覚書 080214

橋本択摩「Euro Weekly(1/28〜2/1) 実質所得の低下により消費が低調」第一生命経済研究所、2008年2月4日。
・イギリスの1月ネーションワイド住宅価格は、前月比マイナス0.1%と3ヶ月連続のマイナスとなり、前年比ではプラス4.2%と前月同プラス4.8%から鈍化した。1月製造業PMIについても50.6(前月52.5)と、ユーロ圏と異なり大幅低下した。2008年入り後のイギリス経済はさらに原則を余儀なくされ、2月6−7日に開かれる決定会合では0.25%利下げが決定されよう。

三菱UFJ信託銀行「Monthly Economics」2008年2月号。
(覚書注:図表資料が羅列されている。)

藤森克彦「インタビュー 年金制度を安定させる智恵と工夫 国際比較のなかから」みずほ情報総研。
・生涯でもらう年金の給付額に対する、生涯で支払った保険料負担額には世代間で格差があります。しかし、格差があるからといって、必ずしも不公平とは限りません。なぜなら、現代の70歳以上の世代の多くは、年金制度が本格的に適用されなかった自分の親の扶養を私的に行なってきました。つまり、年金保険料という形で負担していなくても、私的に負担をしてきたのです。私的に親の世代を行なってきた世代と若い世代の間で、単純に保険料負担と給付の格差を論じるのは、ベースになっている基準が揃っておらず、一面的な議論だと思います。(覚書注:結果論でしかない。同じ論理で言えば、親の扶養を行なっている現役世代に対する保険料の軽減、あるいは給付水準の引き上げが検討されるべきである。そういう提言は本論には含まれていないので、実際のところ、高負担低給付で我慢しろと言うための詭弁に過ぎない。)
・抜本改革の議論は、現役世代の3つ目の不安である「払った保険料に見合った給付を将来受けられるのか」に関係していると思います。世論調査では、「働いているときに納めた保険料の実績に応じた年金額が給付されるのかなど、負担と給付の関係が明確な仕組みであった方がよいか」という質問に対して、現役世代の8割が肯定しています。
・ところで、現役の公的年金制度は、支払った保険料の対価として年金を受けられるという「保険原理」の側面をもっています。つまり、負担能力に応じて拠出し、必要性に応じて受給するという社会保険の原則があり、所得再分配が行なわれています。
・例えば、厚生年金ですと、賃金に一定の保険料率が課せられていますので、現役時代に高所得であった人ほど多くの保険料を支払っています。他方、給付をみますと、報酬比例で支払われる部分と、定額の基礎年金部分があります。基礎年金部分は、支払った保険料に関係なく定額給付となっていますから、高所得者層から低所得者層に世代内で所得再分配が行なわれています。
・また、専業主婦は、国民年金の第3号被保険者となって、個人としては保険料を納めていないのに年金を受けとることができます。夫が加入している厚生年金や共済年金の加入者全体で第3号被保険者の保険料を負担しているからです。
・さらに、賦課方式の下、現役世代から高齢世代に仕送りがなされていますが、後世代ほど高齢世代への仕送り負担が重くなっています。
・このように、公的年金では世代内や世代間で所得再分配が行なわれています。世代調査からすると、多くの国民は、私的年金と同じように支払った保険料は自分のため以外には使われるべきではないと考えているように思われます。これが公的年金に対する不満であり、「負担と給付を明確にしてほしい」という意見につながっているように思います。
・もし負担と給付の関係を明確にするなら、現行制度を抜本的に改革して、スウェーデンやポーランドの年金制度である「概念上の拠出建て方式(NDC:Notional Defined Contribution)」に変えていく必要があるだろうと思います。
・ポーランドの年金制度を例に説明していきます。まず保険料率19.52%を労使折半で負担し、長期に固定します。保険料の徴収は、ZUSと呼ばれる社会保険庁が行ないます。そして、保険料収入のうち12.22%がNDC(概念上の拠出建て方式)に振り分けられ、7.3%部分がFDC(Funded Defined Contribution:拠出建て積立方式)にいきます。
