国では、個人が資産を処分して得たキャピタル・ゲインについて、総合課税方式が採用されている。税率は、10%(2,230ポンド以下)、20%(2,230〜34,600ポンド)、40%(34,600ポンド以上)の三段階に分けられている。
・課税所得については、1. 損益通算、2. テーパー・リリーフ制度の適用、3. 基礎控除制度の適用後の金額をもとに算出する。(覚書注:適用後金額に10〜40%の税率を課す)
・損益通算:キャピタル・ロスを同一年度のキャピタル・ゲインからのみ控除できる。
・テーパー・リリーフ制度(taper relief):1998年以降のキャピタル・ゲインについて、事業資産・非事業資産の別に応じて、資産の保有期間毎に、所得の100〜25%を課税所得とする。
・基礎控除制度(AEA):土地などの譲渡益と合わせて年間9,200ポンドが控除(The Anuual Exempt Amount:AEA)される。
・2008年4月6日以降、キャピタル・ゲイン課税について、原稿の三段階方式を廃止し、保有期間や所得水準に関わりなく一律18%の税率にする案が大蔵省より提示された。(覚書注:段階税率とテーパー・リリーフ制度の廃止。英国の税年度は4月6日〜4月5日である)
・現行制度では、事業資産のキャピタル・ゲインとして、最低10%の税率が適用されているに過ぎないが、今般の改正により大幅な増税になることは免れない。(覚書注:2年以上保有している事業資産からの34,600ポンド以上のキャピタル・ゲインに対する課税が10%から18%へと上昇し、約2倍の税率となる。が、2年以下の保有期間の事業資産、あるいは期間に関わらず非事業資産からの34,600以上のキャピタル・ゲインに対しては最大6割減の減税となる。高所得者は基本的に減税である。その一方で、2,230ポンド以下のキャピタル・ゲイン所得に対する税率は全体的に2倍から3倍の上昇となる。低所得者に対しては改正により増税となる)
・現行税制では、非居住者はNon-Domicileと区別され、英国外で生じた所得に対しては英国に送金しない限り非課税とされている(remittance basis)。今般の改正案では2008年4月6日から、英国に過去10年間のうち7年以上滞在しているNon-Domicileは、全世界の所得を申告所得に含め納税するか、あるいは、年間30,000ポンドを所得額にかかわらず払うか、のいずれかを選択しなければならないとされている。ただし、1,000ポンド以下の場合は課税対象とならない。

「主要国の政治動向 英国」国際金融情報センター、2007年12月4日。
・2007年5月2日:地方選挙。(野党・保守党が優勢に)
・2007年5月10日:ブレア首相、6月27日の退陣を発表。
・2007年6月27日:ブラウン首相就任、労働党新内閣発足。
・2009年:総選挙。

「主要国の金融政策動向 英国」国際金融情報センター、2007年12月4日。
・現行政策金利:5.75%(11月8日は据え置き。2006年8月からの引き締め局面では5回にわたり、計1.25%引き上げ。8月以降、4回据え置き。次回決定は12月5日〜6日)

2008年度税制改正大綱

 今日は2008年度の税制改正大綱です。

2008年度税制改正大綱のポイント

暮らし
・省エネ住宅の改修待遇(数10億円の減税)
  耐熱工事などのローンが対象
・「200年住宅」の支援税制(数10億円の減税)
  耐久性に優れた住宅の普及後押し
・バイオ燃料の税減免(数億円の減税)
  植物から精製するエタノールが対象に
・ガソリン税暫定税率維持(中立)
  道路の建設費用を確保
・住宅優遇税制の延長(中立)
  新築住宅の固定資産税軽減、
  住宅取得資金の贈与税軽減など
企業
・法定耐用年数の根本的見直し(中立)
  製造設備の減価償却期間を一部短縮
・研究開発減税の拡充(400億円の減税)
  税額控除の上限を法人税額の30%に
・事業承継税制の拡充(減税)
  非上場株の相続税を8割軽減(09年度から)
・大企業向けの優遇税制を一部打ち切り(400億円の増税)
  教育費や情報投資による法人税軽減を廃止
・トン数税制の導入(減税)
  国際海運会社の課税方式変更
投資
・証券税制の見直し(増税)
  軽減税率は一部打ち切り、
  損益通算を導入(09年から)
・エンジェル税制の拡充(減税)
  1000万円を上限に投資額を寄付金控除
地方
・都市と地方の税収格差を是正(中立)
  都市部の法人事業税を地方に
・ふるさと納税の導入(減税)
  自治体への寄付金を税額控除

