2008年11月アーカイブ

覚書 081129

「イギリス 政府、再就職支援などに1億ポンド投入へ」労働政策研究・研修機構『海外労働情報』2008年11月。
・統計局が10月に公表した6?8月期の雇用関連統計によれば、失業率は5.7%で前期(3?5月期)から0.5ポイント上昇、失業者数は前期から16万4000人増の179万人で、17年ぶりの増加幅となった。解雇者数も、前期比2万8000件増の14万7000件と増加を続けている。直近の9月の求職者給付受給者数は、前月から3万1800人増の93万9900人となった。
・CBIは、製造業企業500社を対象とした調査の結果、年度末までの6ヶ月に6万5000人の人員削減が予想されるとしている。ただし、こういった解雇事例の全てが金融危機の直接の影響によるものではないとの見方もある。大手コンサルティング会社のKPMGが7月、民間企業や公共機関を対象に実施した調査によれば、約半数の53%の組織が人員整理を考えていると回答しているが、調査対象となった約500組織の8割は、金融危機による資金調達難などには直面していないと回答している。
・景気回復は、長期にわたるというのが大方の見方で、失業者数は来年中に300万人にも及ぶとの予測もある。政府は、景気後退の影響が著しい産業部門で失業の危機にある人々の再訓練や、支援の必要な離職者に対して優先的に職業訓練を実施することなどを目的に、1億ポンドを投じると発表した。また、職業紹介や求職者給付などの窓口業務を行うジョブセンタープラスにける離職者向けサービスを強化するとの方針を示している。離職者の円滑な再就職を支援することにより、国内で未だ60万件を超える求人の充足に結び付けたい考えだ。
・覚書注:求人が60万件もあることに着目すべきだろう。企業にとにかく無理にでも雇用させる方策を考えるのではなく、企業は人材を求めているのだから、その人材を育成していくことを考えるべきではないだろうか。派遣労働は育成過程の一形態になりえるはずだ。その一方で、金融危機の影響を直接受けていないにも関わらず、人員整理を行っている企業がいることも注目すべきである。金融危機を口実に、これ幸いと労働者を削減しているのだろうが、もともと労働者が過剰であった可能性も否定できない。

「英国政府の第2研究レポート 『人造ナノ粒子による潜在的リスクの特性決定』」NEDO技術開発機構『海外レポート』No.1033、2008年11月19日。
・英国政府は2007年12月、第2研究レポート「人造ナノ粒子による潜在的リスクの特性決定」を発表した。英国では2004年、リサーチ・カウンシルがナノテク研究開発におけるアンバランス、アプリケーションのための研究開発に比べ、ナノ粒子の潜在的リスクに関する研究が大きく遅れていることを指摘し、長中期的にはリスクに対する準備不足がナノテク利用の大きな障害になると警告して以来、政府レベルでの研究については、リスク関連のものに関わるコミュニケーションが重要になっている。

「英国におけるナノテクノロジーの政策動向」NEDO技術開発機構『海外レポート』No.1033、2008年11月19日。
・英国の工学関係の中心的研究機関であるEPSRC(工学・物理科学研究会議)におけるナノテク政策は、1986年の国家ナノテクイニシアチブ設立に始まる。

「英国におけるナノテクノロジーの拠点」NEDO技術開発機構『海外レポート』No.1033、2008年11月19日。
・英国にはナノテクノロジー関連の研究拠点が数多くあるが、ここでは新しい拠点として脚光を浴びているロンドン・ナノテクノロジー・センター、ヨークシャー産学連携センター、シェフィールド大学のクロート研究所およびナノ科学技術センターについてその概要を報告する。

大政美樹「主要国の金融政策動向」国際金融情報センター、2008年11月5日。
・英国:4.50%
・10月8日の定例例会において、0.5ポイントの緊急同時利下げ。2007年12月以降4回目の利下げ(計1.25ポイント)。CPI上昇率は中銀目標を大幅に上回る(8月:4.7%)が、経済活動の大幅な落ち込みや原油価格のピークアウトによりインフレは先行き沈静化するものと見込む。次回会合11月5?6日。

大政美樹「主要国の金融政策動向」国際金融情報センター、2008年11月5日。
・英国 2008年1月24日:労働・年金相が不正献金疑惑で辞任。小幅内閣改造。2008年5月1日地方選挙(イングランド・ウェールズ):労働党は40年来の惨敗、331議席減、得票率は24%と第3位に転落。保守党は大きくリードし256議席増、得票率は44%と首位へ浮上。自由民主党の得票率は25%。ブラウン首相の求心力は低下へ。ロンドン市長選:保守党のボリス・ジョンソン下院議員が大勝。現職労働党リビングストン氏は3期目逃す。2009年総選挙予定。

日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター「2009年米欧経済見通し 金融不安が続くなか、欧米ともマイナス成長へ」『マクロ経済レポート』No.2008?04、2008年11月19日。
・英国でも、1. 雇用情勢の急速な悪化や家計のバランスシート調整を受けた個人消費の低迷、2. 成長のけん引役であった金融・不動産セクターの不振、などから今後数四半期にかけて大幅なマイナス成長が続く見通し。
・英国では現時点でも住宅価格は可処分所得対比で約30%割高な状態。英国住宅価格(Nationwide)では、すでに前年比でマイナス10%以上下落しているものの、今後年率マイナス10%の下落を前提にしても、適正水準への復帰は2010年央以降となる見込み。
・英国では、MEW(Mortgage Equity Withdrawal)という住宅を担保とした消費者ローンの活用もあり、とりわけ2006年以降は家計債務比率の上昇が貯蓄率の大幅な下落と結びついていた。貯蓄率は1999年以降2005年まで5%程度で推移していたものの、2006年以降は、債務増大につれ貯蓄率も低下したことで、この間の実質消費を年平均プラス2.5ポイント押し上げた格好。当面、金融機関の貸出姿勢厳格化に伴い過去平均である5%前後まで上昇する公算大。結果として、消費の伸びは、長期にわたり可処分所得よりも低い伸びにとどまる見込み。
・1) 英国経済は、7?9月期実質GDPが前期比年率マイナス2.0%と、1992年4?6月期以来16年ぶりのマイナス成長に。住宅価格の下落に一段と拍車がかかっているほか、失業者数も急増するなど、景気悪化は深刻化。2) 2009年の英国景気は、雇用情勢の急速な悪化や家計のバランスシート調整を受けた個人消費の低迷、成長のけん引役であった金融・不動産セクターの不振、金融混乱を受けた設備投資の減少、などから今後数四半期にかけて大幅なマイナス成長が続く見通し。英政府による景気対策の効果が健在化する2009年秋口にかけて景気悪化に一旦歯止めがかかる見通しながら、上記下押し圧力が根強いなか、対策効果一巡後は、再びマイナス成長に転じる見通し。3) この結果、2009年通年の実質GDP成長率は前年比マイナス1.1%と、91年以来のマイナスとなる見通し。4) 物価面では、電力・ガス料金値上げの影響から2008年中は高止まりが続くものの、今夏以降原油価格の下落を映じて、早晩ピークアウトする見込み。2009年入り以降は、前年比でみたエネルギー価格による押し上げ影響が急速に減衰するとともに、景気悪化に伴いコアベースでの上昇率も低下するとみられ、2009年夏以降、インフレ率は前年比マイナス圏まで低下する見通し。

城野敬子「難航するイギリス政府のエコタウン(ecotown)計画」日立総研『欧州レポート』2008年11月25日。
・エコタウンは40年ぶりにイギリスに建設されるニュータウンである。計画では、5000?15000軒の新築住宅で形成されるコミュニティ(エコタウン)を、2020年までに10ヵ所建設することが目標として掲げられた。エコタウンには大きく2つの目的が設定されており、それらは、1. 住宅の一時取得者に対して適切な価格の住宅を提供し、新築住宅の需給逼迫を緩和すること、2. 地域温暖化への対応を進めるべく、より環境に優しい新築住宅を建設することである。この2つの目的を実施するような理想的な町を作ることで、他の開発へのモデルケースを示すことも政府のねらいとなっている。
・これまでのところ、政府の公募に対して、合計57の提案があり、2008年4月に15ヵ所に絞られた。さらに絞込みを進めて、最終的に2009年初めに候補地を決定した後、2016年までの最初の5ヵ所が、2020年までに残りが建設される予定である。しかしながら、候補地となった15ヵ所のうち、3ヵ所は地元の強い反対を受けて計画が撤回され、さらに少なくともあと2ヵ所が実現可能かどうか危ぶまれる深刻な事態にあるという。計画が順調に進んでいるとはいいがたい状況だ。
・こうした事態に陥った原因は何だろうか。第一に、エコタウンの2つの目標に対して、そもそもこの計画がどの程度有効なのかという疑問が呈されている。新築住宅の需給逼迫への対応という目的については、2008年8月の住宅価格が前年比マイナス3.4%となるなど、住宅市場が軟化する中で、新たにニュータウンを作るという発想に反対する意見が出ている。また、地球温暖化対応という目的については、新築の建築物よりも、むしろ、現在イギリスの炭素排出量の半分近くを占めている既存建築物について対策を進めるべきであるともいわれている。第二に、地元住民の理解が得られていないケースが多い。計画に反対する人々は、「エコタウンをどこに設置するかなどについて周辺住民の意見を適切に聴取していないため、この計画の進め方全体が不法なものである」、また、「地方での大規模な計画の決定は生活に影響を受ける住民に対して直接の説明責任を持つ地方政府にゆだねられるべきである」と主張している。こうした反対運動の結果、高等法院(High Court:最高裁判所の一部)で司法面から問題はないか審議を進めることが決定した。反対意見を持つ人々は、審議の結果によっては、計画を白紙段階からやり直すように求めている。第三に、開発を推進する企業(ディベロッパー)にとって入札プロセスにかかるコストが大きく、リスクが高いことが問題であるといわれている。ケンブリッジ近郊にエコタウンの開発を提案していた、流通王手のテスコ(Tesco)は2008年8月に計画を撤回した。地元住民や周囲の地方政府の反対を受けたことが計画撤回の主要因であるが、テスコ関係者は、最終的に政府に認可されない可能性もあるエコタウンの詳細計画を策定するのに高額のコストをかけるのは、あまりに「ハイリスク」であるといっている。テスコが提案を進めようとすると、提案が認可される保証もないのに、入札プロセスには何百万ポンドもかかることになるそうだ。

「英国:住宅バブルの崩壊」内閣府『今週の指標』No.908、2008年11月25日。
・英国では、戦後、4回の住宅バブルが形成された。直近の2000年代のバブルでは、住宅価格上昇率は比較的長期にわたり高止まりを続けていた。2003年1?3月期のピーク時には、住宅価格上昇率は前年同期比で25.8%となり、その後次第に低下して2008年4?6月期からマイナスに転じ、7?9月期には前年同期比マイナス10.3%となった。
・今回の住宅価格上昇率は、一見して他の3回に比べると穏やかなようにみえる。しかし、住宅価格の伸びと名目GDPの伸びとを比べると、前回のバブル期よりも、今回のバブル期の方が、住宅価格の伸びが名目GDPの伸びから、より大きく乖離していることがわかる。
・さらに、住宅価格の所得に関する倍率は、前回バブル期の最高は1989年3月の5.01倍であったが、今回のバブルでは2007年7月に最高5.84倍となり、長期平均の3.99倍を大きく上回っている。

三菱東京UFJ銀行「西欧経済の見通し」2008年11月21日。
・9月半ばからのグローバルな金融危機への対策として、英国政府は10月8日に銀行支援策を発表した。その後、今年末を期限とする大手銀行の資本増強を支援するため、13日には大手銀行のうち3行に対し、公的資金による資本注入の実施が公表された。こうした一連の施策の効果により、株価は下げ止まったほか、短期金融市場では、依然流動性は不足しているものの、小康状態を保っている。
・しかし、実体経済は急速に悪化している。7?9月期の実質GDP成長率は、前期比マイナス0.5%、前年比0.3%にとどまった。
・また、住宅価格の下落に歯止めがかからない。HBOSが公表している住宅価格指数の推移をみると、10月には前年比マイナス15.0%と、マイナス幅の拡大が続いている。イングランド銀行(BOE)による利下げ効果が期待されるところであるが、現下の逼迫した金融環境を踏まえると、これまで引き締められてきた金融機関の貸出姿勢が緩和される可能性は小さく貸出金利の引き下げは限定的なものにとどまるであろう。そのため、住宅価格についても底値がみえず、自律的に住宅需要が出てくる水準まで下落しつづける可能性が高い。
・消費者心理は大幅に悪化している。10月の消費者信頼感指数は再び下落した。これまでは、経済状況の見方の悪化やインフレに対する懸念の高まりが消費者マインドを悪化させてきたが、10月の指数の低下は、購買計画や貯蓄動向の低下が指数を押し下げたという点で異なる。これらは、個人消費に直結する項目であり、今後の個人消費の動向が懸念される。
・今後、懸念されるのは、雇用情勢の急速な悪化である。10月の失業率は3.0%と4ヶ月連続で上昇した。失業者数が増加していることからすると、失業率の上昇傾向は継続し、一段と加速する可能性がある。こうしたなかで、実質小売売上も大きく減速している。9月には前年比プラス1.7%まで減速している。消費者は価格志向を強めており、より安い商品を求める傾向が強まっている。
・10月の消費者物価指数は前年比4.5%と前月の同5.2%から大きく低下した。電気・ガス料金等の公共料金は大幅引き上げの影響で前年比39.3%と高止まったが、原油価格の下落に伴うガソリン価格の大幅な値下げにより、個人輸送機械関連費用の上昇率が大きく鈍化したため、全体の消費者物価上昇率は低下した。11月に入り、原油価格はさらに下落していることから、消費者物価上昇率は、当面、弱含みで推移するであろう。
・イングランド銀行(BOE)は、11月6日に、事前の市場の予想を上回る150bpの利下げを実施した。BOEは、インフレリスクは確実に低下しているとしていることから、需要の現象に伴うデフレを警戒し始めたといえよう。政策金利の引き下げに伴い、短期金利も低下したが、3ヶ月物のインターバンク金利と政策金利の差は依然100bpあり、短期金融市場の機能が正常化したわけではない。また、短期金融市場の流動性は、依然、不足している。英国景気の悪化が当面続くことからBOEは来年半ばにかけてさらに総計150bpの利下げを実施する見通しである。
・英国政府は、現在、財政支出を使った経済対策を策定中である。英国政府は労働党が政権についた1997年以降、財政赤字の拡大や、政府債務残高の増加を防ぐための財政運営ルールを策定し、それに沿った財政政策を実施してきた。しかし、最近の金融危機の拡大、急速な景気の悪化に対処するために、ダーリング財務相は、これまでの財政運営ルールを抜本的に改革し、減税や財政支出の拡大を実施する方針を発表した。

