覚書 080115

後藤康雄「16年目に入るイギリスの景気拡大」『三菱総研倶楽部』2007年10月号。
・イギリス経済は1922年半ばから景気拡大を続けており、その期間はとうとう16年目に入った。この間に「産業のサービス化」が進んでいることが、近年のイギリス経済の大きな特徴である。サービス化が景気の波を受けにくい体質をもたらし、長期の景気拡大持続につながっていると考えられる。
・従来の議論では、サービス業や金融業は、製造業に比べ、生産性向上や効率性アップの余力が小さいので、サービス化は国の成長力を低下させるという声が強かったが、こうしたイギリスなどの例をながめ、最近では世界的に論調も変わってきているようである。
・消費者物価(コアベース)をみると、これまでは前年比2%以下に抑えられていたが、サービス部門の賃金上昇を主因にインフレ圧力が根強い。そうなると、中央銀行であるイングランド銀行としても金融引き締めスタンスを示さざるを得ない。しかし引き締め策資産市場に冷や水を浴びせ、ひいては景気を悪化させるリスクが高い。

風間慎吾「イギリスにおける義務教育年齢の引き上げについて」『自治体国際化フォーラム』2007年12月号。
・イングランドとウェールズの義務教育は5〜16歳までの11年間(primaryが6年間とsecondary schoolが5年)で、原則として子供が5歳の誕生日を迎えた次の学期から、その年に16歳になる7月までとなっている。
・生徒は義務教育最終学年にGCSE(General Certificate of Secondary Education:中学教育総合資格試験)と呼ばれる試験を受けることとなる。GCSEはそれ以降の進学のための選抜を目的とした試験ではなく、どの程度の教育水準に達しているかの証明の意味を持っており、イギリスでは就学や進学に当たっては履修科目とその成績を必ず問われることとなっている。
・2004年度義務教育修了者はイギリス全体で74万8000人、そのうち教育(政府支援による職業訓練を含む)を継続している割合は、イングランド80%、北アイルランド88%、スコットランド55%、ウェールズ82%となっている。
・1972年に義務教育年限が引き上げられてから35年が経過し、その間イギリスの科学技術や経済、社会状況は大きく変化し、何の技能も持たない16歳の学校卒業者が就業できるような未熟練労働市場は縮小してきた。
・2007年2月に教育技術省によって取りまとめられた調査「Rasing the Education Age」(対象者:イングランド在住の16歳以上の者、859人)の結果概要は以下のようである。1. 回答者の9割が18歳までに教育あるいは職業訓練の期間を延長するという提案を支持している(うち4分の3は強く支持)。回答者の3分の2は、2. 義務教育年限の延長の法的措置を支持している。
・政府は3月22日、「Rasing Expectations:staying in education and training post-16」という緑書を提出し、広くイングランド地域からの意見を求めた。
・具体的提案は、イングランドに住むすべての若年者は2015年以降、18歳の誕生日まで教育あるいは職業訓練の状態にとどまるべき、というものである。
・LGA(Local Government Association:地方自治体協議会)や、その「子供・若者委員会」は地方自治体が追加的に負担することとなる経費について提案者である政府から十分な説明がなされていないとして、政府に検討を求めている。
・PAT(The Professional Association of Teachers)からは次のような興味深いコメントが出されている。1. 単に義務教育年限を引き上げるだけでは学校に多くの不満を抱いている生徒の苦痛を延長するに過ぎない。2. 罰則を伴った強制力を背景にした年限延長は、現場における生徒と指導者間に重大な問題を引き起こしかねない。3. 卒業年限を引き上げて、その間に社会に出るための基礎学力の向上を図る必要性よりも、むしろ教育の初期段階で今以上に予算を投下するほうが効果的である。