日本経済新聞2007年12月12日付、1面

 基本的に根本的改革は見送られました。法人税や所得税に関する改正が先送りにされたため、今回の改正によって影響を受ける人々は多くないでしょう。金融利得があったり、多額の寄付でもしない限り、増税も減税にもならないのではないでしょうか。

 注目すべきは消費税でしょう。税率引き上げの時期や程度などには触れていませんが、「社会保障費をまかなう主要な財源と位置づけ、社会保障財源の拡充を検討」と明記されました。具体的な改正はありませんが、議論は積み上げられているようです。

 社会保障を口実に消費税増税が企図されていると批判することもできます。実際、3%から5%に引き上げるときも社会保障と地方分権が口実でした。その後にこれらの分野で増税に見合う拡充がなされたかどうか、検証が必要となるでしょう。

 その一方で、高齢化により社会保障費が膨張していることも事実です。負担を一定にして給付水準を引き下げるか、負担を増加させて給付水準を維持するのか、といった論点が検討されなければなりません。その点、今回の大綱では消費税で対応していくことが示されています。

 政治論議としてはガソリン税の暫定税率維持が対立点となるでしょう。原油価格の上昇からガソリンや灯油などの値段が上昇しています。このような状況下では「庶民の暮らしを守れ」とガソリン税が批判を浴びることは避けられません。もっとも、そうした一時的な状況によって税制の是非を議論することには、大きく疑問を感じますが。

 ともあれ、福田政権になってから、政策運営は落ち着きを取り戻したようにも思えます。なおも批判のための批判をする野党もいますが、福田首相が上手くさばいているのでしょう。建設的な政策論議がなされることを期待しています。

映画『4分間のピアニスト』

 今日は4分間のピアニストを鑑賞しました。

 ドイツ映画です。女子刑務所に服役する囚人と、彼女にピアノを教える音楽教師の関係を描いています。

 教師は囚人の才能を見出し、崇高な芸術性を追求するべくピアノの指導をします。しかし、囚人は教師の指導には納得できず、自分なりの音楽を求め続けます。

 二人の距離は付かず離れず、理解し合えたと思ったら、すぐに反発することを繰り返します。物語の終盤まで距離は縮まることはありません。

 話を貫く中軸となっている記号はおじぎです。音楽教師は囚人におじぎをするように言いますが、囚人は絶対にしません。おじぎは屈服を意味するからです。

 最後の山場は著名なコンクールで囚人が演奏する場面です。囚人が普通に演奏すれば最優秀賞も夢ではありません。しかし、彼女は破天荒な演奏法でシューマンを弾きました。

 教師は会場から抜け出します。ロビーでワインを何杯もあおりました。囚人の演奏にあきれたのでしょうか。それとも、酔いで何かを吹き飛ばして、囚人の音楽を素直に感じようとしたのでしょうか。

 会場に戻った教師は演奏に聞き入ります。やがて演奏が終わりました。観客からは盛大な拍手が送られました。ふと見れば教師も拍手しています。

 ピアノの前から立ち上がった囚人は会場の教師を見ました。教師は手に持ったグラスを掲げてこたえました。それを見た囚人は、みごとなおじぎを返しました。二人の音楽が共鳴した瞬間です。

