2009年1月アーカイブ

覚書 090131

猿渡英明「欧州経済概観(09/1) 急速な景気失速に見舞われるユーロ圏」新光総合研究所『SRI 欧州経済ウォッチ<ユーロ圏・英国>』No.09-02、2009年1月23日。
・英国景気は金融部門の調整による信用収縮から急速な悪化傾向にある。英国の金融機関はサブプライム関連の損失に加え、自国内の不動産市況の悪化から損失の拡大に歯止めがかかっていない。資産価格の上昇を担保とした信用供与により、過剰な消費や投資が行なわれていたという構図は、米国とほぼ同じといってよい。このため、金融機関の損失拡大を背景に信用供与が縮小すれば、自ずと景気は大幅な調整を強いられることとなる。輸出や製造業部門のウェートが低いだけに、内需の回復がない限り、景気全般が持ち直すことは困難であろう。景気が回復するためには、金融部門の調整が一巡し、信用収縮に歯止めがかかる必要がある。しかし、信用収縮による景気悪化はむしろこれから顕在化、2009年中の回復は難しい情勢にある。

宍戸伴久「戦後処理の残された課題 日本と欧米における一般市民の戦争被害の補償」国立国会図書館調査及び立法考査局『レファレンス』2008年12月号。
・わが国では、戦争被害の補償は軍人・軍属や国・軍の役務を遂行していた場合に限定され、空襲被害など一般市民の戦争被害に対する補償は、原爆被爆者の補償や外地からの引揚げに関 連する救済(引揚給付金、未帰還者留守家族への帰国旅費・帰国手当、シベリア抑留による被害や在外財産の損失補償に代わる給付、中国残留孤児への援助)を除き、行われてこなかった。一方、欧米諸国の戦争犠牲者補償制度には、「国民平等主義」と「内外人平等主義」という2つの共通する特徴がある、とされる。つまり、一般市民の戦争被害に対する補償は、軍人・軍属と民間人を区別することなく、平等な補償と待遇を与えるという「国民平等主義」に 基づいている。ただし、その法的根拠、補償の手続、方法まで同一であることを意味するもの ではない。また、自国民と外国人を区別することなく、すべての戦争犠牲者に平等な補償と待 遇を与える「内外人平等主義」も、一般市民に対しても貫かれている。
・英国における第二次世界大戦中の一般市民の戦争被害の補償は、以下の通りである。
・人的損害:根拠法規は、「1939年人身傷害(緊急措置)法(Personal Injuries(Emergency Provisions)Act 1939)」及び同法に基づく行政命令である「1983年人身傷害(市民)制度(The Personal Injuries(Civilians)Scheme 1983)」である。適用対象及び適用要件は、以下の通りである。緊急事態の期間(1939年9月3日から1946年3月19日、第二次世界大戦中)に、有給就業者(貿易・商取引・専門職等に就業し、かつ実際にそれにより生活を維持している者。15歳未満の者又は15歳以上であるが学生又は職業訓練中の者で、受傷する前に心身の障害を伴っておらず、将来有給就業者となる可能性があったときは、有給就業者として取り扱う。)・非有給就業者・市民防衛志願兵(市民防衛組織の一員として認められた者)が蒙った「傷病」に関連して、各種の給付が行われる。いずれについても、国籍は問われない。「傷病」は、有給就業者と非有給就業者の場合「戦争傷病」、及び市民防衛志願兵の場合「戦争業務傷病」と呼ばれる。「戦争傷病」とは、敵による、または敵との戦闘の間若しくは敵の襲撃と思われるものを撃退する間の、ミサイル(液状・ガス)の発射、武器、爆発物若しくはその他の有害物の使用、若しくは傷病を発生させるその他の行為の遂行によって発生する身体上 の傷病(PhysicalInjury)、又は空襲等(航空機、航空機の一部、その他の落下物)により人または財産に与えられた衝撃に起因する身体上の傷病である。「戦争業務傷病」とは、市民防衛組織において市民防衛志願兵として業務遂行中に発生した身体上の傷病である。給付の対象となるのは、戦争傷病又は戦争業務傷病に起因する「傷害」(身体上又は精神上の傷病若しくは損傷、又はその能力の欠損)であって、障害の程度(同年齢・同性の通常人の健康との比較により決定)が重く(20 %以上)、かつ長期に及ぶ場合である。給付は、傷病により就業できず、他の給付を受け取ることができないときは「就業不能手当」として、傷病の結果、重度で長期にわたる障害となり、又は死亡した場合は年金又は一時金として支給される。障害給付又は死亡給付の申請は、原則として、支給事故発生後3週間以内とされるが、担当国務大臣が別途定めることができる。また、英国外で、同国内に居住していない者により受傷した場合は、原則として支給対象とならない。
・物的損害:根拠法は、緊急事態下(第二次世界大戦中)の物損の補償については、それまでの戦争損害補償法を整理した「1943年戦争被害補償法(The War Damage Act 1943)」 に基づく。同法から1964年戦争被害補償法までの戦争被害補償関連法は「1943年から1964年まで の戦争損害補償法」と呼ばれている。ただしこれらは、「1981年制定法(廃止)法(The Statute Law(Repeals)Act 1981)」により、既に廃止されている。 適用対象及び適用要件は、1939年9月3日から1964年10月1日までの、戦争による土地の物的損害(「戦争被害(War Damage)」を補償するものである。「戦争被害」とは、1. 偶発的な場合を含め、敵の攻撃または敵との戦闘行動もしくは想定される敵襲の撃退の直接的な結果として発生する損害、2. 偶発的な場合を含め、それらの損害の拡大を防止または緩和するための、権限ある行政当局の指示による措置の直接的な結果として発生する損害(土地の形状の変更を含むが、それによる地価評価の下落は損害と見なさない。)、3. 敵の攻撃の速やかな遂行を防止または妨害するための、権限ある行政当局の指示による予防行為ないし準備行為、または敵の攻撃を予測して、権限ある行政当局の指示によって行われる土地工作物の設置を含む予防行為ないし準備行為(照明の制限や訓練施設の設置は含まない。)による直接的な結果として発生する偶発的損害である。また、対象となる「土地」は、英国内の土地であって、その土地の上空・地上・地中にある建築または工作物(設備・機械以外)を含む。戦争被害(War Damage)給付は、工作物の建設費用負担者に対する建設費用の補償とその所有主に対する家賃等の財産減価額の補償の2種類が認められているが、損害発生後30日以内に戦争被害委員会に申請しなければならなかった。当該土地に利害関係を有するものは、戦争損害補償給付費用について拠出を行うことを求められる。給付の請求期限は1968年9月30日で、支給期限は1974年9月30日であった。

岡久慶「英国における過激なポルノの規制禁止」国立国会図書館調査及び立法考査局『外国の立法』238、2008年12月号。
・現在イングランド及びウェールズにおけるポルノ規制の枠組は、1959年猥褻刊行物物(Obscene Publications Act 1959)及び1964年猥褻刊行物法(Obscene Publications Act 1964 )(以下、まとめてOPAという)によって定められている。 スコットランドでも1982年市民統治法(Civic Government(Scotland)Act 1982)が同様の規定を定めている。猥褻刊行物は猥褻刊行物法において、それを閲覧する者を「堕落させ、腐敗させる(deprave and corrupt)」物品(article. この規定はインターネット上の画像、文章等を含む)であると定義され、その公表、貸与、販売等が禁止されるが、利得目的以外の所有は禁止されていない。違反者は、最高で3年の拘禁刑と罰金を併科される。この「堕落させ、腐敗させる」は非常に柔軟に解釈しうる用語であり、導入当初から賛否両論があった 。つまり、主観的に解釈される猥褻の規定が、陪審員を通じて時代の流れと共に変わる道徳観を反映すると見るべきか、恣意的な判決を招くかということである。政府は、この規定が、欧州人権条約第10条が保障する表現の自由を侵害するものではないとしており、欧州人権委員会も同様の解釈をしている。なお、児童ポルノの規制はOPAと別の枠組によるものである。すなわち1978年児童保護法(Protection of Children Act 1978)及び1988年刑事司法法(Criminal Justice Act 1988)によって構成される。1978年法は児童の「猥褻な(indecent)」写真の撮影、作成、頒布、利得目的の所有等を禁止し、最高で10年の拘禁刑と罰金を併科する。同法は刑事司法及び公共秩序法(Criminal Justice and Public Order Act 1994)によって改正され、児童を扱ったように見える猥褻な「疑似写真(pseudo photographs)」も写真と同様に扱うことが定められている。疑似写真とは、写真のように見える画像すべてをいい、実際の写真を加工する(例えば大人の頭を子供の体にくっつける)ことで法の穴を抜けることを阻止する。 1988年刑事司法法はさらに進んで児童ポルノの単純所有をも禁じ、最高で5年の拘禁刑と罰金を併科する。なお、児童ポルノに関係する「猥褻」の定義も、法律で規定されておらず、裁判所の解釈に委ねられている。
・政府は、過激なポルノは多くの人にとって嫌悪すべきもので、社会に存在すべきではないという主張を掲げ、その上で禁止理由として2つの点を挙げている。1. 暴力、残虐性、尊厳の蹂躙(degradation)を含む性的資料の作成に参加する者を保護するため。名目上又は実際に参加に同意していたとしても、犯罪の被害者である可能性がある。2. 既に従来の刊行と頒布を規制する法律で管理できなくなった資料から、社会、特に児童を守るため。これら資料との接触は、暴力的な、又は逸脱した性行動を奨励する可能性がある。ただしこれらの理由付けに関しては、不備な点も指摘できる。1に関しては、政府は過激なポルノ作成のためどれだけの人数が犠牲になっているか具体的な事例や数字を全く挙げていない、2に関しては暴力行為などとの関連性について明確な結論を出すことができないことを政府が認めているからである。

原田泰・橋本政彦「危機はいつまで続くのか 戦後の金融危機から学ぶ」大和総研『エコノミスト情報』2009年1月23日。
・今回のアメリカ発世界金融危機を契機として、アメリカが、日本のような失われた十年になるのではないかという議論があるが、そうはならないだろう。その理由は、第1に、世界の多くの金融危機のうち、失われた十年になったのは日本だけだからである。第2に、日本の場合は金融緩和が遅れたことがその後の回復を妨げたが、アメリカは早期に大胆な金融緩和をしているからである。第3に、北欧の場合には資本流出によって金融緩和をすることが困難になった。北欧の資本流出は、1997-1998年のアジア通貨危機の状況とも似ている。アジアでも、急激な資本の流出があって金融緩和が困難になった。また、アジアについては、IMFが必要以上に金融引締めを求めたからだという意見もある。いずれにしろ、アメリカの金融緩和政策に制約はない。
・Carmen Reinhart and Kenneth S Rogoff, "Is the 2007 U.S. Sub-Prime Financial Crisis So Different? An International Historical Comparison", No 13761, NBER Working Papers from National Bureau of Economic Research, Inc. March 2008.

三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部「米国・欧州主要国の景気概況 2008年12月号」『調査レポート』08/55、2008年1月23日。
・英国の景気は低迷している。2008年7-9月期の実質GDP成長率は前期比マイナス0.5%と、1992年以来16年ぶりのマイナス成長となった。企業部門では、11月の製造業生は前年比7.4%減と8ヶ月連続で減少した。家計部門では、11月の小売売上が前年比1.4%増と伸びが鈍化した。1984年の統計開始以来最大の下落幅となった住宅価格下落の影響が懸念されている。物価動向をみると、11月の消費者物価上昇率は前年比4.1%と2ヶ月連続で低下した。BOEは1月7、8日の金融政策委員会(MPC)で政策金利である短期レポ金利を0.5%引き下げ1.5%とした。利下げは4ヶ月連続となり、史上最低の金利水準となった。景気低迷は一段と深刻化しており、今後も追加利下げが実施されるとの見方が大勢となっている。