「英国公共機関におけるレガシーシステムマイグレーション」NTTデータ DIGITAL GOVERNMENT『欧州マンスリーニュース』2008年11月号。
・英国においても、公共調達における費用削減は最重要課題である。英国では、費用削減だけを目的とするのではなく、公共調達する事業ごとに、事業全体の成功のため、事業管理能力、サービス提供能力等を総合的に検討し、事業実施に最適な調達を得るために相応しい調達方法を採用している。時には、経済規模の便益を受けるため、同様の公共サービスを必要としている組織を取りまとめ、調達規模が大型化することもある。
・2008年度における英国歳出予算額は、6178億ポンドで、このうち、調達予算総額は、1064億ポンド(約17%:過去10年間おおよそ17%前後の推移)である。2010年度にはこの予算額が1250億ポンドに上ると予想されている。このうち、TI関係の支出額は、2006年度実績で、132億ポンドであった。
・英国の公共調達は、EU公共調達指令(EC Procurement Directives)を国内法制化した「公共契約規則2006(The Public Contracts Regulations 2006)」(2006年1月31日施行)に基づいて行われている。これは、従来の公共工事契約規則、公共物品契約規則、公共役務契約規則を一本化した、EU公共調達改正指令(2004/18/EC)に基づく新しい規則である。
・英国の公共物品及びサービスの調達方法は主に4つある。1. 公開競争手続き Open Procedure:全ての事業者が入札に参加できる。2. 制限競争手続き Restricted procedure:全ての事業者が応募できるが、経営・財務状況や技術的能力について、発注者が提示する基準を満たしている業者のなかから、入札参加事業者を選定する。3. 交渉手続き Negotiated procedure:例外的な場合の入札方法。例えば、価格の事前評価が困難な場合、入札不調の場合、技術的要素等により入札に参加できる事業者が特定される場合、既存契約への追加の場合に採用できる方法。最低3事業者を対象とする必要がある。4. 競争的交渉手続き Competitive dialogue procedure:発注者が技術的、法律的、財務的要件を明確に規定することができない等の理由により公開競争手続き及び制限競争手続きを採用することが困難な場合に採用する。入札から落札者決定までの間に複数の応札者と交渉し、最も優れた提案を採用できる。交渉には、最低3事業者を参加させる必要がある。
・英国では、公共調達の質向上のため、道具としての電子調達(e-Auction、e-Sourcing等)を積極的に取り入れているが、同時に、調達の質を保証するため、公的調達を担う人材の育成と、公共調達の評価に取り組んでいる。
・2000年にNHS(National Health Service)改革に着手した英国政府は、包括的なNHSシステムの更新が必要と認識し、次の4点を実現するためにシステム開発を行うこととした。1. インターネットによる病院予約、2. 電子医療記録のネットワークサービス、3. 電子処方箋のネットワークサービス、4. ブロードバンド通信基盤の導入。2年後の2002年、英国政府は、上記の事項を実現するため、大規模な医療システム開発であるNHS National Programme for IT(NPfIT)事業を開始した。NPfIT事業は、期間10年、予算124億ポンドで、英国内におけるIT投資としては最大の歳費を支出する事業であり、14分野に分かれている。これらの事業は、先に記載した公共調達規則に従い事業の実施者を選定している。
・NPfIT事業の中心は、Care Record Service(CRS)という、様々な医療記録を共有する全国共通ネットワークシステムの構築である。これは、各NHSトラスト及びホームドクター(GP:General Practitioner)が持つ医療記録を管理しているレガシーシステムを、プラットフォーム型のネットワークシステムに移行する開発作業である。
・費用削減効果及び最新IT技術の恩恵等への期待とは裏腹に、レガシーシステムの移行は当初より難航している。NPfIT事業は、大規模化し、各地域にあるNHSトラスト及びGP等多くの組織が関係する事業となり、複雑な管理が要求されている。組織間における調整機会は多くなり、また、組織間の意思疎通もスムーズにいかない等、事業管理に関わる問題で、事業全体が機能的に動かない事態を引き起こしている。

山下えつ子「米・英の消費不況とその政治的帰結」三井住友銀行『Market EYE』2008年11月27日。
・英国には米国のようなサブプライム・ローンはほとんどないが、住宅価格の上昇を背景に個人が住宅担保ローンで消費を伸ばし、その後、住宅価格の下落が消費減速の一因となっている、という米国に類似した現象がある。英HBOS住宅価格指数では英国の住宅価格は2007年8月には前年比11.4%の上昇、住宅価格自体もその時点がピークで、その後2008年10月までに15.7%下落。小売売上高は2007年の前年比プラス4%超の伸びから2008年10月は前年比プラス1.9%へ減速した。
・英政府は24日に総額200億ポンドの景気刺激策を発表。付加価値税の税率を現行の17.5%から来年末までの時限措置で15.0%へ引き下げることとした。付加価値税の減税で125億ポンド。またBOEも10月8日に政策金利を5.00%から4.50%へ引き下げ、11月6日には一気に3.00%まで引き下げるという大胆な政策を採っている。12月4日にも大幅な追加利下げが実施される見込み。
・英国で24日に財務相から予算案が発表された際、英気刺激策・減税の一方で、高所得者の所得税率を2011年度に引き上げる方針も示された。現政権の労働党はブレア前政権下では市場経済重視へと大きく方向転換し、従来の支持層である低所得者層だけではなく中高所得者層の支持も得た。今回の政府案は一部の中高所得者層の反発を買っているようだが、大不況のもとで採られる政策が政党の逆戻り的な方向にもつながりそうだ。
・覚書注:増税をすると従来の労働党に逆戻りする、という論理がよくわからない。

ネットにおける児童ボルノの現状

 今日はネットにおける児童ボルノの現状です。

 現在、日本は児童ボルノの発信国として国際的に非難を浴びています。正確に言えば、非難を浴びているとして日本を攻撃している人々がいます。彼ら曰く、日本はネット上の規制が緩いので児童ボルノの発信数では世界でも上位に入っている酷い国だ、とされます。

 実際にはどうなのでしょうか。イタリアの児童人権保護団体テレフォノ・アルコバレーノがまとめた、ネットにおける児童ボルノの現状についての調査結果を見てみましょう。

児童ボルノの国別ウェブサイト数:2007年
 合計:39,418
 1. ドイツ:25,599
 2. オランダ:4,530
 3. 米国:3,174
 4. ロシア:1,569
 5. キプロス:1,514
 6. カナダ:1,167
 7. 日本:457(1.16%)
 8. スロバニア:445
 9. パナマ:383
 10. 韓国 111
 11. 英国:65
 12. スペイン:59
 13. タイ:57
 14. 中国:40
 15. トルコ:37
 16. フランス:36
 17. 分類不可:23
 18. 香港:20
 19. アフガニスタン:18
 20. ポルトガル:16
 21. ウクライナ:16
 22. チェコ:15
 23. シンガポール:13
 24. イスラエル:11
 25. スイス:7
 26. グルジア:6
 27. オーストラリア:4
 28. デンマーク:4
 29. ハンガリー:3
 30. その他:19

児童ボルノウェブサイトの国別訪問者・利用者の割合:2007年
 米国:22.82 %
 ドイツ:14.57 %
 英国:7.02 %
 ロシア:8.39 %
 イタリア:6.14 %
 フランス:3.56 %
 カナダ:3.16 %
 スウェーデン:2.94 %
 スペイン:2.05 %
 日本:1.74 %
 ポーランド1.66 %
 オランダ:1.65 %
 オーストラリア:1.58 %
 ブラジル:1.35 %
 スイス:1.29 %
 ベルギー:1.15 %
 オーストリア:1.09 %  メキシコ:0.80 %
 デンマーク0.80 %
 中国:0.15 %

http://www.telefonoarcobaleno.org/en/pdf/ANNUAL_REPORT_2007.pdf

 確かにウェブサイトの数では日本は上位に入っています。しかし、全体としてはウェブサイト数は世界全体の1%程度であり、訪問者・利用者の割合も2%弱です。こうした数値を多いと見るか少ないと見るかは評価のわかれるところでしょうが、国際的な非難を一方的に浴びるほとではないと思います。

 少なくとも、ウェブサイト数も多く訪問者・利用者の割合も高い欧米諸国から日本が非難される根拠はありません。もちろん、数値の多寡で児童ボルノ自体の犯罪性が軽減されるわけではありませんが、日本が世界から非難されなければならないような酷い国ではないことは確認しておくべきでしょう。

 なお、上記では示していませんが、ウェブサイトのほとんどは即座に閉鎖されています。世界全体では39,418件のうち39,028件が閉鎖され、閉鎖率は99.01%となっています。今回の調査ではドイツが突出していましたが、3件を残して閉鎖されています。

 日本は457件のうち451件が閉鎖されていますので、閉鎖率は98.69%です。6件が閉鎖されていませんが、閉鎖率は世界平均となっています。6件が残っているという点についての評価がわかれるでしょうが、現状を見る限り、日本が児童ボルノを野放しにしているとは言えません。

 念のために、テレフォノ・アルコバレーノの調査結果の限界を指摘しておきましょう。この調査から漏れているウェブサイトが多くあるという限界です。インターネット上のすべてのウェブサイトを発見できるとは考えられないので、調査結果が示す数値は過小である可能性は十分にあります。

 発見されていないウェブサイト数をどのように組み込むかという議論はあるでしょう。が、それを論拠に日本を批判することは正当ではありません。例えば、日本人はずる賢いからウェブサイトが発見されないように細工している、発見されていないけど日本は世界に児童ボルノを発信しているはずだ、といった批判です。これはもはや信仰としか言いようがありません。

 個人の心の拠り所として何かの信仰をもつことは良いことでしょう。が、誰かを攻撃するための信仰は端から見ても心地よいものではありませんし、迷惑な行為です。そうならないためにも、できる限り自分の目で確かめてみるようにしましょう。

平成20年度青少年白書

 今日は平成20年度青少年白書です。

 青少年白書が発表されましたので、青少年の現状に関する統計で目についた数値を以下に書き留めておきます。

・青少年:0〜29歳
・数値:平成19年度

・総人口に占める割合:30.2%
・大学・短期大学への進学率:53.7%

・正規ではない雇用者の割合
  15〜19歳:72%
  20〜24歳:43%
  25〜29歳:28%
・失業率
  15〜19歳:8.7%
  20〜24歳:7.5%
  25〜29歳:5.7%
  全年齢:3.9%

・フリーターの人数:181万人
  15〜24歳:89万人
  25〜34歳:92万人
 フリーター
  15〜34歳で男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者
  パートやアルバイトに従事する就業者
   +パートやアルバイトを希望する完全失業者
   +家事も仕事も就職内定もしていない同様の非労働力人口
・若年無職者の数:62万人
  15〜19歳:9万人
  20〜24歳:16万人
  25〜29歳:18万人
  30〜34歳:18万人
 若年労働者
  15〜34歳の非労働力人口のうち、家事も通学もしていない者
  ニートに近い概念

・少年の刑法犯被害認知件数:30万件(うち凶悪犯被害:1345件)
  少年=20歳未満
・児童虐待に関する相談件数:40万件
 児童虐待事件検挙件数:300件
・乳児院入所児童数:3190人
 児童養護施設入所児童数:30846人
・委託里親数:2582人(登録里親数:7934人)
 委託児童数:3633人

・自殺者数:3857人
  学生と生徒:849人(大学生:450人)
  無職者:1530人
  有職者:1421人

平成20年度青少年白書

 青少年の現状については、政府批判の材料として酷い状況だと取り上げられることもあり、それに引きずられた印象を抱いている人も多いのではないでしょうか。

 具体的な統計はネットを通じて手軽に見られますから、その印象の善し悪しを検討するためにも、まずは自分で確認してみることが必要だと思います。

 自分の抱いている印象が意外に的外れであったり、根拠のないものであると気がつくかもしれません。私の場合は以下のような点を理解することができました。

・失業率やフリーター数、若年無職者は減少傾向にある。
 とくに失業率は減少傾向が強い。
・一方で、正規ではない雇用者のは増加傾向にある。
 とくに25歳未満では増加傾向が顕著である。
・子供(中学生以下)を狙った犯罪は増加していない。
 が、減っているわけでもなく、横ばい傾向にある。
・児童虐待は増加の一途をたどっている。
 児童虐待事件は過去5年間で約2倍となった。
・里親に委託される児童は増えている。
 登録里親数の約半分しか委託されていない。

 ざっと目を通すだけでも意味はあると思います。さしあたりは関心がある箇所だけでも確認してみましょう。

嫁のメシがまずい<追加>

 今日は嫁のメシがまずいの追加です。

「嫁のメシがまずい」スレタイ一覧

【隠しきれない】嫁のメシがまずい その5【隠し味】
【匙加減を】嫁のメシがまずい その6【知らぬ愛】
【外食で】嫁のメシがまずい その7【命をつなげ!】
【愛ゆえの】 嫁のメシがまずい 8皿 【暴走】
【好きだから】 嫁のメシがまずい 9皿 【言えない】
【誘導】嫁のメシがまずい 10皿目【禁止】

【誘導】嫁のメシがまずい 11皿目【禁止】
【鍋もおでんも】嫁のメシがまずい 12皿目【アレンジ禁止】
【妻の手は】嫁のメシがまずい 13皿目【ハルプン手】
【妻の手は】嫁のメシがまずい 14皿目【メガン手】
【目Newは】嫁のメシがまずい 15皿目【救世主?】
【ダイナマイト】嫁のメシがまずい 16皿目【カキフライ】
【夕食に】嫁のメシがまずい 17皿目【招くぞ】
【妻の愛情】嫁のメシがまずい 18皿目【夫の驚愕】
【これは】嫁のメシがまずい 19皿目【何?】
【天使の微笑】嫁のメシがまずい 20皿目【悪魔の味覚】

【緊張の夏】嫁のメシがまずい 21皿目【メシマズの夏】
【食欲の秋】 嫁のメシがまずい 22皿 【激ヤセの俺】
【味覚の秋】 嫁のメシがまずい 22皿 【死角の味】
【夫で】 嫁のメシがまずい 22皿 【実験】
【ゆでん?】 嫁のメシがまずい 25皿 【ゆどん?】
【言うも地獄】 嫁のメシがまずい 25皿 【言わぬも地獄】
【しゃくって】 嫁のメシがまずい 26皿 【ゆった(泣)】
【これ美味しい!】 嫁のメシがまずい 28皿 【今度作るね!】
【勇気を出した】 嫁のメシがまずい 29皿 【前歯が折れた】
【あれ鈴虫が】嫁のメシがまずい 30皿【煮えている】

【栄養一番!】嫁のメシがまずい 31皿【命は二番】
【ガンガる娘は】嫁の飯がまずい32皿【迎撃機!】
【弁当に】嫁のメシがまずい 33皿【牛乳シシャモ】
【真っ黒】嫁のメシがまずい 34皿【ゴーヤチャンプルー】
【生はだめぇ!!】嫁のメシがまずい 35皿【牡蠣サラダ】
【旦那のヘタレが】嫁のメシがまずい 36皿【メシマズ加速】
【大さじは】嫁のメシがまずい 37皿【お玉じゃねえ】
【嫁の料理は】嫁のメシがまずい 38皿【当たりつき】
【天国に】嫁のメシがまずい 39皿【一番近いメシ】
【サバの味噌煮は】嫁のメシがまずい 40皿目【鯵じゃ無理】

【幼子も】嫁のメシがまずい 41皿目【匙を投げる】
【次スレくらい】嫁のメシがまずい 42皿目【とっとと立てれ】
【レシピ通りに】嫁のメシがまずい 42皿目【作ったら負けかと思っている】
【わかんない】嫁のメシがまずい 44皿目【思いついただけ】
【喉が痛いなら】嫁のメシがまずい 45皿目【イソジンカレー】
【マズメシは】嫁のメシがまずい 47皿目【家庭崩壊の危機】
【普通を求めて】嫁のメシがまずい 49皿目【何が悪い】
【はるかな夢】嫁のメシがまずい 50皿目【美味い飯】

【夏バテだから】嫁のメシがまずい 51皿目【素麺にリポD】
【びゃあ゛ぁ゛゛ぁ】嫁のメシがまずい 52皿目【まずいぃ゛ぃぃ゛】
【サンマと漁師に】嫁のメシがまずい 53皿目【ゴメンナサイ】
【秋茄子は】嫁のメシがまずい 54皿目【嫁に任すな】
【マズメシキケン】嫁のメシがまずい 55皿目【タベタラシヌデ】
【食べるな】嫁の飯がまずい55皿目【危険】
【綺麗な料理だろ】嫁のメシがまずい 56皿目【食えないんだぜこれ】
【片栗粉は】嫁のメシがまずい 59皿目【骨じゃねぇ・出汁でねぇ】
【マズメシ憎んで】嫁のメシがまずい 60皿目【嫁を憎まず】

