『お釈迦様もみてる 紅か白か』

 今日は今野緒雪『お釈迦様もみてる 紅か白か』(2008年、コバルト文庫)を読みました。

 同じ作家の作品『マリア様がみてる』の姉弟版になります。「マリア様」の主人公、福沢祐巳の弟、福沢祐麒が「お釈迦様」の主人公です。姉の弟が主人公だから姉弟版です。

 物語は仏教系の花寺学園高校に内部進学した祐麒が生徒会の活動に参加していく過程を描いています。生徒会長である柏木優に弄ばれながら生徒会に巻き込まれいてきます。

 本書はあまり魅力的な要素がなかったように思います。紅薔薇原理主義の私にはもちろん、リリアンの生徒たちの物語を楽しみにしてる読者にとっては、面白さを感じる箇所は少なくなっています。

 ただ、これはないものねだりと言える評価です。著者のあとがきによれば、祐麒の高校生活を書いてくれという読者の要望に応えたのが本書ですから、そこにリリアンたちが華やぐ世界を求めることはお門違いでしょう。

 とはいえ、「マリア様」作品の一つとして見た場合も、やや浮いている印象を受けました。物語の骨子は祐麒が自ら抱えている悩みを解消することです。その悩みとは、自分が実は双子の一人であり、生まれてくるときにその片方を犠牲にしてしまった、というものです。

 祐麒がこのような悩みを抱えていたことは初耳です。これまでの物語では伏線すら引かれていないこの悩みを祐麒が吹っ切ることが今回の話の中心になっています。しかも、その悩みは実は祐麒の勘違いだったという、とんでもない落としどころに話はまとまります。

 個人の内面的な問題を積極的な行動を通じて解消してくところは「マリア様」の特徴を受け継いでいますが、やや強引さを感じてしまいました。物語を成立させるためには仕方ないのかもしれませんが、もっと簡単な骨組みでも良かったのではと思いました。

 唯一の救いはアンドレ(本名、安藤礼一)です。祐麒のことを気に入っているがゆえに、ついつい意地悪しちゃいます。わかりやすいツンデレです。というか、これが本来のツンデレです。

 巷ではツンデレは、人前ではツンツンしているけど二人になるとデレデレになるキャラだと説明されることもありますが、それは間違いです。好きすぎて自分の気持ちを上手く表現できずに、ついつい言動が刺々しくなってしまうのがツンデレです。

 本書の後半ではアンドレがツンデレぶりを遺憾なく発揮しています。ツンデレの教科書として採用したいくらいの出来です。例えば、本書はアンドレの台詞(独白)で終わりますが、それは「……ふんっ。」です。ツンデレキャラが10秒に1回くらい使う台詞です。

 アンドレというツンデレキャラを生み出したことが本書の最大の貢献だったと言えるでしょう。そのためには祐麒が変な悩みを抱えさせられるというのは必要な犠牲であったのかもしれません。

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benyamin ♂

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