御手洗聡「金融危機が英国実態経済に与えている影響 国民の日常生活のみならず2012年のロンドン五輪にまで大きく影響」ニッセイ基礎研『REPORT』2009年2月。
・イングランド・サッカー協会のデービッド・トリーズマン会長は、イングランドのサッカークラブが合計約30億ポンド(約4,500億円)の負債を抱えていると明らかにした。そして、そのうち3分の1以上を4大クラブ(マンチェスター・ユナイテッド、アーセナル、リバプール、チェルシー)が占めていると明かし、ビッグクラブが破綻する可能性もあると警鐘を鳴らしている。
・英国ビール&パブ協会によると2008年第3四半期のパブにおけるビール売上高は前年同期比マイナス8.1%と落ち込んでいる。昨年7月からの店内での全面禁煙の決定や今年3月の酒税の増税も影響しているが、景気後退の中で、人々のパブ離れは一層深刻化している。同協会によると今年に入って1日に5件のペースでパブが店を閉じており、この数字は2006年の9倍、2005年の18倍の早さである。
・英国でも最大のオークションサイトであるeBayでの取引はここ最近極めて活況である。イギリスでは不要になった洋服等はチャリティ・ショップに寄贈し、英国癌研究所(Cancer Research UK)等の慈善団体の活動資金として活用されるのが一般的であったが、景気後退を受けて無料でチャリティ・ショップに寄贈することを避け、少しでも現金化しようとeBayを活用する動きが見られているという。
・英国の財政状況が厳しい中にも関わらず、五輪大会全体の予算は招致計画段階の4倍の約93億ポンド(約1.4兆円)まで膨れ上がっている。結果、10億ポンド(約1,500億円)をかけて建設される予定であった選手村の予算を9億ポンド(約1,350億円)に引き下げることを発表し、それでも金融危機と景気後退の影響で資金が集まらない事態となっており、公的資金が注入される予定となっている。ロンドン五輪の総予算のうち64%は政府が負担、11%はロンドン市民が負担する予定となっており、Tessa Jowell五輪担当相は「これ以上の公的資金を投入することはない。」と強調する一方で、「今回の景気後退が分かっていたら、五輪は誘致しなかっただろう。」と発言し、国民の反感を買うなど、好景気に沸きかえっていた3年前の誘致決定時と現状は大きくかけ離れており、五輪開催準備に暗雲が立ち込めている。

大谷内肇「2008年からの英国運賃体系の変化」『運輸と経済』第69号第1号、2009年1月。
・英国運輸省は持続可能な鉄道産業を形成していく一つの方策として、抜本的な運賃制度の改革を実行することとなった。2007年7月に英国運輸省が発表した鉄道白書「Delivering a Sustainable Railway」によると、鉄道に対する利用者の信頼性が失われていると指摘しており、その理由の一つとして「運賃体系の多様化と個々のTOC(Train Operating Company:列車運行会社)による乗車券の種類の増加」が挙げられている。この問題を解消するため「運賃体系を簡易化」することを掲げた。これは利用者の信用を取り戻すために不可欠な行為であるとされた。また、より簡易な運賃体系は利用者にとってもメリットがあり、利用者の旅程・目的に合致した運賃を知ることができ、またTOCや旅行会社にとっても利用者が必要な運賃を提示しやすくなるとしている。新しい運賃体系はすべてのTOCで共通化されて、特段の理由がない限りはTOC独自の運賃もこの新しい運賃体系にすべて吸収・統合されることとなった。新しい運賃体系は「Advance」「Off-Peak」「Anytime」の3種類からなり、基本的に「Anytime」が一番高く、「Advance」が一番安くなるように設定されることとなった。この鉄道白書を受けて、ATOC(Association of Train Operating Companies:列車運行事業者協会)は2008年4月24日付でニュースリリースを発表し、運賃体系の簡素化を発表した。運賃体系の簡素化は二段階で実施されることになった。まず2008年5月18日付ですべての前売りタイプの運賃を「Advance」に統合し、またこれまで前売りタイプの運賃では使用できなかった各種Railcardによる割引が「Advance」運賃で適用される。また、9月7日からは乗車当日にも販売される運賃である「Off-Peak」「Anytime」運賃を導入し、これをもって英国鉄道の運賃体系の変更が完了した。
・鉄道運賃体系は3種類の運賃に統合され、運賃種類が減ったことによって運賃はわかりやすいものになった。実際に、2008年4月24日のATOCの運賃体系簡素化の発表にあわせて、Passenger Focusも「簡素化された運賃体系で自分が望むチケットを手に入れやすくなり、利用者の運賃に対してのクレームが半分に減るだろう」として歓迎するコメントを出している。しかし、この運賃体系統合と同時に運賃の改定が行われ、また、運賃体系統合に伴って以前適用されていた条件が適用できなくなり、実質的に値上げになった事例などのマイナス面も見受けられる。

西藤真一「BAA分割案にみるインフラ投資促進策」『運輸と経済』第69号第1号、2009年1月。
・今回のCC(Competition Commission:イギリス競争委員会)の答申ではBAA分割によるインフラ投資を目指方針が謳われているが、料金規制との関係について明示的な言及がなされていない。

小役丸幸子「ネットワークレールの予算について」運輸調査局『研究員の視点』2008年9月。
・イギリスの鉄道インフラを保有・管理するネットワークレール社の第4期(CP4:2009 年度-2013 年度)の予算(要求)について、同社の監督規制機関である鉄道規制庁(Office of Rail Regulation*ORR)の勧告が今年 6 月に発表された。ネットワークレールには、ORR よりさらなる経営の効率化がもとめられており、ネットワークレールの予算をめぐる両者のせめぎあいはしばらく続くものと思われる。

労働政策研究・研修機構「海外労働事情」『Business Labor Trend』2009年1月号。
・ビザ延長を申請する外国人に対する生体認証IDカードの発行手続きが、25日から開始された。6ヶ月以上滞在する場合に取得が義務づけられるもので、国内7カ所の窓口機関で顔写真の撮影や指紋採取などを受ける必要がある。カードには、氏名や国籍、顔写真、ビザ等の有効期間のほか、生年月日、出生地、滞在中の資格(就労の可否、公的な手当等に関する資格の有無など)が記載される。当座は学生や配偶者ビザの保有者などが対象だが、今後、適用者を順次拡大する予定だ。

ICTビジョン懇談会基本戦略WG事務局「主要国における最近の経済対策(概要)」2009年1月22日。
・英国:資本投資プログラム(2009年1月5日)。総額400億ポンド(5.2兆円)。デジタル技術の発展により生じる機会を踏まえて、経済を強化することの重要性を指摘。
・イギリス:400億ポンド規模の資本投資プログラム実施を発表(ブラウン首相会見 2009年1月5日)。2009年にイギリス全土において計400億ポンド規模の資本投資プログラム実施を発表。個人や企業が現行の経済的困難に対処することを助けるための短期的な施策と、技術や雇用状況改善のための長期的な改革の双方に資金を使用。当該投資により受益する重要な分野は、教育、交通及び住宅。環境及びデジタル技術の発展によって生じる機会を踏まえて、経済を強化することの重要性について指摘。

ICTビジョン懇談会基本戦略WG事務局「主要国におけるICT国家戦略」2009年1月22日。
・英国:2009年春を目途に、通信・テクノロジー・放送担当相が、デジタル経済における世界的リーダーの地位確立にむけた包括的な行動計画「デジタル・ブリテン(Digital Britain)」を発表予定。2009年1月末に中間骨子を発表予定。
・英国は、2008年10月、ICT分野の新行動計画「デジタル・ブリテン」の策定に着手(2009年1月末に中間骨子、春に取りまとめ)。ICT分野を「現下の金融危機に対応し、経済成長やグローバル市場での競争優位性を維持するための最重要の分野」と位置づけ、そのテコ入れのためのブロードバンド基盤整備、コンテンツ市場活性化策等を検討。地上アナログ放送がデジタルに切り替わる(デジタル・スイッチオーバー)最終年2012年を「デジタル年」とする。Peter Mandelsonビジネス・企業・規制改革大臣のステートメント「英国が通信・デジタル技術分野で世界のリーダーとしての地歩を固めることを政府として決定した。現在の金融・銀行危機に対し、英国が最悪期を切りぬけ、上方転換に備えるため、デジタル・エコノミーはその中心に位置するものだ。」
・イギリス:「デジタル・ブリテン(Digital Britain)」。英国は、2008年10月、ICT分野を「現下の金融危機に対応し、経済成長やグローバル市場での競争優位性を維持するための最重要の分野“と位置づけ、そのテコ入れに向けた行動計画の策定に着手。2009年1月末に中間骨子を、春に取りまとめを行う。担当は、今回、その重要性に鑑みて新たに設けられた通信・技術・放送担当大臣(ステファン・カーター卿:通信・技術・放送担当大臣は、DCMS(文化・メディア・スポーツ省)及びBERR(ビジネス・企業・規制改革省)の両大臣の下で活動。既に経済の主要な柱となっているデジタル通信分野(digital and communication sectors)は現下の金融危機の中で重要性が高まっている。この分野は、創造性を生み出し、効率性向上を実現する触媒として、英国経済におけるすべてのビジネスに不可欠となっている。経済成長を加速化し、英国が知識社会において世界のリーダーとしての地歩を固めるため、「デジタル・ブリテン」はデジタル通信分野における政府と産業界の行動計画(英国の競争優位性と社会にもたらす便益の最大化を促すための統一的な枠組み)を策定する。

NTTデータ「英国政府が推進する行政サービスの共同利用」『欧州マンスリーニュース』2009年1月号。
・総理大臣と大蔵大臣は、Sir P Gershon氏を代表とする調査グループに対して、公共部門の効率性に関する調査を依頼した。調査は、省庁及び利害関係者と緊密な関係を持って行われ、公共部門の第一線で行われている事業が活用しているリソースを抽出し、共同利用の可能性について検討した。2004年7月にGreshon氏から政府に提出された報告書、Gershon Review(「Gershon Review : Releasing resources to the front line」)によれば、公共部門が持つリソースを共同活用すれば、2007年度には、約3兆円の経済効果が得られるという。加えて、公共部門の共同利用は、費用削減効果だけでなく84,000を超える市民サービスのポスト削減も可能だとした。
・英国政府は、利用者側に立った行政サービスの共同利用の導入を実施するため、2016年までを事業期間とした「共同組合サービス(SCS:Shared Corporate Services)事業」を開始する。SCS事業は、公共部門が持つ機能を取り出し、同様の機能を持つ複数の行政組織が共同で当該機能を運営する事を推進する事業である。SCS事業は、専門家によって構成された共同サービス組織により提供されるが、行政内部に残存する一部の組織を除き、その多くは行政外部組織として編成される。
・事業推進に際し、政府は、「内閣府共同サービスチーム(COSST:the Cabinet Office Shared Services Team)」を編成した。COSSTは、少なくとも、当事業の実施により、人事管理と財務に対する現状支出額の20%に当たる約2千億円の削減ができると試算している。また、COSSTは、500万人あまりを雇用する約1300の英国公共組織に対し、SCS事業の有用性を広めるため、事業の先行事例を公共部門が広く共有できる機会を提供している。例えば、6週間ごとに共同サービス関係者に対し説明会を開催し、利害関係者を含む事業参加者に情報を提供するとともに、進捗状況及び事業実施の課題等を共有し、事業実施に役立てている。SCS事業は、当初、人事管理分野及び財務分野を中心に実施されていたが、あらゆる公共サービスにSCS事業実施の可能性が存在していると考え、COSSTは、その実施対象を行政組織が行うすべての業務に広げ、事業実施の可能性を探っている。

山下えつ子「英国格下げの危機」三井住友銀行『Market EYE』2009年1月29日。
・英国の財政赤字の対GDP比は2008年は4.6%だが2009年には8.8%に上昇する見込みだ。債券発行でファイナンスされるとすると、年間3000億ドル程度の新規発行となる。これは英国債市場の現在規模の3分の1程度の大きさである。海外投資家による英国債ネット購入額は年間でやはり3000億ドル程度。消化できないとは言えないが、世界中で財政赤字が拡大する一方、オイルマネー等は細っており、需給悪化の懸念はある。20日にキングBOE総裁が非伝統的手段としての国債購入に言及したのも、こうした背景があるからだろう。英国の経常赤字のGDP比は3.6%で、上記の格下げ国が同10%以上であるのに比べると、サステナブルだ。英国が実際に格下げとなることはまずなかろう。しかし、銀行の収益環境も厳しく、IMF見通しでは英国の2009年の成長率はマイナス2.8%だ。英国の経済金融情勢が著しく劣化していることも事実であり、想定外の発表や憶測に対して、債券・株・ポンドの各相場が不安定になりやすい地合いがあるので、今後も注意が必要だろう。

労働政策研究・研修機構「金融危機が諸外国に与える影響とその対応」『Business Labor Trend』2009年1月号。
・イギリス地域別の失業率は、ウェールズの6.7%やイングランドの6.0%に対して、雇用状況が未だ好調なスコットランドや北アイルランドでは4%台と相対的に低く、景気耕地あの影響は地域ごとにも異なる状況がうかがえる。とりわけ、失業率が急速に上昇しているウェールズやイングランド北部では、建設業や製造業の不振が大きく影響しているとみられる。
・財務省が11月下旬に発表した次年度の予算変性方針(Pre-Budget Report)には、200億ポンド規模の景気対策が盛り込まれた。中心となるのは、12月から2009年度まで実施する付加価値税率の引き下げ(17.5%から15%へ)。これは年間125億ポンドに相当する。減税による消費の活性化が狙いだ。伴せて、低所得者層の税控除額の引き上げや児童手当の増額、年金受給者への手当の支給など、景気低迷が特に影響を及ぼしやすい層への支援をはかる。また、公共投資30億ポンドを2010年度分から前倒しして住宅・学校の建設や道路整備などを実施するほか、中小企業の資金調達に対する政府保証や政府調達への参加の促進、法人税率の引き下げの延期などで、企業向けの支援策を講じる。雇用面では、景気後退の影響が著しい産業部門で失業の危機にある人々の再訓練や、支援の必要な離職者に対して優先的に職業訓練を実施するほか、職業紹介や求職者給付などの窓口業務を行うジョブセンター・プラスにおけるサービスの強化、また大企業とのパートナーシップによる雇用促進などに13億ポンドを投じる方針を示した。関連して、ジョブセンター・プラスの人員を6000人増員する計画が、すでに雇用年金省により打ち出されている。離職者の円滑な再就職を支援することにより、国内で未だ60万件を超える求人の充足に結び付けたい考えだ。政府は、年15万ポンド超の高額所得者に対する所得税率を、現在の40%から2011年以降に45%に引き上げることなどで赤字を賄うとしている。

