覚書 081122

鎌倉治子「諸外国の付加価値税(2008年版)」国立国会図書館調査及び立法考査局、基本情報シリーズ1、2008年10月。
・付加価値税の特質は次の3点にある。すなわち、1. 消費に課される間接税であり、最終的には消費者が負担すること、2. 課税ベースが広いこと、3. 生産・流通・販売の前段階で課税されるが、税の累積を排除するため、仕入れ段階に係る税額を控除できること、である。
・付加価値税の特徴を、所得税との比較で見ると、以下のような点が挙げられる。メリットとしては、1. 水平的公平性(同等の担税力をもつ者に同等の税負担を求められる)、2. 世代間公平性(勤労世代に税負担が集中しない)、3. 中立性(勤労意欲を阻害しない、貯蓄に対する二重課税がない)、4. 簡素性(特例措置が相対的に少ない)、5. 税収の安定性(景気の影響を受けにくい)、などがある。
・デメリットには様々なものがあるが、最も重要なのは、垂直的公平性(より大きな担税力ももつ者により多くの負担を求めること)が阻害され、所得水準に対して逆進的となることである。すなわち、高所得者に比べると低所得者は貯蓄より消費に振り向ける傾向が強いため、所得に対する消費税負担率でみると、低所得者の方が負担が重くなる。
・OECD加盟諸国全体で国民負担率・租税負担率(いずれも対GDP比)の推移と税収構造の推移をみると、1965年と2005年を比較すると、国民負担率は25.5%から36.2%に、租税負担率は20.9%から26.9%に上昇している。税収構造については、消費課税の割合は低減しているものの、付加価値税を含む一般消費税の割合は、16.6%から25.4%へと大幅に上昇している。これを所得構造の推移と合わせてみると、1980年頃までは所得課税を中心に負担が引き上げられ、それ以降は一般消費税、特に付加価値税を中心に負担が引き上げられてきたことがわかる。
・付加価値税の税率構造と逆進性への配慮とは密接な関係にある。なぜなら、付加価値税はすべての財貨・サービスに課税されることが原則ではあるが、そもそも消費課税になじまないもの(土地、金融・保険等)や政策的配慮を要するもの(医療、教育等)は非課税とされ、さらに、多くの国で、付加価値税の逆進性の緩和策として食料品等に対する軽減税率が採用されているからである。
・税率構造についてみれば、概して、第一世代のEU諸国ほど標準税率が高く、複雑な税率構造を採用しているのに対し、第二世代にあたるアジア・オセアニア諸国も一様ではなく、イギリスが逆進性に対する配慮からゼロ税率や広い非課税範囲を採用してきたのに対し、フランスやドイツは、ゼロ税率は課税ベースを狭めるとして、従来からイギリスを厳しく批判してきた経緯がある。
・付加価値税の制度は国によって大きく異なるため、その効率性を単純に比較することは難しい。その効率性をあらわす1つの指標として、C効率性(C-efficiency)がある。C効率性とは、「すべての国内消費が標準税率で課税された場合に得られる理念的な税収に対する、実際の税収の比率」として定義される。
・C効率性は、メキシコの30.4%からニュージーランドの96.4%まで、大きな開きがある。EU主要国はおおむね50%前後である。日本は65.3%であり、カナダ、韓国、ルクセンブルク、ニュージーランド、スイスなどとともに、効率性の高い国に属している。この理由は、標準税率が低いこと、非課税項目が比較的少ないこと、軽減税率やゼロ税率をもっていないことによる。
・C効率性という指標は、定義から明らかなように、税率構造に起因する税収減割合とも密接な関連をもつはずである。しかし、国によって、C効率性と税収減割合は大きく乖離している。乖離の要因は、C効率性に付随するものでもある。すなわち、C効率性は、税率構造(税率、非課税、課税ベース、免税点)という要素以外にも、税務行政の効率性、納税者のコンプライアンスなど様々な要素からの影響を受ける。これらの要素は独立のものではなく、相互に作用しあっている。例えば、標準税率が高ければ脱税の誘引が強まり、軽減税率が複数あれば税務当局と納税者の事務負担は重くなる、といったかたちである。
・イギリスにおける国税の主要税目としては、所得税、法人税、キャピタル・ゲイン税等の直接税と、付加価値税、炭化水素油税、たばこ税、酒税等の間接税とがある。地方税の唯一の税目は、居住用資産を対象とした居住者に課税されるカウンシル・タックスである。
・イギリスは、所得税の母国であって、EU諸国の中では伝統的に直接税の比率が高かった。しかし、サッチャー政権下で直接税から間接税へのシフトが進み、それ以降、保守党から労働党へと政権が交代しても、同じ路線が踏襲されている。間接税についてみれば、90年代前半までは付加価値税の税率の引き上げが、それ以降は、個別間接税の引き上げや気候変動税等のような新税の導入など、環境税的な税目の負担の引き上げが目立つ。付加価値税収への依存度は高まっており、対総税収比でみると、1975年の10.8%から、2006年は22.2%へと、大幅に上昇している。
・イギリスの付加価値税の特徴は、ゼロ税率を採用し、非課税の適用範囲も広くすることで、付加価値税の逆進性に配慮していることである。特に、ゼロ税率は、政策的配慮から、食料品、書籍・新聞・雑誌、子供用衣料など、幅広い品目に適用されている。軽減税率は、1994年に初めて導入され、対象範囲は狭い。これらの点は、ゼロ税率をもたず軽減税率を多用するフランスとは対照的である。
・イギリスの付加価値税は、ゼロ税率等による逆進性への配慮が手厚い反面、課税ベースは狭くなっている。税率構造に起因する税収減は、2007年度で433.0億ポンド(ゼロ税収分が291.0億ポンド、軽減税率分が32.0億ポンド、非課税分が110.0億ポンド)と見込まれており、これは付加価値税収(850億ポンド)の50%超に相当する。