【電子レンジは】嫁のメシがまずい 61皿目【パンドラの箱】
【秘蔵の日本酒】嫁のメシがまずい 62皿目【嫁の料理酒】
【発酵?】嫁のメシがまずい 63皿目【腐敗?】
【漬け物で】嫁のメシがまずい 64皿目【入院】
【一撃で】嫁のメシがまずい 65皿目【斃します】
【地雷戦隊】嫁のメシがまずい 66皿目【アレンジャー】
【地震・雷】嫁のメシがまずい 67皿目【火事・食事】
【西京焼きも】嫁のメシがマズい 68皿目【妻恐焼き】
【メシとして】嫁のメシがマズい 69皿目【軸がぶれている】
【食材に】嫁のメシがマズい 70皿目【贖罪しろ】

【いちご煮は】嫁のメシがマズい 71皿目【苺煮じゃねえ】
【嫁の親切】嫁のメシがまずい 72皿目【夫の毒物】
【てんぷらフガフガ】嫁のメシがまずい 73皿目【うどんドゥルドゥル】
【ネットレシピは】嫁のメシがまずい 74サラ目【地雷の宝庫】
【中国産か?】嫁のメシがまずい 75サラ目【嫁産か?】
【アレンジ・チャレンジ】嫁のメシがまずい 76皿目【大惨事】
【愛されレシピで】嫁のメシがまずい 77皿目【ホネかわスリム】
【生米生豚】嫁のメシがまずい 78皿目【生キノコ】
【前門の生】嫁のメシがまずい 79皿目【後門の消し炭】
【俺達】嫁のメシがまずい 80皿目【マーライオン】

【自信妻害】嫁のメシがまずい 81皿目【マズニチュード】
【焼くんじゃない】嫁のメシがまずい【それは家だ】 (82皿目)
【ハムにな〜れと】嫁のメシがまずい 83皿目【吊るされた鶏】
【誘導禁止】嫁のメシがまずい 84皿目【来客不要】
【刈って来るな】嫁のメシがまずい 85皿目【買って来い】
【おまえは】嫁のメシがまずい 86皿目【食わないのか】
【そっちが酢なら】嫁のメシがまずい 87皿目【亜鉛で勝負】
【反省したら】嫁のメシがまずい 88皿目【食べてね】
【ヨーグルトと豆腐が】嫁のメシがまずい 89皿目【出会っちゃった】
【さしすせそ】嫁のメシがまずい 皿目【せは洗剤】
【天高く】嫁のメシがまずい   皿目【俺痩せる秋】

 前回の紹介は2007年6月くらいでした。その段階では37皿目でしたので、約一年半で50皿くらい伸びた計算になります。

 どれも酷いことになっています。82皿目ではついに料理の枠を超えてしまいました。普通に大惨事です。

 嫁のまずいメシを食わされる根本的な原因は、家庭での料理は手作りであるべきだという思い込みだと思います。手料理にそこまで固執しなければならない理由はありません。

 料理が苦手ならお惣菜屋さんなどを活用すべきでしょう。衣類のように、料理も簡単な作業だけ家ですれば良いと思います。

 もちろん、料理が上手な人は手料理でも良いでしょう。また、アレルギーなどの場合、特定の食材を排除するため手料理でなければなりません。が、これらはごく一部の事例です。

 家族のために愛情を込めて手料理にしていると言う人もいるでしょう。が、それが独りよがりの自己満足であることは上記タイトル群が証明しています。

 多くの場合、料理下手なのに特別な理由もなく手作りにこだわっているだけです。しかも向上心もないため、いつまでもまずいメシです。

 世の中の嫁は早く勘違いに気付くべきです。草葉の陰から見守る夫たちのためにも。←死んでないだろ

2008年紅白歌合戦出場者決定

 今日は2008年紅白歌合戦出場者決定です。

 出場者の一覧はNHKのサイトを見てください。

 ついにモーニング娘。が出場しなくなりました。それどころかハロプロ系列が1組もいません。

 モーニング娘。は1998年に紅白歌合戦に初出場しました。2007年までは毎年出場していたので、ちょうど10年間連続出場したことになります。

 1つの時代を築いてきたモーニング娘。も終焉を迎えたのかと感慨深くなってしまいました。

 ちなみに、私は紅白歌合戦では毎年、北島三郎と石川さゆりの歌を楽しみにしています。年の瀬には演歌を聞きたくなる年齢になりました。

 もののついでに、裏紅白歌合戦を紹介しておきます。ネタをネタだと楽しめる人だけクリックしてください。白組司会と赤組司会の組み合わせからして秀逸です。

覚書 081122

鎌倉治子「諸外国の付加価値税(2008年版)」国立国会図書館調査及び立法考査局、基本情報シリーズ1、2008年10月。
・付加価値税の特質は次の3点にある。すなわち、1. 消費に課される間接税であり、最終的には消費者が負担すること、2. 課税ベースが広いこと、3. 生産・流通・販売の前段階で課税されるが、税の累積を排除するため、仕入れ段階に係る税額を控除できること、である。
・付加価値税の特徴を、所得税との比較で見ると、以下のような点が挙げられる。メリットとしては、1. 水平的公平性(同等の担税力をもつ者に同等の税負担を求められる)、2. 世代間公平性(勤労世代に税負担が集中しない)、3. 中立性(勤労意欲を阻害しない、貯蓄に対する二重課税がない)、4. 簡素性(特例措置が相対的に少ない)、5. 税収の安定性(景気の影響を受けにくい)、などがある。
・デメリットには様々なものがあるが、最も重要なのは、垂直的公平性(より大きな担税力ももつ者により多くの負担を求めること)が阻害され、所得水準に対して逆進的となることである。すなわち、高所得者に比べると低所得者は貯蓄より消費に振り向ける傾向が強いため、所得に対する消費税負担率でみると、低所得者の方が負担が重くなる。
・OECD加盟諸国全体で国民負担率・租税負担率(いずれも対GDP比)の推移と税収構造の推移をみると、1965年と2005年を比較すると、国民負担率は25.5%から36.2%に、租税負担率は20.9%から26.9%に上昇している。税収構造については、消費課税の割合は低減しているものの、付加価値税を含む一般消費税の割合は、16.6%から25.4%へと大幅に上昇している。これを所得構造の推移と合わせてみると、1980年頃までは所得課税を中心に負担が引き上げられ、それ以降は一般消費税、特に付加価値税を中心に負担が引き上げられてきたことがわかる。
・付加価値税の税率構造と逆進性への配慮とは密接な関係にある。なぜなら、付加価値税はすべての財貨・サービスに課税されることが原則ではあるが、そもそも消費課税になじまないもの(土地、金融・保険等)や政策的配慮を要するもの(医療、教育等)は非課税とされ、さらに、多くの国で、付加価値税の逆進性の緩和策として食料品等に対する軽減税率が採用されているからである。
・税率構造についてみれば、概して、第一世代のEU諸国ほど標準税率が高く、複雑な税率構造を採用しているのに対し、第二世代にあたるアジア・オセアニア諸国も一様ではなく、イギリスが逆進性に対する配慮からゼロ税率や広い非課税範囲を採用してきたのに対し、フランスやドイツは、ゼロ税率は課税ベースを狭めるとして、従来からイギリスを厳しく批判してきた経緯がある。
・付加価値税の制度は国によって大きく異なるため、その効率性を単純に比較することは難しい。その効率性をあらわす1つの指標として、C効率性(C-efficiency)がある。C効率性とは、「すべての国内消費が標準税率で課税された場合に得られる理念的な税収に対する、実際の税収の比率」として定義される。
・C効率性は、メキシコの30.4%からニュージーランドの96.4%まで、大きな開きがある。EU主要国はおおむね50%前後である。日本は65.3%であり、カナダ、韓国、ルクセンブルク、ニュージーランド、スイスなどとともに、効率性の高い国に属している。この理由は、標準税率が低いこと、非課税項目が比較的少ないこと、軽減税率やゼロ税率をもっていないことによる。
・C効率性という指標は、定義から明らかなように、税率構造に起因する税収減割合とも密接な関連をもつはずである。しかし、国によって、C効率性と税収減割合は大きく乖離している。乖離の要因は、C効率性に付随するものでもある。すなわち、C効率性は、税率構造(税率、非課税、課税ベース、免税点)という要素以外にも、税務行政の効率性、納税者のコンプライアンスなど様々な要素からの影響を受ける。これらの要素は独立のものではなく、相互に作用しあっている。例えば、標準税率が高ければ脱税の誘引が強まり、軽減税率が複数あれば税務当局と納税者の事務負担は重くなる、といったかたちである。
・イギリスにおける国税の主要税目としては、所得税、法人税、キャピタル・ゲイン税等の直接税と、付加価値税、炭化水素油税、たばこ税、酒税等の間接税とがある。地方税の唯一の税目は、居住用資産を対象とした居住者に課税されるカウンシル・タックスである。
・イギリスは、所得税の母国であって、EU諸国の中では伝統的に直接税の比率が高かった。しかし、サッチャー政権下で直接税から間接税へのシフトが進み、それ以降、保守党から労働党へと政権が交代しても、同じ路線が踏襲されている。間接税についてみれば、90年代前半までは付加価値税の税率の引き上げが、それ以降は、個別間接税の引き上げや気候変動税等のような新税の導入など、環境税的な税目の負担の引き上げが目立つ。付加価値税収への依存度は高まっており、対総税収比でみると、1975年の10.8%から、2006年は22.2%へと、大幅に上昇している。
・イギリスの付加価値税の特徴は、ゼロ税率を採用し、非課税の適用範囲も広くすることで、付加価値税の逆進性に配慮していることである。特に、ゼロ税率は、政策的配慮から、食料品、書籍・新聞・雑誌、子供用衣料など、幅広い品目に適用されている。軽減税率は、1994年に初めて導入され、対象範囲は狭い。これらの点は、ゼロ税率をもたず軽減税率を多用するフランスとは対照的である。
・イギリスの付加価値税は、ゼロ税率等による逆進性への配慮が手厚い反面、課税ベースは狭くなっている。税率構造に起因する税収減は、2007年度で433.0億ポンド(ゼロ税収分が291.0億ポンド、軽減税率分が32.0億ポンド、非課税分が110.0億ポンド)と見込まれており、これは付加価値税収(850億ポンド)の50%超に相当する。

松山幸弘「地域医療提供体制改革(IHN化)の国際比較」富士通総研経済研究所『研究レポート』No.329、2008年11月。
・米国、英国、カナダ、オーストラリアなど先進諸国では大胆な公立病院改革が実施されて地域医療提供体制の再構築が推進されている。その共通点は、広域医療圏単位で医療経営資源最適配分を行うためのガバナンス、意思決定の一元化の仕組みを構築していることである。意思決定一元化の経済的効果を高めるためには、異なる機能を持つ医療関連施設をネットワーク化することが有効である。米国ではこの地域医療ネットワークのことをIHN(Integrated Healthcare Network:統合ヘルスケアネットワーク)と称している。IHNの本質は、医療経営資源を共有することで重複投資を回避し、同時に医療の標準化を促すことである。英国、カナダ、オーストラリアが構築している地域医療ネットワークもこのIHNの本質を備えている。
・覚書注:表題や問題意識からはIHNが中軸の論点であるかのように見えるが、実のところ内容の焦点は公立病院における経営改革についてである。地域ごとの公立病院を管理する上位組織を新設あるいは集約する一方で、民間的経営を導入していく改革が紹介されている。IHNは本論では取り上げられていないといっても過言ではない。IHNを冠しているレポートである以上、地域における公立病院機能の統廃合や、それぞれの連携を強化する取り組みに立ち入るのが本筋だが、そこに到達する途中の上位組織を改革する段階で話が終わってしまっている。さらにいえば、本論では各国の医療制度の説明に大半があてられており、実質的な話の中心はそうした既存の制度説明である。各国の医療制度を調査して、これまで著者が知らなかった知識を獲得したは良いが、それを全部盛り込もうとして失敗しているレポートである。平たく言えば、論点が絞り込まれていない。意図的に水増ししているかもしれない。冒頭の課題設定に対応した内容に書き改めるか、内容に適合的な表題や課題設定を変更するべきである。

「英国におけるカーボンフットプリント規格(PAS2050)の発行」KPMG Japan『ニューズレター(環境・CSR関連)』2008年11月。
・2008年10月29日、英国規格協会(British Standard Institute:BSI)は、製品・サービスのライフサイクルにおける温室効果ガス(GHG)排出量、いわゆる「カーボンフットプリント」の策定に関する規格であるPAS2050を発行しました。
・CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6のほか、京都議定書で対象となっていない温室効果ガスも対象となります。
・カーボンフットプリントは、製品が製造される時点から100年までの期間におけるGHG排出量として算定されます。使用段階と廃棄段階のGHG排出は、製品が製造されてから何年か経過した後に生じることが多いですが、その場合、GHG排出量には一定の式を用いて計算された重み付け係数が乗じられます。
・PAS2050に対する準拠性の評価の方法としては、認定を受けた独立した第三者による認証、認定を受けた機関以外の者による検証、自己検証の3つの方法が挙げられていますが、消費者からの信頼を最も得やすいのは「認定を受けた独立した第三者による認証」であるとされています。

患者の幹細胞を利用した臓器移植

 今日は患者の幹細胞を利用した臓器移植です。

患者の幹細胞を利用し「気管支」移植に成功 欧州の医師

ロンドン──患者本人の幹細胞を使った「気管支」移植に成功したと、欧州の医師が19日付の英医学誌ランセットに発表した。気管の移植手術はこれまで、ほとんど実施されたことがない。医師らによると、患者には移植手術後の拒絶反応も見られず、免疫抑制剤も不要で、これからの移植治療に新しい光明を見出す画期的な方法だとしている。

気管支移植手術を受けたのは、数年前から結核で苦しむ、スペイン・バルセロナ在住のコロンビア人、クラウディア・カスティージョさん(30)。今年3月に左肺の症状が悪化し、気道確保のために定期的な通院が必要となって、2人の子供の世話も出来ない状態になった。

当初はカスティージョさんの左肺を切除するしか方法はないと考えられたが、バルセロナのオスピタル・クリニックの医師パオロ・マキアリーニ氏が、気管移植手術を提案。各国の医師らから協力を得て、移植手術の実施が決まった。

まず、イタリア・パドヴァ大学の医師が、ドナーから提供を受けた気管から表面の細胞や、免疫反応に必要な遺伝情報を持つ「主要組織適合遺伝子複合体(MHC)抗原」を除去。気管を「骨格」部分だけの状態にした。

この作業と当時に、英ブリストル大学ではカスティージョさんの腰から骨髄細胞を取り出し、幹細胞の培養を開始。上皮細胞や軟骨細胞を作りだして、イタリア・ミラノ大学の医師が、骨格部のみとなった気管の表面で培養した。

カスティージョさんの幹細胞から作り出された各細胞が気管表面をくまなく覆い、移植できる状態になった。そこで、今年6月にカスティージョさんの左肺気管支と、新しい気管支を交換する移植手術を実施した。

術後の経過は良好で、拒絶反応も見られない。カスティージョさんは2人の子供の面倒も問題なく見られるようになり、近ごろは夜通しダンスできるまで回復したという。

ニューヨークのマウント・シナイ病院で気管移植手術を2005年に実施したエリック・ジェンデン医師は、気管支表面の細胞が確実に定着するまで、約3年はかかると指摘しながらも「この手法はすばらしい」と評価。