東方Projectキャラ診断

 今日は東方Projectキャラ診断です。

1位 小野塚 小町……相性:92 %(友達以上恋人未満)
2位 星熊 勇儀……相性:88 %(趣味友達)
3位 レイセン……相性:86 %(浮気相手)
4位 スターサファイア……相性:83 %(尊敬)
5位 綿月 豊姫……相性:79 %(禁断の関係)
6位 秋 静葉……相性:78 %(相談相手)
7位 鍵山 雛……相性:77 %(癒しの関係)
8位 アリス・マーガトロイド……相性:76 %(尊敬)
9位 西行寺 幽々子……相性:74 %(友達)
10位 魂魄 妖夢……相性:73 %(あなたが弟子)

 死神と相性がいちばん良いんかい! いや、死後に小町に優しく導いてもらえるなら大歓迎です。渡りの船で、勇儀姐さんと酒を飲み、酔った勢いでペットのレイセンを手篭めにしようとして、小町に川に蹴り落とされる覚悟です。

 上司の山田さんとの相性はこんな結果でした。

「四季映姫・ヤマザナドゥ」に対して……あなたの隠し子(相性:30 %)

 いやいやいや。閻魔様の親なんて恐れ多いです。

 私のお気に入りの八雲一家との相性はこうでした。

「八雲 紫」に対して……家が近所(相性:71 %)
「八雲 藍」に対して……家が近所(相性:33 %)
「橙(ちぇん)」に対して……あなたがツッコミ役(相性:64 %)

 ご近所さんのゆかりんと仲が良くて、一緒に住んでいる橙ともじゃれ合っている感じでしょうか。これは楽しそうだ! これは楽しそうだ!

 でも、藍様にはちょっと鬱陶しがられているようです。ご近所さんだからと勝手に家に上がり込んでメシ食っているのかもしれません。お邪魔してすみません。

オーストラリアで人種差別暴動が発生

 今日はオーストラリアで人種差別暴動が発生です。

豪海岸で人種暴動、政府は新たな差別対策を発表

2009年 01月 28日 15:22 JST [シドニー 28日 ロイター]

 オーストラリア政府は28日、人種差別に反対する新たなキャンペーン「ダイバース・オーストラリア・プログラム」を開始した。1788年の白人入植開始を記念する国民の祝日「オーストラリア・デー」の26日には、シドニーの2つの海岸で人種差別的な暴力行為が発生した。

 北部のマンリービーチでは、国旗を身にまとったり国旗の入れ墨をした若者らが泥酔してアジア系の海水浴客を攻撃し、警察と衝突。また、2005年に人種対立による暴動が起きた南部のクロヌラビーチでも、白人系住民が中東系とみられる人を襲い、警察が出動する騒ぎがあった。

 多文化問題の政府担当者によると、同プログラムでは文化的、人種的、宗教的な不寛容を改善しようとする地域社会の取り組みに対し、最大5000豪ドル(約30万円)の補助金を支給するなどの施策を盛り込んでいる。

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-36135220090128

 オーストラリアは白人による非白人差別が現在も普通に行なわれている国です。わかりやすく言えば野蛮国家です。

 日本の捕鯨に反対する勢力の筆頭はオーストラリアです。ほ乳類の鯨を大切にしようという前に、同じ人間である自国内の非白人を大切にしましょう。話はそれからだ。

アメリカで八つ子の赤ちゃん誕生

 今日はアメリカで八つ子の赤ちゃん誕生です。

米で8つ子の赤ちゃん誕生
2009年 01月 27日 14:03 JST ロサンゼルス26日共同

 米メディアによると、ロサンゼルス郊外の病院で26日、男児6人、女児2人の8つ子の赤ちゃんが誕生した。AP通信は、8人の赤ちゃんが生存したまま生まれたのは、98年に米南部テキサス州で例があり、世界で2例目と報じた。18人の医師による帝王切開で出産。体重は約680グラムから約1470グラム。8人とも健康状態は良いが、今後2、3日間は注意が必要という。

http://jp.reuters.com/article/kyodoMainNews/idJP2009012701000193

 アメリカで子供がたくさん生まれました。世界的に少子化が懸念される昨今にあっては、非常に喜ばしいニュースとして受け止めるべきだと思います。

 しかし、実のところはそれほど良いニュースでもないことは指摘しなければならないでしょう。というのは、この事例は自然妊娠ではないことがほぼ確実であるためです。

 自然妊娠ではせいぜい三つ子までです。四つ子以上はまず自然妊娠ではありえません。逆に言えば、四つ子以上は人工的な作用の結果です。

 人工的な作用とは不妊治療です。不妊状態にある女性に対して体外受精や卵子誘発剤を用いることで妊娠の可能性を不自然に高めるのです。

 妊娠や出産の過程で胎児が上手く生育できないことも考えて、不妊治療ではなるべく多くの胎児を妊娠させます。それが自然妊娠ではありえない子供の数へとつながります。

 ただし、体外受精の場合、通常は三つ子以上にはならないように法的に規制されています。自然妊娠を超えた数の胎児の妊娠と出産は母子ともに危険であるからです。

 今回の事例では、こうした法的規制を逸脱している可能性があります。たとえそうでなくとも、八つ子の出産を強行したことは不妊治療としては適切ではないと思います。

 子供が誕生することは喜ばしいことです。しかしながら、それだけの理由で妊娠や出産に関する危険性に目をつぶってしまうことは間違いです。

 今回の事例も結果的に母子ともに健康であったから良かったものの、妊娠や出産の過程で何か問題があれば、病院側や妊婦が激しく糾弾されると思います。

 なお、かつて日本のテレビ番組では、五つ子や六つ子を産んだ家庭を報道していました。あれもほぼ間違いなく不妊治療の結果です。

 四つ子以上は母体や胎児の生理的限界を超えています。非常に危険な妊娠と出産であったことを考えると、とても手放しで喜べるような事態ではありません。

 テレビで報道すべき内容ではないと疑問を感じていました。子だくさん家族を崇めることが目的なのでしょうが、不妊治療としては成功事例とは言えないからです。

 現在ではそうした番組がないところをみると、テレビ局も自らの過ちに気付いたということなのでしょう。出演者や視聴者に対する謝罪は一切ありませんが。

定額給付金

 今日は定額給付金です。

 新聞各社の世論調査では、国民の大多数が定額給付金を意味がないとか効果がないと考えていることが示されています。何を根拠にして意味や効果がないと判断しているのか疑問に感じますが、少なくとも世論調査ではそうした結果になっています。

 これが国民の声だとして、マスコミや野党は定額給付金を批判しています。その結果、定額給付金を含む第二次補正予算案が国会で成立せず、景気対策に遅れが出ています。何度も言いますが、何を根拠に判断しているかわからない世論調査に基づいて彼らは予算案を批判しています。

 そうしたなかで、ロイターが興味深い記事を書いています。

ロイターブログ 討論×闘論 ニュースに一言!

もらいますか? 使いますか?
2009年01月26日 9:51 am JST

どうやら、このまま支給されることになりそうな定額給付金。効果を疑問視する声が多く、世間での評価は芳しいものではない。では、もらわないのかと言えば、そうではないようだ。

各メディアのアンケート調査結果では、景気対策として定額給付金を「評価しない」が6─7割。これだけみると、受け取る人が少ないようにも思える。

しかし、質問を「評価する/しない」ではなく「もらうか/もらわないか」に変えると結果は違う。支給された場合に受け取るかどうか聞いていた産経新聞によると、大半の世代で8割以上が受け取ると回答した。「評価しない」イコール「もらわない」ではないのである。

使い道について「借金の返済に回す」「そのまま貯蓄に」という人ばかりだけではなく、消費に回す人も多いとみられ、景気への効果がゼロということもないだろう。

それでも「生活防衛」が合言葉のように言われるこのご時勢。もらった給付金、「低額給付金」と悪口を言うつもりはないが、低額消費に向かうことは想像に難くない。

実際、足元の消費は値ごろ感からユニクロが好調をキープする一方、高額消費のイメージが強い百貨店が苦戦を強いられている。

一度定着した消費スタイルが簡単に変わるとは考えにくい。ある百貨店の関係者に、定額給付金について質問をぶつけたところ「何十万円も支給されるなら別だが、高い商品が売れるとは思えず、売上を大きく伸ばす要因にならない」──そう答えが返ってきた。

給付金、それなりの浮揚効果をもたらしても、消費の二極化を変えるまでには至らないのではないか。さて、定額給付金、あなたは、もらいますか? 貯金しないで使いますか?

http://blogs.jp.reuters.com/blog/2009/01/26/もらいますか?使いますか?/

 産經新聞の調査では大多数の国民が定額給付金をもらうと回答したことが示されています。しかも、その使い道は貯蓄ではなく消費に回す人も多くなっているようです。つまり、定額給付金により一定の消費増が見込めるということです。

 国民の大多数は定額給付金を評価していないかもしれませんが、同じく大多数の国民が定額給付金をもらえるならもらって使いたいと考えています。これも国民の声でしょうから、与党はこうした声に基づいて定額給付金を押し切ることもできると思います。

 世論調査は設問の仕方に依存していると思います。ロイターの記事にもありますが、定額給付金に関する設問を、評価するかしないかではなく、もらうかもらわないかに変えただけで、結果が逆転しています。この程度の杜撰な調査に一喜一憂すること自体が間違いです。

 なお、定額給付金が妥当な対策として評価できるかどうかは私も批判的です。少なくとも、総額2兆円という巨額の財政負担に見合うだけの歳入が将来的に期待できるとは思えません。その意味では今後は2兆円の穴埋めが論点とならざるをえないでしょう。

 とはいえ、世論調査のように明確な根拠もなく評価できないとする意見にも賛同できません。また、ロイターの記事では、消費二極化の解消にならないと批判していますが、今回の定額給付金にはそうした目的はないため、的外れな議論だと思います。

 定額給付金は政権批判論者の拠り所となっているだけだと思います。政権批判がしたいためだけに定額給付金が持ち出されています。彼らの自己満足のために国民の声が操作され、彼らの自己正当化に利用されています。国民を軽視しすぎです。

 もっとも、その程度の批判にも対応できない麻生政権にも力量不足を感じますが。

覚書 090124

国際投信投資顧問株式会社「投信新時代の投資戦略 進展する国際分散投資」2008年1-3月号、2008年1月11日。
・経済が成熟期を迎えた現代の日本と、19世紀後半の英国とは多くの共通点があります。「1. グローバル経済化、2. 成熟する国内経済、3. 新興国の台頭」の3要素から、4. 海外へ資金が流出し、5. 通貨安が進みながらも、6. 金利収入を得る投資立国へと再生しました。
・覚書注:日本が英国になれるわけないと思います。

平山順「英国発の火種にみる金価格上昇の可能性」Klug『コモディティレポート』2009年1月22日。
・オバマ米大統領の就任直前の19日、オバマフィーバーに沸く米国、そして世界中の熱気のなか、欧州からはロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)の2008年通期決算が、英国企業としては過去最大規模の損失となる280億ポンド(約416億ドル、約3兆6,000億円)に達する可能性がある、との発表が行われました。今回このRBSの損失計上を受けて、欧州株式市場では銀行株が大幅に下落したうえ、英国の通貨ポンドは、21日には円に対し、変動相場制が採用されて以降の最安値となる1ポンド=123円台まで下落しています。
・米国の2007年度のGDP(名目)は13兆8,075億ドルだったのに対し、英国の場合は2兆1,374億ドルと、GDPの規模は米国の約6分の1程度に過ぎないため、これほどの大きな損失を抱えたRBSを実際に救済できるかどうか、さらに国有化の声も聞かれているものの、英国政府としてこれだけの損失を抱えることができるのかどうか、など見通しに不透明感が強い、と考えられています。
・なお、英国政府は金融機関を救済するための資金調達として、国債の発行や外貨準備の一部を売却するなどの手段を採るかもしれません。イングランド銀行のウェブサイトによれば、同行が保有する金準備高は、2008年10月時点で72億8,900万ドル相当となっています。イングランド銀行は、1990年代末に、金を安値で大量に売却し、金の国際価格を大きく引き下げたほか、安値での売却に対する責任をのちに議会から追及された、という経験を持っているため、公的な金の売却に対しては慎重な姿勢を見せています。そのイングランド銀行が金を売却したとなれば、虎の子に手をつけたとも見られ、一時的に金価格が下落する影響をもたらしたとしても、英国の金融危機の深刻さを示唆する現象である可能性が高いだけに、金市場にとっては強気な材料となるかもしれません。