松山幸弘「地域医療提供体制改革(IHN化)の国際比較」富士通総研経済研究所『研究レポート』No.329、2008年11月。
・米国、英国、カナダ、オーストラリアなど先進諸国では大胆な公立病院改革が実施されて地域医療提供体制の再構築が推進されている。その共通点は、広域医療圏単位で医療経営資源最適配分を行うためのガバナンス、意思決定の一元化の仕組みを構築していることである。意思決定一元化の経済的効果を高めるためには、異なる機能を持つ医療関連施設をネットワーク化することが有効である。米国ではこの地域医療ネットワークのことをIHN(Integrated Healthcare Network:統合ヘルスケアネットワーク)と称している。IHNの本質は、医療経営資源を共有することで重複投資を回避し、同時に医療の標準化を促すことである。英国、カナダ、オーストラリアが構築している地域医療ネットワークもこのIHNの本質を備えている。
・覚書注:表題や問題意識からはIHNが中軸の論点であるかのように見えるが、実のところ内容の焦点は公立病院における経営改革についてである。地域ごとの公立病院を管理する上位組織を新設あるいは集約する一方で、民間的経営を導入していく改革が紹介されている。IHNは本論では取り上げられていないといっても過言ではない。IHNを冠しているレポートである以上、地域における公立病院機能の統廃合や、それぞれの連携を強化する取り組みに立ち入るのが本筋だが、そこに到達する途中の上位組織を改革する段階で話が終わってしまっている。さらにいえば、本論では各国の医療制度の説明に大半があてられており、実質的な話の中心はそうした既存の制度説明である。各国の医療制度を調査して、これまで著者が知らなかった知識を獲得したは良いが、それを全部盛り込もうとして失敗しているレポートである。平たく言えば、論点が絞り込まれていない。意図的に水増ししているかもしれない。冒頭の課題設定に対応した内容に書き改めるか、内容に適合的な表題や課題設定を変更するべきである。

「英国におけるカーボンフットプリント規格(PAS2050)の発行」KPMG Japan『ニューズレター(環境・CSR関連)』2008年11月。
・2008年10月29日、英国規格協会(British Standard Institute:BSI)は、製品・サービスのライフサイクルにおける温室効果ガス(GHG)排出量、いわゆる「カーボンフットプリント」の策定に関する規格であるPAS2050を発行しました。
・CO2、CH4、N2O、HFCs、PFCs、SF6のほか、京都議定書で対象となっていない温室効果ガスも対象となります。
・カーボンフットプリントは、製品が製造される時点から100年までの期間におけるGHG排出量として算定されます。使用段階と廃棄段階のGHG排出は、製品が製造されてから何年か経過した後に生じることが多いですが、その場合、GHG排出量には一定の式を用いて計算された重み付け係数が乗じられます。
・PAS2050に対する準拠性の評価の方法としては、認定を受けた独立した第三者による認証、認定を受けた機関以外の者による検証、自己検証の3つの方法が挙げられていますが、消費者からの信頼を最も得やすいのは「認定を受けた独立した第三者による認証」であるとされています。

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benyamin ♂

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