ドイツ・キール大学の外科医パトリック・バルンケ氏も、「患者自身の組織を使うということが鍵」と述べており、今後の移植手術において、患者の幹細胞から分化させた組織を使う頻度が高くなるだろうとしている。

2008.11.19 Web posted at: 20:49 JST Updated - CNN/AP
http://www.cnn.co.jp/science/CNN200811190030.html

 幹細胞を活用した臓器移植に成功したという記事です。幹細胞による臓器造成の発展段階を示す事例だと思います。

 現在の臓器移植の問題点は他人の臓器を移植することです。これには倫理的な論点も含まれますが、それ以上に、記事にもあるように、移植された臓器を患者の免疫系が拒絶してしまうという臨床的問題のほうが決定的です。

 一般に移植医療は、難病の患者さんを救う素晴らしい医療技術であると喧伝されています。しかし、一方では、移植された臓器を免疫系が拒絶しないように、免疫抑制剤を服用し続けなければならないという限界があります。

 免疫を抑制するわけですから、多くの場合、感染症などに対する抵抗力が極度に低下します。そのため深刻な疾患を抱え込む可能性が著しく上昇します。臓器移植により元々の病気は取り除かれることになりますが、一方では別の病気におびえなければなりません。

 臓器移植には、他人の臓器を利用する限り、不可避的な問題点があるのです。しかし、幹細胞を活用した臓器造成の技術が向上し、その臓器を移植できるようになれば、従来の臓器移植がもつ限界は著しく軽減するでしょう。

 今日の記事は臓器移植の新しい展開を示しています。幹細胞からの臓器造成という再生医療と組み合わせることが、今後の臓器移植における中軸的な技術となっていくでしょう。

 ただし、今日の記事についても消極的な部分を指摘しなければなりません。1つは、完全な臓器造成ではないことです。他人の気管支を土台にしています。2つは、気管支という臓器であることです。肺や心臓といった基幹的な臓器ではありません。3つは、各国の医師が協力していることです。通常の患者ではありえない取り組みでしょう。

 決して看過できない消極面があるとはいえ、今後の臓器移植の方向性を現す事例であると思います。

2009年WBC侍ジャパンの予想打順

 今日は2009年WBC侍ジャパンの予想打順です。

1番 右翼 イチロー
2番 中堅 青木
3番 一塁 小笠原
4番 DH 松井秀(松中)
5番 三塁 村田
6番 遊撃 中島
7番 捕手 阿部(城島)
8番 左翼 福留
9番 二塁 片岡

 私の予想ではなくて、某所からの引用です。MLBで活躍する日本人選手が少ないのが気になりますが、予想打順としては標準的ではないでしょうか。

 ただ、直近の成績や状態から評価すると、少なくとも先発としては不適切な選手が何人かいるとは思います。

 まず松井です。ひざの手術からの回復が間に合わないでしょう。本人にとっては最後の機会かもしれないので出場したいでしょうが、中途半端な状態なら必要ないと思います。

 福留も必要ないでしょう。前回の代打本塁打という功績を評価したいですが、今年のMLBでの成績を鑑みると、先発には入れられないと思います。

 小笠原は今年の終盤戦において不振でした。WBCまでに調子を取り戻すことができれば良いのですが、現状では出場は厳しいのではないでしょうか。

 松井や小笠原を出場させるくらいなら、松中と新井を入れるべきでしょう。福留の代わりは難しいですが、強いて言えば、森野が最適と思われます。

 他では、青木、中嶋、片岡よりもMLBで活躍している岩村、井口、松井稼の活用を検討しても良いのではないかと思います。おそらくベンチには入れるでしょうが。

 イチロー、村田、阿部については異論はありません。彼らはいつMLBに移籍してもおかしくはないくらい優秀な選手だと思います。MBCでも活躍を期待しています。

覚書 081116

持丸伸吾・小池純司「成長する英国のパブリックサポートサービス 絶えざる仕組み改革によるサービス水準向上と市場創出の実現」『知的資産創造』2008年9月号。
・日本でも広く紹介されているPFI(Private Finance Initiative:民間資金・ノウハウによる公共施設などの建設・運営)については、今後大きく成長することはないとの見方が多い。著者らがインタビューした財務省では、PFIにはメリットはあるものの、契約などにかかるコストが大きく、事業の内容によってはPFI以外の手法を活用する例が増えるであろうことが指摘された。
・そうしたことから、契約等にかかるこのようなコストなど、自治体がサービス改善を進める上で障害となる事項を改善することも盛り込んだ「将来のための学校建設プログラム(Building schools for the future)」をはじめ、新たなパートナーシップの仕組みが作られている。

村瀬徹「歩いて楽しむイギリスの公園」『自治体国際化フォーラム』2008年8月号。
・イギリスには、日本で言う国立公園に当たるナショナルパーク、王室の私有地であり国(王立公園庁)が管理するロイヤルパーク、そのほか、県や市が管理する公園やオープンスペースがあり、通常一般市民が誰でも利用できます。国の場合、予算はレクリエーション、スポーツという項目から支出されます。ナショナルパークはロンドンにはありませんが、ロイヤルパークは皆ロンドンにあります。

猿渡英明「BOE異例の大幅利下げに踏み切る 2008年11月BOE(イングランド銀行)金融政策委員会会合の概要と評価」新光総合研究所『欧州経済ウォッチ』No.08-24、2008年11月7日。
・BOE(イングランド銀行)は11月6日のMPC(金融政策委員会)会合において、異例の1.5%の大幅利上げに踏み切った。金利水準としても1955年以来、約半世紀ぶりの3.00%となる。BOEは金融市場の混乱による流動性の逼迫や信用収縮に対して強い警戒を示しており、景気が急速に悪化している現状に対して、大幅な利下げが必要と判断した。一方で、9月のCPI(消費者物価)は前年比プラス5.2%とターゲットを大きく上回って推移しているものの、商品市況の調整や景気減速により、中期的には2%を下回るリスクがあるとして、インフレに対するリスクバランスを上方(アップサイド)から下方(ダウンサイド)へと引き下げている。
・英国のGDP成長率は7-9月期に前期比マイナス0.5%と1992年以来のマイナスとなった。急速な景気減速はその後も続いており、1. 住宅市況の悪化により、住宅投資や個人消費が減速、2. 金融部門を中心にサービス部門の減速が著しく、設備投資も弱含み傾向、3. 海外景気の減速により輸出の伸びも鈍化、といった具合に、ほぼ全需要項目において減速感が鮮明になっている。英国の金融機関は、米国発のサブプライム関連による損失に加え、自国の不動産市況の悪化からも損失を被っている。また、短期金融市場の逼迫や信用コストの上昇により、資金調達コストの負担が重くなっており、この結果、住宅ローンを中心にほぼ信用収縮といってよい状況が引き起こされている。金融部門の損失拡大・業績悪化が信用収縮を経て実体経済へと波及、その実体経済の悪化がさらに金融部門の首を絞めるという悪循環の構造は、ほぼ米国と同じといってよい。

岡久慶「イギリス 政党及び選挙法案」国立国会図書館調査及び立法考査局『外国の立法』2008年10月。
・2008年7月17日、司法省が提出した政党及び選挙法案は、長らく懸案となっていた政治資金問題に、一定の回答を示す内容である。法案は、選挙委員会の監査権限を強化し、寄付者の身元公開を徹底し、選挙期間外における候補者の支出を制限する等の規定を盛り込んでいる。法案に関しては、与野党間の激しい論争が予想される。

後藤あす美「英国経済見通し 結局は2009年年央が正念場」大和総研『海外情報』2008年11月12日。
・11月6日、BoEは金融政策委員会で、150bptという大幅な利下げを実施することを決定した。これによって、政策金利は3.00%となった。市場予想は50bptの利下げが主流で、一部では100bptとの予想もあがっていたものの、150bptの利下げは予想外だった。政策金利3.00%とは1955年1月以来の水準であり、戦後最悪の金融システムの混乱と危惧されている実態を反映している。10月8日にもBoEは主要中銀と50bptの協調利下げを断行しており、稀に見る短期間での大幅利下げ局面となっている。11月の大幅利下げを受けて、マーケットでは、2009年第1四半期まで集中的に利下げが行われるのではとの見通しが強まった。
・金融市場の混乱は、確実に実体経済を蝕み始めている。金融機関による貸し渋り・貸しはがしが起きており、中小企業を中心に企業の倒産が増加してきている。タイムズ紙は、中小企業の倒産が1日当たり40社と、信用収縮が始まる前と比較して7倍に拡大したと報道した。
・企業倒産増加の波は、雇用者数減少・失業者数急増というトレンドを作り出している。特に倒産件数が増加している金融・不動産・建設関連は、雇用の28%を占めており、企業倒産の雇用市場への打撃が懸念されている。
・失業者申請数は、9月時点で93.9万人であった。前月比でプラス3.2万件。6ヶ月以内に失業保険を申請した25歳から49歳の男性が圧倒的な伸びを見せている。重要な労働力ではあるが、その分高給となっている層にメスを入れている訳であり、事態の深刻さを物語っている。
・家計の金融資産はピークの2007年末と比較すると、2008年の第1四半期の時点で1700億ポンド(約35.7兆円)以上減少している。英国の家計は、株式と投信という金融市場に連動しやすい金融資産を15%程度(2008年第2四半期時点)保有している。だが、株安の波を受けて、キャッシュ化が加速。2008年第2四半期は2007年末比で株式・投信残高がマイナス663億ポンドである一方、現金・預金資産残高がプラス476億ポンドとなっている。また保険・年金基金への預け資産残高はマイナス1565億ポンドであり、2007年第4四半期から2008年第1四半期にかけて積立金を崩して手元資金に変え、住宅ローン返済等に充てていた可能性が考えられる。FTSE100を例に挙げると、2007年末起点で2008年6月末の騰落率は12.9%となり、2008年10月末時点での騰落率は32.2%と下落率が拡大。家計金融資産の更なる目減りが予想される。

吉田健一郎「厳しさを増す英国経済の現況 政策金利は53年ぶりの低水準へ」みずほ総合研究所『みずほマーケットインサイト』2008年11月11日。
・11月6日に開催された英中銀金融政策決定委員会(MPC)では、政策金利が1.5%引き下げられ、3%とされた。金融市場の予想は0.5%?1%の利下げとされていたことから、今回の大幅利下げは大きな驚きをもって受け止められた。インフレリスクの後退と景気後退リスクの高まりが大幅利下げ決定の理由とみられる。なお、3%という水準は53年ぶりの低水準である。
・同時に発表された声明文のなかでは、英国内の経済状況について、生産、家計、住宅投資など全ての経済活動が大きく落ち込みをみせていることが述べられると同時に、商品価格の下落とともにインフレリスクは後退したとされた。同時に、先行きについては「インフレターゲットを下回る重大なリスク」に言及することで、先行きの利下げに対して含みを持たせた(覚書注:「同時に」が多用される悪文である。しかもそれぞれの意味内容が異なっている。著者の語彙が少ないのだろう)。
・声明文の景気に対する厳しい認識が示すように、最近の英景気の減速傾向は顕著なものとなっている。7?9月期の実質GDP成長率は前期比マイナス0.5%となり、16年ぶりのマイナス成長となった。金融市場混乱の影響を受けて、個人消費の減速を中心に全般的な需要減退が起こっていると考えられる。先行きについても、IMFが発表した世界経済見通しにおいて、2009年の英国実質GDP成長率は、マイナス1.3%と先進国(2009年同成長率マイナス0.3%)中最低の予測がなされている。
・個人消費もこれまでの株価と住宅価格の下落により既に大きな打撃を受けている。例えば、2008年初以降、英国の株式時価総額はおよそ7000億ポンド減少している。2006年時点での英国の個人部門の株式保有シェアは13%であり、単純計算ではこの間910億ポンドの個人資産が失われたことになる。

覚書 081115

「最低賃金制度をめぐる欧米諸国の最近の動向」『Business Labor Trend』2008年10月。
・イギリスでは、旧制度による特定業種・職種の最低賃金が1993年に廃止された後、政府による賃金規制のない期間があったが、労働党政権下の1999年に全国一律の法廷最低賃金が導入された。その歴史はまだ10年あまりと短いものの、労働党はこの最低賃金制度を最も成功した政策の一つとして自ら評価している。最低賃金額の設定が最も懸念された雇用面などへの影響を配慮して行われているほか、実際上の決定機関である低賃金委員会が調査研究を通じて現状把握につとめるなど調整機能を十分果たしていることから、これまでのところ最低賃金制度を大きく見直すような動きは出ていない模様である。
・最低賃金制度の導入は、低賃金層の賃金水準の改善を通じて、所得の再分配効果をもたらしたとの見方が一般的だ。また、賃金水準に関してその恩恵をもっとも被ったのは、低賃金層の半分近くを占める女性パートタイム労働者であるといわれ、この層の賃金水準の改善を通じて、男女間の賃金格差の縮小につながった。
・制度導入に際して保守党や企業などが主張した雇用に対するマイナスの影響や、若年層に労働需要がシフトすることにより、基本賃率を適用される22歳以上の労働者が職を失うといった懸念は、これまでのところ現実化していない。この間の雇用水準は、長期的な景気の好調に支えられて拡大しており、雇用状況はむしろ若年層において若干の悪化がみられる。低賃金委員会は、労働力調査のデータから、この数年の雇用増の大半は最賃の影響をより受けやすいとみられる小規模企業において生じている、と説明している。また、企業の収益や生産性に対する悪影響は観察されていないと報告している。
・最賃制度に対する近年の労使の関心は、最低賃金の水準に関するものが中心となっている。低賃金委員会が改定額の検討に際して毎年実施している関係者からの意見徴収に対して、使用者側から毎回寄せられる見解は、最賃引き上げによって生じるコストが企業の経営に大きな負担となっており、これを捻出することが年々難しくなっている、というものだ。このため経営側からは、雇用などへの影響をみるためにも、改定の間隔を例えば隔年などにするなどの主張がみられる。
・対する労働組合側は、企業の利益率は記録的に上昇しており、最賃の引き上げは企業にとって十分対応可能な水準にあるとしている。むしろ、低劣な賃金水準を理由とする高い離職率が、新たな従業員の訓練によるコストを増加させているとして、「生活賃金」の考え方に基づく最賃額の一層の引き上げを主張している。さらに、インターンシップや職業経験プログラムを通じて就業している若年層に対して、最賃未満の賃金の支払いや無給で就労させるなどの違反事例が多発しているとの指摘や、年齢区分に応じた減額措置は、若年層に対する年齢差別の容認だとの批判もある。