三菱東京UFJ銀行「経済マンスリー 西欧」2009年1月16日。
・英国経済は、景気悪化はユーロ圏に比べてより一層深刻である。今回の英国景気悪化の一因は、銀行の貸出姿勢の厳格化である。昨年10月には、銀行貸出を回復すべく政府による銀行支援策が実施されたが、その効果は未だ現れていない。BOEが12月に行った調査では、担保付の個人・小企業向け貸出、大・中堅企業向け貸出の数値は若干改善したが、依然、水準は低く、貸出姿勢に変化はない。また、銀行貸出動向についてみると、企業向け及び個人向けいずれの貸出残高も減速している。
・個人消費についても低迷している。11月の実質小売売上は、前年比1.4%にとどまった。クリスマス商戦も不調であったことからすると、12月の小売売上も低調なものにとどまろう。消費者信頼感指数は12月にマイナス28.7まで低下した。個人消費及び消費者マインドが低迷している理由として雇用情勢の悪化が挙げられる。11月の失業率は3.3%と10より0.2%ポイント上昇した。失業者数は、107万人と100万人を上回った。失業者が100万人を上回るのは2001年1月以来である。
・昨年11月の消費者物価上昇率は、前年比4.1%と前月より0.4%ポイント低下した。電気ガス等の公共料金は前年比プラス38.1%と、昨年9月以降の大幅な料金引き上げの影響が残り、高い伸びを示したものの、ガソリン等を含む個人輸送機械関連費用が前年比プラス0.6%と前月の同プラス7.2%から大幅に下落したことが全体の上昇率を押し下げた。原油価格は1バレル40ドル前後の水準で推移する一方、昨年のこの時期は原油価格が上昇していたことから、個人輸送機械費用は今後数ヶ月間前年水準を下回るとみられ、消費者物価上昇率は徐々に低下していくであろう。イングランド銀行は1月8日の金融政策委員会で、政策金利を0.5%ポイント引き下げ、1.5%とすることを決めた。10月以降4ヶ月連続で利下げを行っている。今後については、0.5%までの利下げが行われた後、量的緩和政策を実施していくとみられる。

「カーボンフットプリント制度の試行と本格導入に向けた解決すべき課題」みずほ総合研究所『みずほ政策インサイト』2009年1月22日。
・カーボンフットプリントは、「商品・サービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでに排出される温室効果ガスの排出量を、ライフサイクル全体を通しての環境負荷を定量的に算定するライフサイクルアセスメント(LCA)手法を活用して算出し、CO2に換算して当該商品及びサービスに簡易な方法で分かりやすく表示する仕組み」と定義される。カーボンフットプリントの制度の目的は、CO2排出量を「見える化」することによって、1. 事業者が自社の削減努力をアピールするために、製品等のライフサイクルを通じた排出量をさらに削減するようになることと、2. 消費者が提供された情報をもとに、自らの活動に伴ってどの程度のCO2が排出されているのかを認識するとともに、商品購入の際にCO2排出量の低い商品を選択するという排出削減努力を促すことにある。
・サッポロビールは、主力商品である「サッポロ生ビール<黒ラベル>」(350ml缶)にカーボンフットプリントを表示し、その試作品をG8洞爺湖サミットで参考展示したことで注目を集めた。表示によると、350ml1缶当たりのCO2排出量は、「原料栽培からリサイクルされるまでに161g」となっている。同社が公表している2005年の<黒ラベル>(350ml缶)のCO2排出量の内訳をみると、「容器・外装材製造段階」で排出されるCO2が最も多く、全体の5割以上を占めていることが分かる。
・味の素も、2009年中に調味料や冷凍食品などの一部商品で、カーボンフットプリントの表示を行う予定となっている。同社は、冷凍食品などの加工食品を環境面から評価した場合、加工段階で効率的に大量生産できるため、個々の家庭で調理する場合と比べて生産・加工調理段階における生産量あたりのCO2排出量は少ないものの、他方で、冷蔵・冷凍保存や包装材の使用など、CO2を排出する工程が必要になるという長短所があることを踏まえたうえで、加工食品をライフサイクルの視点により定量的に評価するルール作りを目指している。評価の結果、冷凍食品の場合が440g、標準的な家庭調理の場合が520gと、ライフサイクルCO2排出量にあまり大きな差がなかった。ただし、家庭での調理では、油を使いまわすことによりライフサイクルCO2排出量が大きく減る実態が明らかとなった。
・セブン&アイ・ホールディングスによるカーボンフットプリントの試算例は、2008年6月に洞爺湖サミットを記念して札幌で開催された『環境総合展2008』でパネル展示等により発表されたほか、同社のウェブサイトでも公表されている。手巻きおにぎり「紀州梅」の原材料の生産から、原材料の調達・輸送、おにぎりの製造、仕分け・配送、店頭での販売までを含むライフサイクル全体のCO2排出量は、1個あたり64gとなっている。全体の排出量に占める割合が最も高いのが、「原材料の生産・調達・輸送」工程となっている。
・英国では、企業の温暖化対策支援のために設立された政府系企業であるカーボントラスト社が、支援の一環として、商品ごとのCO2排出量の測定方法などを企業に提供してきた。さらに同社は、2007年5月から英国規格協会(BSI)の協力のもと、製品およびサービスの温室効果ガス排出量算定の正式なガイドライン構築を目指して、専門委員会での検討やガイドライン案へのパブリックコメントを実施してきた。その結果、検討開始から約1年半を経た2008年10月29日、カーボンフットプリント算定方法の共通規格であるPAS2050およびそのガイド、「Guide to PAS2050 : How to assess the carbon footprint of goods and services」、さらにカーボンフットプリントの表示に関する要件を定めた「Code of Good Practice for Product Greenhouse Gas」が開発・公表された。
・カーボントラスト社は、カーボンフットプリントの基準構築に先行して、2007年5月より企業のCO2削減を促進するためのカーボンフットプリントのモデル事業も実施してきた。製品に掲載されるカーボンフットプリントには、製品のライフサイクルの温室効果ガス排出総量(CO2換算)を表示するほか、下向きの矢印を表示することにより、企業が2年後のラベル更新時に向けて排出量の削減を約束できるようになっている。更新時に削減を達成できなかった場合は、表示を除去しなければならない。製品パッケージ以外にも、ウェブサイトや、店頭でのポスター、製品のパンフレット等での表示も行われている。モデル事業の開始当初は、Walkers(ポテトチップス)、Innocent(ジュース)、Boots(シャンプー)の3社が参加し、その後、徐々に参加企業が増えて、2008年10月現在、21社、75品目を対象にカーボンフットプリントの測定・表示が試行されている。
・製品等へのカーボンフットプリント表示は、食品の成分や産地の偽装表示が問題となるのと同じように、消費者の信頼に応えたより正確なものである必要がある。他方で、原材料が輸入品であり、かつ季節や価格によって輸入元が変更される製品などは、原材料の輸入元を特定し、原料製造にかかるCO2排出量を厳密に把握するのは、製造事業者にとっては非常に大きな負担となるだけでなく、場合によっては正確なデータの入手が困難ということもあり得る。したがって、企業の製品等へのカーボンフットプリント表示を促すためには、制度構築において、表示の正確性と企業負担のバランスを考慮することが欠かせないだろう。
・カーボンフットプリント表示の導入が期待される商品・サービス分野については、主に環境NGOや流通分野からは、自動車、エアコン、住宅、家具などの排出量の多い商品や、消費者の目に頻繁に触れる食品への導入を求める意見が出されたのに対し、食品分野からは、データの不正確性、データ取得の困難性、競合商品・外国との競争力等の観点から、コスト負担と環境負荷低減効果の両面を十分検討する必要があるとの意見が寄せられた。特に、製パン業界、製塩業界はカーボンフットプリント制度の導入に反対している。具体的には、製パン会社20社が加盟する日本パン工業会は、1. パン製品は地域・季節により種類がことなり、品種が多い反面、ライフサイクルが短いため、個々の製品の排出量を正確に測定するのは難しいこと、2. 原料となる小麦は、複数の国で生産された小麦を製粉業者が配合・成分調整するうえ、同品種の小麦でも生産される年によって自然条件の違いにより温室効果ガスの排出量が変動するため正確な排出量を算出するのは困難であること、3. カーボンフットプリントの表示に、流通・破棄段階など製パン会社のコントロールの及ばない部分の排出量を含む場合、製パン会社としてどの程度責任を負うべきか不透明であること、などを理由に導入反対を表明した。また、製塩大手4社が加盟する日本塩工業会は、各製塩工場の自家発電に用いられる石炭は、種類によって発熱量が異なり、その結果、製塩する際のエネルギー使用に伴うCO2排出量も工場によって差異が出てくることから、厳密に各工場で生産される塩のライフサイクルCO2排出量を比較するためには、統一基準が必要であるとしている。また、海外では、岩塩から製塩するなど、わが国で一般的な海水を濃縮する製塩方法とは異なり、相対的に少ないエネルギー使用量で製塩できることから、海外製品のカーボンフットプリントと日本製品のそれとを比べて消費者がどのように反応するかを懸念する向きもある。
・覚書注:原材料やその輸入元、商品数が多い問題点については基準の統一などの技術的対応によって解決可能な問題であろう。これだけでは導入の反対理由にはならない。しかし、本論には書かれていないが、そうした様々な状況ごとに変化する情報を個別商品の包装に逐一反映させる作業が必要となり、こうした細かい対応を業界ができるのかどうか疑問がある。原材料の生産地や加工工場の所在地などを細かく表示していく取り組みと同じくらい手間のかかる作業である。総量だけの表示にこだわらずに、仕入先や季節変動によって異なるCO2排出量について原材料ごとに一覧を示すような表示でも良いのではないだろうか。栄養素表示でもカロリーだけではなく、炭水化物と脂質、糖分ごとの数値がみられるように、総量だけの表示では限界があると思われる。ただ、そうすると、ごちゃごちゃした表示になり、消費者にはわかりにくくなるだろう。製品の包装にはとりあえず総量の平均値を示して、細かい情報はウェブサイトなどで追加する方策もあるが、それなら最初からURLや二次元バーコードだけを表示したほうが消費者にもわかりやすい。製パン業界や加工食品業界はカーボンフットスタンプ制度が適さない分野かもしれない。

