覚書 081111

井川博「日本の地方分権改革15年の歩み」自治体国際化協会『アップ・ツー・デートな自治関係の動きに関する資料』No.4、2008年3月。
・2005年度の数字でみると、都道府県と市町村を合わせた地方政府の歳出純計額は89.4兆円であり(重複分を除いている)、中央政府の歳出額61.2兆円の1.5倍となっている。つまり、地方政府が、多くの仕事を行う中で、日本の政府全体の歳出額の60%は、地方政府によって行われている。
・中央政府、地方政府の歳出を目的別でみても、防衛費や年金関係の経費は別として、国民生活に直接関連する経費の大半は、地方政府によって支出されている。衛生費では94%、学校教育費では85%、司法警察防衛費では79%が、地方政府によって支出され、その他の行政分野においても、その大半が地方政府によって支出されている。
・都道府県、市町村の歳出規模は、ほぼ同額となっている。都道府県が48兆円、市町村が49兆円となっている。
・都道府県は、高等学校を設置・運営するほか、市町村が設置する小中学校についてもその教員の給与費を負担している。これが、都道府県の教育費がおおい理由となっている。また、都道府県は、商工業や農林水産業などを育成・発展させるため、多くの仕事を行っており、市町村に比べ商工費や農林水産業費が多くなっている。
・一方、市町村は、老人福祉、児童福祉、生活保護などに関する多くの仕事を行っている。そのため、市町村の民生費は、都道府県に比べ3倍近くの額となっている。また、ごみの収集・処理の業務も、市町村によって基本的に行われるため、市町村の衛生費の額が大きくなっている。
・都道府県は、県道の建設、河川の管理、大規模な都市計画事業などの公共事業を行っており、そのための経費が土木費で支出されている。一方、市町村では、指導の建設などの公共事業もおこなっているが、土木費の大半を都市計画事業のための経費が占めている。
・また、警察行政は、都道府県により行われ、消防行政は市町村によって行われることとされている。
・中央政府の事務とされる機関委任事務については、a) 都道府県知事や市町村長に対する中央政府の大臣や知事の包括的な指揮監督権があり、b) 地方政府の条例が制定できない、地方政府の議会の調査権が十分及ばないなど、地方政府の権限が制限されていた。また、都道府県の事務の70%から80%、市町村の事務の30%から40%が機関委任事務であるとの指摘もなされていた。
・こうしたなかで、機関委任事務に対しては、a) 中央政府と地方政府とを上下の関係におくものである、b) 中央政府の細かい指示があるため、住民の要望があっても柔軟に対応できない、c) 各中央省庁により各行政分野ごとに指示等がなされるため、総合的な政策が実施できない、d) 各地域の実情を踏まえて施策ができない、などの批判がなされてきた。
・一方、地方財政面では国庫補助負担金が、地方政府の政策形成・実施の自主性を制約するとして、多くの批判がなされてきた。
・国庫補助負担金には、国家的な見地から必要とされる施策の確保に役立つといった効用(メリット)があるものの、a) 補助負担金の画一的な交付条件が効率的な事業の実施を妨げる、b) 地域にとって優先順位の低い事業が行われる、c) 補助負担金の交付手続きが煩雑であり、多くの事務的なコストが発生する、d) 地域の創意を生かした自主的な行財政運営を妨げる、などの問題があり、国庫補助負担金の整理・合理化が必要であるとされてきた。
・また、政府支出の60%を地方政府が占めるなかで、地方税源の充実も大きな課題となっていた。地方税は地方政府の総支出、総収入の約3分の1というなかで、地方分権論者からは、地方政府の自律的な財政運営を確保するためにも、中央政府から地方政府への税源移譲を行い、地方税収入を増加させる必要があると主張された。
・地方分権一括法は1999年7月に成立し、2000年4月1日から施行された。地方分権一括法では、これまで大きな課題とされてきた、a) 機関委任事務制度の廃止、b) 中央政府の地方政府に対する統制、関与の見直し、c) 中央政府と地方政府が分担すべき役割の明確化、d) 地方政府への権限委譲、e) 自治体組織の必置規制の見直しなど、地方政府の自主性、自立性の拡大を目指した大規模な改革が行われた。
・中央政府と地方政府との関係における地方自治(団体自治)の充実に対する第1次分権改革の評価は高い。しかし、地方自治のもう一の重要な要素である住民自治の面での評価は、必ずしも高くない。日本の市町村は、明治の大合併、昭和の大合併を経て、その規模を拡大してきた。また、厳しい財政状況のなかで、住民との協働による地域経営が重要となっている。
・地方財政制度面における改革についても、その評価はかなり厳しい。第1次地方分権改革においても、地方債の許可制度の見直しのほか、法定外目的税の創設や法定外普通税の許可制度の緩和等の改革が行われ、一定の効果(成果)を挙げている。しかし、地方財政制度改革の最大の課題とされる国庫補助負担金制度については、十分な改革が行われていない、との評価が多い。
・地方財政改革(三位一体の改革)に対しては、3兆円の地方政府への税源移譲が達成されたことや、国と地方政府との協議の場が設けられたことなどを積極的に評価する意見もある。
・しかし、中央政府からの要請により地方六団体が作成した改革案が尊重されず、国庫補助負担金の改革が地方政府の自主性、自立性の拡大に十分結びついていないとの批判も強い。義務教育国庫補助負担金の改革にみられるような補助負担率の引き下げによる国庫補助負担金の削減では、地方政府の施策の形成・実施における自由度は増加しない。むしろ補助負担金事業の実施に伴い地方政府が負担する一般財源が増加し、地方政府の行財政運営の自主性、自立性が減少するおそれがある。
・また、三位一体の改革の実施に伴い、地方財政計画の規模は、2001年度をピークに5年連続のマイナスとなり、それに伴い実質的な地方交付税の総額が大きく圧縮されるなかで、a) 地方政府の行財政運営、施策の実施が困難になってきている、b) 地方分権より財政再建が優先されるのではないか、との批判も強い。こうした理由から、三位一体の改革に対する地方政府関係者の評価は、必ずしも高いものとはいえない。