角南和子「ワーク・ライフ・バランスと少子化対策」『自治体国際化フォーラム』2007年12月号。
・ブレア政権は「家族に優しい諸政策(ファミリー・フレンドリー)」を政府の重要課題の1つとして位置づけ、大きな政策転換を図った。その一環として、ブレア首相は2000年3月から「ワーク・ライフ・バランス・キャンペーン」を開始すると発表した。
・政府は、働き方の見直しに関する取り組みに合わせて、「ワーク・ライフ・バランス」を支えるサービスとして、子育て環境の整備も行っている。1999年より開始された「Sure Start」プログラムもその1つである。このブログラムの対象は14歳以下のすべての子供(16歳以下の障害児を含む)と親(妊婦も含む)であるが、とくに就学前の支援について重点を置いている。
・2004年12月に、政府はいわゆる「子育て支援10カ年計画」(親には選択肢を、子供の人生には最善のスタートを)を発表した。

石田麻紀「ロンドンオリンピック」『自治体国際化フォーラム』2007年12月号。
・ロンドンオリンピックのもたらすもう1つのもの、「具体的な問題解決の加速」は、Stratfordを含む、2.5平方kmのオリンピックパークが建設される、ロンドン東部のLower Lea Valleyが対象である。この地域は、ロンドンの中のみならず、イギリスの中でも最も「再生の余地のある」地区の1つである。StradfordからCanary Wharfにかけて南北に渡る地域で、ロンドン中心部から東へ3マイル、15エーカーほどの地域である。雇用、住宅、健康など多くの問題を抱えている。
・大会後は、オリンピックパークは野鳥が集まる樹木豊かな都市公園となり、Lower Lea Valleyの緑の量が一気に2倍となる。鉄道の利便性も飛躍的に増す。また、歩道および自転車道が、ロンドンや他の地域からのネットワークの一環として整備される。選手村は9000戸以上の一般人に手の届く価格の住宅となるほか、学校、地域の各種施設、レストランやカフェがつくられる。多くの雇用も生まれる。国中、世界中から人が訪れたくなるまちとなる。(覚書注:なんという受け売り文章! パンフレットからの転載か。)

藤野健「ロンドンにおける混在賦課金制度について」『自治体国際化フォーラム』2007年12月号。
・ロンドンにおける混雑賦課金制度(以下、コンジェスチョン・チャージ)は2003年2月に導入された。つまり、2008年2月には丸5年を迎えようとしていることになる。この間、料金の改定や対象地域の拡大など、いくつかの制度変更があったが、基本的なスキームは導入当初から変更なく現在に至っている。
・コンジェスチョン・チャージは、ロンドンの中心市街を走行する車1台について1日八ポンドの料金を課すという制度である。賦課されるのは、休日を除く月曜から金曜の午前7時から午後6時までに対象となる地域内を進行した自動車である。
・(コンジェスチョン・チャージの実施主体であるロンドン交通局が、その効果を検証するために発行している報告書の)直近の第5回報告書は2007年7月に発表されており、その中には同年2月に行なわれた対象地域拡大後の効果憲章も既に含まれている。以下がその骨子である。
・2006年に当初からの対象地域(セントラル・ゾーン)に流入する交通量は2002年比で21%減少し、渋滞は同8%減少している。
・しかしながら前年比では、域内の交通量が減少したにもかかわらず、渋滞は増加した。これは主にバスレーン・歩道・自転車道の整備による一般車道の減少、および整備のための道路工事の増加などによると考えている。そのおかげで、交通事故は減少し、バスの運行状況は改善し、歩行者と自転車の通行環境も改善した。
・2006年度の賦課金による収入は1億2300万ポンド。この収入は公共交通、特にバスサービスの改善のために精力的に投資された。
・ロンドン商工会議所は、一部の商店や企業において、制度導入による買い物客の減少に伴う売り上げ減と増大した配送コストのために深刻な影響を受けている、と報告している。また、自動車の使用に課金する割には公共交通の料金がたかい(現在地下鉄の初乗りは4ポンド)という市民の声も多く聞かれる。
・リビングストン市長は、2006年11月に、二酸化炭素を多く排出する車種に対する賦課金の額を、現行の8ポンドから25ポンドに引き上げる案を発表した。また、逆にハイブリッド車のような低公害車は無料にし、それ以外の車は現行どおり8ポンドで据え置くとしている。実施時期は、案発表時には2009年もしくは2010年とされていたが、その後前倒しになり、現在は2008年と予定されている。
・この意味するところは、コンジェスチョン・チャージは、当初考えられていた渋滞の解消・公共交通(バス)の改善という目的に、今後は環境改善・気候変動対策という新たな目的を加えて、環境政策の一環としての側面を併せ持つ形で運用が続けられていくということである。