厚生労働省大臣官房国際課「2007-2008年 海外情勢報告」2008年12月。
・現労働党政権による「福祉から就労へ」(Welfare to Work)施策の柱は、ニューディール(New Deal)と呼ばれる職業訓練及び就職促進を目的とする一連の雇用対策である。一部の先行地域における導入期間を経て1998年4月から全国的に実施されている。若年失業者や長期失業者への対策を中心に開始され、その後、対象を障害者、一人親、高齢者及び失業者の無収 入の配偶者へと順次拡大して実施されている。ニューディールプログラム全体で、2007年8月までに297万人が参加し、このうち186万人がニューディールを通じて就職している。
・2007年6月、ブレア前首相の下で長年にわたり財務大臣を務めてきたゴードン・ブラウン下院議員が首相に就任した。ブラウン首相は、就任直後に大幅な政府機関の再編を行った。労働行政機関の再編としては、教育技能省(Department for Education and Skills)の分割が挙げられる。従前の教育技能省は、19歳前の教育及び職業訓練を所管する「子ども・学校・家族省」(Department for Children, Schools and Family)と、19歳以降の教育及び職業訓練を所管する「イノベーション・大学・技能省」(Department for Innovation, Universities and Skills)の二つに分割された。後者が所管することとなったイノベ ーション政策は、従前の貿易産業省(Department for Trade and Industry)が所管していたものである。また、貿易産業省が所管していた労働基準及び労使関係に関する政策は、後継組織の「ビジネス・企業・規制改革省」(Department for Business, Enterprise and Regulatory Reform)が引き続き所管している。
・ブラウン政権は、2007年12月、今後の雇用対策として「就労への準備」(Ready for Work)を発表した。過去10年間のニューディール政策の成果を踏まえた上で、就労促進策を更に強化したものとなっている。
・ブラウン政権は、独り親や障害者の就労を促進するための施策を導入しようとする一方、その受け皿となる求人を増やすため、個々の企業に対して、雇用拡大を要請している。この取組みは「雇用拡大の約束」(Job’s Pledge)運動と呼ばれており、ブラウン首相が自ら首相就任直後から様々な機会に呼びかけを行い、大手スーパーマーケット等が参加(求人を増やす意思を表明し、社会に誓約)している。求人開拓に関する国民運動的な取組といえる。
・将来に向けた人口構造の変化等を踏まえ、長期的に懸念される課題を回避するため、2002年にターナー卿(元CBI(経団連に該当)会長)を委員長とする年金委員会(Pension Commission)が設置され、3年間の検討を経て、2005年11月30日に報告書が公表された。この報告書は、近年ではかなり大規模な内容の改革案であり、注目を集めた。見直しの基本的な考え方としては、1. 個人の自己責任の範囲を拡大すること、2. 所得、男女、世代の違いを超えてフェアな制度とすること、3. 制度をシンプルなものとすること、4. 持続可能性が確保された制度であること、5. 国民にとって納得性の高い制度とすること、という視点に留意して検討が加えられた。具体的な改正案の内容として、報告書では、1. 安い費用で低、中所得者に貯金を促す制度を2012年から導入することとしている。具体的には、個人ごとの勘定を立ち上げ、被 用 者(4%)+ 事 業 主(3%)+ 政 府(1%)と負担を持ち合うことで被用者に貯蓄を促すこと、2. 子育てや介護を担っていた女性が結果として十分な年金を得られないという問題の克服のため、満額受給するためには従来であれば国民保険料を女性は39年納める必要があったところ、2010年以降30年に短縮、併せて、ケアを担う者に対する福祉給付を拡充し、子育てや重篤な障害者を週20時間以上介護する場合にはその期間について年金拠出期間に繰り入れる(現行週35時間以上)こと、3. 基礎年金の支給額を再び賃金スライドに移行し、支給開始年齢を2020年代半ばから約10年かけて1年ずつ遅らせ2050年までに68歳に引き上げること(具体的には2024年に65歳から66歳に、2034年に67歳に、2044年からは68歳になる見込み)を内容とするものであった。その後、この報告を踏まえた政府案であるホワイトペーパーが1. 2006年5月(Security in retirement: towards a new pensions system)及び2. 同年12月(Personal Accounts: A new way to save)に公表された。これらの改革案は、法律としては2本立てとなり、1については2006年11月に法案提出され、2007年7月に成立(The Pensions Act 2007)、2については2007年12月に法案(The Pensions Bill)が提出され、現在もなお審議中(2008年3月現在)である。

オバマアメリカ新大統領誕生

 今日はオバマアメリカ新大統領誕生です。

 1月20日(アメリカ時間)にバラク・オバマが第44代目第56期目アメリカ大統領に就任しました。アメリカ大統領の就任演説は世界中でも注目され分析の対象となりますが、今回も各種のメディアや論者がもりもりと論評を書いています。

 私は全部を逐一読んでいるわけではないですが、玉石混淆の論評のなかではFTのPhilip Stephensが書いたコラムが印象に残りました。

Changes that will shape a leader promising change

By Philip Stephens
Published: January 22 2009 20:46 | Last updated: January 22 2009 20:46

I gave up listing the existential tests for Barack Obama when I saw a headline telling the US president he had four years “to save the planet”. In this instance, the foe to be vanquished was global warming. It might have been any one of a dozen: from the crisis in the global economy to violent Islamism; from poverty to nuclear proliferation.

Perhaps it was all the headache-inducing headlines that persuaded President Obama to prefer sombre prose over soaring poetry in his inaugural address. Some of those who briefed him during the transition about these matters sensed a politician striving to give sequence and order to the avalanche of challenges: “Where do I start?” His speech on Tuesday bore marks of the same intellectual struggle.

Those waiting for a reprise of the cadences and applause lines of the campaign trail were disappointed. Where were the memorable phrases to rival Jack Kennedy’s “ask not” call to duty, or Franklin Delano Roosevelt’s “fear itself”? Yet those seeking clues as to how Mr Obama intends to govern will have seen the strategic sense in such studied sobriety.

If the opinion polls are a guide, he caught the national mood. Four-fifths of American voters, according to the latest New York Times/CBS News survey, are optimistic about the president’s capacity to take the country in the right direction.

For now, the weight of these expectations is tempered by realism and patience. Two-thirds, for example, think the recession will last for another two years. Most are prepared to give Mr Obama time to redeem two other pivotal promises: ending the war in Iraq and reforming healthcare.

As for memorable phrases, first-night reviews rarely alight on the sentiments that endure. The line that first jumped out of Kennedy’s speech was the cold war admonition to “pay any price, bear any burden”. History gets rewritten. Memories adjust to what happens next.

The majesty of this week’s celebrations in Washington spoke to America’s global power as much as to its self-belief in moments of adversity. Only France, that other proud republic, is as regal in its pageantry. But the million and more who gathered in front of the Capitol to hail Mr Obama were but a small fragment of the audience.

Perhaps a billion gathered in sitting rooms, bars and street corners in every part of the globe. Many, perhaps a majority, were admiring, even if grudgingly so. Whatever the world’s arguments with Washington ? and George W. Bush left plenty behind ? for those from afar watching the coronation of a black American president, the only answer to the “where else” question was “nowhere”.

The audience also paid homage to the fact that, for all the self-inflicted wounds of Mr Bush’s presidency, the US is still by far the world’s most powerful nation. So it was striking that at the very heart of Mr Obama’s oration was a rare, if oblique, admission of the limitations of its power: “The world has changed, and we must change with it.” Now there was a sentence with meaning. Beyond race, if the colour of his skin were not significant enough, Mr Obama’s presidency closes the door on two other chapters in America’s history.

At home, the economic crisis has brought to an end the unchallenged hegemony of liberal capitalism that was crystallised by Ronald Reagan nearly three decades ago. Government, Reagan declared in his 1981 inaugural address, was “the problem not the solution”.

The financial wreckage of the past year tells a different story. It leaves Mr Obama as the first liberal president since Kennedy who does not have to walk in fear of his own liberalism. The argument, as he put it on Tuesday, is no longer about big or small government, but about what works. An $800bn (?617bn, £581bn) economic rescue package will follow.

The discrediting of market fundamentalism does not present Mr Obama with a blank cheque. Americans did not vote for higher taxes or for federal roadblocks to be placed in the way of enterprise. The US cannot continue to run trillion-dollar deficits indefinitely. Nor can we predict where the lines will be drawn between the state and the market in the economy that will emerge from the rubble of Wall Street. But the catastrophic failure of financial capitalism has changed the terms of the debate for a generation.

This is the opportunity that exists alongside the huge challenge of escaping recession. America has a chance to rebuild its broken infrastructure and to invest in education and health. Not so long ago, Mr Obama’s observation that a nation cannot prosper when it favours only the prosperous would have been branded by Republicans as dangerous socialism. Now it seems wholly uncontroversial.

If this first big change is welcome, the second is unavoidable. It presents Mr Obama with as many tensions as opportunities. It demands that America reconcile its self-image with shifting geopolitical realities.

The picture was drawn for Mr Obama during the transition in a report* from his own top intelligence specialists. The US will remain the world’s indispensable power for decades to come, they told him. Its power will be unmatched, even by fast-rising China. But America will increasingly find itself as one of several important actors on the global stage. Exercising US leadership will depend on accommodations and alliances with other powers. Legitimacy will count for as much as brute force.

All this is greatly welcome to America’s allies. Less so, one suspects, to a domestic audience suspicious still of anything that looks like shackling the exercise of US power. Mr Obama’s words this week and his first actions as president ? the promised closure of Guantánamo Bay; telephone calls to Arab leaders ? recalled the insights of Roosevelt and Truman. The substance will be harder than the symbolism.

Mr Obama’s presidency could yet buckle under the burden of unrequited hope. The mistake would be to treat each of the challenges as one to be met within the span of a single ? or even of two ? terms in the White House. Many of the more intractable ones will long outlive him.

More important than arriving at any one destination will be an intelligent resolve that shows America is travelling in the direction he has set; and that it remembers, as its new president said this week, the power that resides in humility and restraint. Leaders shape events; but even those of nations as powerful as is the US are also shaped by them.

http://www.ft.com/cms/s/0/a19a8c2a-e8c2-11dd-a4d0-0000779fd2ac,dwp_uuid=a4559040-e7c3-11dd-b2a5-0000779fd2ac.html?nclick_check=1

 特別秀逸な内容ではないのですが、オバマ大統領の演説からオバマ政権が経済政策の基本に据えようとしている理念を読み取ろうとしている点が独自的だと思いました。

 記事にもあるように、オバマ大統領は「The argument is no longer about big or small government, but about what works.」と主張しました。実際の文言は「The question we ask today is not whether our government is too big or too small, but whether it works.」です。

 就任演説でこれほどまでにリベラル姿勢を鮮明にした大統領はケネディ大統領以来でしょう。任期期間中にこうした発言をする大統領は民主党出身者に多くいましたが、就任当初から小さな政府から距離を置くと宣言することは非常に希有です。

 アメリカは市場原理主義に基づいた経済政策体系であると見なされてきました。実際にそうした側面がありましたし、たとえ実態は違っても、アメリカと言えば市場原理であるとの図式でした。とりわけ日本では市場原理主義に重きを置いた評価が一般的だと思います。

 そのアメリカが大統領自ら就任演説で市場原理主義の修正を打ち出したのです。これは大きな転換点になるでしょう。具体的にどのような転換になるのかは今後の動向を注視していくしかありませんが、オバマ政権の評価軸の1つになることは間違いないと思います。

 もっとも、オバマ大統領の姿勢が本当に実施され、実現するのかは流動的です。昨今の経済危機のなかで国民の不安を緩和するためのリップサービスの可能性もあります。小さな政府路線の担い手であった共和党からの強い反発も予測されます。

 そうは言いつつも、今回の大統領就任演説における着眼点として重要であると私は思いました。意外に看過してしまいそうな内容ですが、FTでは見逃していませんでした。流石です。

派遣村にいた人々の内訳

 今日は派遣村にいた人々の内訳です。

 派遣村については産經新聞が実態調査を続けていますが、その成果の一部が先日18日の記事で発表されました。少し長い引用になりますが、以下に記しておきます。

【日本の議論】「派遣村」にいたのは誰か?
2009.1.18 18:00

http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090118/wlf0901181801000-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090118/wlf0901181801000-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090118/wlf0901181801000-n3.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090118/wlf0901181801000-n4.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090118/wlf0901181801000-n5.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/welfare/090118/wlf0901181801000-n6.htm

 年末年始にかけて東京・日比谷公園に突然姿を現した「年越し派遣村」。集まった約500人は、一部の新聞やテレビで「企業による派遣切りで職と住まいを失った人ばかり」などと紹介されたが、その“実態”は年が明けるに連れて次第に明らかになってきた。“村民”とは誰だったのか。そして、“村”の運営にはどのような人たちがあたったのか。そこには、ある特定のイデオロギーを持った政治色が潜んでいたことがわかる。

まじめに働こうとしていた人は…

 「本当にまじめに働こうとしている人たちが集まっているのか」。総務省の坂本哲志政務官からそんな発言が出たのは仕事始めの1月5日だった。
 坂本政務官はその後、謝罪し発言を撤回しているが、「人の心を傷つけた発言は、撤回して済むものではない」(鳩山由起夫・民主党幹事長)などと反発が出る一方で、インターネット上などでは「理解できる」「本質を突いた発言だ」という擁護論も出た。
 実際、村に集まった人たちはどのような人たちだったのか。派遣村実行委員会が、村民354人から聞き取った集計によると、年齢層は30代が25%、40代が30%、50代以上が35%。性別では96%が男性だった。ただ、景況悪化を理由に解雇された派遣従業員は日雇いも含め、全体の40%にあたる130人だけ。33人(9%)は従来からの路上生活者だった。
 また、厚労省の調査によると、滞在村民が約300人だった1月5?7の3日間で、臨時に設けられたハローワークに相談に来た人は約200人(66%)。具体的な就職相談まで話が進んだ人は約120人(40%)だったという。
 極めておおざっぱに解釈すれば、4割程度の村民は景況悪化後、実際に契約を打ち切られ、6?4割程度の村民には就労意志が読み取れるが、逆に言えば、就労意志のない人、村で出される食事だけを目当てに村民登録した人もかなりいたことになる。その点は実行委員会も認めている。
 むろん、路上生活者であっても、寒空の下にほおっておいて良いという理屈にはならないが、それ以前まで派遣先でまじめに働いていた人と、そうではない人が一緒くたに報じられていた感は否めない。
 坂本哲志政務官の発言をめぐっても、反発する側、賛同する側の双方に一定の根拠はあったといえそうだ。

