覚書 081213

佐藤令・大槻晶代・落美都里・澤村典子「主要国の各種法定年齢 選挙権年齢・成人年齢引き下げの経緯を中心に」国立国会図書館、調査及び立法考査局、基本情報シリーズ2、2008年12月。
・選挙権年齢の世界の趨勢は18歳であるといってよい。調査した189か国・地域のうち、18歳までに(16、17歳含む)選挙権を付与しているのは170か国・地域となっており、割合にして89.9%に上る。G8各国ではわが国以外すべての国が18歳、OECD加盟国30か国ではわが国と韓国(19歳)を除くすべての国が18歳までに選挙権を付与している。近年の注目すべき動きとしては、2007年6月にオーストラリアが国政レベルの選挙権を18歳から16歳に引き下げており、ドイツのように一部の州が地方選挙の選挙権年齢を先行的に16歳にしている例もある。イギリスやドイツでは16歳への引き下げが議論されている。選挙権年齢の18歳への引き下げは19世紀から20世紀初頭にかけて、まず南米諸国で行われた。欧米では1970年代に引き下げられ、アフリカ、アジア及びカリブ海の旧植民地諸国では1970年代から1990年代にかけて引き下げられている。一般的に選挙権年齢の引き下げの背景には、社会的変化と政治的な要因がある。「成人」は政治的成熟の基準となることが多く、社会的変化によって成人年齢が引き下げられるのに伴って選挙権年齢の基準となることが多い。1970年代の西側先進諸国や、民主化で直接選挙を導入した時のアジア、アフリカがその例である。その一方で、第二次世界大戦後の東欧の共産圏や1950年代末から1970年代にかけて革命があったキューバ、ニカラグア、イランなどは、選挙権年齢の引き下げが純粋に政治的な要因によって行われた例である。政治体制が転換する際には新しい政治体制の「民主的」な側面を強調しようとして、政治参加の有資格者を拡大する傾向にあり、そのために選挙権年齢が引き下げられると言われている。ソビエト連邦や東欧等の旧共産主義諸国が、18歳選挙権を欧米諸国よりも早い時期に導入した理由について、「政治教育的な意味あいが含まれているのではなかろうか」と推察している資料もある。
・大陸法系諸国の法制のルーツであるローマ法は、成人年齢を25歳としていた。一方、英米法系諸国の法制のルーツであるコモンローでは、成人年齢を21歳としていた。現在では、成人年齢は選挙年齢の引き下げの議論と密接な関連を有し、選挙権年齢とともに成人年齢を18歳とする国・地域が多いが、アメリカの一部の州、カナダの一部の州、韓国等のように、異なる年齢規定を有する国・地域もある。
・諸外国の立法例は、婚姻適齢の高低、男女の差の有無、適齢引き下げの特例の有無、成人年齢との関係等において多様である。世界的潮流として、近年の改正は、婚姻適齢の男女の差を無くす傾向にある。また、親の同意なし婚姻できる年齢と成人年齢とを一致させる傾向にあり、親の同意や裁判所の許可等の条件を付して例外的に適齢の引き下げを認める国・地域が多い。
・近代までは、刑事手続きにおいて成人と少年を区別して扱う現在のような裁判制度はなかった。そのため、刑事責任能力がないとされる年少者は刑罰を免れるが、刑事責任能力があるとされる年齢の者であれば、現在では少年として扱われ得る者であっても、成人と同じ裁判所で扱われた。しかし、近代になると、少年には、その人格と環境とに応じて成人と異なる処遇をすべきであるとの考え方が出てきた。1899年には、アメリカのイリノイ州において、世界に先駆けて少年裁判所の制度が確立された。これは、非行少年は保護に欠けた少年であり、これらの少年に対しては、親に代わって国が保護を与えるべきという国親思想(oarens patriae)に基づいたものである。その後、少年司法制度は世界中に広がり、少年として扱うことができる年齢は多くの国・地域で引き上げられていった。近年は、少年を18歳未満の者とする国・地域が多くなっている。しかし、ドイツのように、特別な事情がある場合には少年の年齢の上限を拡大し得る制度を設ける国がある。
・イギリスにおいて選挙権年齢引き下げの議論が行われたのは、1960年代半ばから後半にかけてのことである。労働党のウィルソン首相が選挙制度改革を下院議長に対して諮問したのを受けて、下院議長は、1965年5月、1949年国民代表法(Representation of the People Act 1949)の改正を審議する「選挙法に関する審議会(Conference on Election Law、通称Speaker’s Conference)」を発足させた。選挙人登録、選挙費用、選挙執行及び投開票など多岐にわたる諮問事項の筆頭に挙げられていたのは21歳となっている選挙権年齢引き下げの問題提起であった。その一方で、選挙権年齢の問題とは別に、従来コモンローによって21歳となっていた成人年齢は何歳が妥当であるかを諮問するために、政府は「成人年齢に関する委員会(The Committee on the Age of Majority、通称Latey Committee)」を1965年7月に設置した。2年にわたる審議を経て、成人年齢に関する委員会は1967年7月に、成人年齢を18歳に引き下げることが妥当であると政府に答申した。この議論の背景には、青少年が無責任又は反社会的である場合、それは責任を付与されていないことに一因があり、思いきって責任を付与することが青少年の無責任を療治し、責任感を涵養する一手段として実効性がある、という考え方がある。議会での法案審議を経て、1969年4月に1969年国民代表法(Representation of the People Act 1969)が、同年7月に1969年家族法改正法(Family Law Reform Act 1969)が制定され、選挙権年齢と成人年齢はともに18歳に引き下げられた。
・婚姻適齢は、1929年に婚姻適齢法(The Age of Marriage Act 1929)が制定されて以降、男女とも16歳となっているが、現行法である1949年婚姻法(Marriage Act 1949)第3条は、18歳未満の者が婚姻しようとする場合には、親の同意等が必要であると規定している。
・1908年児童法(Children Act 1908)により、16歳未満の者を成人の刑事手続きと区別して扱う少年裁判所(juvenile court)を初めて設置した。1927年に若年犯罪者に関する委員会は、1908年法以降の経験から、17歳未満の者を少年裁判所の管轄権に係属させるように勧告した。この勧告は、1933年児童少年法(Children and Young Persons Act 1933)に取り入れられ、同法では少年の年齢を17歳未満とし、1969年児童少年法(Children and Young Persons Act 1969)でも、少年裁判所が17歳未満の者についての裁判権を保持しつづけた。1991年刑事司法法(Criminal Justice Act 1991)は、少年裁判所を青少年裁判所(youth court)に名称変更し、対象とする年齢を18歳未満に引き上げた。これは、17歳は子供から大人への移行段階に当たり、その年齢層の持つ多様性から、少年と同等の扱いを可能にするためのである。