イルメリン・キルヒナー「地域レベルの経済開発と経済再活性化」『自治体国際化フォーラム』2007年12月号。
・イギリス全体で見た場合、スコットランドとウェールズに対して実施された分権が両地域の発展と再生を促す結果となったため、かえってイングランド内部での分権が遅れているという事実が今まで以上に浮き彫りとなってしまっている。
・地方分権を進めるための代替案として「都市地域」の形成という新しい構想が政府内部や外部シンクタンクによって導入され始めてきている。「都市地域」とは、「仕事・買い物・医療・教育・娯楽などによって人々を引きつける、都市を核とした広い領域」とでも定義されるべきものである。

アンドリュー・スティーブンス「地方自治体と反社会的行動について」『自治体国際化フォーラム』2007年12月号。
・「プレイス・シェイピング」とは、管轄地域において、自らの政策が生んだすべての結果に対する責任を引き受け、自らの政策による住民の福利に対する影響とともに、地域全体に対する目に見える影響も考慮するという地方自治体に期待される役割を意味する。
・「プレイス・シェイピング」というコンセプトは、地方自治体は住民に住みよいまちを提供すべきであるとの考え方から生まれており、住民の福利に対する犯罪の影響は、「住みよいまち」であるかを判断する大きな要素となる。特に、近隣への迷惑行為などの「反社会的行動(anti-social behaviour)」は、従来は警察だけの案件であったのが、過去10年間の労働党政権下で、地方自治体の最優先課題へと変化してきている。
・「2003年免許法(Licensinb Act 2003)」によって、以下の4つの義務が地方自治体に課された。1. 犯罪、暴力行為などの防止、2. 地域の治安維持、3. 公共の場での迷惑行為の防止、4. 子供に害を与える行為の防止。
・地方自治体が反社会的行動に取り組む上で主要な根拠となるのは、「1998年犯罪騒乱法(Crime and Disorder Act 1998)」であり、地方自治体が反社会的行動を取り締まる権限を初めて明確に示した。
・地域の美化はコミュニティの安全を守る上での重要な要素であるとの政府の判断から、同法は後に、「2005年清潔近隣環境法(Clean Neibourhoods and Enviroment Act 2005)」として改正された。
・反社会的行動への対応で舵取り役を務めているのが、中央政府による反社会的行動の減少に向けた戦略プラン「リスペクト計画」である。ブレア首相が重要政策としてまとめた同計画の目的は、「地域の住民がお互いを尊重し、反社会的行動はまれにしか起こらず、起こったとしても効果的に対処され、住民が安心して暮らすことのできる社会をつくるために、中央政府、地域機関、地域コミュニティ、そして最終的には住民の一人一人が協力して取り組む」ことの実現であった。

「欧州経済・金融市場の概況」みずほ総合研究所『みずほ欧州経済情報』2008年1月号。
●英国経済
・BOEは2年4ヶ月ぶりに25bpの利下げを決定。金融市場の逼迫感が強まった中、景気・物価見通しへの下振れリスク増大を重くみて、全会一致での利下げを決定。年明け後も英景気の減速が続く見込みであり、次回インフレレポート発表に合わせ、追加利下げが実施されると予測。
・12月5〜6日の金融政策委員会(MPC)では全会一致で25bpの利下げが決定された。11月の据え置き決定(7対2)から一転した決定である。
・議事録によれば、金融市場の混乱による実体景気への影響を重く見ている姿勢がうかがわれる。利下げ幅について議論がされており、大幅利下げは先行きのインフレ懸念を高めるとの結論から25bpの利下げ決定となった。
・住宅市場では、11月の住宅価格は代表的な指数(Halifax、Nationwide)が共に前月比下落に転じた。RICSサーベイ調査では、11月の価格見通しがマイナス46.3(前月比マイナス11.5pt)と統計開始以来の水準に低下し、同新規購入問い合わせがマイナス31.0(前月比プラス9.9pt)と弱含み、いずれも住宅市場の減速を示唆している。
・物価動向を見ると、11月のインフレ率が前年比プラス2.1%と2ヶ月連続で2%を上回った。サーベイ調査では油価、商品市況高騰の影響で川上部門の価格上昇圧力の高まりを示している。油価高止まりによって、インフレ率は今後も2%を超過する可能性が高いだろう。
・年明け後も利下げが視野に入る見通しであるが、12月に続く連続利下げはないとみている。

