覚書 080131

『経済マンスリー 西欧』2008年1月18日。
●英国
・雇用については、11月の失業率が2.5%と依然、低水準にあり、雇用情勢は良好である。しかし、雇用は景気の遅行指標であり、今後景気動向に応じて、悪化する可能性が高い。
・消費信頼感指数については12月も、前月より0.9ポイント低下し、マイナス5と、2ヶ月連続で悪化した。11、12月の消費者マインドの悪化幅は大きく、個人消費の先行きには注視する必要があろう。
・英国の住宅価格は12月に前年比プラス6.4%と4ヶ月ぶりに反転上昇した。前月比でみても、11月までに3ヶ月連続して下落していたが、4ヶ月ぶりに上昇に転じた。ただし、これをもって住宅価格が加速に転じることは、ほとんど期待できない。実際に、銀行の貸出姿勢は、住宅ローンを含め全般的に一層厳格化しており、住宅ローンの承認件数は前年水準を大きく下回っている。こうしたことから、住宅価格については、当面減速傾向が続くであろう。
・BOEは10日の金融政策委員会で政策金利であるレポ金利の据え置きを決めた。(中略) 12月にFRBやECBなど5カ国の中銀が、国際協調による緊急流動性対策を発表したが、その対策の効果を見極めたいという思惑があったとも考えられる。ただし、マクロ経済の減速トレンドが変化したわけではなく、過度の景気減速を回避するために、2月の金融政策委員会では25bpの 利下げが実施されるであろう。

城野敬子「「子供達のための計画(Children's Plan)」をめぐるイギリスの世論」日立総研『欧州レポート』2008年1月29日。
・日本の教育の方が効果的だと感じるのは、算数。小学校3年生の娘の宿題を見ていると、これまで学習した内容とは脈絡なく、突然に分数や小数の宿題が出て「なぜ突然こんな内容を?」と思うことがある。また「この図形の学習は昨年もやったはずなのに、同じことをなぜ今年も習うのだろう?」ということもあり、教えられる内容に段階的な流れが内容に感じられる。日本国内ではさまざまな問題が指摘されているとはいえ、イギリスに比べれば、日本の小学校の算数教育は段階的で系統立っていると思う。
・2007年12月、政府はイギリスを子供が育つのに世界で一番良い場所にすることを目指した今後10年間の戦略として「子供達のための計画」を発表した。この計画に沿って最初の3年間で10億ポンドが投じられる予定である。この「子供達のための計画」は次のようなことを目指している。1. すべての家族、とりわけ幼い子供のいる家族への支援の改善、2. 世界最高水準を学校で達成するための取り組みの推進、3. すべての親が子供の学習に参加、4. 子供に学校外でのより多様な活動を提供し、より多くの遊び場を提供。
・今回の戦略のポイントは、政策の焦点を「教育」から「子供」に移したことだと言われている。ブラウン首相就任に伴い2007年6月に行なわれた省庁の改正でも、教育問題を担当するのは「子供・学校・家族省(DCSF:Department for Children, School and Families)」となり、子供のおかれている環境の改善を目指す視点からの政策という方向性がすでに打ち出されていたが、「子供達のための計画」はこの方向性を具体化したものと言えよう。
・しかし、マスメディアの報道を見る限りでは、今のところ、この戦略の有効性について懐疑的な意見が多い。この計画によって、これまで以上に初等教育に対する国家の介入が強まることに批判の声があるだけでなく、「教育」に代わって「子供」を戦略の軸に据えることで、教育の枠を超えて子供の生活全般に国家が介入することを警戒する声が強い。
・福田誠治『競争しても学力行き止まり イギリス教育の失敗とフィンランドの成功』朝日新聞社、2007年10月25日。

