覚書 071203

財務省財務総合政策研究所『「主要諸外国における国と地方の財政役割の状況」報告書』2006年9月。
●第1章 国と地方の役割分担 再分配的歳出を中心にした国際比較
・本稿では、再配分的歳出(社会保障分野と義務教育)に関する中央と地方の役割分担の現状を議論する。
・本稿では、以下のように再配分的歳出を分類した。まず、給付の形態に応じて、再配分的歳出を(1)「現金給付」と(2)「現物給付」の2つに大きく分類した。つぎに、前者の(1)現金給付を原資の拠出形態によって、(1-1)拠出金(保険料)に部分的にも依存する「社会保険(医療を除く)」、及び(1-2)全て租税収入で賄われる「公的扶助」に分けた。最後に後者の(2)現物給付に関しては、(2-1)「医療」、(2-2)「対人社会サービス」、及び(2-3)「義務教育」の3つに分類した。
・(1)現金給付
   (1-1)社会保険(医療除く):年金、失業・労災保険
   (1-2)公的扶助
 (2)現物給付
   (2-1)医療
   (2-2)対人社会サービス(介護サービス)
   (2-3)義務教育
・単一国家における地方政府は、連邦国家における州ではなく、その州内部の地方政府と対比されるべきものであろう。このような観点から連邦国家における中央と地方の関係を比較すると、むしろ連邦国家(の州)のほうが中央集権的である。例えば、法制度から見ても連邦国家における地方の活動は州の憲法や法律によって、単一国家のそれらよりも厳密に規定されている。また歳出割合から見ても、連邦国家の地方歳出の対一般政府比率は、単純平均を用いると単一国家の当該比率の約半分でしかない。
・連邦国家:アメリカ、カナダ、ドイツ、オーストラリア
 単一国家:フランス、イタリア、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、日本、フィランド、イギリス
・我が国の基礎自治体(市町村)の平均規模は約7万人弱であるが、これはイギリス(14万人強)に次いで大規模な値になっている。さらに、我が国は都道府県の規模も大きい(270万人強)。他の国ではフランスが60万人で最大であるが、多くは数十万人の規模である。
・我が国の都道府県と北欧4カ国を比べると、これらの国の人口は比較的大規模な都道府県の人口と同程度となる。例えば、デンマーク(541万人)とフィンランド(526万人)は兵庫県(559万人)、ノルウェー(464万人)は福岡県(505万人)、スウェーデン(907万人)は大阪府(881万人)と同程度である。したがって、これらの国における分権や国と地方との役割分担の議論は、日本の都道府県程度の人口規模における分権として議論されていることに留意する必要がある。
・最も大きな政治単位である国を単位として社会保険が運営されていることは、保険理論から考えても妥当なことである。保険において重要な点はリスクの効果的なプールであり、対象とする人口が広がるほど、リスク・プーリングは効果的になる。費用効率性の観点からも中央政府が有利であろう。公的扶助とは異なり、保険金の給付業務が定型的な資格確認のみで済むなら、給付業務に規模の経済性が存在すると考えられ、また、中央政府が社会保険料の徴収業務を国税徴収業務と統合することによって範囲の経済が達成できるからである。実際、後者の保険料徴収業務に関しては、国税当局が社会保険料を徴収している国は多い。
・(補論)日本と同様に、イギリスでは需要考慮型の財政調整制度のみを採用している。また、イギリスの地方財政調整制度は国から地方へと交付金を配分する垂直的財政調整である。地方財政調整に関する配分決定機関は、イギリスでは大蔵省・副首相府が担っている。地方財政が不均衡に陥った場合、イギリスではカウンシル税を国が定める標準以上に引き上げて対処する仕組みがある。(覚書注:予算と財政調整が次の研究テーマとなるだろう)
●第6章 イギリスにおける国と地方の役割分担
・保守党サッチャー政権が地方制度改革(大ロンドン県と6つの大都市カウンティの廃止)を行なった直接の原因は、同地域では労働党の力が強く、保守党政権と鋭く対立することが多いために、その力を削ぐことを狙ったというものであるとの解釈がしばしばなされる。しかし、そのような「真の理由」がどうあれ、保守党政権が当時の二層制の非効率性を問題にし、改革を成し遂げたことは重要である。このときの改革以降、現在の労働党政権に至っても、従来の二層制から一層制へと向かう大きな流れがあり、既存の二層制の地方行政制度が効率的な行政経営を目指す観点からだけではなく、意思決定の単位としても問題があり、制度が適切に現実の問題に対応できていないと考える立場については共有していると考えられるからである。
●参考資料 欧州3カ国の地方財政制度:イギリス
・憲法上の地方自治に関する規定:規定なし(規定はないが地方公共団体の権限は国会の法律によって限定列挙)。地方団体は中央政府によって設立され、その役割は中央政府が制定する法律によって厳格に規定されている。スコットランド、ウェールズ、北アイルランドはそれぞれの地域について個別に規定した法律がある。
・地方自治制度の概要:イングランドでは二層制と一層制が併存、その他の地域は一層制。
・地方財政の現状:2003年度のイギリス一般政府の総支出は4708億ポンド(対GDP比42.6%)、総収入は4340億ポンド(いずれも社会保険を除く)。地方公共団体の支出は1198億ポンド(一般政府支出の25.4%、対GDP比10.8%、社会保険を除く)。地方公共団体の収入は1216億ポンド(社会保険を除く)。
・地方財政の財源:うち、自主財源は187億ポンド(比率15.4%→財政調整=財源保障によって1216億ポンドになる)。自主財源は基本的にカウンシル税(固定資産課税)のみであり、年間の歳出が決定された後、中央政府からの移転額を考慮して税率を決定する。事業用の資産に対する課税は日本の地方譲与税のようなかたちで地方公共団体に配分される。
・財政調整制度:需要考慮型の垂直的財政調整。地方交付金(revenue support grant)は行政需要にかかる費用・当該地域における租税力を比較し、その差額を一般財源として補充する。現在、自前の地方財源だけで歳出を賄うことができる自治体はない(地方税の比率は約15%)。
・財政均衡原則:キャッピング制度により地方政府の予算の伸び率に上限が設定されている。制度自体は1999年地方自治法によって廃止されているが、中央政府が目安となる租税上昇率を公表しており、税率の制限も可能となっている。
・地方債制度:地方歳入の3%程度。資本支出の財源のおよそ3割。発行は資本支出に限定されている(短期借入は除く)。従来は認可制であったが、2003年地方自治法により大幅に自由化された。規制としては、債務残高上限規制、債務返済準備金の積立義務、起債上限規制、資本支出財源への限定などがある。
・破綻法制:財政危機への予防措置は上記の通りだが、破産に関するルールはとくに定められていない。
・監査制度:地方自らの財政部局による内部監査と、監査委員会(Audit Commission)による外部監査がある。監査委員会も国の監査機関であるNAOによって監査を受ける。

