覚書 081024

奥村裕一「ネットワーク時代の行政ガバナンス」経済産業研究所、2008年10月1日。
・英国では1999年にブレア政権によってJoined up Governmentが打ち出されました。組織間の壁を取り払うことで各省庁をJoined upしておくほか、中央・地方、NGO・NPOの連携も含めた広い意味でのJoined upが考えられています。ITに関しては、1999年に電子政府e-envoyができたのに加えて、2005年からはITを駆使した省庁間連携のためのTransformational Governmentが立ち上がっています。
・協働行政(Collaborative Governance)が声高に唱えられるようになった背景には、従来の縦割り行政では現実の社会問題に対応しきれない供給側(行政)の事情と、多様なニーズを抱える需要側(国民)の事情とがあります。たとえば青少年犯罪を解決するにも、教育と同時に産業(雇用)創出を考える必要があるなど、分野横断的かつ長期的・段階的なアプローチが必要です。また、One Size Fits Allの標準的な政策だけでは多様化したニーズを満たせないという状況もあって、個人に合わせてカスタマイズされた顧客志向のサービスが行政にも求められるようになったのです。加えて、ネットワーク環境の整備によって、重複業務の集約と情報の共有が可能となったことも、こうした行政国民双方のニーズを支える基盤となります。
・英国では、一例をあげると児童関連施策に関するサイト、Every Child Mattersを中心に省庁間連携がとられています。これは単に各省のリンクを掲載したウェブサイトではなく、教育、保健、文化、社会福祉、法務を担当する各省のリソースを持ち寄って、政策を打ち出していく場となっています。各省の主権(Autonomy)は維持しながらも、病院から学校、警察、さらにはボランティアグループまで、あらゆる層でチームアップしていこうと考えています。さらに大蔵省では、Public Service Agreement(PSA)というマネジメント枠組みを1998年から導入しています。複数省庁で一種の契約としてPSAを結び、プロジェクトを策定すると、予算もそれに対して一括的に配分される仕組みです。パフォーマンスも1つのまとまったプロジェクトとして一括的に評価されます。さらに類似の連携の仕組みとして、大蔵省と内閣府の協同によるInvest for Save Budget(ISB)があります。
・英国では内閣府のCivil Service担当部局がマネジメントを、その部局内のTransformational Governmentという組織が情報システムをみています。