桂畑誠治「英国 BOEは政策金利を過去最低水準まで大幅引き下げ」第一生命研究所『Global Watching』2008年11月7日。
・11月5、6日に開催されたBOEのMPC(金融政策委員会)では政策金利をマイナス150bp引き下げ3.00%とすることを決定した。市場予想はマイナス50bpの利下げだった。政策金利は過去50年超で最も低い水準となった。また、BOEは1997年に独立して以来、50bpを超える利下げを行ったことがなかった。今回の大幅利下げの背景として、過去2ヶ月で内外の経済活動が急激に悪化したうえに、商品市況が急落したことから、英国経済の見通しが著しく悪化、インフレ見通しが大幅に下方シフトしたことが挙げられる。
・声明文では、最近数週間でインフレに対するリスクは確実に下向きへとシフトしたため、委員会はインフレ見通しを下方修正、さらに現在の市場金利ではインフレが目標を下回る大きなリスクがあるとした。委員会はCPI上昇率が中期的に2%という目標を達成するために金利の大幅な引き下げが必要と判断し、金利を1.5%ポイント引き下げ3.0%とすることを決定した。
・足元の英国景気情勢では、7?9月期実質GDP成長率(速報値)が金融危機を受け銀行、建設、製造業などが悪化し前期比マイナス0.5%(前期同0.0%、前年同期比プラス0.3%)と92年4?6月期以来、約16年ぶりのマイナス成長となった。ただし、前期もほぼ横ばいだったことや月次の統計の悪化から既に91年以来のリセッションに陥っていると判断される。
・インフレに関しては、9月のCPI上昇率はエネルギー・食品高の影響を反映し前年比プラス5.2%と目標値を大幅に上回っている。しかし、「夏半ば意向、商品価格は急激に下落し、原油価格は半値以下に下がった。したがってインフレ率は早晩、急低下すると見られる」と足元で高止まりしている消費者物価指数上昇率は懸念材料ではないとの見方を示した。
・英国政府は財政による景気対策に前向きになっている。ブラウン首相が「政府借り入れ急増は景気刺激のために正当化される」と話すなど、財政による景気対策に積極的になっている。また、ダーリング財務相は「英国は住宅やエネルギー、中小企業関連の支出を優先するとともに、学校や病院の建設プロジェクトを推進する」との考えを示した。マンデルソン民間企業担当相は「可能な限りあらゆる手段を講じて、この時期を切り抜けるつもりである。実体経済や公共サービス、インフラへの政府支出や投資を維持する行動を取った場合のコストと比べて、ほとんど何もしないコストの方が高くなるだろう」と財政による景気対策の必要性を指摘した。
・一方、野党保守党の影の財務相であるジョージ・オズボーン議員は「銀行を救済したのは正しいが、今や実体経済を救済し雇用喪失を防ぐ必要がある」と、政府の姿勢を支持する考え方を表明しており、大型の景気対策が策定される可能性が高い。
・まもなく発表される「プレ・バジェット」で大型の景気対策を含む正式な歳出計画が発表される。もっとも、2009年度予算は2009年4月スタートになるため、景気対策の効果がでるまでにタイムラグが生じる。このため、2009年のマイナス成長は回避できない公算が大きい。

緒方俊則「日本の環境行政と自治体の役割」自治体国際化協会『分野別自治制度及びその運用に関する説明資料』No.7、2008年3月。
・2007年度の環境保全経費は総額2兆949億円である。環境保全経費の総額は、2001年度の3兆484億円をピークとして現象傾向にある。この経費は国の機関が直接執行するものばかりではなく、自治体の事業費として交付され、自治体が最終的に執行する額も含まれている。
・事項別にみると、「水環境、土壌環境、地盤環境の保全」が最も予算額が多く(全体の39.1%:約8195億円)、次いで「地球環境の保全」(同23.4%:約4912億円)、「自然環境の保全と自然とのふれあいの推進」(同13.6%:約2851億円)の順となっている。
・省庁別では、国土交通省(全体の53.8%:約1兆1267億円)、農林水産省(同18.2%:約3819億円)、環境省(同10.6%:約2215億円)の順となっている。
・環境関係の自治体の決算額について、毎年度、環境省が「地方公共団体公害対策決算状況」としてとりまとめ公表を行っている。この資料によると、2005年度に自治体が支出した公害対策経費は3兆2198億円である。そのうち公害防止事業費が89.0%と最も高い構成比となっており、その内訳として下水整備費の占める割合が大きい。
・都道府県と市町村の比較では、市町村の支出額が都道府県の3倍以上となっている。これは、下水道や廃棄物処理施設の整備等の公害防止事業について、主として市町村において実施されているためである。
・多くの自治体において、今日、環境行政を推進する枠組みとして、環境基本条例(地域の環境政策の基本を定める条例)の制定が進められてきている。国の環境基本法の制定(1992年)が契機となって広がってきたものであるが、2006年4月1日現在831自治体が制定している。環境省が2006年度に実施したアンケート調査によると、ほとんどの都道府県、政令市において制定されており、その他の市町村でも、43.2%の割合で制定されている。条例の内容は自治体によって特色が見られるが、環境行政に関する基本理念、自治体・事業者・住民の責務、環境に関する基本計画の策定、環境行政の推進手法・推進体制、環境白書の作成公表などは概ね共通して見られる事項である。条例に基づく計画(環境基本計画)には、経過の目標、計画期間に重点的に取り組む施策、各分野ごとの推進プログラム、計画の進行管理手法などが盛り込まれており、具体的な数値目標のもと進行管理が行われている。
・2004年度に全国の自治体の窓口で受け付けた公害苦情件数は94,321件となった。近年、増加傾向にあったが、2004年度は5年ぶりに減少した。主たるものは典型7公害(大気汚染、水質汚濁、騒音、悪臭、振動、地盤沈下、土壌汚染)に対する苦情であり、2004年度では65,535件、公害苦情全体の約7割を占める。典型7公害のうちでは、最も苦情が多いのが大気汚染の24,741件(37.8%)であり、騒音15,689件(23.9%)、悪臭13,984件(21.3%)、水質汚濁8,909件(13.6%)などとなっている。

神代和欣「誰が最低賃金で働いているのか? 開発途上国からの輸入増加が低賃金業種に及ぼす影響」『Business Labor Trend』2008年10月。
・わが国では、いったいどのような人々が最低賃金で働いているのであろうか。一般的には、パート、アルバイト、フリーターなどの非正規労働者が多いものと思われている。実際、実証的な研究の中にも、女子パートタイム労働者の過半数は最低賃金プラス100円以内の範囲で働いている地域が多いという研究もある。欧米では職種別の賃金相場がかなりはっきりしていて、とくに掃除人や雑役労働者(レーバラー)、ファーストフードの店員などは、最低賃金そのもので働いていることが多い。しかし、日本では、これらのあまり技能や熟練を要さない職種でも、働いている企業や事業所の規模、系列によって最低賃金よりはかなり高い賃金を支払っている場合が多いように見受けられる。
・いったい、わが国では、どのような労働者が最低賃金あるいはその近傍で働いているのであろうか。この点に関する、これまでで最も詳細な分析は、労働政策研究・研修機構『日本における最低賃金の経済分析』(労働政策研究報告書No.44、2005)であろう(ただし、残念ながらこのデータには5人未満零細企業は含まれていない)。この研究は2003年の厚生労働省『賃金センサス』の個表を分析して、全国平均では一般労働者の0.7%、パートの3.3%が地域別最低賃金未満で働いており、また地域最賃プラス10%未満の者はそれぞれ1.7%、17.1%であったと述べている。地域別には、北海道、青森、沖縄、宮崎、大分、長崎などでその割合が高く、とくにパートの場合には、地域最賃未満の者が沖縄では9.2%、大分では6.5%、北海道では6.3%にも達する。性別、年齢階級別には、20歳未満の若年層の3%前後、高齢女性では5.3%が地域最賃以下である。これらの低賃金層のうち、母子世帯の母親や低年金・無年金者など生活保護と重なる人々がどのくらいいるのかは分からない。
・さらに、産業中分類で見ると、繊維、衣服等、家具・装備品、紙パ・紙加工品、金属製品、武器製造業などで、女子だけでなく男子パートの地域最賃未満労働者の割合が高い。他にも、鉱業、鉄道・道路旅客輸送、保険業、洗濯・理容・浴場、自動車整備、宗教など、非製造分野にもかなり低賃金労働者がいるが、気になるのは、前者のグループに中国や開発途上国からの輸入品との競争に晒されている業種が多いことである。
・覚書注:最低賃金以下で働く労働者は全体のごく一部であり、その大半は地方にいる労働者である。途上国などで製造できるものを日本でも製造しようとして、途上国並みの賃金を削減せざるをえないのが現状であろう。産業構造の転換、高度化がうまくいっていない結果である。そうした地域の産業が最低賃金の引き上げに対応できるだろうか。産業構造の温存が困難である以上、最低賃金を改善することよりも、労働移動を促進する方策を重視するべきではないだろうか。

橘木俊詔「最低賃金のアップには発想の転換が必要」『Business Labor Trend』2008年10月。
・日本の最低賃金が低いことは国民の多くの人が知る時代となった。最低賃金で働いて、すなわち時間あたり700円前後のフルタイムで働いたとしても、月額12?13万円の月収にすぎず、これだけの所得であれば食べていけない、ということも皆の知るところとなった。国が働くことのできない人に、最低限の生活を保障する生活保護制度の支給額より、最低賃金で働く人の月収額が低いことも皆の知るところとなった。
・なぜこのように低い最低賃金が日本で認められてきたのであろうか。2つの重要な理由がある。第1は、最低賃金あたりで働く人は主として既婚女性のパートタイマーか若者なので、夫や親がいるから生活にこまらない、とみなされてきた。低い賃金でも生活に困らないので、文句もないだろうと思われてきた。しょせんは小遣い稼ぎのパートタイマーなので、高い賃金は不必要と発言する経営者のいることからも、これがわかる。
・第2は、最低賃金を上げると雇用が減少しかねないし、企業倒産に至りかねないので、それを避けるために経営側への配慮が強かったのである。実は雇用や倒産への効果に関して日本ではまだ実証研究が少なく、よくわかっていないと言ったほうが正しい。
・第1の点は、日本が離婚率と未婚率の上昇を経験していることにより、一人の勤労所得だけで食べていかなければならない人が増加しており、その人々の生活苦はワーキングプアとして多くの存在する時代となった。最低賃金を上げることは、人々の生活を保証するために必要となっている。
・第2の経営側への配慮を考えてみよう。最低賃金を時間あたり2000円以上出しているデンマークの企業の人から、「そもそも労働者が生きていくだけの賃金を出せない企業は、社会において存在意義のない企業とみなしてよい。あるいは非効率性の目立つ企業なので、市場から退場すべきだ」という目から鱗の落ちる話を聞いた。イギリスやフランスの最低賃金も1200円から1300円の額であり、英仏でもこのような理解があるのかもしれない。
・覚書注:最低賃金以下しか賃金を出せない企業に存在意義はあるのか、という視点は面白い。この文脈からすると、最低賃金の上昇により企業倒産が増加することは、経済的な損失ではなく、健全な経済循環であることになる。ただし、企業倒産した分を補充する企業参入が確保されなければ、結果としては失業が増えるだけになる。いずれにしても、最低賃金の議論は、労働者の生活確保のためというよりは、非効率的な企業を切り捨てること、その一方で高水準の賃金を支払うことができる企業を育成すること、そうした産業構造の転換と高度化に関する論点が中軸にならざるをえないという印象を受けた。

森村進「失業者を増やしたければ最低賃金を引き上げなさい」『Business Labor Trend』2008年10月。
・覚書注:最低賃金を引き上げると、最賃以下で働かざるを得ない人が失業するので、むしろ失業率が増える、と主張している。が、具体的な話がないので、いったい何に基づいて議論しているのかよくわからない。例えば、最賃以下で働かざるを得ない人として低学歴低熟練の若者層が挙げられているが、そうした人々がどれくらいいるのかを示さないまま、失業者が増えると主張している。一般の議論にそうした若年層が念頭に置かれていないという限界はあると私も思うが、何も具体的な数値を出さずに失業者が増えると最低賃金の引き上げに反対している理由がわからない。もう少し建設的な議論ができないものか。

覚書 081111

井川博「日本の地方分権改革15年の歩み」自治体国際化協会『アップ・ツー・デートな自治関係の動きに関する資料』No.4、2008年3月。
・2005年度の数字でみると、都道府県と市町村を合わせた地方政府の歳出純計額は89.4兆円であり(重複分を除いている)、中央政府の歳出額61.2兆円の1.5倍となっている。つまり、地方政府が、多くの仕事を行う中で、日本の政府全体の歳出額の60%は、地方政府によって行われている。
・中央政府、地方政府の歳出を目的別でみても、防衛費や年金関係の経費は別として、国民生活に直接関連する経費の大半は、地方政府によって支出されている。衛生費では94%、学校教育費では85%、司法警察防衛費では79%が、地方政府によって支出され、その他の行政分野においても、その大半が地方政府によって支出されている。
・都道府県、市町村の歳出規模は、ほぼ同額となっている。都道府県が48兆円、市町村が49兆円となっている。
・都道府県は、高等学校を設置・運営するほか、市町村が設置する小中学校についてもその教員の給与費を負担している。これが、都道府県の教育費がおおい理由となっている。また、都道府県は、商工業や農林水産業などを育成・発展させるため、多くの仕事を行っており、市町村に比べ商工費や農林水産業費が多くなっている。
・一方、市町村は、老人福祉、児童福祉、生活保護などに関する多くの仕事を行っている。そのため、市町村の民生費は、都道府県に比べ3倍近くの額となっている。また、ごみの収集・処理の業務も、市町村によって基本的に行われるため、市町村の衛生費の額が大きくなっている。
・都道府県は、県道の建設、河川の管理、大規模な都市計画事業などの公共事業を行っており、そのための経費が土木費で支出されている。一方、市町村では、指導の建設などの公共事業もおこなっているが、土木費の大半を都市計画事業のための経費が占めている。
・また、警察行政は、都道府県により行われ、消防行政は市町村によって行われることとされている。
・中央政府の事務とされる機関委任事務については、a) 都道府県知事や市町村長に対する中央政府の大臣や知事の包括的な指揮監督権があり、b) 地方政府の条例が制定できない、地方政府の議会の調査権が十分及ばないなど、地方政府の権限が制限されていた。また、都道府県の事務の70%から80%、市町村の事務の30%から40%が機関委任事務であるとの指摘もなされていた。
・こうしたなかで、機関委任事務に対しては、a) 中央政府と地方政府とを上下の関係におくものである、b) 中央政府の細かい指示があるため、住民の要望があっても柔軟に対応できない、c) 各中央省庁により各行政分野ごとに指示等がなされるため、総合的な政策が実施できない、d) 各地域の実情を踏まえて施策ができない、などの批判がなされてきた。
・一方、地方財政面では国庫補助負担金が、地方政府の政策形成・実施の自主性を制約するとして、多くの批判がなされてきた。
・国庫補助負担金には、国家的な見地から必要とされる施策の確保に役立つといった効用(メリット)があるものの、a) 補助負担金の画一的な交付条件が効率的な事業の実施を妨げる、b) 地域にとって優先順位の低い事業が行われる、c) 補助負担金の交付手続きが煩雑であり、多くの事務的なコストが発生する、d) 地域の創意を生かした自主的な行財政運営を妨げる、などの問題があり、国庫補助負担金の整理・合理化が必要であるとされてきた。
・また、政府支出の60%を地方政府が占めるなかで、地方税源の充実も大きな課題となっていた。地方税は地方政府の総支出、総収入の約3分の1というなかで、地方分権論者からは、地方政府の自律的な財政運営を確保するためにも、中央政府から地方政府への税源移譲を行い、地方税収入を増加させる必要があると主張された。
・地方分権一括法は1999年7月に成立し、2000年4月1日から施行された。地方分権一括法では、これまで大きな課題とされてきた、a) 機関委任事務制度の廃止、b) 中央政府の地方政府に対する統制、関与の見直し、c) 中央政府と地方政府が分担すべき役割の明確化、d) 地方政府への権限委譲、e) 自治体組織の必置規制の見直しなど、地方政府の自主性、自立性の拡大を目指した大規模な改革が行われた。
・中央政府と地方政府との関係における地方自治(団体自治)の充実に対する第1次分権改革の評価は高い。しかし、地方自治のもう一の重要な要素である住民自治の面での評価は、必ずしも高くない。日本の市町村は、明治の大合併、昭和の大合併を経て、その規模を拡大してきた。また、厳しい財政状況のなかで、住民との協働による地域経営が重要となっている。
・地方財政制度面における改革についても、その評価はかなり厳しい。第1次地方分権改革においても、地方債の許可制度の見直しのほか、法定外目的税の創設や法定外普通税の許可制度の緩和等の改革が行われ、一定の効果(成果)を挙げている。しかし、地方財政制度改革の最大の課題とされる国庫補助負担金制度については、十分な改革が行われていない、との評価が多い。
・地方財政改革(三位一体の改革)に対しては、3兆円の地方政府への税源移譲が達成されたことや、国と地方政府との協議の場が設けられたことなどを積極的に評価する意見もある。
・しかし、中央政府からの要請により地方六団体が作成した改革案が尊重されず、国庫補助負担金の改革が地方政府の自主性、自立性の拡大に十分結びついていないとの批判も強い。義務教育国庫補助負担金の改革にみられるような補助負担率の引き下げによる国庫補助負担金の削減では、地方政府の施策の形成・実施における自由度は増加しない。むしろ補助負担金事業の実施に伴い地方政府が負担する一般財源が増加し、地方政府の行財政運営の自主性、自立性が減少するおそれがある。
・また、三位一体の改革の実施に伴い、地方財政計画の規模は、2001年度をピークに5年連続のマイナスとなり、それに伴い実質的な地方交付税の総額が大きく圧縮されるなかで、a) 地方政府の行財政運営、施策の実施が困難になってきている、b) 地方分権より財政再建が優先されるのではないか、との批判も強い。こうした理由から、三位一体の改革に対する地方政府関係者の評価は、必ずしも高いものとはいえない。