橋本択摩「減速懸念が強まる2008年欧州経済 潜在成長率程度(プラス2%)まで減速の見通し」第一生命経済研究所『EURO Trends』2008年1月7日。
●イギリス
・金融市場の混乱の影響により、イギリスの主要産業である金融業の活動が落ち込めば、景気全体を大きく押し下げることになる。さらに、これまでの利上げの累積効果による住宅価格の鈍化が徐々に顕在化しており、今後本格的に個人消費に下押し圧力をもたらそう。
・ただし、イギリスの11月の消費者物価指数が前年比プラス2.1%と、目標値を若干上回る程度にとどまっていることから、BOEはECBと異なり、より機動的に利下げ措置をとることが可能であり、住宅市場のハード・ランディングは避けられると見込まれる。さらに2008年通年ではプラス2%を若干上回る程度の成長となろう。
・イギリスにおいて金融業は主要産業であり、経済成長への寄与はかなり大きい。金融市場の混乱の影響により金融業の活動が落ち込めば、景気全体を大きく押し下げることになろう。11月のサービス部門CIPSは51.9と9月値56.7から2ヶ月で5ポイント近くも継落し、拡大と縮小を分ける50も視野に入ってきている。
・これまでの利上げの累積効果による住宅価格の鈍化が徐々に顕在化しつつある。例えば11月のハリファックス住宅価格(HBOS)は前月比マイナス1.1%と大幅なマイナスとなった。今後、住宅価格の下落が消費に下押し圧力をもたらし、景気のモメンタムはさらに低下すると予想される。
・こうした状況を背景に、イングランド銀行(BOE)は12月6−7日の金融政策決定会合で政策金利を0.25%引き下げ、5.5%とすることを全会一致で決定した。利下げは2005年8月以来、2年4ヶ月ぶりとなる。
・発表後のBOEの声明文は、「11月のインフレーション・レポートでの予想に沿った線で、家計や企業の景気先行サーベイが減速しつつある」と述べている。また、「金融機関の悪化に加え、家計および企業向けの信用供給の逼迫が進んでいることから、経済成長とインフレの双方の見通しに対する下振れリスクが高まった」とした。つまり、金融市場の混乱の影響が実体経済へ波及することを回避するために、早期利下げに踏み切ったものと考えられる。
・11月のインフレーション・レポートでは、実質GDP成長率については2008年前半には前期比年率プラス2%近辺まで減速する見通しを描いているが、実際にはそれを下回って推移する可能性もある。ただし、イギリスの11月消費者物価指数が前年比プラス2.1%と目標値を若干上回る程度にとどまっていることから、BOEはECBと異なり、より機動的に利下げ措置をとることが可能であり、住宅市場のハード・ランディングは避けられると見込まれる。

