覚書 081220

猿渡英明「欧州経済概観 08/12 10-12月期の景気下振れリスクが高まるユーロ圏」新光総合研究所『SRI 欧州経済ウォッチ<ユーロ圏・英国>』No.08-30、2008年12月。
・英国の7-9月期実質GDPは前期比マイナス0.5%となり、2008年に入って英国景気が徐々に不快調整にはまりつつある姿が鮮明となった。金融部門の調整は、住宅市況の悪化などを伴いながら、内需全般に波及しつつある。資産価格の上昇を担保とした信用供与により、過剰な消費や投資が行われていたという構図は、米国とほぼ同じといってよい。このため、金融機関の損失拡大を背景に信用供与が縮小すれば、自ずと景気は大幅な調整を強いられることとなる。輸出や製造業部門のウェートが低いだけに、内需の回復がない限り、景気全般が持ち直すことは困難であろう。景気が回復するためには、金融部門の一層の調整が一巡し、信用収縮に歯止めがかかる必要がある。しかし、回復の目途は依然としてたっておらず、2009年中の回復は難しい情勢にある。
・ユーロ圏の輸出シェアの推移:1. EU35.2%、2. 米国16.2%、3. 日本16.1%(2000-2005年)→1. EU35.6%、2. 17.5%日本、3. 11.9%米国(2008年)
・英国経済見通し:金融部門の調整が消費・住宅部門の調整へと波及。信用収縮がすでに始まっており、消費を中心に景気はかなり下振れする見通し。景気後退の構造は米国とほぼ同じ。住宅市場の底入れが景気回復の鍵を握る。BOEは最終的にゼロ付近までの利下げを強いられると予想。
・英国の主な経済政策:2008年12月-2009年12月まで、VATを2.5%引き下げ(17.5%→15.0%)。酒税、タバコ税、ガソリン税は恒久的に引き上げの方向。各種増税は延期(中小企業法人税:2010年4月へ、高額所得者所得税:2011年4月へ)。財政、金融、実質所得の改善などから2010年の景気回復を想定(英政府見解)。財政政策への評価は今のところやや低調。