橋本択摩「Euro Weekly(1/21〜1/25) 景気先行サーベイ、期待指数は改善」第一生命経済研究所『EURO Incicators』2008年1月28日。
・イギリスの10−12月期実質GDP成長率(速報値)は前期比プラス0.6%、前期比プラス2.9%となり、前期からやや減速したものの引き続き潜在成長率(プラス2.5%)を上回る成長となった。2007年通年では2006年対比プラス3.1%と高い伸びとなった。産業別にみると、製造業の伸びが前期比プラス0.3%と依然として低い伸びとなった一方、建設業、サービス業がともに同プラス0.7%となった。サービス業については、サブプライム問題に端を発した金融市場の混乱を受けて、企業向けのサービス業・金融業が同プラス0.4%(7−9月期同プラス1.3%)と大きく伸びを鈍化させたものの、運輸・通信業などその他のサービス業がそれを補った格好だ。
・2008年入り後のイギリス経済は、さらに減速を余儀なくされると見込まれる。ライトムーブの調査による1月のイギリス住宅価格は前月比では3ヶ月連続の下落となっており、住宅価格の下落がもたらす消費の下押し圧力は今後強まる見通しである。キングBOE総裁は1月22日の講演で、5.5%の政策金利は需要を圧迫しているとの見解を述べている。1月9−10日のBOE金融政策決定会合の議事要旨によると、利下げを支持したのはブランチフラワー委員ただ1人だったようだが、2月6−7日に開かれる決定会合では全員一致での0.25%利下げが決定されよう。

圓佛孝史「「プリンシプルベース」の監督・規制手法における「もう1つのプリンシプル」」『みずほ総研論集』2008年1号。
・一般に「プリンシプルベース」の監督・規制アプローチとは、政策を通じて達成しようとする結果を「プリンシプル(基本原則)」として示し、その結果を達成する手法・プロセスを金融機関に委ねる結果志向の方法のことである。「プリンシプル」では、金融機関が業務遂行上守るべき内容が一般的な表現で示される。結果志向であることの裏返しとして、同じ結果を達成するのに複数の手法があることを認めており、金融機関の上級経営層は、自らの業務内容に応じて実効性のある手法を選択・実施する責任を負うと同時に、
・「プリンシプルベース」に対峙する概念は「ルールベース」で、一般には個々の状況に応じた詳細な規制(ルール)の制定を通じて政策目的を達成しようとする手法を指す。「ルールベース」の場合、政策目的を達成するための具体的なプロセスについて詳細に規定される傾向が強いと言われ、金融機関が何をすれば良いか(何をしてはいけないか)が具体的に記述される反面、経営上の自由度も限られることになる。
・こうした概念上の区別はできるものの、実際の監督・規制アプローチが純粋な「プリンシプルベース」や「ルールベース」になるとは考えにくく、「プリンシプル」と「ルール」が1つの規制体系に混在するかたちになると考えられる。したがって、実務的には、両者の二者択一ではなく、個々の局面に応じて「プリンシプル」と「ルール」をどう使い分けるかというバランスが問われることになる。
・英国で金融機関や金融市場に対する監督・規制活動に責任を負うFSAは保証有限責任会社(company limited by guarantee)という形態の民間会社である。組織上は、86年金融サービス法の下で監督・規制機能を持っていた証券投資委員会(SIB)の改組により97年に発足し、新たな枠組みを定めた「2000年金融サービス市場法(FSMA)」の制定を受けて2001年12月から本格的に稼働している。
・FSAは「金融機関・市場に対する規制・監督」という公的機関を担う民間会社という性格を持つ。政府の所管官庁は財務省であり、FSAは財務省に対する年次報告書の提出などの義務を負うが、法務省は法制化を通じた大きな枠組みの構築に責任を持ち、確立された枠組みの中でFSAが日々の活動を行う、という関係がお互いに確認されており、基本的にFSAは運営上の独立性が確保されている。
・FSAの業務運営に必要な資金は、監督下にある金融機関から徴収する手数料や課徴金ですべて賄われており、手数料の徴収方法や資金の具体的な使い方について、市中協議その他の手段を通じて、金融業界からも納得を得られるようにしている。
・英国で最も注目されている最近の動きは、「プリシプルベース」への傾斜を強める方針を打ち出していることだろう。ただし、1つ注意しなければならないのは、FSAは、「ルールベース」から「プリンシプルベース」に大きく舵を切ろうとしているのではなく、これまで行なってきた「プリンシプルベース」的側面を持つアプローチを一段と強化しようとしている、ということである。
・FSAが「プリンシプルベース」への傾斜を強める背景には、投資商品の不適切な販売・勧誘など、詳細なルールが存在した環境下での過去の経験を踏まえ、「ルールベース」中心のアプローチを通じた規制目的の達成には限界があり、個々の状況に最適な手段・プロセスを判断する役割を、当局ではなく事業内容を熟知した金融機関に委ねる方が目的達成という観点で適している、という判断がある。
・FSAの監督・規制アプローチにおける「運営面のプリンシプル」とは、FSAの役割の明確化や説明責任、公正さの確保策などが図られるような法律上の枠組みの下で、「失敗ゼロ」からの脱却を前提とした上で「リスクベース」「費用・便益の規律」「対話の重視」などで特徴づけられる行動上の規律を機能させるものであるといえる。金融機関が守るべき「プリンシプル」や「ルール」のバランスの最適化や金融機関による自主性・自律性の発揮も、こうした「運用面のプリンシプル」が機能し、関係当事者の暗黙の了解事項となる中で行なわれている話であって、英国はこうした全体像を持つアプローチを通じて高い国際競争力を持つバランスの取れた規制環境の実現に取り組んできたと考えられる。
・覚書注:憲法に比重を置き、各法律の比重を下げていくような法体系である。一般的な内容の憲法では個々の事例に対応できないために、それぞれの法律があることを念頭に置けば、プリシプルベースにしたところで、長期的にはルールベースとなっていくだろう。その場合、ルールは、法律で言えば判例のようなかたちで積み上がっていくことになるだろう。結果的には実質が変わらないようにも思える。憲法に該当するプリンシプルを今一度確認して、明確に位置づけた点が改革の本質の1つだろう。
・覚書注:その一方で、規制当局が規制対象の発展に対応できなくなった状況が背景にあることも指摘されるべきである。したがって、ルールベースからプリシプルベースへという流れは表象に過ぎず、規制主体が規制当局のFSAから規制対象の金融機関に移行されるという点が実質的な改革内容である。金融機関が自分で自分を規制するという手法が成功するかどうかは、英国金融にとっても注目すべき論点であるし、規制改革として見れば、普遍的な政策論としても議論されるべきであろう。