 非常に美しい映画でした。いろいろなピアノ曲の演奏を楽しむことができます。これだけでも十分なくらいです。最後の破天荒な演奏も聞き入ってしまいました。

覚書 071211

HM Treasury, Budget 2007/Building Britain's long-term future: Prosperity and fairness for families, March 2007.
●pp.294-297 Private Finance Initiative
・C.92 With PFI, the public sector defines what is required to meet public needs and ensures delivery of the outputs through the contract. Consequently, the private sector can be harnessed to deliver investment in better quality public services while frontline services are retained within the public sector. The Government's position on PFI is set out in the document PFI:Strengthening Long Term Partnerships.
・C.93 The Government only uses PFI when it is appropriate and where it expects it to deliver value for money.(略)In assessing where PFI is appropriate, the Government's approach is based on its commitment to efficiency, equity and accountability, and on the Prime Minister's principles of public service reform.
・C.94 Under PFI, the public sector contracts for services, including the availability and management of facilities, and not assets. Capital investment is only one of the activities undertaken by the private sector in order to supply these services.(Table C17、C18)
・C.95  The fact that capital investment only represents one element of the overall contract means that the figures presented in this table should not be taken to be directly comparable with public sector debt liability. (Table C19)
・C.96 PFI credits will be held constant in cash terms at £3.6 billion a year over the CSR 07 period.

HM Treasury, Meeting the aspirations of the British people: 2007 Pre-Budget Report and Comprehensive Spending Review, October 2007.
●p.51 Private Finance Initiative
・3.40 The Private Finance Initiative (PFI) plays a small but important role in the Government's investment in public services. Approximately 600 PFI projects have been signed, with a total capital value of £56.9 billion, and public authorities report a high level of user satisfaction. Over £10 billion worth of projects have been signed in the last 18 months. Full details of the PFI programme are published in the supplementary charts and tables.
・3.41 PFI projects worth a total of £22.2 billion are expected to reach financial close before April 2011. The Government believes PFI should continue to form a significant part of its strategy for delivering high quality public services, alongside a broader range of traditional and alternative procurement models depending on the circumstances. For the CSR07 period the Government has allocated a total PFI Credit envelope of £10.9 billion. Consistent with this allocation, the Government will continue to pursue PFI projects where they demonstrate value for money, alongside conventional capital programmes.

岡田啓・手塚広一郎「社会資本における維持管理とインセンティブ構造」『国際公共経済研究』第18号、2007年。
・英国ではPFIによるDBFP(Design, Build, Finance and Operate)方式で、整備・運営されている道路が1990年代を中心に多く建設されている。NAO(1998)によれば、初期のPFIによる道路は、シャドートールと呼ばれる支払い方式が採用されていた。これは、交通量つまりアウトプットに依存して公共部門が民間事業者に支払いを行なうという方式である。しかしながら、道路に関して言えば、交通量は民間事業者がコントロールする余地が少なく、なおかつ事前の予測が立てにくいものであっため、この方式は総じてうまくいっていなかったようである。
・そこで、現在のPFI(Private Finance Initiative)、PPP(Public Private Partnership)による道路事業では、道路の「質」という成果に依存して支払額(アベイラビリティ・フィー)を変化させるという方法が利用されているようである。この場合、「質」に関しての評価項目をどのように設定するかが主たる問題となる。
・National Audit Office, The Private Finance Initiative: The First Four Design, Build, Finance and Operate Roads, 1998.

小澤茂樹「イギリスにおける鉄道のダイヤ配分と調停制度」『国際公共経済研究』第18号、2007年。
(覚書注:しおり代わりの覚書である)