城野敬子「家庭のエネルギー効率の向上で、光熱費負担増への対応を目指すイギリス、「家庭省エネプログラム(The Home Energy Saving Programme)」を決定」日立総研『欧州レポート』2008年10月23日。
・昨今の光熱費の高騰は著しい。2008年8月の消費者物価指数上昇率は年率4.7%と2008年7月の同4.4%から加速したが、その主因は電気、ガス料金の値上がりである。電気料金は2008年7月に前年比12.6%、2008年8月に18%、ガス料金は2008年7月に同12.9%、2008年8月に同27.7%上昇した。
・光熱費の高騰は今後も続く見通しである。国家住宅連盟(National Housing Federation)の予測によると、平均的な電気料金は2007年の年間400ポンド(80,000円)から2010年までには500ポンド(100,000円)に25%上昇する見込み、ガス料金は575ポンド(115,000円)から900ポンド(180,000円)に55%上昇する見込みだという。両者を合わせると、2010年までに平均的な光熱費が年間1,400ポンド(280,000円)と跳ね上がる。
・景気が悪化する中で、このような光熱費の高騰は深刻な問題になり、「燃料貧乏(fuel poverty)」という言葉が新聞紙面をにぎわせている。イギリス政府の定義では「燃料貧乏」とは、十分な暖房(主な居住部分が21度、それ以外の部屋が18度)を行うために必要な電気代やガス代が収入の10%を超える家庭のことをいうそうだ。国家住宅連盟によれば、2009年末までに572万世帯が「燃料貧乏」となる。これは2005年の240万世帯から倍増である。その結果、1,340万人、つまりイギリス国民のなんと23%が「燃料貧乏」になるそうだ。
・光熱費の高騰に対して対策を求められていたイギリス政府は、2008年9月11日、ようやく「家庭省エネプログラム」と題する今後3年間の政策プログラムを発表した。このプログラム費用は10億ポンドと予定されているが、そのうち9億1,000万ポンドは、エネルギー会社に拠出を求めることになっている。このプログラムでは、エネルギー会社に拠出を求める9億1,000万ポンドのうち、5億6,000万ポンドは、住宅の断熱措置推進にあてられ、これが家庭の省エネ推進の大きな柱となっている。
・政府は危機感に欠け、今回の政策は即効性に乏しいという厳しい批判の声が出ている。もともと労働組合は、増収基調のエネルギー会社の収益に対し特別税を課税することや即効性のある救済策を求めていたため、今回の政策に対しては不満の声が強い。これに対して、ブラウン首相は「一回きりではなく、毎年の光熱費を引き下げる持続的な効果と公平さを、すべての家庭にもたらすような変革を起こすことを優先したのだ。その意味で、これは正しい方法である。」と主張している。確かに省エネに主眼を置いた今回の政策は長期的視点からは正攻法といえるものだ。これを支持する意見として、例えば、インディペンデント紙は社説で、首相がエネルギー会社への特別税課税を求める声を拒否し、住宅の断熱を支援すべく9億1,000億ポンドの拠出をエネルギー会社に求めたのは、思慮深いことであったと高い評価をしている。オックスフォード大学が昨秋発表した研究報告では、家庭の二酸化炭素排出量は80%削減の余地があるとされている。したがって、エネルギー浪費につながる特別税の課税ではなく、家庭の省エネを進める今回の政策は先進的であり、環境面で責任のある選択をしたことになるという。

小塩隆士・田中康秀「教育サービスの「準市場」化の意義と課題 英国での経験と日本へのインプリケーション」『季刊 社会保障研究』Vol.44、No.1、2008年6月。
・英国の「教育改革法(Education Reform Act)1988」は、教育サービスにおける「準市場」化の制度的な枠組みを定めたものであり、その枠組みは次の4点にまとめられる。第1は、義務教育年齢の生徒に対する統一的なカリキュラムの設定である。これは、教育内容やレベルの全国的な統一を目指すものだが、生徒の達成度を全国で統一的にチェックするために、義務教育期間内に4つのステージ(7歳、11歳、14歳、16歳)を設定し、それぞれのステージにおいて全国統一テストを実施して「学校成果表」(School Performance Tables)という形で結果を公表する。第2に、親による学校の選択権を追認するとともに、各学校の入学許可件数を政府(教育雇用省大臣)が設定する「基準数」以下に抑えることを禁止し、「標準数」を変更する場合は大臣の許可が必要となることを規定する。第3に、全教育予算の約75%を占める予算の配分に際して、各学校に現実に入学した子供数とその年齢を反映させる。また、教育予算の運営責任をLEAから各学校の運営母体に移譲する。第4に、LEA管轄下にある学校に対して、その管轄から離れて中央政府から直接学校の運営経費を受け取れる制度に移行する権利を各学校に与え、学校運営に関するLEAの権限縮小を目指す。要するに、英国政府は全国統一テストの成績という形で各学校の教育パフォーマンスを比較可能な形で公表し、親に学校を選択させて、入学する子供数に応じて予算を配分するという仕組みを設定したことになる。生徒数に応じた教育予算配分の仕組みは、英国だけでなく、オランダやスウェーデン、英国の一部の州でも進められてきた。
・「教育改革法1988」以降、教育サービスの「準市場」化を進めてきた英国の経験を見ると、全国統一テストの成績が大幅に上昇していることから判断して、教育サービスの効率化は大きく改善したと判断できる。他方、公平性の観点からは、学校間の成績格差が縮小している一方で、成績のよい学校ほど低所得者の子供の割合が低下するなど学校間で子供の分断化が進んでいる傾向も確認され、評価が分かれる面がある。

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benyamin ♂

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