齋藤憲司「政治倫理をめぐる各国の動向」『レファレンス』2008年9月号。
・誰が倫理を監督するかについては、議会特権という原則を考慮しなければならない。
・議会特権は、2つの要素を持っている。その1つが議会における発言の自由で、議会内の討論について保護を与えるという原則であり、もう1つが、議会の自律権で、議会は議員の行為を規制し、議員に規律を遵守させる権限を有し、議会の判断が最終判断で裁判所などの外部の審査を受けることはないという原則である。これらの原則は、いずれも歴史的に確立されてきた。
・英国の場合は、1689年の権利章典第9条に起源を有し、議会における議員の行為について外部の機関が異義を唱えることはできないと解されている。「下院が至高の存在であることにより、自律は、憲法上の重要性を有する。至高の期間としてその責任を果たすために、議会は、外部からの干渉から保護されるように、特権の自由を有する」のである。したがって、これまでに収賄事件で裁判所により有罪判決を下された議員はいない。アメリカでは、1788年の連邦憲法第1条第5項で、各院が除名を含めその議員を罰することができると規定している。
・議会特権という原理からは、議会が自らの倫理を規制する機関を設置し管理するための機能を有するのは自明である。これまで、英国議会とアメリカ連邦議会は、議会特権という立場から、議員の行為が外部の組織の権限に服従すべきではないとしてきた。しかし、たび重なる政治スキャンダルによってこの考え方も変容を迫られている。
・倫理違反事件について、議員は同僚の議員が起こした倫理問題の審議に加わることとなるが、そこには、同僚議院との友情(あるいは反感)と真理追求の利益との利益衝突の問題が生じる。議員が同僚の議員を裁くこと自体が「手続の独立、公正さと説明責任に関して合理的疑いを生ずる」のである。これは、「制度上の利益衝突」といっても過言ではない。
・これを回避するために、英国とカナダでは、外部要素としてコミッショナー制度を導入し、第三者の関与を認め、外部に開かれたものに移行した。このほかの国でも、外部に開かれた制度に転換しつつある。

