『G・W・ブッシュ政権の経済政策』

 今日は河音琢郎・藤木剛康編著『G・W・ブッシュ政権の経済政策 アメリカ保守主義の理念と現実』(2008年、ミネルヴァ書房)を読みました。

 ブッシュ政権については、政治的側面に議論が集中しがちでした。しかし、ブッシュ大統領が任期を終えることが確実となった昨今では、そうした政治的側面に関する議論は落ち着いています。本書はそうした機を捉え、これまでの議論では見えにくかった経済政策の側面を取り上げています。

 本書の問題意識は大きく2点あります。1点目は、ブッシュ政権期の経済政策を歴史的過程のなかで把握することです。レーガン政権以来の新自由主義を継承する側面とともに、前政権であるクリントン時代の政策運営からの連続性の側面が分析対象となっています。また、ブッシュ政権の独自的課題として安全保障問題があり、それと経済政策との関連も意識されます。

 2点目は、本書の副題にもあるように、経済政策に反映されたブッシュ政権の理念とその帰結である現実との関係を把握することです。ブッシュ大統領が実施しようとした政策理念がどのように政策として結実し、どのように現実に影響したのかを分析しようとしています。これは必然的に政策形成過程の分析にも踏み込むことを意味します。

 以上のような問題意識から、本書は個別問題として、財政・租税政策、地域産業政策、社会保障政策、対外金融政策、通商政策、援助政策の6分野を取り上げ、それぞれ検討を加えています。これで経済政策全体を網羅しているとは言えませんが、主要な領域には焦点を当てていると思います。

 個別問題の検討は非常に勉強になりました。とりわけ援助政策に関する分野は私がまったくの門外漢ということもあり、新鮮な知見が獲得できました。ブッシュ政権がクリントン政権期でへろへろになっていた援助政策を自由と民主主義の拡大という理念のもとに立て直したこと、その一方で、それはイラクやアフガニスタンへの傾斜配分を生み出し、他の国や地域への援助が不十分になっていることが、丁寧に描かれています。

 本書の中身それぞれは優れていますが、しかしながら、本書全体の統一性はほとんど見られません。上述した問題意識が本書の冒頭で高々と掲げられていますが、個別問題の分析では重要視されていません。地域産業政策や対外金融政策の分析では無視されていると言っても過言ではありません。その点ではまとまりのない本であると思います。

 ただ、問題意識そのものは重要な示唆を含んでいます。経済政策に対する安全保障問題の影響を考える分析視角や、政策が形成される場である議会での議論や議員の行動などを踏まえて経済政策を把握する姿勢は、従来にはない画期的な内容であると思います。政策分析を行なう上で今後は必須作業となることは間違いありません。

 気合いの入った本だと思いました。いや、ホントです。感銘を受けました。

自己紹介

benyamin ♂

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