齋藤憲司「政治倫理をめぐる各国の動向」『レファレンス』2008年9月号。
・誰が倫理を監督するかについては、議会特権という原則を考慮しなければならない。
・議会特権は、2つの要素を持っている。その1つが議会における発言の自由で、議会内の討論について保護を与えるという原則であり、もう1つが、議会の自律権で、議会は議員の行為を規制し、議員に規律を遵守させる権限を有し、議会の判断が最終判断で裁判所などの外部の審査を受けることはないという原則である。これらの原則は、いずれも歴史的に確立されてきた。
・英国の場合は、1689年の権利章典第9条に起源を有し、議会における議員の行為について外部の機関が異義を唱えることはできないと解されている。「下院が至高の存在であることにより、自律は、憲法上の重要性を有する。至高の期間としてその責任を果たすために、議会は、外部からの干渉から保護されるように、特権の自由を有する」のである。したがって、これまでに収賄事件で裁判所により有罪判決を下された議員はいない。アメリカでは、1788年の連邦憲法第1条第5項で、各院が除名を含めその議員を罰することができると規定している。
・議会特権という原理からは、議会が自らの倫理を規制する機関を設置し管理するための機能を有するのは自明である。これまで、英国議会とアメリカ連邦議会は、議会特権という立場から、議員の行為が外部の組織の権限に服従すべきではないとしてきた。しかし、たび重なる政治スキャンダルによってこの考え方も変容を迫られている。
・倫理違反事件について、議員は同僚の議員が起こした倫理問題の審議に加わることとなるが、そこには、同僚議院との友情(あるいは反感)と真理追求の利益との利益衝突の問題が生じる。議員が同僚の議員を裁くこと自体が「手続の独立、公正さと説明責任に関して合理的疑いを生ずる」のである。これは、「制度上の利益衝突」といっても過言ではない。
・これを回避するために、英国とカナダでは、外部要素としてコミッショナー制度を導入し、第三者の関与を認め、外部に開かれたものに移行した。このほかの国でも、外部に開かれた制度に転換しつつある。

片山信子「社会保障財政の国際比較 給付水準と財源構造」『レファレンス』2008年10月号。
・わが国では、社会保障の全体的な財政の姿を表わす概念として「社会保障給付費」を用いている。平成20(2008)年度予算ベースでの社会保障給付費の総額は95.7兆円である。部門別にみると、年金が50.5兆円、医療が29.8兆円、福祉その他が15.4兆円である。この社会保障給付費の範囲は、ILO(国際労働機関)の基準に基づくものである。
・給付水準と給付構造について次のようにまとめられる。スウェーデン、フランス、ドイツ、デンマークは、社会支出合計値が大きい。日本はニュージーランド、カナダ、オーストラリア、アメリカと共に先進諸国の中では社会支出合計値が小さい。イギリスやオランダは両者の中間である。年金・介護という高齢者政策、さらに「保健医療」への給付が各国とも共通して、社会支出の非常に大きな部分を占めている。日本と北米は、北欧諸国やフランスなどと比べて、「家族」や「積極的労働市場政策」など新しい社会保障への給付が小さく、「年金」や「保健医療」など伝統的な社会保障の占める割合が特に高い。また、日本は「障害・労災・傷病」の給付が小さい。
・財源の特徴については以下のことが言える。ビスマルク型(保険料方式)は租税比率を増やし、ベバリッジ型(税財源方式)は社会保険料比率を増やす傾向にあり、財源面での両者の差は縮小傾向にある。ビスマルク型の中で特にフランスとドイツとイタリアは、この動きが顕著である。雇用主の保険料比率を大きく下げているのはイタリアである。社会保険料負担の内訳では、雇用種負担が被保護者負担よりもかなり大きい国が大半である。フランスは、被保護者保険料から社会保障目的税へ財源を代替させている。医療はもとより、年金も税方式をとっているデンマークは、社会保険料比率が非常に低い。ベバリッジ型の中では北欧諸国は、財源面も含めて、地方の役割が大きい。ビスマルク型ではスペイン、イタリアが地方への財源委譲を行っている。イギリス、ポルトガル、ルクセンブルク、ギリシャ、アイルランドなど財源面での中央集権度が非常に高い国も少なくない。公的医療において、社会保険料方式をとるのか、税財源方式をとるのか、あるいは公費負担比率をどの程度にするのかという、国としての公的医療に係る財源調達の考え方が、全体の財源面での社会保険料比率と租税比率を左右する。「家族」、「積極的労働市場政策」など新しい社会保障や「障害」は、社会福祉的な色彩が強い政策または普遍的な給付であり、ビスマルク型でもベバリッジ型でも、基本的に租税が財源となる。したがってこれらへの給付の規模とそれに対する公費負担水準に対する考え方が、全体としての租税比率に影響を及ぼす。
・わが国社会保障の財源構造を「出口」の社会保障給付費財源内訳と「入口」の一般会計予算の交付先についてまとめると以下のとおりである。社会保障給付費全体でみると、被保険者拠出が32.2%、事業種負担が30.0%で保険料収入比率が合計62.2%である。公費つまり租税比率は国と地方を併せて34.2%である。社会保険料の比率が租税比率を相当上回り、わが国では社会保険方式が重要な役割を果たしているといえる。ま被保険者と事業主の負担が拮抗している点も特徴である。生活保護費(医療扶助を含む)と児童手当以外の社会福祉費、合計約3.6兆円は大半が地方に交付される。生活保護費は国と地方の負担割合が3対1であり、その他の社会福祉は全体として国と地方の負担割合が1対1である。財源全額が公費である。言いかえると、生活保護費と社会福祉費(児童手当を除く)は、義務的経費が多いが、措置等のあり方も含めて、国税がどれだけ投入されるかが給付額を左右する面が否めない。児童手当は、国の予算が年金特別会計児童手当勘定を通じて地方自治体に交付される。財源は事業主拠出、国の負担、地方の負担による。公費の負担比率は4分の3である。介護は、国の予算約1.9兆円が地方自治体と保険者に交付される。公費負担比率は2分の1強である。雇用保険は雇用主が給付の2分の1、被用者が35%を拠出し、公庫負担が15%である。労災保険は4分の3が雇用主の拠出で、被用者負担も国庫負担もない。残りは資産収入その他の収入による。年金は、一般会計から約7.4兆円が国民年金と厚生年金に繰り入れられる。公費の比率は1割弱である。社会保険費で医療部門に流れるのは7.4兆円で、そのうち国民健康保険と後期高齢者医療広域連合に流れるのは6.3兆円(7.4兆円の約85%)である。国民健康保険においては、公費負担と他制度からの移転で財源の3分の2を占める。政管健保と健康保険組合は、保険料収入が約9割である。国民健康保険は保険としての自律性が弱い。
・労働党ブレア政権は、1997年の政権発足当初から予算配分を重点的に行う分野として、教育と並んでNHSを掲げていた。2000年1月には、ブレア首相がイギリスの医療費支出の対GDP比をEU諸国平均にまで引き上げるという目標を明らかにし、NHSの予算増額に向けて、政府の取り組みを本格化させた。
・政府は、2000年3月の予算演説において今後5年間でNHSへの予算を約200億ポンド(約3.3兆円)、実質ベースで年平均6.1%増額することを表明した。この予算の増額表明を受けて、同年7月保健省はNHSの改革プランを発表し、今後10年間に達成すべき改革プランとして、国民が望むサービスとサービスを達成するために必要な資源を明らかにした。
・2001年11月の中間報告発表後、2002年4月の最終報告発表を控えて、ブレア首相は2002年3月の予算演説において、NHSの改善改革に伴う歳出増を賄う財源として、2003年度から雇用者、被用者分共に国民保険料を1%引き上げ、北海油田への追加的な課徴金等の増収策を発表した。国民保険料の引き上げは、増税をしないという選挙公約を破るものであったが、新聞各紙の世論調査では引き上げ支持が7割以上を占めたという。
・中央政府の租税が中心財源であり、イギリスの場合、予算配分の重点化における内閣の主導権が強化されていることもあって、NHSの予算拡大はこれまでの所、順調に進んでいる。しかし、医療制度の供給面での改革はまだ途上にある。より大きな財源が必要となる時期に国民がそれまでの改革を評価し、追加的財源を認めることに賛意を表するかについては予断を許さない。

血圧 111/61 mmHg 61bpm

『職業としての政治』

 今日はマックス・ウェーバー著(脇圭平訳)『職業としての政治』(1980年、岩波文庫)を読みました。

 有名な著者による、有名な古典です。やや難解な文献ということになるでしょう。とはいえ、内容は講演会を文章化したものであり、見た目も薄っぺらい本ですから、ざっと軽く読むことができます。

 本書の主張は単純です。それは、政治に倫理を期待するな、という主張です。政治とは権力を追求し、その配分を変更しようとすることである以上、そこに善意や良心があるべきだとする立場を批判しています。これは国内政治にも国際政治にも言えることです。

 この主張は単純ですが、注目すべきだと思います。政治は基本的には利害対立の激しい調整過程でしかありません。言うなれば、生死を賭けた戦争の世界です。そこに倫理を求めて、例えば、善良で道徳的な戦争を期待することは愚かでしょう。

 仲良くしようと言うことは簡単です。が、こちらの譲歩は相手の権力が増大することを意味します。その結果、こちらの権力は削られ、それを行使する程度や範囲は小さくなります。時には協力者や仲間からも裏切られることもあります。彼らも権力を追求しているからです。

 政治とはこうした悪に満ちた世界であると認識する必要があると、ウェーバーは主張しているのです。権力闘争を繰り広げる政治家は醜いですが、彼らが本性として醜い人間であるのではなく、政治の世界が彼らを醜くしていると把握するべきでしょう。

 表題の解題をすれば、職業としての政治とは悪に満ちた世界で働くことであると解釈できるでしょう。この悪は、本来の人間性がどうあれ、政治に関わる者の内面部分にも影響を及ぼすことになります。これを覚悟せよ、とウェーバーは言いたいのだと思います。

 しかし、その一方で、本書はやはり政治には倫理が必要だと言います。政治の世界とは悪を手を結ぶことですが、そうした悪に満ちた環境にあっても、それを受け入れた上で、「それにもかかわらず!」と言い切る自信が必要だと主張しています。

 政治の世界は倫理がありません。こうした酷い現実のなかでは、政治的な行為の結果は権力闘争の過程で攻撃されることになり、正当に評価されません。それを過剰に恐れてしまうと、最初から妥協的になってしまいます。

 本書の言う「それにもかかわらず!」とは、そうした政治による内面部分への影響に打ち勝つための倫理を指しています。政治的行為の責任を政治の世界が悪であることに転嫁するのではなく、それに耐えて、祖国が成さなければならない行為を判断できる能力が必要だと位置づけています。

 政治とは倫理が通用しない世界だとしながらも、その政治に携わる者には政治の悪に負けない倫理を求める。これが本書の肝要です。政治と倫理の関係について、政治の世界とそこで活動する者の問題とに区別して、前者には倫理がなく、後者にこそ倫理が必要だとしています。

 政治に倫理を期待しては駄目だという視点は非常に現実的だと思いました。政治に関する議論、とくに権力を追求する政治家の行為に対する議論では、ややもすると政治家への個人的な性格や欲望への批判が中心になります。

 本書の観点から言えば、こうした議論は政治的に未熟です。人が悪いから権力を求めるのではなく、権力を求めることが政治であることを理解していないからです。たとえ人間的に善良な政治家であっても、政治に携わる以上、権力を追求する悪にならなければなりません。

 本書は現代にも応用可能な枠組みを提示していると言えるでしょう。政治過程を分析する視角として、まずは念頭に置くべきだと思いました。有名な古典には有名になるそれなりの根拠があるのだと実感しました。

『マリア様がみてる 卒業前小景』

 今日は今野緒雪『マリア様がみてる 卒業前小景』(2008年、コバルト文庫)を読みました。

 卒業式を目前にした数日の様子が描かれています。何人かのリリアンたちの情景が取り上げられるなかで、日頃は影の薄い並薔薇の桂姉妹に切り込んだ話が印象に残りました。桂の姉は良い人だとつくづく思いました。小説の題材としては普通過ぎて焦点を当てにくいですが、現実世界では是非ともお近づきになりたい人です。

 また、祥子と令が、三奈子との3年間対立してきた関係を和解させる話も面白かったです。祥子と令のはめ技が炸裂しました。対乃梨子戦なども実践された、煽り系で接して相手の感情を支配し、罠にはめていく技です。ただ、蓉子は同じことを一人でやっていましたので、まだまだ未熟といった印象でした。やっぱり蓉子が最強です。

 今回は事実上の最終回であろう祥子の卒業式を次回に控えていますので、やや消化試合の感じが否めません。私の瞳子の活躍もあまりありませんでしたし、私の可南子は登場すらしませんでした。しかしながら、次回では蓉子の登場が示唆されていますので、それを楽しみにしたいと思います。

 なお、今回はひびき玲音の挿絵が2枚しかありません。いや、それはどうでもいいのですが、2枚のうちの2枚目である、志摩子と乃梨子が抱き合う絵では、お互いの表情がやや崩れています。正直、下手だと思いました。乃梨子はうすた京介のギャグ絵のようです。この低程度の挿絵なら必要ないでしょう。その代わりに巻末とかに瞳子と可南子が乳(以下、ネット警察により自動削除)

田母神論文

 今日は田母神論文です。

 正式名称は田母神俊雄「日本は侵略国家であったのか」です。アパグループの第1回「真の近現代史観」懸賞論文で、最優秀藤誠志賞を受賞した論文です。論文そのものはこちら(PDF)から読むことができます。

 マスコミでは評価が低い論文ですが、本当に批判すべき論文なのか、危険思想に満ちた論文なのか、自分の目で読んでみることをお勧めします。全部で9ページ程度の論文ですから、それほど手間取らずに読めるでしょう。

 本論文の内容は4点に集約されます。1. 当時の列強諸国のなかで日本だけが侵略国家と言われている。2. 列強諸国とは違い日本は植民地である朝鮮や台湾の開発に取り組んだ。3. 日米開戦はアメリカによって仕掛けられた罠にはまった結果である。4. 東京裁判史観に支配された日本では自分の国を守る体制すら整備できていない。以上の4点です。