堀江奈保子「年金支給開始年齢の更なる引き上げ 67歳支給開始の検討とその条件」『みずほ総研論集』2008年1号。
・各国の年金制度(2006年)
・日本
 保険料率 一般被用者:14.642%(労使折半)
      自営業者など:月額13,860円
 平均支給月額 16.9万円
・米国
 保険料率 12.4%(労使折半)
 平均支給月額 963ドル(約11.2万円)
・英国
 保険料率 一般被用者:23.8%(本人:11.0%、事業主:12.8%)
 平均支給月額 365.08ポンド(約7.8万円)
・ドイツ
 保険料率 19.5%(労使折半)
 平均支給月額 職域年金:823ユーロ(約12万円)
        労働者年金:623ユーロ(約9.1万円)
・覚書注:日本の給付水準は世界では高水準にある。負担率はアメリカに次ぐ低水準である。年金に限って言えば、日本は超低負担高福祉である。このような制度が維持できるはずがない。負担を上げるか、給付水準を下げるしかないだろう。
・年金の支給開始年齢を引上げる条件の2つ目としては、支給開始年齢までの雇用の確保がある。前述の通り、支給開始年齢が引上げられても、支給開始年齢までの雇用が確保され、高齢者が就業しやすい環境が整っていれば、年金支給までの稼働所得が得られることになる。
・日本では、定年年齢を定める場合には60歳以上であることが求められているが、2001年度から年金の満額支給開始年齢が段階的に65歳まで引上げられているため、2006年度から段階的に65歳まで雇用を確保することが企業に義務付けられた。しかし、60歳以降の雇用は、必ずしも希望者全員でなくてもいいことや、フルタイム勤務が義務づけられているわけではないため、60歳で定年退職する労働者が多い企業もある。
・英国は、欧州のなかでも年金や失業給付の給付水準が低いうえ、年金の繰上げ支給制度がなく、繰下げ支給時の給付増額率が高いため、高齢者の就労意欲を高める社会保障制度となっている。このため、欧州諸国のなかでは、比較的高齢者の就業率は高い。(覚書注:英国で高齢者が就労するのは、労働意欲が高められた結果ではなく、年金の給付水準が低いから生活のために働かざるをえないためである。もっとも、働けるうちは働くべきだとの意見もあろうから、英国のこうした制度がダメだと断じることはできない。)
・ただし、疾病や障害のため就労することができない者に支給される就労不能給付については、期間に制限がなくこれを受給することができるため、一度これを受給し始めると再就職しない者が多く、高齢者の早期引退が促進されるといわれている。そこで、就業の可否の審査要件を定め、就職の可能性がある者に対しては、訓練や就職活動の支援プログラムを行う改革の実施が予定されている。

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benyamin ♂

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