武田まゆみ「BTがFONと提携し、無料無線LAN環境を全英に展開」『世界の移動・パーソナル通信T&S』2007年12月号。
・公衆無線LANスポット数で英国最大のBTと、草の根的に世界中で公衆無線LANのサービス・エリアを拡大しているFONが2007年10月4日に提携を発表した。それにより、BTのブロードバンド・サービス「BTトータル・ブロードバンド(BT Total Boradband)」の加入者は、FONが全世界19万カ所以上で提供する無線LANのアクセス・ポイントを無料で利用できるようになる。BTトータル・ブロードバンドの加入者数は英国で約300万人、FONユーザは世界で50万人以上いることから、両者は世界最大の無線LANネットワークとなるとしている。
・FONでは、ユーザを3種類に区分。「Linus」は、自分の使っているアクセス・ポイントを無償で提供する代わりに、他人のアクセスポイントも無料で利用できるユーザ、「Bill」は、自身のアクセス・ポイントを有償で提供し、他人のアクセス・ポイントも有料で利用するユーザ、「Alien」は、自身ではアクセス・ポイントを用意せず、他人のアクセス・ポイントを有料で利用するユーザである。有料の場合の料金は、欧米で1日2〜3ドルの設定で、FONのビジネスモデルは現在のところ、この課金収入と専用ルータの販売が中心となっている。
・FONのサービスは、ユーザがアクセス・ポイントを開設し、自身が契約しているブロードバンド回線を第三者に利用させるモデルであるため、ISPとの間に軋轢を生むとの見方もある。その一方で、FONはこれまで、同社のサービスはADSL環境を前提としたサービスであり、ISPの付加価値を向上させるものとして、ISPとの提携を積極的に進めてきた。
・今回英国最大手のBTとの連携は、FONのビジョンの有効性を世界に示す絶好の機会となり、今後世界中のISPからの支援を獲得する布石になるかもしれない。

大宮由香「英国の金融アウトソージング規制 浮き彫りになった課題と今後への期待」Nomura Research Institute『ITソリューション・フロンティア』2008年1月号。
・2007年11月1日、英国における金融アウトソージングのルールがFSA(金融サービス機構)のハンドブック"SYSC 8"(シスクエイト)として明文化された。
・SYSC 8の基本的な目的は、障害発生時の金融システム全体への影響を最小限に抑えることである。
・SYSC 8は、FSAの特徴である原則ベースの金融監督指針となっているため(手段やプロセスではなく基本原則を表現する)、いわゆる広い定義にとどまっている。そのため、実務細則は各金融機関およびサービスプロバイダの社内規定で定めなければならない。