伊藤さゆり「12月 BOE 金融政策委員会:100bpの追加利下げで政策金利は2%に」ニッセイ基礎研究所『経済・金融フラッシュ』No.08?125、2008年12月5日。
・イングランド銀行(BOE)は、4?5日に金融政策委員会(MPC)を開催し、11月の150bpの大幅利下げに続く100bpの利下げを決めた。利下げ後の政策金利は2%となった。
・今回の声明文では、「景気後退のペースは加速」しており、「公的資金注入や資金調達支援、流動性強化などの対策でもマネー・信用市場の緊張は続いているため」、「一層の対策がなければ貸出は正常化しない」との判断が示された。また、11月の「インフレ報告」での見通し後の変化のうち、利下げとポンド安はインフレ上押し圧力、一層の景気後退と商品価格の下落は下押し圧力であり、プレバジェットで明らかにされた総額200億ポンド(GDP比1.4%)の景気対策は「予測期間中のインフレ率に大きな影響を及ぼすものではない」とした上で、「中期的に2%のインフレ目標を下回るリスクが高まった」と追加利下げの理由を説明した。
・前回のMPC以降も、外部環境は一段と悪化し、イギリス国内でも住宅市場の調整がさらに進行し、雇用・所得環境と悪化とCPIのピーク・アウト(9月前年同月比5.2%→10月同4.5%)が一層鮮明になっている。

投資企画部運用戦略グループ「Monthly Economics」三菱UFJ信託銀行『調査情報』2008年12月号。
・図表のみ。

山崎加津子「サルコジ、ブラウン、メルケル:金融対応で明暗?」大和総研ホールディングス、2008年12月9日。
・昨今の金融危機への対応策で、サルコジとブラウンは支持率を回復させた。一方、メルケルは短期的かつ迅速な対応策には消極的であり、批判が高まりつつある。