・NDCの資金の流れは賦課方式と同様であり、保険料は現在の高齢者の給付に充てられます。ところがNDCでは、各自が支払った保険料を「NDC個人勘定口座」に記録していきます。しかも、資金は高齢者の給付に回って存在しないにもかかわらず、みなしで利子までつけていきます。積立金も運用益も実際には存在せず「概念上」想定したにすぎないので、「概念上の拠出建て制度」と呼ばれているのです。(覚書注:しっくりこない制度である。日本における二階建て方式と何が違うのだろうか。NDC個人勘定口座が厚生年金に該当する。また、「概念上」という扱いにも違和感を感じる。年金の個人勘定化に向けた過渡的措置ではないだろうか。)
・退職時になると、NDC個人勘定口座に記録された保険料拠出総額と運用益総額の合計を、退職時の年齢から予想される平均余命で除して、年金額が決定します。平均余命が伸びれば、年金額が減るので、長寿化のリスクも高齢者の給付減少によって吸収されます。ただし、支給開始年齢は、男性65歳、女性60歳以降であれば自由に選べるようになっています。年金額を増やしたければ、平均余命が短くなるように、働き続けて引退時期を遅らすことが可能です。(覚書注:年金額は増えるわけがない。合計金額は一定である。支給開始年齢を遅らせると平均余命までの期間が短くなり、その短縮した期間で合計金額を割るため、毎回の給付額が増加するのである。)
・現役世代の所得水準が低く、NDCとFDCから得られる年金額が、政府の保証する一定水準を下回る場合は、「最低保証年金」と呼ばれる税財源をベースにする制度によって差額が補填されることになっています。
・税財源をベースにする部分では、所得再分配が行なわれ、保険料で運営するNDCとFDC部分では拠出尾と給付の関係が明確になっているわけです。税部分と保険部分の役割分担が明確で、この点は魅力的ですね。
・基礎年金を税方式にすることの課題としては、第4に、保険料方式のもとでは労使折半で保険料を支払ってきましたが、税方式にすれば、事業主は保険料を支払う必要がありません。社会保障負担が高まっているときに、企業が保険料負担を免れることは適切ではないとの見方もあります。(覚書注:税方式導入は企業負担の軽減をねらいの1つとしている。導入するのであれば、保険料分の増税を企業に要求する措置が伴わなければならない。)
・イギリスの年金改革で興味深いのは、主要先進国はどこも高齢化による公的年金負担の高まりに苦しんでいるのに、イギリスは90年代から主要先進国の中で唯一、GDPに占める公的年金給付額の割合が5%という低い水準にあり、しかも将来的にみても2050年まで横ばいに推移していくと推計されていることです。
・イギリスの高齢化も、日本ほど急ではないけれども緩やかに進んでいきます。しかし今後も低い公的年金負担が維持されていきます。これには3つの要因があります。
・1点目は、適用除外制度です。イギリスの年金制度も2階建て構造になっていて、1階部分に自営者と被用者を対象とする基礎年金があって、2階部分に被用者を対象とする付加年金があります。そしてイギリスの公的年金の特徴は、一定水準以上の私的年金(企業年金と個人年金)に入っている被用者であれば、公的年金の2階部分への加入が免除される「適用除外制度」があるのです。この制度によって、被用者の6割が公的年金の2階部分の加入を免れているのです。この結果、公的年金負担が低位に推移し、高まっていかないのです。
・2点目は、80年代から世界に先駆けて「公的年金のスリム化」に向けた改革が行なわれてきたことです。サッチャー政権、メジャー政権といった保守党政権下で、給付水準の削減、支給開始年齢の引き上げなどが行なわれてきました。
・3点目として、ナショナルミニマムの考え方です。イギリスの公的年金は、高齢者を貧困から守るために、最低限の生活水準を確保していくという発想で創設されました。大陸欧州諸国の公的年金が、引退によって生活水準が激変してしまうことを緩和するという考え方のもとで作られたのとは、そもそもの成り立ちが違います。この影響を受けて、イギリスの公的年金の給付水準は、他の先進国と比較して低く抑えられているのです。
・ブレア政権の1998年の年金改革には3つのポイントがあります。1つめは、高齢者向けの特別な生活保護制度です。年金クレジットという、高齢者向けに寛容な年金制度をつくりました。2つめは、2階部分である報酬比例年金の部分を、低所得者に手厚い給付をする、「国家第二年金」に変えました。3つめは、「ステークホルダー年金」という使い勝手のよい私的年金を、官民が協力して作りました。安価な保険料で、安全性の高い枠組みを国が定めて、その運営や販売は民間企業が行ないます。いわば、政府の定めた枠組みに従った私的年金であれば、「ステークホルダー年金」という名称で、政府のお墨付きを受けた年金として販売できるようにしました。