篠原章「人口減少時代の財政システムの構築 政策論の理念的基板をめぐって」『国際公共経済研究』第18号、2007年。
・広く受け入れられている租税原則に「課税は中立であるべき」という中立原則がある。「中立」そのものの定義については、これまで厳密な意味で明確にされているとはいいがたいが、「課税が経済主体の行動や選択に影響を与えない」という点で認識はほぼ共有されているといえるだろう。還言すれば、資源配分上の歪みをもたらさない租税体系や課税技術を求める原則である。
・ところが、この中立原則は、特定の政策目標の実現のためにはしばしば部分的に放棄されることがある。種々の租税特別措置がその代表格だが、近年では環境税導入をめぐる議論が、中立原則の放棄を象徴するものとなっている。同税は二酸化炭素を排出する行動を罰するという意味でまったく中立的ではない。逆に言えば、二酸化炭素を排出しない行動を優遇していることにになる。
・人口減少時代の租税政策形成に際してしばしば主張される「所得税における扶養家族の拡充」という政策選択肢も、同様に中立原則を犯す可能性がある。少子化への対抗措置、すなわち「多産」に対する優遇措置という意図は明確だが、一方で「少産」あるいは「無産」という選択肢を税制上罰することも明らかである。
・必ずしも一義的な結論を得ることはできないが、政策形成という立場からは、減税よりも財政支出という選択肢が望ましいという推論は可能ではないかと思われる。
・政府部内の議論を含めて、税制を政策的に利用することによって「租税原則(中立原則)」を(部分的に)放棄するという手法には、ほとんど何の疑問も呈されていない。政府税調ですら、一方で「中立原則」の重要性をうたいながらも、自らその原則を放棄しているといっていい。
・「人口変動の変化に強い税制・社会保障の構築」というきわめて政策的な課題にアプローチするとき、依拠すべき理論的な土台があまりに脆弱ではないか。「多産」と「少産あるいは無産」という選択肢のあいだを規律する「公平観」も描けなければ、「児童福祉」と「高齢者福祉」という選択肢を調整する「公平観」も見あたらない。

松原聡「少子化対策の国際比較」『国際公共経済研究』第18号、2007年。
・日本における出生率の低下は、婚姻した夫婦の出生率は大きくは低下しておらず、主として晩婚化・非婚化に追っている。女性の平均初婚年齢は1970年の24.2歳が、2005年には28.2歳まで上昇している。また、年齢階層別の非婚率を見ると、たとえば男性25歳から29歳までの未婚率は1970年の46.5%から2000年の69.3%に、また、同年齢層の女性についても、1970年の18.1%から2000年には54.1%に急増している。
・日本における非婚化、晩婚化の傾向は顕著であり、このことと、出生率の低下との間には高い相関があると見てよい。
・一方、非嫡出子率は日本が群を抜いて低い水準となっている。逆に、非嫡出子率の高い国は、出生率も高くなっている点に注目する必要がある。日本で、非婚化が高まりながら、非嫡出子率が低いことが、出生率低下の大きな原因と考えられる。

舟場正富「日本における社会的経済研究の現状と課題 1.座長からの視点」『国際公共経済研究』第18号、2007年。
・国家と民間、その中間組織としての社会的経済システムという位置関係を仮定すれば、今後の市場化の進展の過程で問題となる就労の促進、福祉や環境、農業、伝統産業などの支援者は、高度のテクノロジーを持つ「条件整備国家」となるべきであろう。「条件整備国家」は、Neil Gillbert教授の「Enabling State」の訳である。
・付記:「社会の行方について、多くの主張がなされるが、(公共を重視か、市場を重視かという)二律背反的に論じられてきたことを学者として納得がいくようにここで結論付けたいと思う。」

塩見英治『米国航空政策の研究 規制政策と規制緩和の展開』文眞堂、2006年4月。
(覚書注:図書館などで探して、ざっと目を通しておく)

『レアメタル資源争奪戦』

 今日は中村繁夫『レアメタル資源争奪戦 ハイテク日本の生命線を守れ!』(2007年、日刊工業新聞社)を読みました。

 レアメタルとは文字通りレアなメタルです。埋蔵量が少なかったり埋蔵地が偏在していたりして、供給が相対的に非常に少ない金属のことです。具体的に日本では31鉱種47種類の金属がレアメタルだとされています。

 レアメタルはただ少ない金属ではなく、相対的に少ないという点が特徴です。つまり、レアメタルは存在量が稀少であるにも関わらず、産業活動には欠かせない存在なのです。とくにIT関連部門ではレアメタルなしには何もできないと言っても過言ではないと思います。

 たとえば、ノートパソコンや携帯電話の充電池にリチウムが使われています。このリチウムもレアメタルです。リチウムのおかげで、エネルギー密度を高めることができ、充電池の小型化が可能になったのです。

 先端技術産業を維持し、発展させるためにもレアメタルは不可欠です。しかしながら、レアメタルは中国やに支配されつつあります。なぜなら中国には多くの種類のレアメタルが埋蔵されているからです。