潜むイデオロギーと政治色

 派遣村は12月31日に開設されたが、日にちが経つにつれ、政治、イデオロギー的なものが色濃く出るようになっていった。
 立ち上げ当初から、目立ったのが“野党色”だ。民主党は菅直人代表代行、共産党の志位和夫委員長、社民党の福島瑞穂党首らの姿も村で何回も見られた。国民新党、新党大地の姿もあった。1月4日には、村民たちを前に新党大地の鈴木宗男代表が「非正規労働者の雇用と住居の確保を求める国会決議」を提案。その場で他の野党が賛同するなど、村は野党共闘の舞台ともなった。
 村が5日に、日比谷公園から、都内4カ所に用意された施設に移動した時には、イデオロギー色がより鮮明にでる場面があった。実行委員会が企画した、村民らの日比谷公園から国会までのデモの場面だ。
 デモ隊の先陣は共産党とのパイプが太い「全労連」「自治労連」の街宣車。車の屋根には「憲法を守ろう」のスローガンが大きく書かれている。
 霞が関周辺でよく聞く甲高い声の女性がマイクを握り「消費税値上げ反対」「総選挙で政治を変えよう」「大企業の金儲けは許さないぞ」と、シュプレヒコールの音頭をとっていた。デモ隊の周囲には、交通整理の警察官と、公安刑事らの姿があった。
 1月15日には、派遣村実行委員会らが主催した集会が開かれた。タイトルは「やっぱり必要! 派遣法抜本改正?派遣村からの大逆襲?」。場所は千代田区の日本教育会館。日教組の本部が入る建物だ。約400人が集まった集会の最後は、派遣法改正に向けた「ガンバロー」の大コールで盛り上がった。
 彼らの“支援”があったからこそ、派遣切り問題が大きくクローズアップされたことは間違いないが、弱者を政治的に利用していたという側面はなかったのだろうか。

派遣村の「村長」

 実行委によると、当初派遣村の開設目的は2つあった。「年末年始の生活救済」と「貧困を可視化することで世間に問題提起する」ことだった。そのため、会場には厚労省前の日比谷公園が意図的に選ばれたのだという。
 村の「村長」に就任したのは、NPO法人「自立生活サポートセンターもやい」の湯浅誠・事務局長。
 昭和44年生まれの湯浅さんは東京大学法学部で日本政治思想史を専攻。大学院まで進学した経歴を持ち、「大学院1年生の時、野宿者向けに友人がやっている炊き出しを見に行ったのが貧困問題とかかわるきっかけになった」と話す。
 平成13年に「もやい」を立ち上げ、困窮者の生活支援や生活保護申請の支援をしており、講演料や著書による印税が収入という。昨年、『反貧困?「すべり台社会」からの脱出』(岩波新書)では大佛次郎論壇賞を受賞している。
 派遣村の構想自体は、12月上旬に労働問題を専門にする労働弁護団から提唱されたようだ。労働組合のナショナルセンターである連合、全労連、全労協も足並みをそろえて支援メンバーに加わった。他に、非正規労働者の支援活動で実績のある「派遣ユニオン」「首都圏青年ユニオン」「反貧困ネットワーク」など15団体ほどが実行委員会に加わった。
 駆けつけたボランティアは実数で1674人。トイレ掃除、炊き出し、食料買い出し、清掃などを一部の村民も混じって行ない、村を支えた。
 「自分は発案者ではなかった。でも、組合系は炊き出しなどをやったことがない。現場経験がある自分が村長の役回りになった」と話す湯浅さん。運営関係者によれば、「さまざまな労働団体とつきあいがあるため、村長という御輿に担ぎ上げられたのではないか」という。
 多くの野宿者らと接してきた経験を持つ湯浅さんは「いったん雇用を失うと、すべり台を落ちるように再貧困にまで転落するのが日本の社会」「日本では自己責任論が幅をきかせすぎている。がんばりすぎる前に、支援事業にアクセスすべきだ」と主張している。

厚労省開放

 運動の1つの山が、2日夜に厚生労働省の講堂が宿泊場所として開放された時だ。実行委員会の用意したテントの宿泊能力は150人分。村には300近い人が集まっていた。
 決断したのは厚労省の大村秀章副大臣(自民)。湯浅事務局長とは労働問題をテーマにしたNHKの番組で名刺交換していた。2日昼過ぎ、湯浅事務局長から入った「テントに入りきらず病人も出ている。受け入れ施設を用意してほしい」という電話に、「直感的にヤバイと思った。あの現場をみたら助けないわけにはいかないだろう」と振り返る。
 開放できる施設がないか、千代田区長にも電話を入れるが断られ、厚労省幹部も危機感を抱いていた。村を訪れた野党政治家らも河村建夫官房長官や舛添要一厚労省に電話を入れ支援を求めたため、午後5時過ぎ、「講堂に暖房を入れろ!」と大村副大臣が指示。9時過ぎには260人の村民が講堂に入った。
 ある厚労省幹部は「目の前の日比谷公園で、失業者が凍え死んだとなれば批判を浴びるどころか、内閣が吹っ飛んだかもしれない」と振り返る。
 実行委側が、会場にあえて日比谷公園を選んだ作戦が成功したわけだ。

厳しい世間の反応

 だが、派遣村の村民たちに対する世間の目は、同情や理解ばかりではなかった。政党やイデオロギー色が強くなるにつれて、反発や厳しい意見が目立つようになってきた。
 産経新聞のネットニュースMSN産経ニュースで、10日から派遣村に関する意見を募集したところ、9割方が村民に対して厳しい意見を寄せた。
 「貯金はしていなかったのか」「職の紹介を受けているのに、選り好みしている場合か」「ゴネ得ではないか」…。「最初は同情していたけど、だんだんできなくなった」という声もあった。
 坂本政務官の発言に理解を寄せる声も多く届いた。これについては12日の東京新聞で、同紙の投書欄担当者が「非難が相次ぐ一方で、一定の支持が集まった」と書いている。各新聞社とも、似たような読者反響を得たのだろう。
 その後、村民らは東京都が用意した都内4カ所の施設を出て、その後は実行委員会が用意した都内2カ所の旅館を拠点にしながら、生活の再建準備を進めている。宿泊費などは全国から集まった約4300万円のカンパや、すでに生活保護支給が決まった人はそこから拠出されている。
 都の施設を出た12日の時点で、村民は約170人。日比谷公園を出たときには約300人いたため、130人が巣立っていったことになる。この300人のうち、生活保護の受給が決まった人はこれまでに290人。申請者のほぼ全員に、しかも短期間に生活保護が認められるのは異例なことだ。実行委員会では「やる気になれば、今の法律の枠内で、生活再建の足がかりを得られることが分かったことは大きな成果」と意義を強調。
 民主党の菅代表代行も「後世から見れば、派遣村が日本の雇用、労働問題の転機になったと言われることは間違いない」と話すが、全国にはなかなか生活保護が認められない人や、特に地方で派遣切りにあった人の中には、日比谷公園までやって来れなかった人もたくさんいる。生活保護は、私たちの税金から拠出されているのである。
 実行委では今後、全国各地に派遣村をつくり、放り出された人たちを支援していきたい考えだ。すでに、ノウハウの提供などを求める声が寄せられているという。
 だが、厳しい意見もあることを意識してか、15日の集会では名誉村長の宇都宮健児弁護士が、こんな言葉を漏らしている。「活動が広がるか。それは1人1人の村民のこれからにかかっている」。

 派遣村の人々はすべてが雇い止めの被害者ではなかったことが明らかにされています。なお、一部マスコミでは派遣切りと表現されていますが、正確に言えば雇い止めです。

 ざっくりと数字で示せば、派遣村の人々は4割程度は雇い止めとは関係のない人々であり、職探しも行なっていない人々でした。しかも、そのうち1割は従来からの浮浪者でした。

 そんなのウソだと言いたい人もいるでしょう。しかし、これらの実態調査は派遣村実行委員会や厚労省の調査に基づいています。実行委員会側も認めている実態なのです。

 記事の途中では、NPO活動を軸に組み立てられた派遣村が、野党やらプロ市民やらが入り込んで、雇い止め問題を超えてイデオロギー色に染まっていく過程も描かれています。

 派遣村のそうした限界を踏まえた上で、記事の後段では、派遣村のイデオロギー色が強い活動や職探しを怠っている村民に対する批判の声を紹介しています。

 実行委員会は村民の多くが生活保護を認められたことが派遣村の到達点だと評価しています。野党の民主党も同じような立場であることが示されています。

 これに対しては、生活保護の財源は私たちの税金だと暗に批判しています。つまり、税金の使い道として認められないとする人々の声が反映されていないということでしょう。

 私は非常にジャーナリズムを感じさせる記事だと思いました。久しぶりに新聞記事らしい新聞記事に出会った気がします。冷静に事実を伝えようとする姿勢が伝わってきました。

 雇用問題、労働問題は非常に個別的な問題です。低賃金や失業と言っても、それぞれの背景は異なっています。派遣村も巨視的に議論することはできません。

 浮浪者と雇い止めは置かれている境遇が違います。しかし、実際にはイデオロギー的に一括りにされて議論されています。とにかく論争の争点になれば良いのでしょう。

 そうした論壇状況のなかで、今日の記事はまずは実態を確認しようとの姿勢で書かれています。建設的に議論を構築するためにもこうした基礎的作業が必要であると強く思いました。

『京都花街の経営学』

 今日は西尾久美子『京都花街の経営学』(2007年、東洋経済新報社)を読みました。

 京都花街と言えば、一見さんお断りの閉鎖的な空間であり、何も縁がない人にはうかがい知れない世界です。本書はその花街の実態に経営的側面から迫っています。

 とはいえ、本書はその試みに成功しているとは言えません。本書の大半は、花街に関する一般的な知識で構成されています。肝心の経営的側面に関する叙述はほんのわずかです。

 最後のほうで、申し訳程度に経営学的考察が行なわれていますが、項目が羅列されているだけです。本来であれば、これを冒頭で示して、本論で深く分析していくべきでしょう。

 本書は著者が神戸大学で課程博士を取得した博士論文が下敷きになっています。一般向けに編集されているものの、本書からは元の博士論文の水準も容易に推測できます。

 経営学の学術的性格を如実に体現する本書ですが、京都花街に関する一般的な知識を得ることはできます。読み物として見た場合は面白く読みやすいと思います。

 例えば、京都には5つの花街がありますが、それぞれの芸妓さん舞妓さんの人数とその推移が本書に掲載されています。以下に示しておきましょう。

人数:芸妓/舞妓(2007年2月28日現在)
 祇園甲部:86/28
  宮川町:40/27
  先斗町:41/10
  上七軒:18/7
  祇園東:11/5
   合計:196/77

推移:1955/1965/1975/1985/1995/2005年
 芸妓:674/548/372/260/199/202
 舞妓:なし/76/28/58/78/71

 舞妓さんの数はほぼ一定と言えますが、芸妓さんの数は低下傾向にあります。独立した芸妓さんを支援する人が減少していることを示唆していますが、もちろん本書では分析されていません。

 もっとも、京都花街の性質を考えると、お客さんの情報は一切明かさないはずですから、何人くらいのお客さんがいるのかどうかも不明だと思います。

 したがって、芸妓さんの減少についても、日本経済の状況が良くないといった程度で分析するしかありません。とどのつまり、言葉を濁して叙述するしかないのです。

 本書で科学的な検証に耐えうる考察がなされていないことにはこうした理由があるのでしょう。基本的な情報が得られない世界を研究対象にしたことが根本的におかしいのです。

 それでも課程博士を取得できる神戸大学は素晴らしい大学だと思いました。

日本初の心肺同時移植

 今日は日本初の心肺同時移植です。

国内初の心肺同時移植へ
2009年 01月 17日 00:03 JST

 日本臓器移植ネットワークは17日、兵庫県災害医療センターに頭部外傷で入院中の30代の男性が、16日午後に臓器移植法に基づく脳死と判定され、国内初の心臓と肺の同時移植が大阪大で行われる見通しだと発表した。心臓と肺は30代の男性に移植される予定。肝臓は九州大で50代の男性に、膵臓と片方の腎臓は東京女子医大で40代の女性に、もう片方の腎臓は兵庫医科大で50代の男性に移植される予定。

http://jp.reuters.com/article/kyodoMainNews/idJP2009011701000255

 脳死臓器移植の事例です。記事にはありませんが、日本で1997年10月に脳死患者からの臓器移植が法的に認められて以降、79例目になります。移植された臓器は今回を含めて合計335個です。

 心臓移植や肺移植は脳死臓器移植では60個程度ありましたが、心肺同時移植は日本初です。日本の臓器移植技術が世界と比較しても遜色ないことが示されたと思います。

 その一方で、なかなか手放しで喜べないことも事実です。一般的な数値を言えば、5年生存率は心臓移植が70%程度、肺移植が40%程度であり、心肺同時移植も40%弱となっています。