「単身世帯の増加と求められるセーフティネットの再構築 『ひとりでも生きられる社会』に向けて」みずほ情報総研『研究レポート』2008年12月。
・これまで日本では家族が社会保障制度を補完する機能を果たしてきた。しかし、単身世帯の増加によってこうした機能の低下が予想される。社会保障制度の見直しが必要となる。
・単身世帯の増加が顕著になった1985年の単身世帯数を基準にして、2005年の男女別・年齢階層別の単身世帯数の倍率をみると、男性では50歳以上の年齢階層、女性では80歳以上の年齢階層で3倍以上に増えている。特に80歳以上の年齢階層では、男女ともに単身世帯数が5-7倍に増えている。注目すべきは、50代と60代の男性で単身世帯が4-5倍も増加している点である。単身世帯は高齢者で増えてきたとみられているが、中高年男性でも増加が著しい。
・単身世帯の増加要因は、年齢階層人口の増加に伴う「人口要因」と、結婚・世帯形成行動の変化に伴う「非人口要因」に分けられる。80歳以上の男女と70代男性で単身世帯が増加したのは、長寿化による年齢階層別人口の増加が主因と考えられる。一方、60代男性における単身世帯の伸びは、年齢階層別人口とともに、「未婚」と「離別」の増加が要因である。さらに50代男性の単身世帯の伸びは、非人口要因が主因となり、その多くは「未婚」の増加によると考えられる。以上のように、単身世帯の増加の背景には、高齢者人口の増加に加えて、50代・60代男性を中心に「未婚」や「離婚」の増加といった結婚・世帯形成行動の変化が挙げられる。
・単身世帯からみた現行の社会保障制度の課題としては、現行制度は、家族や企業によるセーフティネットを前提に設計されているため、単身世帯にとって不十分な点があげられる。というのも、単身世帯では同居家族がいないので、家族のセーフティネットが不十分である。また、単身世帯では、二人以上世帯に比較して、無業者や非正規労働に従事する者の割合が高いため、企業によるセーフティネットも不十分になりがちである。
・単身世帯のセーフティネットを再構築するためには、第一に、単身世帯の非正規労働者が「自助」で生活できるように環境整備が求められる。具体的には、非正規労働者を対象にした職業訓練の充実や、非正規労働者への不合理な処遇の是正である。また、高齢期の貧困を予防するため、非正規労働者への厚生年金の適用拡大なども必要である。第二に、単身世帯と地域社会の結びつきを強めて、地域社会における「共助」を強化する施策が求められる。第三に、「公助」の再構築として、家族と企業によるセーフティネットを前提に設計された社会保障制度を見直す必要がある。個別制度としては、生活保護制度や介護保険制度をの拡充が求められる。
・本稿における「単身世帯」とは、国勢調査の定義に則って、「世帯人員が1人の一般世帯」をいう。そして「一般世帯」とは、1. 住居と生計を共にしている人々の集まり、または一戸を構えて住んでいる単身者、2. これらの世帯と住居を共にし、別に生計を維持している間借り・下宿などの単身者、3. 会社・官公庁などの寄宿舎、独身寮などで居住している単身者である。上記2に示したように、住居を共にしていても生計を別にすれば「単身世帯」となるので、単身世帯は厳密には「一人暮らし」を意味するわけではない。しかし実際には、単身世帯のほとんどは「一人暮らし」と考えられる。例えば、2005年の全国の単身世帯において、上記2に該当する「間借り・下宿などの単身者」の割合は2.3%に過ぎない。上記3の「会社などの独身寮の単身者」と合わせても、7.5%である。したがって、単身世帯は「一人暮らし」とほぼ同義と捉えてかまわない。なお、病院・診療所の入院者、社会施設の入所者、寮・寄宿舎の学生・生徒などは「一般世帯」ではなく、「施設等の世帯」に属すので、「単身世帯」にはならない。例えば、高齢者が一人で老人ホームに入所しても、「単身世帯」に含まれない。
・男性の年齢階層別単身世帯数をみると、1985年と2005年ともに20代男性が最も多く、年齢階層が上がるにつれて減少している。20代で単身世帯が多いのは、進学や就職などを機に親元から離れて一人暮らしを始める若者が増えるためと考えられる。この点で、1985年と2005年は似ているが、違いとしては、20未満を除いた全ての年齢階層で2005年の単身世帯数が1985年を上回る点があげられる。一方、女性の単身世帯数をみると、両年ともに、20代と60-70代をピークとする二つのこぶがみられる。しかし、1985年は20代の単身世帯が60代の単身世帯よりも多かったが、2005年になると70代の単身世帯数が20代を上回っている。
・英国の国勢調査によれば、単身世帯とは一人暮らし(one person living alone)を意味する。そして、フルタイムあるいはパートタイムの管理者が駐在する共同施設の居住者は、単身世帯に含まないのが原則である。なお、英国の国勢調査は10年に1度行われており、直近の調査は2001年になる。
・英国における年齢階層別人口に占める単身者の割合を見ると、75歳以上男性の32%、同女性の61%が単身者となっている。日本の同割合は、男性10%、女性21%なので、英国では高齢者に占める単身者の割合が極めて高い。この背景には、英国の高齢者は子供と同居する習慣が乏しく、できる限り一人で暮らす傾向が強いことが大きい。また、英国では、日本に比べて、高齢者向け集合住宅などが整備されている点も影響していると考えられる。例えば、英国では「シェルタード・ハウジング(sheltered housing)」と呼ばれる高齢者向けの集合住宅がある。これは高齢者が独立して暮らせるように、ウォーデン(warden)と呼ばれる管理人が駐在し、入居者が必要とするサービスを外部に依頼することや、住居の修繕などを行っている。なお、英国では高齢単身者の比率が高いが、家族や友人や近隣の人などによって行われる無償介護の役割は小さくない。そして、単身世帯が多いことから、無償介護の62%は、別居する要介護者に対して行われている。ちなみに、「病気で寝込んだときに、誰に助けを頼むか」を高齢者に尋ねた意識調査をみると、「親族(別居家族)」「友人」「近隣の人」に依頼すると回答する者の割合が高い。英国の高齢単身者が生活を維持できるのは、こうしたインフォーマルな助け合いが大きいと考えられる。
・英国では家族や友人による介護も活発に行われている。しかし日本と異なるのは、一定時間以上の介護を行った介護者には「介護者手当て(Carer's Allowance)」が支給される点である。具体的には、看護手当てや障害手当てを受給する要介護者に、週35時間以上の介護をした者には、週50.55ポンドが支払われる。介護者は、要介護者の家族に限られないが、16歳以上であること、フルタイムの学生でないこと、週95ポンド以上の報酬を得ていないこと、などの要件を満たす必要がある。