 後進国であった中国にとってレアメタルはさほど重要ではなかったので、その多くを日本が輸入していました。が、経済発展に伴い中国でもレアメタル需要が増大しました。その結果、中国は輸出を抑えて自らが消費するようになったのです。

 中国の輸出抑制政策は単純かつ強力です。レアメタルの輸出に税金を課すのです。2006年に原則5%の課税を実施することが決定されました。将来的には税率が20%まで引き上げられることが予測されています。

 本書ではこのままでは日本がレアメタルを入手できなくなると警告しています。中国による囲い込みを牽制しつつ、国内外で独自にレアメタル鉱山を探鉱し開発していくことが求められます。と同時に、国内にあるハイテク製品のレアメタルを再利用することが本書では提唱されています。

 レアメタルの再利用は、陳腐な対策かもしれませんが、すぐにでもできることだと感じました。日本では多くのIT機器が使用されています。それゆえ廃棄される機器も多いので、そこからレアメタルを抽出して取り出し、再び使える金属にすることで、資源難に対応することはできます。

 著者は商社で30年間、レアメタルの買い付けを行なっていた人です。レアメタルの動向を肌で感じてきた著者が書く本書は非常に説得力があると思いました。とくにレアメタル不足の対策として打ち出しているリサイクルは魅力的です。効率的で効果的なリサイクルが確立すれば、資源が少ない日本には実はたくさんの資源が眠っていると言えるような状況になると思います。