 簡単にまとめただけでも、この論文の主張について一体何が問題なのか、強く疑問に思うことでしょう。マスコミで槍玉に挙げられている、日本は侵略国家ではない、とか、自衛隊の決起を促している、とか、そういった叙述は一切ありません。

 上記の1についても、日本は侵略国家ではないと言っているのではなく、同じことをしていた列強諸国と日本の違いは何かを問うているだけです。日本を侵略国家と規定するなら、列強諸国も侵略国家と言うべきである、という内容です。

 マスコミで展開されている田母神論文への批判は、意図的な曲解による揚げ足取りでしかありません。お得意の手法です。論文の内容をまずは素直に読んで理解するという当たり前の作業ができていません。その意味ではマスコミの議論は検討に値しないと思います。

 ただ、その一方で、田母神論文にも限界は多くあります。内容云々の以前に、これは論文ではありません。論文とは既存研究の批判から導き出される自らの意見を実証的に検証していくものです。田母神論文にはそれがありません。

 例えば、東京裁判史観を批判することを主軸とし、当該史観の典型的な内容とそれへの批判研究をまとめる作業を冒頭で行なうべきです。その上で、新たな見地である自説を提起し、それを丁寧に実証的に叙述していく必要があります。

 しかしながら、田母神論文では、そうした作業は難しいでしょう。なぜならば、内容に独創性がないからです。これも本論文の限界です。論文の内容はネットで散見される事柄をまとめたに過ぎません。これでは論文としての価値はありません。

 また、論点が散漫であることも論文としては問題です。上記で挙げた4点は相対的に独立しており、それぞれ別個に検討すべき論点です。総括的に論じることもできますが、その場合、中心的論点をどれにするのか、明確にしなければなりません。

 題名も曖昧です。疑問系の題名は論文では不可です。主張内容を明示する箇所である題名で何を言いたいのかがよくわからなくなっています。これは本論文で田母神さんが提起したい内容が、彼のなかでもはっきりしていないことが原因でしょう。

 ゼミの学生が田母神論文のような論文を提出してきたら、指導教官はおそらく受理しないでしょう。内容以前に論文としての要件を満たしていないからです。キミ、これはエッセイだよ、と言って突っ返すと思います。

 したがって、田母神論文を批判するとすれば、これは論文ではないという点です。自分の言いたいことを一方的に書いただけです。それが許される分野もありますが、論文を名乗る場合には、相応の叙述形式が要求されます。

 田母神論文に最優秀賞を与えたアパグループも批判されるべきでしょう。懸賞論文を募集しているにも関わらず、論文ではないものを受賞対象にしています。これ以外に応募されたものも、おそらくは論文ではないでしょう。

 いずれにしろ、論文ではないという点が田母神論文の限界です。内容については頭ごなしに批判するものではなく、真摯に検討する作業が求められるでしょう。例えば、日本はアメリカに騙されただけだ、という点はさすがに公平ではない主張です。

 もっとも、内容について正面から検討しようとするマスコミは今のところいないようです。マスコミには検討できないような難解な論点なのでしょうか。それとも、検討したくない問題なのでしょうか。役に立たない連中です。

−−−−−

MSN産経ニュース 2008.11.28 01:34
http://sankei.jp.msn.com/politics/policy/081128/plc0811280138001-n1.htm

田母神前空幕長インタビュー「自国を悪く言う外国人将校に会ったことはありません」

 先の大戦を日本の侵略とする見方に疑問を示す論文を公表し、更迭された航空自衛隊の田母神俊雄・前幕僚長は27日までに産経新聞のインタビューに応じ、心境を語った。(野口裕之)

 −−論文騒動から約1カ月経過したが

 このような大騒ぎになって解任される事態になるとはまったく予想していませんでした。判断力がなかったといわれればそうかもしれません。しかし、弁明の機会も与えられぬまま『辞表を書け』と言われたときに考えたのです。文民統制だからクビを切られるのは構わないが、辞表を書くのは自分が間違ったことをしたと認めることになると。辞表を書かねば懲戒処分にかけたい、といわれたので『結構です。ぜひやってください』と言いました。

 −−懸賞論文を書くきっかけと時期は

 懸賞論文の存在は知っていましたが、書く気になったのは自衛隊の支援者に薦められたからです。職務に関するものではないので、通知義務はないと理解し、渡米した8月15日より前に書いて送りました。官房長との雑談で投稿を話したのは15日より前でしたが、通知しようとしたのではありません。論文で言いたかったのは、米露英仏などが侵略国家といわれないのに、なぜ日本だけがいわれるのか。よその国が侵略国家でないなら、日本も侵略国家でないということが言いたかったのです。

 −−論文執筆で「村山談話」は念頭にあったか

 村山談話に強い違和感を覚えていましたが、在任中は講演でも批判をしたことはありません。論文でも村山談話には触れていません。直接的な批判でなければ、談話と異なる見解を表明しても構わないと思っていました。もし村山談話に沿わない意見を言うことができないならば、言論弾圧の道具といえるのではないでしょうか。談話があるために、自由にものを言えない雰囲気があり、外交文書にも引用されている。日本は自ら手足を縛って、外交をする前に負けている。退官した今は、こんなものはぜひなくしてもらいたいと確信を持って言います。再検討の動きすら政治にないのはおかしなことです。

 −−更迭への思いは

 変なのは『日本は、侵略国家ではない。よその国に比べてよい国だった』と言ったら、『日本は政府見解で悪い国となっている』との理由でクビにされたことです。裏を返せば『日本はろくな国でなかった』と考えている人を、航空幕僚長にせよということではないか。外国の将校は、まず自国を弁護する。自分の国を悪く言う外国人将校に会ったことはありません。

 −−航空自衛隊のトップは、どこまで発言が許されると思うか

 空自トップですからある程度、『表現の自由』に制限があるのはやむを得ないでしょう。しかし、憲法では『思想・信条の自由』が保障されているわけで、政府見解から逸脱することを一切言ってはいけない、というのは民主主義社会ではないと思います。

 −−11月11日の参議院外交防衛委員会で参考人招致されたが

 国会で私の意見を正々堂々と述べようと思っていました。しかし、民主党の北沢俊美委員長は私が話す前から発言を制限した。だったら何のために私を呼んだのか。私から発言を引き出して政府や防衛相を攻撃する格好だった。言論の自由を掲げる立法府とメディアがそろって異なる意見を封じ込めようとした。立法府とメディアの自殺行為ではなかったでしょうか。

 −−各党の対応をどう見たか  野党は政府を攻撃したいだけで、『日本の国益がどれだけ損なわれようと知ったことはない』といった風でした。国益が党利党略の犠牲になるのはいかがなものでしょうか。民主党の鳩山由紀夫幹事長は、私や懸賞論文を主催したアパグループの元谷外志雄代表との会食を中座したように言っていますが、まったくのウソですね。鳩山さんと相当の時間、楽しく懇談させていただきました。自民党も『左』に寄ってしまいました。左をなだめようと左に少し寄ると次の出発点はそこになる。これを繰り返していると日本に保守政党がなくなってしまう。

 −−「左」の陣営を勢いづかせたとの批判もある

 55年体制の時代から、左をなだめるために発言を控え、ちょっと彼らの言い分を飲む、というやりかたでやってきたが、日本は良い方向にはきてない。私の論文が左を勢いづかせたという人は、今までと同じように対応しなさいといっているに等しい。

 −−「文民統制崩壊か」という議論が国会やメディアでも盛んだったが

 ほとんどは、文民統制の意味を理解していないものでした。文民統制の根幹は、外交問題などが生じたときに、軍を使って解決するかどうか、その決定権を政治が握っているということです。民主主義国家では戦闘機や戦車、護衛艦、隊員の数は、政治のコントロールを受けて決まります。そのモノとカネと人を使って最強の軍隊をつくるのはミリタリーの専門分野だと思います。防衛省には内部部局(内局=背広組)がありますが、日本ほど、文民統制が細部まで徹底している軍隊はないでしょう。

「この国のために命をかけることが正しいんだという気持ちがないと軍は動けない」

 −−監察などによって自衛官の言動に対する監視が強まっている

 私の一件をきっかけに、防衛省の内局が自衛官の歴史観や思想信条について政府見解に合致しているかをチェックするのだとしたら、それは軍隊を精神的に解体することです。自衛隊の士気を下げ、きっと中国や北朝鮮は大歓迎していることでしょう。軍隊は、自分の命がかかればかかるほど、使命感がなければ動けなくなる。使命感とは、自分たちがやっていることが正義なんだ、という気持ちです。この国のために命をかけることが正しいんだという気持ちがないと軍は動けない。その根本には愛国心があると思います。この国は残虐でろくな国じゃなかった、お前たちは力を持ったらすぐ悪人になるんだ、と言われたんでは使命感は生まれようがない。

 −−田母神氏の発言をとらえて、すぐ「戦前は軍が暴走した…」となる

 そういう人たちはよっぽど日本人、つまり、自分自身が信用できない人なのではないでしょうか。あるいは、文民統制に自信がないのかもしれません。政治が少しの異論も許さない言語空間に閉ざされていれば、国は弱くなります。徹底的に非核3原則を堅持すべきだという意見もあっていい。だけど民主主義だったら核武装すべきだという意見もあっていい。核兵器を持たない国は、核兵器を持った国の意思に最終的には従属させられることになりかねない。

 −−核問題では、北朝鮮に振り回されている

 北朝鮮が核兵器を持ちたがる理由は、1発でも米国に届く核ミサイルを持てば、北朝鮮を武力で制圧するのは、絶対できなくなるからです。そういった核兵器についての基本が、日本では議論されたことがない。核兵器を持つ意思を示すだけで、核抑止力はぐんと向上します。逆に、はじめから持たないといっただけで、核抑止力は格段に低下するといったことが政治の場で理解されていない。

 −−日米同盟も変質しない保障はない

 航空自衛隊も少しずつ自立の方向に進むべきでしょう。自前で空軍としての能力を整え、日米が互いに足らない分を協力して補うとことが望ましい。これまでの米国は鉾、日本は盾という考え方は直した方がいい。米国の若者の血は流すが、日本は後ろにいますでは、日米同盟はもたない。

 −−国家と政治家のあるべき姿をどう考える

 善人で国民の安全を守れない国家よりは、腹黒くてもいいから国民の安全を守れる国家の方がよい。性格が良くて無能な政治家と性格が悪くても有能な政治家なら後者の方がよい。この国はどうしてすべてがきれい事なのか。そのくせに歴史認識だけは『自虐史観』です。いつの日か私の論文が、普通に語られる日が来るのを望んでいます。

 −−現在の心境は

 後輩たちが苦労しているだろうなと、その点は本当に申し訳ないと感じています。ただ、色々な批判も受けましたが、落ち込んだことはまったくありません。女房には『おれは野垂れ死にするから覚悟せい』と言いました。

覚書 081103

須藤時仁「英米における金融市場と実体経済の関連性(その1)」『証券レビュー』第48巻第10号、2008年10月号。
・1980年代以前は資源価格の変動とともに経済成長率、物価上昇率の変動も大きかったが、後半以降は前者の変動は大きいままであるにもかかわらず、後者の変動は極めて安定的である。1980年代以前の状況は、いわゆる「金融不安定性」の理論・仮説で説明がつこう。しかし、後半以降の状況はどのように説明されるのだろうか。しかも、この期間も、幾度となく金融危機を経験している(1980年代末の資産バブルの崩壊:英、S&L危機:米、東アジア・ロシア・ブラジル危機、ITバブル崩壊;英米、サブプライム問題:英米)。にもかかわらず、経済成長は相対的に安定しているのである。
・1980年代後半以降の状況を説明する1つの仮説として、経済における金融部門のプレゼンスが高まったことと、それを支えかつ経済の安定化を促す政策的背景としての流動性の供給が考えられる。具体的には、1. 実体経済に対する金融資産の膨張、2. 金融資産に占める金融機関の保有比率の上昇、3. 上記の現象を支え、かつ経済の安定化を促す政策的背景としての流動性の供給である。前2者は金融資産価格変動にかかわる要因であり、最後の要因は経済成長の安定にかかわる要因である。
・金融資産残高の対名目GDP比とその内訳について英米の状況を分析した結果、両国に共通の特徴は以下のように整理できる。1. 1980年代後半から2000年代前半にかけて金融資産残高の対名目GDP比は共に2倍近くに高まっている。その意味で、金融資産の価格変動が実体経済に及ぼす影響は高まっていると推測される。ただし、水準的にはイギリスのほうがアメリカよりもかなり高く、金融資産の価格変動が実体経済に及ぼす影響が大きいであろう。2. 投資信託の構成比が一貫して高まっている。これは個人投資家の資産運用の高まりと市場参入を表していよう。3. 株式以外の証券の構成比が高まっている。この背景には、証券化商品などの新しい金融商品の市場創出と拡大(成熟)もあろう。4. 絶対的な水準で見ると株式の構成比率が高い(特にアメリカ)。これは株価変動の実体経済への影響度が高いことを表していよう。

岡久慶「英国の新入国管理制度 移民の階層化と点数評価の導入」国立国会図書館調査及び立法考査局『外国の立法』237、2008年9月。
・2008年2月29日、イギリス政府は、欧州連合(EU)と欧州経済領域(EEA)以外の国からの就労と就学を「適正な技能を持つ、又はイギリスに貢献できる者」に限定する点数評価制度(points-based system)の導入を開始した。この制度のもとで、移民は5つの階層(tier)に分類され、それぞれの階層で点数評価において一定以上の点を獲得した場合に限って、イギリスにおける就労、就学が認められることとなる。
・新制度導入には、移民による経済効果の向上と移民制度に対する市民の信頼回復という趣旨がある。この2つには相関性があり、直截に言えば、政府の主張する経済効果が、市民に移民を受け入れさせるためのオブラートとして機能している面がある。それは、協議書「選択的入国:移民をイギリスのために役立てる」の質問事項7「移民制度の主目的は、イギリスの経済的利益であるべきか?」に対して、回答意見の67%が同意していることからも伺うことができる。
・しかし、2008年4月1日、上院の経済事情特別委員会が発表した報告書「移民の経済的影響」は、その経済効果に疑問を呈し、物議を醸すこととなった。
・報告書は、国内総生産をもって移民の経済効果を主張する政府の方法を批判し、労働力増加に経済全体が適応する長期間を視野に、国民一人あたりについての純益を計るべきだとしている。その上で、報告書は、移民の長期的な効果は経済の拡大が主であり、国民への経済的なコストも利益も低いとしている。報告書は年間19万人の移民が入国していることを踏まえ、移民の数の具体的な目標数の幅を定めた上で、政策をそれに適合させるべきとする。
・この移民数の制限は、野党第1党である保守党の主張するところでもあり、同党は年間の数値目標を設定することを主張している(現在は具体的な数値は打ち出していない)。なお、政府及び財界は、委員会及び保守党に対して、数的制限の設定が経済の活力を損なうと反論しており、点数評価制度が1年早く施行されていれば、移民受け入れ数が2万人削減できたと主張している。
・Home Office, Selective Admission : Making Migration Work for Britain, July 2005.
・House of Lord, Select Committee on Economic Affairs, First Report of Session 2007-08 : The Economic Impact of Immigration, April 1 2008.