「イギリス 外国人専門技術者の新たな受け入れ制度、運用開始」労働政策研究・研修機構『海外労働情報』2008年12月。
・今年初めから段階的に導入されているポイント制(外国人を入国目的や専門技術等に選別して、年齢や学歴などに基づく入国資格を定める制度)のうち、専門技術者などを対象とする第2区分の運用が11月末から新たに開始された。保有資格や、受け入れ先での給与水準などに基づいて計算されたポイントが、政府の定める水準を満たす外国人に対象を限定する。受け入れ側に対しても、外国人を雇用する職種の専門性や、EU域内での人材調達が困難であることの証明(労働市場テスト:一定期間の求人広告の実績など)を求める点は従来の制度と同様だが、新たな制度のもとでは、受け入れ先(スポンサー)としてのライセンス取得も義務付けている。また従来の制度とは異なり、外国人には一定の英語力も問われる。
・政府が人材不足と認める職種については、労働市場テストが免除される。職種の検討は、政府の諮問機関である移民提言委員会(Migration Advisory Committee)が実施することとされており、委員会は既に9月、政府に不足職種案を提出していた。委員会案は、旧制度のもとで政府が認めていたよりも広範な職種を人材不足としているものの、資格水準や資金額などの条件を明確に課しており、また従来の制度のもとで、不足職種リストに含まれていたソーシャル・ワーカーを除外するなど、対象職種の就業者数は旧制度に比べて30万人分圧縮されるとしていた。委員会案を受けて、国境局(UK Border Agency)は業界団体などから意見聴取を実施、最終的にソーシャル・ワーカーを復活させた不足業種リストを固めた。ソーシャル・ワーカーは就業者数にして10万人分に相当する計算で、このため旧制度からの圧縮幅は20万人分に減少した。国境局は委員会に対して、ソーシャル・ワーカーや上級介護労働者、看護師、シェフなどの職種について来年3月までに検討のうえ改定案を示すよう、改めて諮問している。
・企業からは、新制度の導入によるコスト増などに加え、国内では調達が困難な職種の労働者不足を助長するとの批判の声が強いが、移民提言委員会の委員長を務めるデビッド・メトカーフ教授は、企業が国内での採用活動を強化してより高い賃金を提示すれば、イギリス人労働者の応募が増加することによって人材不足は緩和されると一蹴し、さらにライセンスの審査にあたっては、イギリス人従業員の訓練が十分に行われているかも対象となりうるとの見方を示したという。

林田宏一「用地補償業務外部化に向けて 暗黙知化したノウハウの段階的移転」『NRI パブリックマネジメントレビュー』Vo.65、2008年12月。
・ロンドン市は外郭団体であるロンドン開発公社に用地補償業務を委託している。現在はロンドンオリンピックの整備に向けてオリンピック実行委員会より用地補償業務を受託している。重要なのは、ロンドン開発公社が用地補償の具体的な業務を「Surveyor」と呼ばれる専門家に委託していることである。Surveyorとは大学で土地、不動産に関する領域、建築、税務、法律等の単位を取得し、日本の不動産鑑定士相当の試験に合格して、王立サーベイヤー協会(Royal Institute of Chartered Surveyors)に登録している測量、鑑定、用地交渉の専門家である。ロンドン市では事業者と地権者の双方がSurveyorを擁立し、双方のSurveyorが取得対象となる地権者の土地と物件の補償額を算出する。その補償額をもとにSurveyor間で交渉を行い、妥当な補償額を確定する。ここで双方の合意が得られない場合は、土地裁判所で決着することになる。その際には、地権者の代理人として弁護士を立てることを土地裁判所はもとめている。なお、事業者が費用を負担することになっており、合意した補償額の3%前後がSurveyorに支払われる報酬である。