片山信子「社会保障財政の国際比較 給付水準と財源構造」『レファレンス』2008年10月号。
・わが国では、社会保障の全体的な財政の姿を表わす概念として「社会保障給付費」を用いている。平成20(2008)年度予算ベースでの社会保障給付費の総額は95.7兆円である。部門別にみると、年金が50.5兆円、医療が29.8兆円、福祉その他が15.4兆円である。この社会保障給付費の範囲は、ILO(国際労働機関)の基準に基づくものである。
・給付水準と給付構造について次のようにまとめられる。スウェーデン、フランス、ドイツ、デンマークは、社会支出合計値が大きい。日本はニュージーランド、カナダ、オーストラリア、アメリカと共に先進諸国の中では社会支出合計値が小さい。イギリスやオランダは両者の中間である。年金・介護という高齢者政策、さらに「保健医療」への給付が各国とも共通して、社会支出の非常に大きな部分を占めている。日本と北米は、北欧諸国やフランスなどと比べて、「家族」や「積極的労働市場政策」など新しい社会保障への給付が小さく、「年金」や「保健医療」など伝統的な社会保障の占める割合が特に高い。また、日本は「障害・労災・傷病」の給付が小さい。
・財源の特徴については以下のことが言える。ビスマルク型(保険料方式)は租税比率を増やし、ベバリッジ型(税財源方式)は社会保険料比率を増やす傾向にあり、財源面での両者の差は縮小傾向にある。ビスマルク型の中で特にフランスとドイツとイタリアは、この動きが顕著である。雇用主の保険料比率を大きく下げているのはイタリアである。社会保険料負担の内訳では、雇用種負担が被保護者負担よりもかなり大きい国が大半である。フランスは、被保護者保険料から社会保障目的税へ財源を代替させている。医療はもとより、年金も税方式をとっているデンマークは、社会保険料比率が非常に低い。ベバリッジ型の中では北欧諸国は、財源面も含めて、地方の役割が大きい。ビスマルク型ではスペイン、イタリアが地方への財源委譲を行っている。イギリス、ポルトガル、ルクセンブルク、ギリシャ、アイルランドなど財源面での中央集権度が非常に高い国も少なくない。公的医療において、社会保険料方式をとるのか、税財源方式をとるのか、あるいは公費負担比率をどの程度にするのかという、国としての公的医療に係る財源調達の考え方が、全体の財源面での社会保険料比率と租税比率を左右する。「家族」、「積極的労働市場政策」など新しい社会保障や「障害」は、社会福祉的な色彩が強い政策または普遍的な給付であり、ビスマルク型でもベバリッジ型でも、基本的に租税が財源となる。したがってこれらへの給付の規模とそれに対する公費負担水準に対する考え方が、全体としての租税比率に影響を及ぼす。
・わが国社会保障の財源構造を「出口」の社会保障給付費財源内訳と「入口」の一般会計予算の交付先についてまとめると以下のとおりである。社会保障給付費全体でみると、被保険者拠出が32.2%、事業種負担が30.0%で保険料収入比率が合計62.2%である。公費つまり租税比率は国と地方を併せて34.2%である。社会保険料の比率が租税比率を相当上回り、わが国では社会保険方式が重要な役割を果たしているといえる。ま被保険者と事業主の負担が拮抗している点も特徴である。生活保護費(医療扶助を含む)と児童手当以外の社会福祉費、合計約3.6兆円は大半が地方に交付される。生活保護費は国と地方の負担割合が3対1であり、その他の社会福祉は全体として国と地方の負担割合が1対1である。財源全額が公費である。言いかえると、生活保護費と社会福祉費(児童手当を除く)は、義務的経費が多いが、措置等のあり方も含めて、国税がどれだけ投入されるかが給付額を左右する面が否めない。児童手当は、国の予算が年金特別会計児童手当勘定を通じて地方自治体に交付される。財源は事業主拠出、国の負担、地方の負担による。公費の負担比率は4分の3である。介護は、国の予算約1.9兆円が地方自治体と保険者に交付される。公費負担比率は2分の1強である。雇用保険は雇用主が給付の2分の1、被用者が35%を拠出し、公庫負担が15%である。労災保険は4分の3が雇用主の拠出で、被用者負担も国庫負担もない。残りは資産収入その他の収入による。年金は、一般会計から約7.4兆円が国民年金と厚生年金に繰り入れられる。公費の比率は1割弱である。社会保険費で医療部門に流れるのは7.4兆円で、そのうち国民健康保険と後期高齢者医療広域連合に流れるのは6.3兆円(7.4兆円の約85%)である。国民健康保険においては、公費負担と他制度からの移転で財源の3分の2を占める。政管健保と健康保険組合は、保険料収入が約9割である。国民健康保険は保険としての自律性が弱い。
・労働党ブレア政権は、1997年の政権発足当初から予算配分を重点的に行う分野として、教育と並んでNHSを掲げていた。2000年1月には、ブレア首相がイギリスの医療費支出の対GDP比をEU諸国平均にまで引き上げるという目標を明らかにし、NHSの予算増額に向けて、政府の取り組みを本格化させた。
・政府は、2000年3月の予算演説において今後5年間でNHSへの予算を約200億ポンド(約3.3兆円)、実質ベースで年平均6.1%増額することを表明した。この予算の増額表明を受けて、同年7月保健省はNHSの改革プランを発表し、今後10年間に達成すべき改革プランとして、国民が望むサービスとサービスを達成するために必要な資源を明らかにした。
・2001年11月の中間報告発表後、2002年4月の最終報告発表を控えて、ブレア首相は2002年3月の予算演説において、NHSの改善改革に伴う歳出増を賄う財源として、2003年度から雇用者、被用者分共に国民保険料を1%引き上げ、北海油田への追加的な課徴金等の増収策を発表した。国民保険料の引き上げは、増税をしないという選挙公約を破るものであったが、新聞各紙の世論調査では引き上げ支持が7割以上を占めたという。
・中央政府の租税が中心財源であり、イギリスの場合、予算配分の重点化における内閣の主導権が強化されていることもあって、NHSの予算拡大はこれまでの所、順調に進んでいる。しかし、医療制度の供給面での改革はまだ途上にある。より大きな財源が必要となる時期に国民がそれまでの改革を評価し、追加的財源を認めることに賛意を表するかについては予断を許さない。

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benyamin ♂

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