覚書 071203

財務省財務総合政策研究所『「主要諸外国における国と地方の財政役割の状況」報告書』2006年9月。
●第1章 国と地方の役割分担 再分配的歳出を中心にした国際比較
・本稿では、再配分的歳出(社会保障分野と義務教育)に関する中央と地方の役割分担の現状を議論する。
・本稿では、以下のように再配分的歳出を分類した。まず、給付の形態に応じて、再配分的歳出を(1)「現金給付」と(2)「現物給付」の2つに大きく分類した。つぎに、前者の(1)現金給付を原資の拠出形態によって、(1-1)拠出金(保険料)に部分的にも依存する「社会保険(医療を除く)」、及び(1-2)全て租税収入で賄われる「公的扶助」に分けた。最後に後者の(2)現物給付に関しては、(2-1)「医療」、(2-2)「対人社会サービス」、及び(2-3)「義務教育」の3つに分類した。
・(1)現金給付
   (1-1)社会保険(医療除く):年金、失業・労災保険
   (1-2)公的扶助
 (2)現物給付
   (2-1)医療
   (2-2)対人社会サービス(介護サービス)
   (2-3)義務教育
・単一国家における地方政府は、連邦国家における州ではなく、その州内部の地方政府と対比されるべきものであろう。このような観点から連邦国家における中央と地方の関係を比較すると、むしろ連邦国家(の州)のほうが中央集権的である。例えば、法制度から見ても連邦国家における地方の活動は州の憲法や法律によって、単一国家のそれらよりも厳密に規定されている。また歳出割合から見ても、連邦国家の地方歳出の対一般政府比率は、単純平均を用いると単一国家の当該比率の約半分でしかない。
・連邦国家:アメリカ、カナダ、ドイツ、オーストラリア
 単一国家:フランス、イタリア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、日本、フィランド、イギリス
・我が国の基礎自治体(市町村)の平均規模は約7万人弱であるが、これはイギリス(14万人強)に次いで大規模な値になっている。さらに、我が国は都道府県の規模も大きい(270万人強)。他の国ではフランスが60万人で最大であるが、多くは数十万人の規模である。
・我が国の都道府県と北欧4カ国を比べると、これらの国の人口は比較的大規模な都道府県の人口と同程度となる。例えば、デンマーク(541万人)とフィンランド(526万人)は兵庫県(559万人)、ノルウェー(464万人)は福岡県(505万人)、スウェーデン(907万人)は大阪府(881万人)と同程度である。したがって、これらの国における分権や国と地方との役割分担の議論は、日本の都道府県程度の人口規模における分権として議論されていることに留意する必要がある。
・最も大きな政治単位である国を単位として社会保険が運営されていることは、保険理論から考えても妥当なことである。保険において重要な点はリスクの効果的なプールであり、対象とする人口が広がるほど、リスク・プーリングは効果的になる。費用効率性の観点からも中央政府が有利であろう。公的扶助とは異なり、保険金の給付業務が定型的な資格確認のみで済むなら、給付業務に規模の経済性が存在すると考えられ、また、中央政府が社会保険料の徴収業務を国税徴収業務と統合することによって範囲の経済が達成できるからである。実際、後者の保険料徴収業務に関しては、国税当局が社会保険料を徴収している国は多い。
・(補論)日本と同様に、イギリスでは需要考慮型の財政調整制度のみを採用している。また、イギリスの地方財政調整制度は国から地方へと交付金を配分する垂直的財政調整である。地方財政調整に関する配分決定機関は、イギリスでは大蔵省・副首相府が担っている。地方財政が不均衡に陥った場合、イギリスではカウンシル税を国が定める標準以上に引き上げて対処する仕組みがある。(覚書注:予算と財政調整が次の研究テーマとなるだろう)
●第6章 イギリスにおける国と地方の役割分担
・保守党サッチャー政権が地方制度改革(大ロンドン県と6つの大都市カウンティの廃止)を行なった直接の原因は、同地域では労働党の力が強く、保守党政権と鋭く対立することが多いために、その力を削ぐことを狙ったというものであるとの解釈がしばしばなされる。しかし、そのような「真の理由」がどうあれ、保守党政権が当時の二層制の非効率性を問題にし、改革を成し遂げたことは重要である。このときの改革以降、現在の労働党政権に至っても、従来の二層制から一層制へと向かう大きな流れがあり、既存の二層制の地方行政制度が効率的な行政経営を目指す観点からだけではなく、意思決定の単位としても問題があり、制度が適切に現実の問題に対応できていないと考える立場については共有していると考えられるからである。
●参考資料 欧州3カ国の地方財政制度:イギリス
・憲法上の地方自治に関する規定:規定なし(規定はないが地方公共団体の権限は国会の法律によって限定列挙)。地方団体は中央政府によって設立され、その役割は中央政府が制定する法律によって厳格に規定されている。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドはそれぞれの地域について個別に規定した法律がある。
・地方自治制度の概要:イングランドでは二層制と一層制が併存、その他の地域は一層制。
・地方財政の現状:2003年度のイギリス一般政府の総支出は4708億ポンド(対GDP比42.6%)、総収入は4340億ポンド(いずれも社会保険を除く)。地方公共団体の支出は1198億ポンド(一般政府支出の25.4%、対GDP比10.8%、社会保険を除く)。地方公共団体の収入は1216億ポンド(社会保険を除く)。
・地方財政の財源:うち、自主財源は187億ポンド(比率15.4%→財政調整=財源保障によって1216億ポンドになる)。自主財源は基本的にカウンシル税(固定資産課税)のみであり、年間の歳出が決定された後、中央政府からの移転額を考慮して税率を決定する。事業用の資産に対する課税は日本の地方譲与税のようなかたちで地方公共団体に配分される。
・財政調整制度:需要考慮型の垂直的財政調整。地方交付金(revenue support grant)は行政需要にかかる費用・当該地域における租税力を比較し、その差額を一般財源として補充する。現在、自前の地方財源だけで歳出を賄うことができる自治体はない(地方税の比率は約15%)。
・財政均衡原則:キャッピング制度により地方政府の予算の伸び率に上限が設定されている。制度自体は1999年地方自治法によって廃止されているが、中央政府が目安となる租税上昇率を公表しており、税率の制限も可能となっている。
・地方債制度:地方歳入の3%程度。資本支出の財源のおよそ3割。発行は資本支出に限定されている(短期借入は除く)。従来は認可制であったが、2003年地方自治法により大幅に自由化された。規制としては、債務残高上限規制、債務返済準備金の積立義務、起債上限規制、資本支出財源への限定などがある。
・破綻法制:財政危機への予防措置は上記の通りだが、破産に関するルールはとくに定められていない。
・監査制度:地方自らの財政部局による内部監査と、監査委員会(Audit Commission)による外部監査がある。監査委員会も国の監査機関であるNAOによって監査を受ける。