「最低賃金引き上げを起点とする成長力強化・所得底上げへの戦略 英国の経験を踏まえたワーキングプア解消への処方箋」日本総合研究所調査部ビジネス戦略研究センター『ビジネス環境レポート』No.2007-10。
●ポイント
・英国で全国最低賃金制度の導入後も良好な経済パフォーマンスが維持された背景には、「景気回復持続と生産性向上」および「就業形態多様化と職業訓練」への包括的な取り組み。ただし、そうした政策によって所得格差の解消は困難であり、負の所得税の創設など、「就労促進的な所得再分配政策」も同時に必要なことを示唆。
●レポートの要旨
・ここにきて最低賃金の引き上げの必要性が議論されるようになってきた背景は、以下の三点。1. 「世帯主」である非正規雇用者の増加:世帯主が非正規雇用者である二人以上の世帯数は1990年の164万世帯から2006年には322万世帯へと倍増。2. 生活保護制度との逆転:これまで最低賃金は「企業の支払い能力」に配慮する形で決められてきた結果、生活の最低水準とされる生活保護水準を下回るケースが発生。3. 先進諸国で最低水準に:欧州先進国の最低賃金は、時給ベースで換算すると1,000円を超えるケースが一般的。つい最近まで、わが国とほぼ同水準であった米国も2009年夏までに四割強が引き上げられる予定。
・経済学的には、最低賃金の引き上げは、「賃金が生産性を上回る状況を生み出すことで企業業績を圧迫し、失業増などにつながる」というのが標準ケース。ただし、潜在的な労働供給が需要を上回る状況が常態化している「需要独占」の場合、賃金は生産性を下回っているため、最低賃金の引き上げは賃金増と雇用増の双方をもたらし得る。
・わが国では、正社員と非正規雇用者の間で労働市場が分断されてきたことで、最低賃金の影響を受けやすい非正規雇用者の賃金は生産性を下回る状況に。そうした状況は、産業基盤が弱くは働き口の少ない地方での大企業の工場や営業所で発生している可能性があり、大企業を中心にした高生産性セクターについては、非正規雇用者の賃金の引き上げを、雇用量を減らすことなく受け入れる余地あり。反面、地方の中小企業をはじめ低生産性部門では打撃を受ける公算大。(覚書注:視点としては面白いが、本論中にも論拠が示されていない。印象論との批判は免れないだろう。)
・全国最低賃金制度の導入後も、良好な経済パフォーマンスを維持した英国の経験が、わが国にとって持つインプリケーションは以下の通り。1. 景気回復持続と生産性向上が条件:英国で最低賃金の引き上げが失業増につながらなかったのは、景気回復が持続するもと、外資導入・地域再政策の効果もあり生産性の持続的向上が人件費増を吸収できたため。政策論的には、景気回復持続に向けたマクロ政策と生産性向上誘導策としてミクロ政策の同時実施が、最低賃金引き上げを望ましい形につなげる条件。2. 就業形態多様化と職業訓練の重要性:労働政策面の見逃せないのは、就業形態の多様化を進めることで労働力のフレキシビリティを高める一方、職業能力訓練を強化することで働き手の能力開発を支援することの重要性。3. セーフティーネットの再構築の必要性:英国の経験によれば、所得格差是正のためには、最低賃金引き上げと同時に、景気回復の持続・生産性向上、就業形態多様化・職業訓練強化など、総合的な政策をパッケージで行なうことが不可欠である一方、そうした政策によっても所得格差の解消は困難であり、勤労所得控除制度の創設など「所得再分配政策」が必要。
●本論
・最低賃金と実勢賃金の関係:わが国の地域別最低賃金は、中央最低賃金審議会で決められる「目安額」をもとにして、都道府県ごとに毎年改訂される仕組み。従来は30人未満の中小企業の賃上げ率にほぼ準拠する形で、小幅かつ全国横並びで引き上げ。この結果、最低賃金が賃金下限として意味を持ってきたのは主に地方のパートタイマーにとってであり、大都市部では正社員のみならずパートタイマーについても、最低賃金は実勢賃金を大幅に下回ってきたのが実情。