結城良彦「就業構造変化の国際比較 サービス産業の拡大と女性労働参加の促進」第一生命経済研究所『Economic Trends』2007年11月27日。
・経済産業省の「海外事業活動基本調査」によると、現地企業数は年々増加の傾向にあり、現地法人の約半数が製造業で占められていることが確認できる。その一方で、サービス業の就業者数は一貫して増加傾向にあるため、全産業ベースでの就業者数の落ち込みはそこまで大きなものにはなっていない。就業者が減少する産業があるなかで、サービス業が雇用全体の受け皿的役割を果たしてきたと言えるだろう。(覚書注:論考全体の主張との関係は薄いが、ここでの分析は有意義である。就業者数の点からは産業の空洞化とは言えないということだろう。雇用が製造業からサービス業へと国内で移転したことが実態である。もっとも、この場合は賃金水準や雇用形態が変化=悪化したかどうかが議論されなければならないが、これは空洞化とは別問題の話となる。また、製造業の海外進出がどこまで同産業での就業者数の現象に結びついているのかの実態調査も必要となるだろう。国内就業者を解雇して海外に労働力を求める海外移転であれば国内雇用への影響は大きいが、単純な事業拡大であれば国内雇用に与える影響は軽微である。)
・米国におけるサービス業の就業者の増減について見てみると、90年代はアウトソージングの進展を背景に事業支援関連の就業者数が増加したほか、医療・福祉関連においても就業者数の伸びが見られた。2000年以降も、医療・福祉関連は引き続き堅調に推移しており、サービス業の就業者数の伸びを牽引する業種となっている。一方、これまで高い伸びで推移していた事業支援関連については、就業者数の増加にやや一服感がみられるようになってきている。就業者数の増加は、女性が男性を上回って推移しており、特に就業者数の伸びが高い業種にはサービス業が多い。この背景には、就業促進制度によってシングルマザーの就業が増加傾向に向かったことがあった。(覚書注:やや粗い検討ではないか。シングルマザーの就業により女性就業者が増えたとの分析はどのような根拠があるのか。また、女性全体と男性全体で就業者数を比較しておらず、業種別での両者の比較もない。提示されている資料では、サービス業全体として医療・福祉分野で就業者数が増加していることが読み取れるのみである。)
・日本でも、女性がサービス業の就業者数の伸びを牽引している構図は米国と変わりない。(覚書注:論拠となる資料が提示されていない。サービス業全体で医療福祉分野で雇用が増加している資料があるだけ。にもかかわらず、結論では、米国のように働く女性を支援する制度整備が必要だと提言している。主張と論拠がかみ合っていない論考である。結論ありきで書かされた学生のレポートのようだ。)

城野敬子「イギリス議会における『クイーンズ・スピーチ(Queen's Speech)』」日立総合計画研究所『欧州レポート』2007年12月3日。
・2007年11月6日、エリザベス女王は恒例の「クイーンズ・スピーチ」を行なった。クイーンズ・スピーチとは、イギリス議会の開会にあたって、女王が演説を行う儀式である。
・政治的な駆け引きの末に閣僚が内容を決定し、最終的に首相が意見を述べるというプロセスを経て作成されるため、盛り込まれる項目が多岐にわたり、総花的な印象を受ける。
・クイーンズ・スピーチは、イギリス議会おいて会期中もっとも華やかなイベントと考えられており、マスコミも盛んに報道する。また政府は、スピーチに盛り込まれた項目を一覧で発表し、そのすべてについてブリーフィリング資料を発表する。さらに、議会のホームページでは、クイーンズ・スピーチで挙がった法案の審議状況を一覧で容易に確認することができるように工夫されている。国民に政策の動向をわかりやすく伝えるという点では、クイーンズ・スピーチとそれを軸にした情報提供が一役買っているのではないかという印象を受けた。

自己紹介

benyamin ♂

2012年5月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

月別アーカイブ

Powered by Movable Type 5.13-ja
Support Wikipedia