結城良彦「就業構造変化の国際比較 サービス産業の拡大と女性労働参加の促進」第一生命経済研究所『Economic Trends』2007年11月27日。
・経済産業省の「海外事業活動基本調査」によると、現地企業数は年々増加の傾向にあり、現地法人の約半数が製造業で占められていることが確認できる。その一方で、サービス業の就業者数は一貫して増加傾向にあるため、全産業ベースでの就業者数の落ち込みはそこまで大きなものにはなっていない。就業者が減少する産業があるなかで、サービス業が雇用全体の受け皿的役割を果たしてきたと言えるだろう。(覚書注:論考全体の主張との関係は薄いが、ここでの分析は有意義である。就業者数の点からは産業の空洞化とは言えないということだろう。雇用が製造業からサービス業へと国内で移転したことが実態である。もっとも、この場合は賃金水準や雇用形態が変化=悪化したかどうかが議論されなければならないが、これは空洞化とは別問題の話となる。また、製造業の海外進出がどこまで同産業での就業者数の現象に結びついているのかの実態調査も必要となるだろう。国内就業者を解雇して海外に労働力を求める海外移転であれば国内雇用への影響は大きいが、単純な事業拡大であれば国内雇用に与える影響は軽微である。)
・米国におけるサービス業の就業者の増減について見てみると、90年代はアウトソージングの進展を背景に事業支援関連の就業者数が増加したほか、医療・福祉関連においても就業者数の伸びが見られた。2000年以降も、医療・福祉関連は引き続き堅調に推移しており、サービス業の就業者数の伸びを牽引する業種となっている。一方、これまで高い伸びで推移していた事業支援関連については、就業者数の増加にやや一服感がみられるようになってきている。就業者数の増加は、女性が男性を上回って推移しており、特に就業者数の伸びが高い業種にはサービス業が多い。この背景には、就業促進制度によってシングルマザーの就業が増加傾向に向かったことがあった。(覚書注:やや粗い検討ではないか。シングルマザーの就業により女性就業者が増えたとの分析はどのような根拠があるのか。また、女性全体と男性全体で就業者数を比較しておらず、業種別での両者の比較もない。提示されている資料では、サービス業全体として医療・福祉分野で就業者数が増加していることが読み取れるのみである。)
・日本でも、女性がサービス業の就業者数の伸びを牽引している構図は米国と変わりない。(覚書注:論拠となる資料が提示されていない。サービス業全体で医療福祉分野で雇用が増加している資料があるだけ。にもかかわらず、結論では、米国のように働く女性を支援する制度整備が必要だと提言している。主張と論拠がかみ合っていない論考である。結論ありきで書かされた学生のレポートのようだ。)

城野敬子「イギリス議会における『クイーンズ・スピーチ(Queen's Speech)』」日立総合計画研究所『欧州レポート』2007年12月3日。
・2007年11月6日、エリザベス女王は恒例の「クイーンズ・スピーチ」を行なった。クイーンズ・スピーチとは、イギリス議会の開会にあたって、女王が演説を行う儀式である。
・政治的な駆け引きの末に閣僚が内容を決定し、最終的に首相が意見を述べるというプロセスを経て作成されるため、盛り込まれる項目が多岐にわたり、総花的な印象を受ける。
・クイーンズ・スピーチは、イギリス議会おいて会期中もっとも華やかなイベントと考えられており、マスコミも盛んに報道する。また政府は、スピーチに盛り込まれた項目を一覧で発表し、そのすべてについてブリーフィリング資料を発表する。さらに、議会のホームページでは、クイーンズ・スピーチで挙がった法案の審議状況を一覧で容易に確認することができるように工夫されている。国民に政策の動向をわかりやすく伝えるという点では、クイーンズ・スピーチとそれを軸にした情報提供が一役買っているのではないかという印象を受けた。

自己紹介

benyamin ♂

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