『民衆連帯の思想』

 今日は藤本治『民衆連帯の思想』(1993年、影書房)を読みました。

 典型的な左翼運動家の本です。在日韓国人や戦争責任、天皇制などに関する運動に関与してきた著者が、それぞれの運動のなかで書いてきた文章が収録されています。

 筆者は大学教員です。が、本書で何か新しい思想を展開しているわけではありません。題名につられて本書を手にとると、落胆することは間違いないでしょう。民衆連帯との関連性も注意深く読まないと理解できません。

 ただし、左翼運動に興味がある人は学習すべき内容だと思います。なかでも、「天皇制はいらない! 主権者は私たちです!」は大いに参考となる論文ではないでしょうか。

 裕仁天皇が著しく体調を崩され、日本中が安否を気遣っている1988年10月に、筆者たちは天皇制を討論する集会を開催しようとします。これが事の発端です。

 誰がどうみても不謹慎であり、各種の騒動が予想される集会です。静岡県は会場となる公共施設の使用を認めませんでした。県側の対応は公共目的に照らして至極適切でしたが、著者たちは感情的に反発しました。

 とはいえ、この集会が騒ぎを呼ぶことは事実であるため、困った筆者たちは言論と集会の自由が侵害されたことにして、国家賠償訴訟を起こします。憲法違反だという理屈です。

 最終的に筆者たちは勝訴となりました。これは偉大な到達点です。何か自分たちの思い通りにならないことがあったら、言論の自由が侵害されたとして訴えれば良い、と左翼運動家諸氏に勇気を与えました。

 他にも、朴正煕を徹底的に批判する一方で金大中を大絶賛するという魅力的な主張や、学生向けに書くべき言葉が思いつかないのは大学の教育制度が原因だと責任転嫁するという潔い意見などが述べられており、非常に貴重な著書となっています。

 本書は左翼運動の現状を知りたい人には最適の本であると言えるでしょう。

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benyamin ♂

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