 肺移植は感染症対策が難しく、生存率が低い移植手術です。それに連動して心臓と同時に移植する場合も、生存率は低くなります。

 心肺同時移植の場合、10年生存率では20%台まで落ち込むと言う調査もあります。この数値を高いと見るか低いと見るかは価値判断でしょうが、私は低いと思います。

 臓器移植に、だからといって、意味はないと言いたいわけではありません。が、推進論者が絶賛するほどのバラ色の医療技術なのかと疑問に思います。

 医療問題を激しく追求するマスコミが、臓器移植に対しては不思議と手放しの賛辞を送っています。臓器移植の限界が報道されることはまずありません。

 臓器移植も1つの医療技術です。それで助かる命もありますが、同時に限界があることも踏まえて、利用する姿勢が必要であると思います。

覚書 090117

みずほ総合研究所「みずほ欧州経済情報 欧州経済・金融市場の概況」2009年1月号。
・7-9月期に16年ぶりのマイナス成長に陥った英国は、10-12月期に一段と悪化したとみられる。GDPのおよそ6割超を占める個人消費の動向をみる上で注目されるクリスマス商戦は不冴えであったことが報道等で伝えられている。住宅価格下落による逆資産効果、雇用・所得環境の悪化、消費者マインドの悪化を背景に、12月から実施された付加価値税(VAT)引き下げ効果は限定的のようだ。CBI小売販売指数をみると、12月がマイナス55(前月比マイナス9Pt)と、1983年の統計開始以来の最低水準を更新した。4-6月期から減少が続く実質個人消費は10-12月期に一段と悪化した可能性が高い。
・11月の失業者数(失業保険申請ベース)は107万人と2001年以来の100万人台に達した。年後半、特に8・9月頃から失業者増加ペースが加速しており、金融危機による景気した押し圧力の高まりが雇用調整に拍車をかけたとみられる。PMIの内訳項目である雇用指数をみると、昨年秋口以来、低下ペースが加速している。
・BOEの信用状況サーベイによれば、10-12月期の金融機関融資姿勢は引き締めが続き、先行きも厳格化する見通しが示された。家計向け(有担保)をみると、水準が幾分緩和しているとは言え、厳格化姿勢が続いた。また、デフォルト率は調査対象の半分以上で上昇し、先行きも更なる上昇が予想されており、金融機関の損失拡大、信用給与縮小が懸念される。こうした状況下、英国政府は9月に続き、12月にも差し押さえ回避や返済繰り延べなどの対策を打ち出し、住宅市場支援を強化している。
・インフレ率は低下が続く。11月のインフレ率は4.1%(前月比マイナス0.4Pt)に低下した。依然としてインフレ目標の上限である3%を上回っているが、早晩、目標レンジに低下するだろう。今後は2008年12月からのVAT引き下げ効果もインフレ低下に寄与することになる(BOEによれば、1Pt程度下押しされる公算)。もっとも、VAT引き下げは時限付きの対策であるため、失効後は反動が生じる。2009年、2010年のインフレ率はこうした政策的な影響を反映してしまうことになる。
・12月の金融政策委員会(MPC)では100bpの利下げと、11月の150bpに続き大幅な利下げに踏み切った。政策金利は2%と歴史的な水準まで引き下げられた。発表された議事録によると、足元の状況は11月のインフレ・レポートで示された一段と下振しており、少なくとも100bpの利下げが必要との認識が明らかとなった。また、「政策金利は信用収縮に対抗する適切な手段ではない」ため、10月に政府が打ち出した金融機関支援策に「追加的な対策が必要」とし、FRBが始めている資産買い取りなどの非伝統的な金融政策を検討していることが示唆された。信用状況サーベイが与信姿勢タイト化を示しているように、BOEは信用収縮によって景気が一段とシュリンクすることへの警戒を強めている。
・こうした中、1月のMPCでは50bpの追加利下げを決定、政策金利は1.5%と過去最低水準となった。政策変更に際しての声明文では、「非金融部門向け融資を拡大させる追加措置が必要」と、金融の目詰まりに対して非伝統的な主導を導入する可能性が高いことを示した。

中澤栄「英国における保険販売チャネルの活力 アグリゲーターとコンソリデーター」『ITソリューションフロンティア』2009年1月号。
・英国保険協会によると、損害保険の販売チャンネルに占めるダイレクト販売の割合は31%であり、競合するブローカー(仲介業者)のシェアはこの10年間で55%から34%へと20%以上も減少した。
・代わって伸び率の堅調なチャネルはブランドアシュアラー(ブランド力をもつ企業が保険販売を行うもの)で、テスコ社やセインヅベリー社といった大手小売業者が有名である。保険会社はブランドアシュアラーの名前で販売される保険商品をOEM提供するもので、製販分離型のモデルと言える。英国ではこれによって保険ブランドの数が増えた。
・保険商品の数の多さを背景に、どの保険を買うと得なのかという消費者の問いに答える購買支援ビジネスがアグリゲーターと呼ばれる比較見積もりサイトである。
・企業向けの損害保険の分野ではブローカーの再編が猛烈な勢いで進んでいる。伝統的なブローカーが吸収合併により巨大化したものをコンソリデーターと呼ぶ。コンソリデーターは各地域に拠点網と有力顧客を抱え、事業規模の拡大と専門性の強化を進めているが、一方で引受保険会社の選定や手数料水準に関してきわめて強い発言力をもつと言われている。

「「空売り悪玉論」の愚かしさ」野村総合研究所『Financial Information Technology Focus』2009年1月。
・空売りとは、元手にない銘柄を借株によって調達して売却する取引手法である。もともと、株式を保有していない投資家の投資判断を市場価格に反映させ、流動性と効率性を向上させる正当な経済行為だが、相場の下落を加速するといった見方がなされることもある。実際、海外では、特定の銘柄に集中的な空売りを仕掛けて相場操縦を行った事業が摘発されたこともある。
・今般の金融危機局面でも、信用不安がささやかれる金融危機をターゲットした空売りによる相場操縦的行為がみられたとの指摘があった。そこで9月以降、米国や英国では一部銘柄に関する空売りの全面禁止など、規制強化が図られた。これに対して日本では、空売り時の価格が制限されるなど諸外国よりも厳しい規制が以前から課されてきたことや金融機関株に大量の空売りが集中する状況にはなかったため規制強化は見送られてきた。ところが、日経平均株価がバブル後最安値を更新した10月下旬以降、「株価対策」を求める超えが高まり、空売り規制が見直されることになった。
・覚書注:空売り規制を米国や英国が実施するのは良いが、日本が行うことは許せん、という主張である。どこまで本気で言っているのかよくわからない。

文部科学省「教育指標の国際比較 平成20年版」生涯学習政策局調査企画課、2008年3月。
・図表のみ。
・覚書注:各種の検討を行う際に統計として活用できる文献である。例えば、日本はドイツに比べて高等教育(大学教育にほぼ等しい概念)に対する政府支出は2分の1であるが、高等教育への進学率は2倍(日本が50%前後で、ドイツが25%前後)である。また、同じ指標について日本とイギリスを見ると数字上は同程度である。その一方で、アメリカは日本と同じ進学率であるが、高等教育の費用は政府と私費を合わせて日本の2倍以上である。こうした実情を手軽に確認できるところに本文献の魅力がある。日本における教育論議では、高等教育に対する財政支出が少ないことが日本の問題だと言われるが、費用的な側面だけから教育を語ることには限界があるだろう。日本は財政支出の多いドイツを見習えと主張するのであれば、進学率が日本の半分しかないことを同時に見なければならない。教育費それだけを取り上げて議論するのではなく、教育水準や教育機会などの側面も含めて総体的に議論すべきである。

後藤あす美「英国経済見通し 09年末に測られる成長余力」大和総研『海外情報』2009年1月14日。
・1月8日、BoEは金融政策委員会で、50bptの利下げを決定し、政策金利が1.50%となった。1694年のBoE創設以来、初の1%台の金利である。2008年10月に50bpt、11月には150bptの利下げ、12月に100bptの利下げを行っている。だが、金融機関の貸し渋りは改善せず、製造業のCIPS企業景況感は計測開始以来の最低水準を更新しつづけている。短期金利市場では、BoEが、2009年末までに0.75%近くまで利下げを行うと同時に、量的緩和策が実施されるとの見方が強まっている。
・国立経済社会研究所(NISER)算出の2008年Q4実質GDPは前期比マイナス1.5%となった。この水準は、1980年の景気後退期に匹敵する。英国最大の産業である金融業の崩壊はもちろんだが、製造業の動向が極度に落ち込んだことも背景にある。なかでも耐久財生産が縮小、10月の貿易統計では最大の貿易相手地域であるユーロ圏への輸出が前期比でマイナス8.4%、11月にはEU以外の地域(北米・アジアなど)への輸出が前期比12.6%と減少した。BoEの大幅利下げ実施・追加利下げ観測から、ポンド安が進行したが、全体的に見ると、世界的な需給調整に圧倒され、期待以上の好影響は表れなかった。結果、製造業生産は押し下げ圧力に晒された。
・BoEが発表した2008年Q4の英銀行融資調査の結果から、2008年後半は企業への融資が予想以上に厳格化されている様子が映し出された。特に中小企業への融資が慎重だったが、同調査から英金融機関が今後大企業のディフォルト率が上昇すると見通していることが明瞭となり、その波が企業全般に波及する見込みだ。ボトルネックとなっている資金繰り悪化に対し、BoEの大幅利下げによる金融機関への間接的な圧力が無効だったことが実証されつつある。BoEとしては上京打開の為に、ゼロ金利に引き下げる前に、より効果的な量的緩和策に踏み切る可能性も十分あろう。
・注目された年末年始の商戦は、大幅な値引きが実施され、その努力も虚しく、小売売上高は数量ベースで前年割れしたと推測される。英統計局(ONS)に先駆けて英小売協会(BRC)が発表した12月の小売物価は、家電・家具・衣類などの在庫一層の大幅値引きで、前月比マイナス2.0%、前年比プラス0.5&となった。しかし、12月の小売売上高(金額ベース)は前年比マイナス1.4%と振るわず、既存店比較では前年比3.3%まで落ち込んだ。クリスマス明けのセールは1月中旬過ぎまで行われているようで、値引き幅は一段と拡大している模様。ただ、英産業連盟(CBI:Confederation of British Industry)の調査からは、期待販売数量指数がマイナス40からマイナス49へと低下しており、1月の売上げが12月の販売以上の成果をあげるには不十分との判断が示唆されている。
・クリスマス商戦の時期に前倒しして始まったセールは不振に終わったが、あまりに異例の値引きが災いして、クレジットカードの利用拡大を引き起こした。元々、失業率の上昇で所得が不安定な素地があるにもかかわらず、クレジットカードの使用で貯蓄を削る行動を取った為に、家計のディフォルト率も一段と上昇する見通しとなった。担保の有無に関係なく、家計への貸出が引き締められる傾向にある。
・この本格的な景気悪化に対して、英ブラウン首相は12日に、今後2年間で5億ポンド規模の雇用対策を発表した。失業して半年以上の長期失業者を優先的に救済する。失業者を雇用した企業に対しては最大2500ポンドの補助金を支給する。職業訓練への助成も含め、50万人の雇用創出を目指す。この発表に先立って、4日には100億ポンドの公共投資・環境投資を前倒しして行い、10万人に新規雇用創出を図ると述べている。また、一部の報道では、金融機関が融資を渋っている中小企業に対して、ローン保証制度を検討中とされている。2008年にプレバジェットで200億ポンドの景気刺激策を盛り込み、追加で住宅ローン金利返済保証を発表してきた。予算案通過後の公共事業実施までを勘案すると、2009年年末から2010年年初にはBoEの超低金利政策・量的緩和案を下地に、景気刺激に努める政府施策の効果から、景気後退医歯止めがかかり、プラス成長に転ずる場面もあろう。

大政美樹「主要国の金融政策動向」国際金融情報センター、2009年1月8日。
・英国:2.00% 2008年12月4日、1.0%ポイントの利下げ、ECBとも足並みそろえる。1951年以来57年ぶりの低水準。10月8日の0.5%ポイント協調利下げ、11月6日の1.5%ポイント大幅利下げに続くもの。次回は1月7-8日。

