覚書 081011

『世界経済の安定に向けて』経済広報センター、2008年9月29日。
「日本の政治は本当に変わったのか? 私の見方」エリスSクラウス(カリフォルニア大学サンディエゴ校 国際関係・太平洋研究大学院教授)
・派閥の弱体化が、選挙制度改革のもたらした最終的な、そして最も重要な結果へとつながっていく。それは首相と内閣が担う役割の変化である。かつての中選挙区では、ひとつの選挙区で個々の候補者に「個人票」を投じるのが一般的だったが、小選挙区では一議席しかなく、それ以外の議員は比例代表による政党への投票によって選ばれるため、有権者も選挙自体も政党とその党首のイメージを重視するようになった。
・結果として、政治におけるテレビの影響力が飛躍的に高まることとなる。ブリティッシュ・コロンビア大学のベンジャミン・ナイブレード氏と筆者が、1960年代以降の時事通信社の月次世論調査を分析したところ、首相と内閣のイメージは、早くも中曽根政権のころに政党としての自民党のイメージから離れ始めていた。中曽根元首相は国民から直接支持を得るため、また自らの弱小派閥の党内での影響力を強めるためテレビを活用した。この傾向は1990年代の細川氏率いる野党連立政権へと引き継がれる。橋本氏や小渕氏といったカリスマ性の薄い首相もある程度までテレビでのイメージを活用したが、リーダーのイメージと政党のイメージの乖離が頂点に達したのは、言うまでもなく小泉元首相である。その意味で、小泉元首相はテレビの力で指導者のイメージに好影響を与える、という長期のトレンドを自らつくり出した人物というより、その潮流の頂点に立ち、メディアの力を最も巧みに活用した首相だったといえるだろう。

「信用危機の本当の被害者は?」アナトール・カレツキー(『タイムズ』総括論説委員)
・2008年には、今回の金融危機の主たる被害者は米国の住宅所有者や消費者ではなく、米国以外の国々の企業とそこで働く人々なのだ、ということが次第に明らかとなるだろう。
・多くの先進国では長年にわたり、住宅市場のサイクルと国際収支の間に強い相関関係があることが確認されている。不動産価格が急上昇すると、市場原理によって労働力と資源が製造業から住宅建設業と消費に向かうため、その国の輸入は増加し、輸出は鈍化する傾向がある。反対に住宅価格が下がり始めると逆の現象が起こり、輸出の増加によって貿易収支は改善する。このことは、2年前にFRBが18カ国の44の住宅サイクルを精査し、その結果をまとめた報告書でもはっきりと確認されている("House Price and Monetary Policy", 2005年9月)。こうした住宅サイクルの動きに基づいたFRBの複合モデルによると、米国の経常収支赤字は今後、住宅価格の下落に連動して過去4年間の悪化分の大半を取り戻すことになりそうである。
・覚書注:耳慣れない説である。ここ数年のアメリカには当てはまるだろうが、他の国や他の時代も説明できるのだろうか。また、この説によれば、今回の金融危機への対応は金融機関の救済ではなく、輸出促進が中軸に据えられるべきだということになるのだろうか。国際的なつながりもよくわからない。
・輸出の増加によって、米国は住宅市場の不振による経済と労働市場へのダメージを相殺することができるだろう。それは大いに結構である。しかし問題は、米国の企業と労働者が享受する2000億ドル強の景気上乗せ分が、そのまま欧州やアジアにおける景気下押し圧力となることである。
・米国の住宅市場不振で最大の影響を被るのは米国自身ではなく、その貿易相手国ということになる。このため、今年の世界経済を見通す上でひとつの重要な鍵となるのが、米国の貿易収支改善の影響を最も受けやすい国や地域はどこかという問題である。
・メディアも市場参加者も今や「ドル暴落」の話題で持ち切りだが、過去数年の為替相場の本当の主役はドルの下落ではなく、ユーロとポンドの上昇であった。実際、ドルはアジアの主要通貨に対してほとんど下落しておらず、例えば円に対するドルの価値は3年前とまったく変わっていない。為替市場における大きな出来事は、ドル、円、人民元に対するユーロの大幅な上昇なのである。
・従って、今回の米国サブプライムローン危機の影響を最も受けやすいのはホンダやサムスン、東芝などの企業と思われがちだが、真の犠牲者はおそらくフォルクスワーゲンやシーメンス、アルカテルなどの欧州企業である。
・覚書注:ユーロ高はドルからの逃避の結果だろう。ユーロ高によって欧州の貿易条件は確かに悪化するが、ドルから逃げて欧州に大量に流入する資金の影響をどのように評価するかによって、ユーロ高が全体として欧州にもたらす結果は見方が違ってくるだろう。欧州が被害者だとする主張は視野が狭いのではないだろうか。

「米国のサブプライム危機に対する世界の反応」ブラッド・セッツァー(外交問題評議会 フェロー)
・ドルに投資し、海外資産を増やそうとしている多くの新興国の姿勢は、脆弱な環境をつくり出し、2007年8月のサブプライム危機の招来にも一役買った。(覚書注:これが言いたいだけの論文である。だが、新興国によるドルへの投資は新興国側の自主的な選択の結果とは言えないだろう。ドルに投資されないと困るのは他ならぬアメリカである。)

原田泰「本当の富とは何か」大和総研、2008年10月1日。
・金融資産は確かに富であるが、その裏側にある実物資産、それに協力して働く人的資産こそが重要だ。金融は、これらを結びつけることによって富の創造を手助けするだけだ。
・覚書注:検討されている論点は、金融資産が富かどうか、本当の富とは何かではなく、資産をそのまま消費するかどうか、それとも投資をするかどうかである。表題の通りに読んでいくと、惑わされることになる。略奪した大量の金銀で消費材を買うだけだったスペインと、産業革命を通じて生産力の向上に取り組んだイギリスが比較されている。

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benyamin ♂

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