・従来、最低賃金のセーフティーネット機能の強化が大きな議論とならなかったのは、低賃金で働く労働者の多くは、学生アルバイトや主婦パートという「世帯主」でない存在であったため。むしろ、彼らの低賃金は「世帯主」である父親や夫の高い賃金の原資を生み出す形で、世帯単位でみた労働者生活の安定に寄与。(覚書注:従来、付加的に賃金を得るための労働で生活を支えなければならなくなっている現状がある。なぜこうした状況になっているのか。世帯主である非正規雇用者とはどのような人々か。なぜ非正規雇用であるのか。年代や性別の分布はどようになっているのか。この辺りの論点を詳細に確認する必要があるだろう。少なくとも、構造的で伝統的な経済格差と、ワーキングプアと言われる階層とは相対的に別に位置づけるべきである。)
・生産性向上の促進剤としての役割:最低賃金の引き上げを、低生産性事業の再編を促して経済全体の生産性底上げを実現するための「促進剤」と考えるべきではないか。中期的に最低賃金が引き上げられていくことになれば、低生産性部門は賃金引き上げの原資を捻出するために、事業分野を高生産性部門にシフトする必要。それにともなって、労働力を低生産性部門から高生産性部門にシフトさせることが求められることに。また、最低賃金引き上げで非正規賃金が上昇すれば、正規・非正規の賃金格差是正を促す効果も。(覚書注:無理があるような提言だが、議論の枠組みとしては面白い。生産性の高い企業だから賃金の底上げに対応できるのではなく、賃金引き上げを企業に強要して、それに耐えられる生産性を追求するべきだとする。そんなことはできないと反論する企業には、そんな弱気だから大企業との差が広がるんだと丸め込む。)
・英国において全国最低賃金制度が導入されて以降の経済成長率の動向をみると、2%前後の堅調な状況が持続。最低賃金の引き上げで堅調な成長鈍化が生じた様子は無い。この間、失業率はむしろ低下傾向を辿っており、最低賃金の引き上げはマクロベースでの失業増をもたらしてはいない。就業者数をみても、最低賃金引き上げ前後で増加テンポはほぼ同じ。また、全国最低賃金制度導入後、実質賃金上昇、生産性上昇ともに、歴史的にみて高いパフォーマンスを達成。以上を要するに、90年代以降の長い景気回復が続くなか、生産性向上が最低賃金の引き上げを吸収。反面、最低賃金引き上げによる所得底上げ効果が消費主導回復に一定程度貢献した模様。(本論の提言から考えると、賃金底上げを吸収できる経済拡大が英国にあったとするのではなく、賃金を引き上げたからこそ生産性が向上して持続的な経済成長につながったと位置づけるべきだろう。)
・「生活保護」「最低賃金」「基礎年金」の整合性確保:国民生活の最低水準を守るものとして、「生活保護」「最低賃金」「基礎年金」が挙げられるが、本来はそもそもの最低生活水準を適切に決め、それをベースに三者の水準が設定されるべき。しかるにわが国の場合、これらが別々の考え方に基づいて決められている。その結果、最低賃金でフルタイム働いても生活保護水準の所得が得られない「貧困の罠」が発生し、就労インセンティブが大きく削がれる状況。また、基礎年金が生活保護水準を下回る状況にあり、老後は年金保険料を払って基礎年金で暮らすよりも、生活保護に頼ったほうが収入が多くなるため、年金保険料の納付インセンティブを減じる形になっている。こうした意味では、これら三者の水準の整合性を探ることは喫緊の課題。
(覚書注:全体として結論ありきの先走った論考だという印象を受けた。面白いことをいろいろと述べているが直接的な説得力がない。裏返せば、何だかわからないけどスゴいことを主張しているとも言える。)

自己紹介

benyamin ♂

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