『ゼミナール「女性学+男性学」』

 今日は小森治夫『ゼミナール「女性学+男性学」』(2002年、高菅出版)を読みました。

 本書は著者が開催していた大学ゼミナールでの内容を紹介するものです。題名からは、女性学の入門書のような内容を期待してしまいますが、実のところ、ゼミナールで女性学を扱った事実を語っているだけです。

 加えて、著者は女性学の専門家ではありません。ゼミナールで学生に関心がありそうな論題を模索して試行錯誤していたら、女性学に食いつきが良かったので、これを続けているという立場の門外漢です。

 したがって、何か新たな知見を得ようと本書を手にとることは明らかに間違いです。参加した学生に行ったアンケートの結果や、ゼミナールで扱った文献とビデオのリストが列挙されているだけです。

 本書はPDFで無料配布されていてもおかしくありません。しかしながら、こうした特徴を前提とすれば、例えば、アンケート結果は読み物としては面白いと言えます。

 アンケート結果では、ゼミナールで扱った文献やビデオなどについて学生が感想を書いています。この感想が大量に収録されているのです。これが本書の中身だと言っても言い過ぎではないほどの量です。

 感想はいずれも女性学が提起する論点を学生が素直に受け止めていることを示しています。やや優等生的な感想が目立ちますが、それでも性問題を考えるきっかけを存分に与えるゼミナールであったことがよくわかります。

 もちろん、これらの感想にも新しさはありません。ただ、女性学の限界、つまり、男ないし男社会を敵視しすぎている過激性を学生が敏感に感じ取っていることが明示されており、今後の女性学が取り組むべき課題が示唆されていると思いました。

 また、ゼミナールで取り上げた文献リストも有益でしょう。ゼミナールを開催した著者も参加した学生も初学者ですから、彼らが読んで関心をもった文献は、一般的にも読みやすい本であると思います。以下に挙げておきます。

伊藤公雄『男性学入門』(1996年、作品社)
井上輝子『女性学への招待』(1992年、有斐閣選書)
岡沢憲芙『おんなたちのスウェーデン 機会均等社会の横顔』(1994年、日本放送出版協会)
加藤秀一・坂本佳鶴惠・瀬地山角編『フェミニズム・コレクション 1・2・3』(1993年、勁草書房)
宿谷京子『アジアから来た花嫁』(1988年、明石書店)
匠雅音『核家族から単家族へ』(1997年、丸善ライブラリー)
中田照子・杉本貴代栄・J.L.サンボンマツ・N.S.オズボーン『学んでみたい女性学』(1995年、ミネルヴァ書房)
松井真知子『短大はどこへ行く ジェンダーと教育』(1997年、勁草書房)
松井やより『女たちのアジア』(1987年、岩波新書)
松井やより『女たちがつくるアジア』(1996年、岩波新書)
山田昌弘『結婚の社会学』(1996年、丸善ライブラリー)

 上記以外では、個人的に気になっていたことが解決した個所がありました。それは田島陽子が出題したと言われる女性学のクイズ問題について、彼女が出題した経緯がわかったことです。それは次のようなクイズ問題です。

 ある腕の立つ有名な外科医がいました。ある日、その外科医のもとに救急車で重症患者が運ばれてきました。その顔を見て、外科医は驚きました。なんと自分の息子だったのです。

 外科医は一生懸命手術を施したのですが、残念ながら息子さんは亡くなってしまいました。

 お葬式の時に、弔問客の一人が、お父さんに、「一生懸命手術をなさったのに、お亡くなりになって残念です」と挨拶しました。

 すると、お父さんは驚いた顔をして、「いえ、私は手術をしておりません」といいました。それは、なぜでしょうか?

 有名な問題です。これは、NHKで放映されていた「課外授業 ようこそ先輩」という番組で、田島陽子が母校の小学生で女性学を教える際に出題したクイズ問題でした。

 私は田島陽子の主張はあまり納得できませんが、この問題は秀逸だと評価していました。その評価を確実にするためにも、本当に彼女が出題したのかを確認したいと思っていました。本書でその作業ができました。

 とはいえ、本書は、総合的に見れば、お金を出してまで買う必要はないかと思います。ただ、上述したように、学生が書いた感想は実に豊富な量がまとめられていますので、彼らの声を聞きたい人には参考になるかもしれません。

 なお、田島陽子のクイズ問題の答えですが、えーと、誰でもわかりますよね。いやいやわかんないよ!という人は、テレパシーか何かで私までお問い合わせください。折り返し答えをビビッとお送りします。ヒントは社会的性差です。

自己紹介

benyamin ♂

2012年5月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

月別アーカイブ

Powered by Movable Type 5.13-ja
Support Wikipedia