石川義憲「日本の地方自治体とICT」自治体国際化協会『分野別自治制度及びその運用に関する説明資料』No.6、2008年10月。
・日本の地方自治体においても、他の団体に先駆けてICTの推進に積極的に取り組んできた地方自治体がある。いち早くから電子自治体を標榜した岐阜県、市町村と連携して情報基盤の整備に努める北海道、IT人材の育成を図りIT調達を積極的に見直している長崎県などである。
・市町村では、行政改革の一環としてICTに取り組んできた市川市、市民とともに電子自治体に取り組んできた三鷹市、横須賀市、藤沢市、職員自ら様々なシステム開発を行ってきた西宮市などが挙げられる。
・これらの地方自治体が電子自治体に積極的に取り組んできた背景には、地元に立地し、これらの地方自治体を支援・協力する情報通信関係企業、大学の存在がある。首長が熱心かどうかも大きい。また、首長の下で長年にわたり情報処理関係業務に熱心に取り組んでいる職員がいる。
・日本の中央省庁は、各地方自治体の先進的な取り組みを様々なモデル事業の実施になどにより促進してきている。
・地方自治情報管理概要(2007年9月)(以下、「2007情報管理概要」と略称)によれば、電子自治体推進計画を策定している地方自治体は、都道府県では45団体(95.7%)、市区町村では678団体(37.1%)である。
・都道府県の場合は、国の計画と類似して、幅広い分野でのIT化の推進を含んだ計画となっている。例えば、宮城県の宮城県IT推進計画(2006?2008年度)では、県民生活に関する情報化の促進、ITによる地域経済の活性化と富の創出など重点6分野を設定し、宮城県総合防災システムの運用、地域医療医師登録紹介事業、インターネット等による戦略的観光情報の発信、電子入札・電子調達の推進など80のITプロジェクトを掲げている。
・市区町村の場合は、行政情報システムの整備と電子申請システムの活用、電子入札・電子調達の推進のほか、住民との情報共有、住民参加・住民協働の推進を図るといった、住民により身近な計画となっている。例えば、立川市の第2次電子自治体推進計画(2005?2009年度)では、ビジョンとして、ITを活用した行政内部プロセスの改革、ITを活用した行政サービスの提供と情報提供・公開の推進、ITを活用した豊かさや幸福感を感じられる電子自治体の実現の3つの柱を掲げ、BPRの推進、インターネット窓口システムの整備、GISを活用した行政事務の高度化(地図情報の多目的活用)、ホームページの拡充整備、市民生活におけるICカードの活用などのプロジェクトを記載している。
・電子申請・届出システムの事例には以下の3つがある。税の申請・納付。図書館蔵書検索・貸出予約。公共事業に係る電子入札の実施スケジュール。
・「平成17年度市町村の業務システムの導入及び運用に要する経費等の調査」によれば、次のとおりである。税業務システム、国民健康保険業務システム、福祉業務システム、財務会計システム、人事給与システムは、ほとんどの地方自治体において導入されているが、小規模自治体においては、それ以外のシステムの導入率は低い。業務システムについて、基幹業務系、内部管理業務系、住民サービス業務系に分類すると、それぞれ7割、4割、2割の導入率となっている。業務システム経費は、人口規模の小さい地方自治体ほど住民一人あたりの費用が割高となる。同じ規模の同じような機能を持つシステムでも、その費用に大きな格差がある。
・業務ごとに個別のシステムが導入されているため、ベンダーの違い、調達時期の違いで採用する技術が異なり、他の業務システムとの連携が困難になっている。仮に連携した場合でも、複数のシステムに影響を与える改修作業が発生した場合にかかるコストは大きなものとなっている。単一のベンダーですべてのシステムを開発する場合には、このような問題は生じにくいが、ベンダー固有の仕様に依存することとなり、競争環境が構築できず、かえってコストが高くつく結果にもなりかねない。
・そのような中で、各地方自治体においては、共同アウトソーシングの取り組みと並行して、共同基盤を構築する試みを推進している。北海道や福岡県、宮城県などの取り組みがある。また、総務省としても、これらの動きを踏まえた上で、共通の基盤作りを推進している。
・地方自治体はICTを活用して様々な行政課題の解決に取り組んでいる。2007情報管理概要によれば、最も多い取り組みがICTを活用した安全・安心な地域づくり(都道府県91.5%、地区町村28.8%)であり、次いで、ICTを活用した子育て支援(都道府県80.9%、市区町村11.8%)となっている。このほか、都道府県では、地域経済の活性化や地域文化の振興、高齢者支援などの取り組みが多く、コミュニティ活性化への取り組みも見られる。具体的には、地域安全安心情報の共有や、地域SNS、地域文化の振興のための取り組み、である。

アリソン・ウェザーフィールド「性と人種を理由とするハラスメント イギリスのアプローチ」『日本労働研究雑誌』No.574、2008年5月。
・英国のアプローチは、当初、アメリカ合衆国の法理論に強い影響を受けていた。アメリカの連邦システムは、ハラスメントを、雇用条件における直接差別の一形態として認識している。このアメリカのアプローチは、「平等な取り扱い/平等」モデルに依拠するものといえよう。アメリカの連邦法には、成文法化されたハラスメントの定義は存在しない。
・しかしながら、英国のアプローチは、欧州連合(European Union)の法的発展に対して影響を与え、また同時に、影響を受けてきた。英国は明確な法制定上の定義を付与する方向に動いており、その動きは、EC指令に対応してのものである。現在の英国の法制定上の定義は、平等取り扱いと平等に係る配慮と、より広汎な、職場における尊厳を求める権利に係る配慮とを融和させたものである。英国の法制は、また、性的な性質の行為が含まれる、セクシャル・ハラスメントの特定の側面のため、特別な、かつ独立した条項を有している。

大杉覚「日本の地方議会」自治体国際化協会『分野別自治制度及びその運用に関する説明資料』No.5、2008年3月。
・二元代表制とは、住民の直接選挙によって選ばれる住民の代表機関が地方議会と長の二通りあることを指す。先進民主諸国では二元代表制を採る地方自治の政治形態の例は比較的少なく、アメリカ合衆国の市の約半数が採っている市会市長制やイギリスの市長直接公選制など、少数派に属する制度といえるだろう。
・また、長が直接公選されることから、しばしばアメリカ合衆国の大統領制になぞらえて、大統領型と呼ばれることがある。しかし、わが国の地方自治の仕組みでは、議会が長の不信任決議案を有し、それへの対抗手段として長が議会の解散権を持つというように、長と議会が明確なかたちで相互牽制し合う制度が採用されているのが特色であり、この点はアメリカ合衆国の大統領と連邦議会との関係とはまったく異なる。また、自治体の長や各種行政委員会の長などは、説明のために議長から出席を求められたときには、議場に出席しなければならないとされ、実質的に見ても、本会議は長に対して、委員会等では行政幹部職員に対して、議員からの質疑とそれへの対応が主要な内容となって運営されており、この点も議員間の討議が中心とされるアメリカ合衆国の大統領制における議会運営とは異なる点といえる。
・さらなる地方分権改革が推進されるなか、自己決定・自己責任の原則が強調され、地方政府であり完全自治体としての役割を果たしていくことが自治体には期待されるようになってきた。そこで、ますます自治立法権が重視され、その権限の担い手としての地方議会のあり方も問われるようになってきた。また、厳しい財政状況にあって、地方議会による行政のチェック機能も期待されている。政策の企画立案や評価にわたり、地方議会がガバナンス機能を十分に果たせるような改革が現在喫緊の課題となっている。
・個別の自治体の動向を見ると、「自治体の憲法」とも呼ばれる自治基本条例が制定される際に、議会の役割・責務が規定されるようになってきたが、最近ではより積極的に議会の位置付けを確認する試みがなされつつある。例えば、北海道の栗山町は全国に先駆けて議会基本条例を制定し、住民との意見交換のための議会主催による一般会議の設置、議員の質問に対する町長・町職員への反問権の付与など、議会運営を刷新し、議会の活性化を図ろうとする。また、三重県で制定された議会基本条例では、その前文で「本県会議は、住民自治及び団体自治の原則にのっとり、真の地方自治の実現に向け、国や政党等との立場の違いを踏まえて自律し、知事その他の執行機関とは緊張ある関係を保ち、独立・対等の立場において、政策決定並びに知事等の事務の執行について監視及び評価を行うとともに、政策立案及び政策提言を行うものである」と宣言した。
・また、全国の地方議会の代表団体である議会三団体(全国都道府県議会議長会、全国市議会議長会、全国町村議会議長会)も、それぞれ研究会組織等を設置して、議会改革の提言をしている。

横道清孝「日本における道州制の導入論議」自治体国際化協会『アップ・ツー・デートな自治関係の動きに関する資料』No.3、2008年3月。
・日本においては、1888年の近代的地方自治制度の導入以来、広域自治体として都道府県が存在しており、また、その数は47と不変である。これは、その間、基礎自治体である市町村が、今回の平成の大合併も含めて3回にわたる大合併を経て、その数を大きく減らし、その規模を拡大してきたのとは対照的である。
・道州制論とは、この120年という長期にわたって安定的であった都道府県体制を改めるということであり、現在の都道府県の区域を超えたより広域の単位で、より広域の行政主体を設けるというものである。それは、単に地方自治制度だけの見直しに止どまらず、国と地方を通じる日本の国家体制のあり方そのものにも大きな影響を及ぼす可能性がある議論である。
・地方分権の進展や市町村合併の進展を受けて、最近、道州制の導入論議が盛んになってきた。2000年以降、政党、経済団体、シンクタンク等様々な団体が道州制に関する提言をまとめ、公表している。また、当事者である都道府県やその連合組織である全国知事会においても、道州制に関する検討が開始されている。
・そのような動きの中で、特に重要なのは、内閣総理大臣の諮問に応じて、地方制度に関する重要事項を調査審議し答申を行ってきた地方制度調査会の動きである。2003年には、第27次地方制度調査会が「今後の地方自治制度のあり方に関する答申」(2003年11月13日)を出し、道州制についての基本的骨格を示した。そして、2006年には、それを受けた第28次地方制度調査会が「道州制のあり方に関する答申」(2006年2月28日)をまとめ、導入するとした場合の道州制について、さらに具体的な制度設計案を示したのである。
・同答申は、まず、現行の都道府県制度について、約120年の長きにわたってその構成と区域を維持してきたが、市町村合併の進展や都道府県の区域を越える広域行政課題の増大等社会経済情勢の変化に対応していくことが可能か、また、一層の地方分権改革の担い手としてふさわしいかという問題提起をしている。
・次に、それに対しては、都道府県制度を維持した上で、広域連合や都道府県合併という方法により対処することも考えられるが、さらに進んで、広域自治体改革を、都道府県制度に関する問題への対応にとどまらず、国のかたちの見直しにかかわるものとして位置付けることも考えられるとする。すなわち、広域自治体改革を通じて国と地方の双方の政府のあり方を再構築し、国の役割を本来果たすべきものに重点化して、内政に関しては広く地方自治体が担うことを基本とする新しい政府像を確立するという考え方である。
・そして、そうした見地に立つならば、広域自治体改革のあり方の具体策としては、道州制の導入が適当と考えられると結論付けた。

覚書 081102

国立国会図書館調査及び立法考査局「外国の立法、【イギリス】2008-09年提出予定法案」2008年8月。
・ブラウン政権が発足した2007年は、立法プログラム草案(以下、「草案」という。)発表は7月だった。しかし、法律制定過程の公開と公衆の参加促進のため、もっと早い公開が望ましいという声に応え、今年は公開が2ヶ月早まった。また、下院の現代化委員会の提言を容れて、法案の草案に加えて政策草案も併せて発表されることとなった。2008-09年草案のテーマは、経済的安定、潜在能力の開花、公共サービスの個別化と向上、市民への権限委譲等の4つである。
・経済的安定(環境問題対策含む):金融改革法案、セービング・ゲイトウェイ法案、事業レート補足法案、特別流動性制度(既出)、再生可能エネルギー、建築物の炭酸ガスゼロ基準の確立、海洋及び沿岸アクセス法案。
・潜在能力の開花:教育及び技能法案、平等法案、福祉改革法案。
・公共サービスの個別化と向上:警察活動及び犯罪減少法案、通信データ法案、法制改革・犯罪被害者及び目撃者法案、市民権・移民及び国境法案、国民医療サービス(NHS)法案改革。
・市民への権限委譲:憲法更新法案、地域共同体の権限付与・住宅及び経済再生法案。
・覚書注:4つのテーマと実際の法案がほとんど一致していない。看板だけを見て適切な法案が提出されたと理解した気になってはいけない。逆に、テーマとの距離はあるというだけで、それぞれの法案を評価してはいけない。

上田晃三「インフレーション・ターゲッティングの変貌:ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの経験」日本銀行ワーキングペーパーシリーズ、No.08-J-15、2008年10月。
・要旨:本稿では、この約20年に亘る、ニュージーランド、カナダ、英国、スウェーデンの4カ国におけるインフレーション・ターゲッティング(以下、IT)の変貌とその背景に関する事例の整理を実施した。分析を通じて分かったことは以下の3点である。1つめは、これら4カ国の中銀は、IT導入当初、インフレ期待の安定を重視する観点から、足許の物価安定に向けて厳格な運営を試みたが、その後徐々に中期的な物価と実体経済の安定をめざす運営に変貌していったということである。2つめは、この変貌の背景には、経済に発生したショックの内容・大きさだけでなく、各国における経済的背景や、ITの枠組みに対する信認の強さもあったということである。3つめは、過去20年間に金融政策の透明性が大幅に向上・強化され、これが4中銀の政策運営に対する批判への防御となり、ITの枠組みに対する信認を確率・維持する助けとなっていたということである。
・英国は、1992年9月の欧州通貨危機をきっかけに変動為替相場制(覚書注:ITの間違いだろう)に移行した。金融政策への信認を強化し、ノミナル・アンカーを回復するために、同年10月、財務大臣は、RPIX(小売物価指数からモーゲージ金利支払を除いたもの)前年比を1-4%の範囲内にすることを宣言した。
・1997年以前、BOEのGeorge総裁は物価安定を実現するために緊縮的な政策の必要性を繰り返し助言していたが、金融政策の決定権は総裁ではなく財務大臣にあり、Clarke財務大臣は総裁の助言をしばしば無視した金融政策を実行した。こうのような中で、BOEは透明性を向上させ、BOEの法的独立性に対する世論の支持を集めていった。
・1997年5月、財務大臣は政策金利決定権をBOEに移すことを発表する。1998年6月には新しい中央銀行法が施行された。
・金融政策の法的独立性が担保されて以降、BOEの政策運営は、「フォワード・ルッキング」かつ「柔軟」になっている。
・2000年8月、2005年8月には、MPCの中で意見対立が起こり、票は5対4で割れていた。このような条件下、委員間で異なる意見をレポートや記者会見でどのように集約して公表するのか、市場の金利予測とどのように折り合いをつけるのかといった点で、市場とのコミュニケーションが困難になっていた。
・2000年前後からは住宅価格が急激に上昇していたが、資産価格変動に対する政策対応について、BOEにおけるコンセンサスの形成や明確な行動は確認されていない。しかし、委員は資産価格変動に対する懸念をスピーチなどで表明しており、実際に2003年11月から2004年8月にかけて、資産価格変動を意識した利上げが行われているようにも窺われる。
・2007?2008年にかけて、国際金融市場の混乱や、原油価格・食料価格上昇という相対価格変動を伴う供給ショックに直面する中、BOEは利下げを実施した。インフレ目標の変更に関する議論も出始めている。
・Bernanke, B.S., T. Laubach, F.S. Mishkin, and A.S. Posen, 1999, Inflation Targeting : Lessons from the International Experience, Princeton : Princeton University Press.
・覚書注:おそらくはBernankeたちの1999年の論文を翻訳したそのままの内容だろう。

自己紹介

benyamin ♂

2012年5月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

月別アーカイブ

Powered by Movable Type 5.13-ja
Support Wikipedia