「地方自治体ビジネス成長インセンティブ(LABGI)スキーム」自治体国際化協会『CLEIR REPORT』314、2007年12月10日。
●概要
・本レポートで紹介する「LABGI(Local Authority Business Growth Incentives)スキーム」は、英国政府が推進する地方分権に向けた様々な施策の中で、特に「地域経済の活性化」を図るために導入された新しいスキームの1つである。当スキームは、地方自治体が、地域の企業、地域開発公社(RDA)および近隣の自治体などの重要な団体と恊働していくための財政的なインセンティブを与えるものである。
・スキームの内容を簡単に説明すると、地域経済の成長比率を非居住者用資産(事業用資産)に対する国税である「ビジネス・レイト」の課税評価額の増減によって判断し、経済成長による税収の一部の一定の算定基準によって使途を限定しない財源として自治体に交付するというものである。また、通常「ビジネス・レイト」は、政府から各自治体の成人人口数に応じて配分されているが、この交付金はそれとは別に、全く新規の財源として各地方自治体に交付されるものとなっている。
●第1章 LABGIスキームの導入経過と概要
・LABGIスキームとは、地方自治体にビジネス成長インセンティブ・スキーム(Local Authority Business Growth Incentives Scheme)の略で、2002年11月に発表された2003年度予算編成方針(Pre-Budget Report)の中で初めて言及されたものである。
・政府は2度にわたって協議書を発表し、その後の試行を含め、地方自治体からの意見を聴取し、スキームの修正を行なった上で、2005年4月に当初の予定通り、LABGIスキームをスタートさせた。フィル・ウーラス(Phil Woolas)地方自治担当大臣は、2005年7月に最終的なスキームを発表した際、以下の5つの原則を掲げている。
・1. 地域の経済成長を最大化するために、全ての自治体にインセンティブがもたらされるべきである。2. 自治体は、地域で優先課題に取り組むための追加資金を得られるべきである。3. このインセンティブは、国内全ての地域に経済成長をもたらし、地域間に存在する経済的な不均衡を縮小するという国の目標に合致すべきである。4. 利益の配分は平等なものであって、自治体のおかれた環境ではなく、業績に応じて配分されるべきである。5. スキームはわかりやすく、その仕組みは透明性の高いものでなければならない。
・LABGIは、2001年に地方自治白書、「強い地域リーダーシップ 質の高い公共サービス」のなかで明示した地方自治体に対するアプローチにのっとったものである。これは地方自治体の経済成長を促し、成長に応じた報酬を与えるインセンティブ・スキームである。このスキームから得る歳入の使途については限定されておらず、自治体がこのスキームから更なる利益を得るために地域の経済成長をいかに最大化するかについても自由裁量で決めることができる。
・現在、地方自治体の財政構造は、経済成長に果たす地方自治体の貢献を認め、報酬を与えるのに十分な構造とはなっていない。また、地方自治体は経済開発のために多大なコストを費やしているにもかかわらず、その経済開発が生み出す歳入増加からの利益を享受できずに、さらに、1990年以降、ビジネス・レイトの歳入は中央政府の国庫に集約されてきたため、地方自治体は直接的にその地域で生み出された利益を享受できていない。
・イングランドとウェールズにおいて、地方自治体は今後3年間に渡り、10億ポンドの財源を得ることができる。これは純粋な追加資金であり、その使途については限定されていない。また初年度の実施後に、ライオンズ卿によって発表される報告書(Lyons' Report)の内容およびスキームの実績を、公平さとインセンティブの観点から再検討を行なう。(脚注:Lyons' Report マイケル・ライオンズ卿(Sir Michael Lyons)が政府から依頼されて行なっている、「イングランドの地方自治体と地方財政に関する調査」の報告書で、現時点では2007年に公表される予定。InquiryまたはReviewとも呼ばれる。)
・ビジネス成長は地方自治体の暦年の評価額の増加額によって計測される。LABGIによる歳入は、各会計年度の最終四半期に一括払いで支払われる。これは、評価庁(VOA)が提供する課税評価額の前年比増減が基本になる。スキームは2003年地方自治体法の31条のもと、使途を限定しない補助金として運営管理される。したがって、自治体はこの収入を自由裁量で地域の優先時効について使うことができる。
・各自治体の開始点は2004年の12月31日時点での課税評価額(Reteable Value:RV)である。評価庁(VOA)は副首相府(ODPM)に対して、毎年格付けリスト(Rating List)を提供する。自治体のRVの数値は、抗議・不服の申し立てによって減額されることはないが、空き家、または一部未使用不動産の税額軽減(Relief)については、自治体の通常のNNDRリターンの最新版、すなわち当該年度のNNDR3フォームの監査データを使って調整される。2005年の開始RVは最近の再評価データを使用し、再評価を考慮に入れてNNDR3税額軽減の数値も調整される。
・各自治体はLABGIから利益を受けるために達成しなければならない課税評価額の成長目標レベルを有し、それをフロアと呼ぶ。フロアは、スキーム開始時点での課税評価額に対し、その自治体のベースライン成長率から国内調整係数(NAF)を引いたものを掛けたものである。自治体のベースライン成長率は、各自治体の基本的な成長率を意味するもので、国内実績成長モデルを使って計算されており、現実的には、過去8年間の年平均実質成長率が用いられている。