澤田康幸・山田浩之・黒崎卓「援助配分は貧困削減と整合的か? ドナー間比較」RIETI『ディスカッション・ペーパー』08-J-065、2008年12月。
・カナダ、フランス、日本、オランダ、イギリスの援助配分は、グローバル貧困ターゲッティングの理論に沿っており、貧困ギャップがより高い水準にある国に援助がより多く供給されていた。

大政美樹「主要国の金融政策動向」国際金融情報センター、2008年12月3日。
・英国:3.00%
・11月6日に1.50%ポイントの大幅利下げ。インフレ見通しが大幅に後退し、経済見通しは内外ともに著しく悪化と指摘、一次産品価格の急落にも言及。10月は0.5%ポイントの緊急同時利下げをしていた。2007年12月以降5回にわたり、累計2.75%ポイント利下げ。次回は12月3ー4日。

大政美樹「主要国の政治動向」国際金融情報センター、2008年12月3日。
・英国:特筆事項なし。

内閣府「世界の潮流 2008年 2 世界金融危機と今後の世界経済」2008年12月。
・今回の金融危機は、サブプライム住宅ローン問題に端を発しましたが、それはあくまできっかけに過ぎず、その根本の原因は、世界的に金融取引が急拡大する中で、金融機関のビジネスモデルやリスク管理、さらには金融当局の規制・監督体制が、新しい金融商品や金融イノベーションに対し十分に対応できていなかったことにあります。
・2008年9月15日の米大手投資銀行の破綻を契機として、「世界金融危機」が発生。欧米では、金融危機の経営不安が続くとともに、市場が機能不全に。ヨーロッパの危機は、アメリカ発の影響もあるが、アメリカ以上に高い金融機関のレバレッジ比率や住宅バブルの崩壊等、ヨーロッパ自身の問題によるところが大きい。新興国では、アメリカ発の直後の影響は小さかったものの、「質への逃避」や欧米金融機関による「レバレッジの解消」の影響を受けて、株価及び通貨が下落。世界大恐慌と比較すると、今回の危機の規模は、実物面及び金融面とも今のところ小さいが、1. グローバルな危機、2. 危機の波及が速い、3. 証券化により複雑化という点が特徴。金融危機の発生に対し、各国は迅速に金融対応策を実施。金融危機への資本注入とともに、不良債権の買取り等により金融危機のバランスシートから不良債権を切り離すことが重要だが、今のところ資本注入が先行。危機対応策により、中央銀行のバランスシートが急拡大しており、財政赤字の急激な拡大懸念とあいまって、「通貨の信認」の問題が発生する可能性。将来の「出口戦略」として、財政健全化に向けた道筋も示す必要。
・世界金融危機発生の背景は、マクロ経済的には、グローバル・インバランスの拡大に伴い欧米の金融市場への資金流入が拡大し、世界的な低金利とあいまって、金融機関の過剰なリスク・テイクを助長。また、新興国等からの資金フローがアメリカの債権投資に向かったため、金融政策を引き締めても長期金利が上昇しない状況になり、ますます過剰なリスク・テイクに傾斜。危機発生の根本原因は以下の問題に起因。1. 金融機関における不適切なリスク管理(証券化商品、オフバランス期間、リスク管理体制、インセンティブ構造)。2. 短期資金依存・高レバレッジ投資のビジネスモデル。3. 格付機関によるリスクの過小評価(格付手法、利益相反、格付けへの過度の依存)。金融規制・監督当局側も、新しい金融商品や金融イノベーションについていけず、対応が不十分。
・金融市場の正常化に向けては、高レバレッジの解消が必要。しかし、レバレッジの解消は、金融と実体経済の「負の悪循環」をもたらすおそれ。欧米の金融機関は、2003年以降大幅にレバレッジを拡大。2003年の水準まで、レバレッジ比率を戻すためには、ヨーロッパの銀行は、今後、総資産額を大幅に圧縮する必要。英国では約37%、ドイツでは約36%、フランスでは約17%程度の資産圧縮が必要。
・金融危機の再発防止に向けて、2008年11月の金融サミットの「首脳宣言」において、5つの原則と行動計画を決定。規制・監督体制の見直しも重要な課題の1つ。アメリカでは、南北戦争期及び1930年代からの歴史的経緯により、連邦政府・州政府にまたがり、複雑かつ重層的になっている体制の根本的な見直しが必要。今後は、新たな金融イノベーションを阻害しない一方で、適切なリスク管理が行われるような「より良い規制」(ベター・レギュレーション)により、「自由と規律」のバランスのとれた市場環境の構築が必要。
・英国では、住宅バブル崩壊と金融危機の影響はユーロ圏より大きく、景気後退は深く、長い。景気が穏やかに持ち直すのは2010年になってから。しかも、ユーロ圏と同様の下振れリスクに加え、デフレとなるリスクが2010年7?9月期に30%程度の見込み。
・過去の世界同時不況(第1次・第2次石油ショック後)との相違点は次の2点。1. BRICs等の成長著しい新興国の存在。ただし、世界経済に占めるシェアがまだ小さく、米欧日の成長率低下分をこれら新興国が補って世界全体の成長率を維持・拡大するのは容易ではない。2. 金融危機の存在。景気後退が銀行システムの混乱を伴う場合はより深刻化・長期化する(IMFによれば平均7.6四半期を要する)。
・先進国:OECD加盟(30か国)(アイスランド、アイルランド、アメリカ、英国、イタリア、オーストラリア、オーストリア、オランダ、カナダ、韓国、ギリシャ、スイス、スウェーデン、スペイン、チェコ、スロバキア、デンマーク、ドイツ、トルコ、日本、ニュージーランド、ノルウェー、ハンガリー、フィンランド、フランス、ベルギー、ポーランド、ポルトガル、メキシコ、ルクセンブルク)
・ASEAN:シンガポール、インドネシア、カンボジア、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス。 ・覚書注:サブプライム金融危機について包括的にまとまっている佳良な資料であると評価できる。