「イギリス 付加価値税の引き下げを軸に総額200億ポンド 政府の景気刺激策」労働政策研究・研修機構『海外労働情報』2008年12月。
・金融危機の影響で、イギリス経済は景気後退と雇用情勢の急速な悪化に見舞われている。
・統計局が11月に公表した7?9月期の雇用関連統計は、前月の発表分に次ぐ全般的な悪化を示している。失業率は5.8%で前期(4?6月期)から0.4ポイント上昇、失業者数は前期から14万人増の182万人と11年ぶりの高い水準に達した。解雇者数も、前期比2万9000件増の15万6000件と増加が続いている。直近の10月の求職者給付受給者数は、前月から3万6500人増の98万900人となった。地域別の失業率は、ウェールズの6.7%やイングランドの6.0%に対して、雇用状況が未だ好調なスコットランドや北アイルランドでは4%台と相対的に低く、景気後退の影響は地域毎にも異なる状況がうかがえる。とりわけ、失業率が急速に上昇しているウェールズやイングランド北部では、建設業や製造業の不振が大きく影響しているとみられる。
・財務省が11月下旬に発表した次年度の予算編成方針(pre-budget report)には、200億ポンド規模の景気対策が盛り込まれた。中心となるのは、12月から2009年末まで実施する付加価値税率の引き下げ(17.5%から15%へ)である。これは年間125億ポンドに相当する。減税による消費の活性化が狙いだ。併せて、低所得者層の税控除額の引き上げや児童手当の増額、年金受給者への手当ての支給など、景気低迷が特に影響を及ぼしやすい層への支援をはかる。また、公共投資30億ポンドを2010年度分から前倒しして住宅・学校の建設や道路整備などを実施するほか、中小企業の資金調達に対する政府保証や政府調達への参加の促進、法人税率の引き上げの延期など、企業向けの支援策を講じる。雇用面では、景気後退の影響が著しい産業部門で失業の危機にある人々の再訓練や、支援の必要な離職者に対して優先的に職業訓練を実施するほか、職業紹介や求職者給付などの窓口業務を行うジョブセンタープラスにおけるサービスの強化、また大企業とのパートナーシップによる雇用促進などに13億ポンドを投じる方針を示した。関連して、ジョブセンタープラスの人員を6000人増員する計画が、すでに雇用年金省より打ち出されている。離職者の円滑な再就職を支援することにより、国内で未だ60万件を超える求人の充足に結び付けたい考えだ。政府は、年15万ポンド超の高額所得者に対する所得税率を、現在の40%から2011年以降の45%に引き上げることなどで赤字を補うとしている。

木村誠希「マンチェスターにおける混雑賦課金制度について」自治体国際化協会『自治体国際化フォーラム』2008年10月号。
・混雑賦課金制度(コンジェスチョン・チャージ)は、マンチェスター市を中心とする10市で構成されるグレーター・マンチェスター地域の中心街を走行する車について一日で最高5ポンドの料金を課すという制度です。賦課されるのは、月曜から金曜の、午前7?9時30分までに市街地へ向かう車、午後4?6時30分までに市街地から出る車です。導入の主な目的は、市街地での渋滞緩和そのものに加えて、コンジェスチョン・チャージを課すことで得た資金を鉄道網などの公共交通機関の改善に利用することにあります。
・ロンドン、マンチェスターともコンジェスチョン・チャージによって得た資金を公共交通機関改善のために利用するという点では同じです。ただし、ロンドンにおいては徴収した資金の中から公共交通機関改善のための投資に回すのに対して、マンチェスターにおいては先に公共交通機関改善のための投資を行い、この投資した資金の回収手段としてコンジェスチョン・チャージが位置付けられている点が異なります。
・BBCがマンチェスター地域で2008年6月に実施した世論調査によると、62%が導入に反対しており、86%が住民投票を求めているという結果が出ました。反対の主な理由としてガソリン価格高騰による負担に加え、コンジェスチョン・チャージ導入によってさらに自動車利用のコストが高くなることが上げられていました。

松野下良子「活力あるロンドン・癒しのロンドン」自治体国際化協会『自治体国際化フォーラム』2008年10月号。
・ロンドンにはたくさんの人種がいる。ロンドンにはたくさんの公園がある。