・その地域が受け取ることのできる金額を計算するために、フロアを超えた分のビジネス・レイト税収額について70%の掛け率が適用される。この倍率を適用した残りの税収は、従来どおり全ての地方自治体と共有することができるよう、中央政府の国庫に納められる。
・各地方自治体に対し、毎年受け取り可能な税収の最高額を示す上限が設定され、上限を超える税収については全ての地方自治体に配分することができるよう、従来どおり中央政府の国庫に納められる。しかし、その上限を超えた分の税収については、その自治体の翌年の成長目標に反映される為、その自治体から失われたことにはならない。上限は、地方自治体の地方交付金の計算に使われる公式支出配分額(FFS)の一部である環境、保護および文化サービス(EPCS)を修正して設定される。
・2年目以降の課税評価開始額は、1年目の開始額に1年目のフロア額を追加する累積型となる。これにより、本スキームがインセンティブの効果を維持していくものと期待される。しかしながら、このスキームから交付金を受けることができなかった自治体が、将来的に引き続き交付金を受けることができないといった状態が続かないようにするため、それらの自治体については、前年の課税評価開始額に前年の実績成長(もしくは減少)分だけ加算(または減算)されることになる。直近の協議におけるフィードバックをみると、この課税評価額の再設定案は本スキームへの前向きな変更点として受け止められているようである。
●第2章 LABGIスキームの導入結果
・2006年2月、LABGIスキームによる初の交付金が、278の自治体に対して交付された。
・1年目の結果、278(34のカウンティーおよび244のディストリクト、ユニタリー、ロンドン区)の自治体に対して、総額1億2660万ポンド(約290億円)が使途を限定しない資金として交付された。なお、自治体の年間平均実績成長率は2.0%となり、過去8年間の平均値である2.17%を下回っている。
・ベスト20自治体を見ると、ロンドンの7区以外に、マンチェスター、リーズ、シェフィールド、ニューカッスルといった8つのイングランド中核都市で構成される「コア・シティーズ(Core Cities)」のメンバーが4つ含まれているのが特徴としてあげられる。
・また、地域別には、イングランド北部3地域(北東、北西、ヨークシャー&ハンバー)が、11自治体と過半数を占めているのに対し、イングランド南部地域(南東、南西地域)は、全く含まれていない点も特徴である。
・地域別の比較を見ると、交付を受けた団体の割合は平均72%となっているが、経済の南北格差が指摘されているとおり、比較的経済成長率の低い自治体が多いイングランド北部地域(北東、北西、ヨークシャー&ハンバー)での獲得率が高く、比較的経済成長が高い自治体の多い南部地域(ロンドン、南東地域)での獲得率が低くなっていることがわかる。
・覚書注:自治体による成長への取り組みが的確に反映されるのか。対策を講じることで、すぐに成長するわけではない。1年で結果がでるような短期的な結果を追い求めてしまわないだろうか。必要な成長は長期に持続する成長である。
・覚書注:大規模開発が必要な地方と、英国の中心部では、成長に対する対策と結果が非常に異なる。にもかかわらず、同一の枠組みであるという点は公平とは言えない。
●第3章 自治体の具体的な反応
・ロンドン区の1つであるウェストミンスターは、ピカデリー・サーカスなどロンドンの中心商業エリアを含み、また北部には閑静な住宅街を抱えるなど、金融の中心であるシティと並び、ロンドンを代表する区となっている。1年目のスキームでは、全国トップとなる380万ポンド(約8億7,400万円)の交付金を手に入れている。
・グロースター市は、イングランド南西地域にあり、観光地としても有名な、コッツウォルズの西方に位置している。ロンドンからは列車で3時間程の人口11万人の典型的な地方都市である。1年目のLABGIスキーム交付金は、358,000ポンド(約8,200万円)で、これは全278交付団体のうち93番目の金額となっている。
●第4章 LABGIスキームの2年目の実施結果(速報)
・2007年2月27日、「2月中にLABGIスキームの結果を発表する」としていた政府から、2年目のLABGI交付金について発表が行なわれた。その結果、今回328の自治体に対し、総額3億1,600万ポンド(約727億円)が交付されることになった。今回の交付対象自治体数は、前回の278から50増加し、イングランドの自治体の約85%を占めるに至っている。なお、2年目の自治体における年間平均成長率は2.5%となり、1年目の2.0%および平均実質成長率(1995〜2003年)の2.17%をそれぞれ上回っている。
・1年目2位であったマンチェスターが2位以下を大きく引き離してトップとなり、1,770万ポンド(約40億円)のLABGI交付金を獲得している。また、ザク年トップのウェントミンスター・シティ・カウンシルは、区の事前予想(550万ポンド)を大幅に上回る1,020万ポンド(約23億円)の交付金を受け取ることになった。
・地域別には、イングランド北部(北東、北西、ヨークシャー&ハンバー)が10自治体とベスト20の半数を占めているのに対し、イングランド南部地域(南東、南西地域)では、プリマスが12位にランクインしているのみである。

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benyamin ♂

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