「経済マンスリー 西欧」三菱東京UFJ銀行、2008年12月17日。
・2009年度の財政運営方針を示すプレバジェットレポートが11月24日に公表された。そこには経済情勢の急速な悪化に対処すべく、様々な経済対策が盛り込まれた。ただし、景気刺激策がある一方で、その財政負担を穴埋めするための将来の増税等、国民負担の増加策が含まれている。これは、財政規律を維持する姿勢を政府が示したという点で評価できるが、将来の負担増が見込まれるなかでは、景気刺激策の効果が限定的なものにとどまる可能性がある。主な景気刺激策としては、2008年12月1日から2009年12月31日まで付加価値税(VAT)率を17.5%から15.0%へ引き下げることや、環境関連投資の繰り上げ実施、子供手当てや年金支給額の増額などである。一方で、予定されていた増税については塩基を決定した。2010年4月からの高所得層の所得税控除額の縮小、2011年4月からの最高所得税率や国民保険料の引き上げ等である。VAT税率については、2010年1月1日以降、どうなるのかは明示されていないが、再び17.5%に戻されるとの見方がなされている。景気刺激策の効果についてみると、まず、子供手当や年金支給額の引き上げは、直接の所得増加につながることから、今後決まる引き上げ額によっては、消費への波及効果を期待できる面もある。しかし、VAT税率の引き下げは、既に消費不振のなかで多くの小売店が大幅な値下げを実施していること、食料品や衣料品にはそもそもVATがかからないこと、さらに、英国家計の債務負担は重いうえ、耐久消費財等高額品が動く住宅購入は住宅価格が下落するなか、低調であること等を踏まえると、その効果を期待することは難しい。
・11月の消費者物価上昇率は前年比4.1%と前月の同4.5%から下落した。電気・ガス等の公共料金は大幅引き上げの影響で前年比38.1%と高い伸びを示したものの、ガソリン代等燃料費を含む個人輸送機械関連費用が、原油価格急落の影響で前年比0.6%と先月の7.2%から大きく低下し、全体の上昇率を押し下げた。こうしたなか、イングランド銀行(BOE)は12月4日に100bpの利下げを実施し、政策金利であるレポ金利の水準を1951年11月以来となる2.00%とした。BOEは、2009年には燃料価格や食料品価格の下落に加え、VAT税率の引き下げがインフレ率を押し下げるとしている。また、11月に公表されたインフレレポートでは、中期的には、インフレ率は目標値である2.0%を下回るリスクが指摘されている。インフレ率の低下に加え、足元の景気が急速に悪化していることを踏まえると、もう一段の利下げは避けられないであろう。

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benyamin ♂

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