「日本における最低賃金の経済分析」労働政策研究・研修機構『労働政策研究報告書』No.44、2005年10月14日。
・本報告書は、厚生労働省労働基準局賃金時間課より要請を受けた「産業別最低賃金制度に関する調査研究」の結果を取りまとめたものである。厚生労働省からの研究要請の主な内容は、大きく分けて次の2点である。1つは統計資料を用いた最低賃金に関する実態分析であり、もう1つはアンケート調査による最低賃金制度に関する雇い主の認識状況の把握である。前者の統計資料を用いた最低賃金に関する実態分析の中心は、地域別最低賃金額近辺及び産業別最低賃金額近辺における賃金の張り付き状況の確認である。統計資料としては、2003年『賃金構造基本統計調査』の個票を用いることによって賃金の張り付き状況を確認した。後者のアンケート調査は、雇い主に対して、地域別最低賃金制度・産業別賃金制度に関する認識状況、雇用者の賃金決定に際しての最低賃金の影響を中心として調査を行った。
・日本における最低賃金に関する研究業績の多くは、最低賃金の賃金下支え効果に関するものである。最低賃金が賃金の下支え効果を有するという結果とそうではないという結果に分かれるが、個票を使った詳細な結果をみる限り、最低賃金の賃金下支え効果は地域によって異なるという見方が妥当しているようである。
・2003年の『賃金構造基本統計調査』の個票を用いた分析によれば、一般労働者を対象とした場合には、どの都道府県も地域別最低賃金額付近での賃金の稠密な張り付き状況は確認できない。しかし、パートタイム労働者を対象とした場合には、状況は大きく一転する。沖縄県、北海道、山口県、福岡県等では、多くの労働者が地域別最低賃金額近辺に集中しており、つまり、最低賃金の賃金下支え効果があると考えられる。一方、東京都、山梨県、滋賀県等の地域では最低賃金額近辺における労働者の集積状況が他県に比べて弱く、労働者が地域別最低賃金額近辺に集中している状況は確認できない。続いて、低賃金労働者と年齢の関係の検討から、若年者及び高齢者で低賃金者の割合が高いことが明らかになった。その中でも特に、女性のパートタイム労働者でそれらの割合が高くなっている。最後に、最低賃金未満の賃金を受け取っている労働者がどのような属性を有しているのか検討している。性別にみると女性で、就業形態別にみるとパートタイム労働者で、年齢階層でみると若年者もしくは高齢者で、勤続年数の長短でみると勤続年数の短い者で、学歴でみると低学歴の者で、企業規模でみると小企業の者で、最低賃金未満の賃金を受け取っている者の割合が高くなっている。これらの結果は予想されるところであるが、計量分析の結果は多少われわれの期待を裏切る結果となっている。産業別にみると、金融・保険業等で最低賃金未満者の割合が高く、鉱業等でその割合が低くなっているのである。
・産業別最低賃金のうち、鉄鋼業、電気機械器具製造業、各種商品小売業の3産業について、産業別最低賃金額近辺における賃金の張り付き状況について検討した結果、地域別最低賃金の場合と同様に、一般労働者については最低賃金額近辺に賃金が集積している状況は確認できない。パートタイム労働者を対象とした場合、業種により結果は大きく異なっている。鉄鋼業の場合、対象となった県は少ないものの、その多くの県で産業別最低賃金額近辺に賃金が集積している状況が確認できた。電気機械器具製造業の場合にも、多くの県で産業別最低賃金額近辺に多くの労働者が集積している状況が確認できている。各種商品小売業の場合には、産業別最低賃金額近辺における張り付き状況のパターンが3つに分類されている。3業種についても、パートタイム労働者の賃金分布と産業別最低賃金額の間には様々な関係が考えられることから、産業別最低賃金制度の有効性を論じる際には、対象となる業種および地域について詳細な検討を行う必要のあることが示唆される。また併せて、産業別最低賃金の設定により当該地域の賃金底上げが図られ、産業別最低賃金を設定していない地域との間に産業間賃金格差が生じるかどうかについて、各種商品小売業を対象業種として、『賃金構造基本統計調査』の個票を用いた賃金関数の推計を行った結果、産業別最低賃金を設定している県の方がそうでない県に比べて平均賃金が高いという結果が得られている。
・日本では最低賃金が労働需要行動に制約を与えており、最低賃金適用部門で吸収しきれない労働者が最低賃金未満者として顕在化している。
・地域別最低賃金額を知っていると回答した事業者は46.6%であるが、調査票に記入してもらった金額と実際の地域別最低賃金額とを照合した結果、本当に地域別最低賃金額を知っている事業者は24.2%でしかなかった。
・覚書注:日本の最低賃金について実情を詳細に調査している研究であると評価できる。雇用や賃金をめぐっては、ワーキングプアとか非正規労働とかフリーターとか、言葉だけが先行してイメージ中心の議論が行われている論壇状況を踏まえると、まずは本研究を参考に共通の認識土台を形成することが不可欠の作業であろう。政府大企業批判のイデオロギー的議論が跋扈しすぎである。なお、本研究の限界を指摘しておけば、経年的な分析がない点である。最低賃金額近辺での労働者が多い地域や産業が、以前からそうだったのか、ある局面からそうなったのか、に立ち入らないと、一時的な現象としてのみ理解できてしまう。政策的な対応を検討するためにも、歴史的な接近が必要となるだろう。

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benyamin ♂

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