大政美樹「主要国の政治動向」国際金融情報センター、2009年1月8日。
・英国:2009年予定、総選挙。

労働政策研究・研修機構「欧米諸国における最低賃金制度」『JILPT 資料シリーズ』No.50、2008年12月。
・経済のグローバル化や市場経済の競争激化に伴い、社会的セーフティネットの一つである最低賃金制度の重要性が増している。わが国の最低賃金制度は2007年12月、低賃金労働者の労働条件の下支えとして十全に機能するよう、改正最低賃金法が成立したところである。欧米諸国においても近年、同様に最低賃金制度をめぐり熱い議論が行われている。その議論は、低賃金労働者の賃金水準の適正化という観点にとどまらず、他の社会保障制度との関連から、あるいは欧州においては拡大を続けるEUとの関係などから、制度を見直そうとする動きが出ている。アメリカでは、近年連邦最低賃金の改定が行われていなかったが、最低賃金の実質価値が低下傾向にあったことなどから、主に民主党から最低賃金改定法案が議会に提出され、2007年7月、約10年ぶりに連邦最低賃金が引き上げられた。欧州に目を向けると、フランスでは、2007年の大統領選において「保護主義からの脱却」をスローガンに掲げ勝利したサルコジ大統領が、さっそく近年上昇著しいSMIC(最低賃金)の制度について見直しの検討を開始している。また、拡大を続けるEUとの関係では、ドイツの最低賃金は産業ごとの労働協約によって決まっているが、近年労働協約が適用されない外国企業からの派遣労働が増えていることから、政府は賃金ダンピング防止のため、一定業種に最低賃金を義務付ける「労働者送り出し法」を活用した制度の構築を目指している。オランダもEU新加盟国からの移民労働者の受け入れの自由化に伴い、同様に違法な低賃金労働者の流入を抑えるため、最低賃金違反に対し罰金を含む行政罰を新たに設け履行確保策を強化した。
・イギリスでは、1979年に政権についた保守党政府は、1986年に最低賃金制度を改革し、賃金審議会(Wages Councils)が最低賃金額を提案する対象としている労働者のうち21歳未満を対象から除外、提案内容を単一の基本賃率のみとするなど、審議会の権限に大幅な制限を加え、続く1993年に制度自体を全廃した。保守党政府は廃止の理由として、賃金審議会が労働者の賃金水準を彼らの限界生産性以上に引き上げているため、企業が雇用を削減せざるを得ない事態になっていることなどを主張した。この後、全国最低賃金制度が設置される1999年までの間、政府による賃金規制のない時期が続き、この間、低賃金層の雇用者に占める比率は急速に増加したが、賃金審議会の廃止が低賃金層の雇用拡大に結びついたという明確な証拠は得られてないという。
・一方、労働組合側は1970年代には、団体交渉の拡大が賃金審議会を代替すると考えられており、全国一律に適用される制度は言うに及ばず、政府による賃金規制自体に懐疑的だった。これには、賃金審議会の決定する最低賃金額が甚だ低かったことや、履行確保の体制が不十分であったことなども一因といわれる。しかし1980年代に入って、経済のサービス化や政府による反組合的政策の影響などから、労組が弱体化し、非組織の非正規労働者の増加にともない賃金格差が顕在化するなどの状況が発生していた。傘下の労働組合の間(特に、経済のサービス化で非正規労働者が増加する以前から賃金水準が低かった公共部門)には、すでに1970年代から、既存の賃金決定システム(すなわち自律的労使交渉ならびに賃金審議会による規制)が低賃金部門における妥当な賃金水準の確保のために機能していないとして、政府による介入を支持する産別もあったといわれるが、ナショナルセンターの英国労組会議(TUC:Traders Union Congress)が、賃金審議会に関して従来の見解を訂正したのは1982年になってからだ。機械工や運輸部門など、当時まだ相対的に強い交渉力を有していた傘下組織を中心に、多くの労働組合の間では政府による賃金規制に関して消極的な意見が未だ一般的だったという。ようやく1986年に、これらの労組が従来の見解を転換したことを受けて、TUCは、全国的最低賃金の支持を公式に表明、労働党もこれを政策目標に掲げるに至った。
・1997年に総選挙に勝利して、労働党政権が成立した後、最低賃金制度の根拠法にあたる1998年全国最低賃金法と、制度実施に関する具体的な規則を定める1999年全国最低賃金規則が相次いで成立、これに基づいて、イギリスでは初めて、全国・全産業一律に適用される全国最低賃金制度が1999年4月より導入されることとなった。Brown(2005)によれば、政府の最低賃金制度導入の意図は大きく二つある。ひとつはもちろん低賃金層の賃金水準の適正化により貧困問題に対応することである。これには1993年の賃金審議会の廃止以降に低賃金層の賃金水準が顕著に低下し、賃金格差が拡大したことが重要な要因となっている。とりわけ、1990年代までにかけて戦後最悪といわれるほど急速に増加した貧困家庭の児童の問題が念頭に置かれていたという。同時に、財政上の問題も政府の制度導入の強い動機になっている。保守党政府が1988年に、就労連動型の給付制度(in-work benefits)として導入した家族税額控除(Family Credit)は、一定時間以上の就業を条件に所得補助(税還付)を行う制度で、貧困層の就労促進や貧困児童の問題を緩和する効果があったといわれる。しかし、賃金水準の下限が撤廃されたことにより、多くの雇い主が従業員の賃金を抑制して、この給付制度を最大限利用させるという傾向を生んだという。結果、受給者の拡大とともに、財政負担が急激に増加したため、妥当な水準の賃金支払いを、応分の負担として企業に課すことが最低賃金制度導入の重要な目的として示された。
・現行の最低賃金制度は、22歳以上の労働者に適用される基本賃率(adult rate)以外に、基本賃率と同時に1999年から設置されている18-21歳向け(development rate)と、2004年に新たに設置された16-17歳向けの賃率の3種類で構成されている。最低賃金水準は、低賃金委員会(minimum wage council)が政府の諮問を受けて改定額やその他の制度改正を提案、これを踏まえて担当大臣が決定する。低賃金委員会は1998年法に基づいて設置され、時間当たりの最低賃金額のほか、参照期間の設定、最低賃金額算定の対象となる賃金の範囲、適用除外とすべき労働者の種類など、またこれ以外に大臣が必要と認めて諮問する事項の検討を行うべきことが定められている。最低賃金額の決定基準に関する明確な法的規定はないが、1998年法は、低賃金委員会が「イギリス経済全体およびその競争力」への影響を考慮のうえ、提案を行うべきことを定めている。低賃金委員会は担当大臣からの諮問を受けて、1. 制度導入以降の雇用・所得等に対する影響、また経済情勢・雇用状況・平均賃金の上昇率など、2. 最低賃金の影響を受けやすい低賃金業種の企業へのアンケート調査および地方のヒアリング、3. 外部に委託した研究の成果、4. 政府・労使などの関係組織からの意見聴取などの結果、をもとに、適切な改定額の提案のための検討を行う。毎年の報告書では、最低賃金制度の所得水準、労働市場および企業に対する影響が分析され、生産性や労働時間、教育訓練の状況などに至るまで、広範な項目が考慮されている。報告書の記述などから、改定額の決定にとりわけ重視されると考えられるのは、雇用の増減や平均賃金額・中央値の伸び率、また物価上昇率などである。
・政府のガイドラインによれば、正規労働者以外の適用対象労働者として、パートタイム労働者、臨時雇い労働者、短期契約労働者などが含まれるほか、派遣労働者、在宅労働者、出来高払い労働者(pieceworker)のうち雇用契約下で就業していないため必ずしも同法の「労働者」の範疇に含まれない者についても、実態に応じてこれを労働者とみなし、適用対象とする。一方、適用除外となる労働者は、義務教育終了年齢前の労働者、「本来の」(genuinely)自営業者、徒弟労働者の一部、住み込み語学学習者(au pair)、軍隊従事者(防衛賞の雇用者を除く)、慈善団体やコミュニティの設置した住民団体等のボランタリー団体(voluntary organizations)などで働く労働者(voluntary worker)などである。また、就業する船の漁獲量に応じて報酬が支払われる漁師や、囚人等も適用除外となる。徒弟労働者については、1. 19歳未満、2. 19歳以上で徒弟期間が12ヶ月以下の場合は適用除外となる。1998年法では当初、26歳以上の労働者について適用除外を認めていなかったため、上記2の規定は、26歳未満の徒弟労働者のみ適用されていた。しかし、翌1999年の改正で、26歳以上の労働者についても、1. 新しい雇用主に雇用されてから最初の6ヶ月間、2. 就業の直前までホームレスや所得補助(生活保護に相当)の受給者であった労働者に対して就業に関連して宿泊所(shelter)が提供される場合、3. 訓練等の一環として就業している場合、4. 就業支援プログラムの一環として就業する場合、5. 高等教育あるいは継続教育の一環として就業する場合、などは、同様に適用が除外されることとなり、加えて2006年の制度改正で、徒弟期間が12ヶ月以下の場合に関する年齢制限が撤廃されたため、26歳以上の徒弟労働者も適用除外となることが定められた。
・1999年規則は、最低賃金の算定に用いる賃金の範囲を次のように定めている。すなわち、参照期間(一ヶ月、もしくはそれより短い間隔で賃金が支払われている場合はその期間)に関して支払われた税・社会保険料等の控除前の金銭のうち、1. 先払い等でないもの、2. 年金でないもの、3. 雇用契約外の報酬として裁判所等の命令によって支払われたのでないもの、4. 解雇手当でないもの、5. 業務改善提案制度(suggestion scheme)に係る手当てでないもの、などである。また、6. 現物支給も賃金の支払いとはみなされない。ただし、雇用主が住居を提供している場合の家賃徴収分は賃金として算定に含めるこが認められている。徴収額には上限額が設けられており、最低賃金額同様、改訂の対象となる。
・なお、1999年規則は、時間あたり賃金額の算定の基礎となる労働時間の捉え方に関連して、次の4つの報酬労働の形態を区別している。すなわち、1. 働いた時間に応じて賃金が支払われる「時間労働」(time work)、2. 年間を通じた基本労働時間とこれに対する定額の報酬の支払いが契約上規定されている「給与時間労働」(salaried hours work)、3. 製品や販売・取引等の数量に応じて報酬額が決定する「出来高労働」(output work)、4. 定められた時間や数量の規定等がなく、必要に応じて、もしくは労働者が働けるときに働く「不測定労働」(unmeasured work)、の4種だ。「給与時間労働」と「時間労働」については、算定の基礎となる労働時間が比較的明確に確定される。このうち、「給与時間労働」については、所定外労働時間や業績等による賃金額の変化は考慮されず、基本時間と定額の報酬に基づいて時間当たり賃金額が算定される。また、「時間労働」については、文字通り賃金支払いの基準となっている労働時間が算定の基礎となるが、これには待機時間や仕事上の移動時間、訓練の時間等を含めることとされている。一方、「出来高労働」および「不測定労働」については、労働時間の扱いが必ずしも明確ではない。このため、前者については、同一の雇用主のもとで働く平均的労働者の時間当たりの業務量(製造数もしくは処理数)で最低賃金額を割り戻し、これに1.2を乗じたものを、業務一単位当たりの公正な価格(fair piece rate)の下限として設定するべきことが、2005年の制度改正により規定された。また、後者については、雇用主と労働者の間で一日平均のみなし労働時間を設定するか、もしくは一日の実働時間を記録することを求めている。
・履行確保を所管する歳入関税庁は、国内に16チーム、計80名の監督官(compliance officer)を設置、ヘルプライン(電話)や郵便、ウェブサイトを通じて、最賃違反に関する申し立てや通報をうけて、雇用主に対する立ち入り調査を行う。事業主には、従業員の労働時間や賃金支払いの記録について最低3年の保持が義務付けられており、監督官は立ち入り検査に際して、この記録や必要な情報の開示とコピーの取得、またそれについて説明を求め、これらを実施する必要に応じて事業所内の任意の場所に立ち入るなどの権限を付与されている。なお、雇用主に対して、従業員からの請求があった場合も同様に記録の開示が義務付けられる。検査の結果、違反が認められた場合は、監督官は雇用主に対して履行通告を発行し、最低賃金の支払いと、最長で過去6年分まで遡及した未払い分の賃金の支払いを命ずることができる。雇用主が支払い義務を履行しない場合は、監督官は罰則通告(違反の対象となる労働者一人当たりつき、履行勧告からの日数に最賃額の2倍を乗じた罰金を科す旨の通告)を発行する。これに対して、雇用主は28日以内に雇用審判所(Employment tribunal)等に異議申し立てを行うことが認められており、雇用審判所は相応の理由があると判断した場合、通告を撤回させることができる。これらの手続きによって解決がみられない場合、監督官は雇用審判所もしくは民事の裁判所に訴訟を提起するか、あるいは悪質な雇用主に対しては、賃金不払いとして刑事追訴を行うことができる。なお、労働者が直接、雇用審判所あるいは裁判所等に訴え出ることもできる。いずれの場合においても、違反がないことを証明する責任は雇用主(雇用関係にない場合は発注者)にあることが法律で定められている。また労働者には、訴訟を理由に不利益な取り扱いを受けない権利が保障されている。
・低賃金委員会の2008年の報告書によれば、最低賃金以下の賃金水準の雇用者の約3分の2が女性で、就業形態別ではパートタイムが6割を占める。また、人種別にはパキスタン・バングラデシュ系を中心とするエスニック・マイノリティ、年齢別には65歳以上の高齢者層(特に女性)や22-25歳もしくはそれ以下の若年層、あるいは障害者などの雇用者層の間で特に比率が高い。企業規模別では小規模企業ほど低賃金労働者を雇用する傾向にある。業種別には、理髪業、清掃業、飲食・宿泊業(Hospitality)などで低賃金労働者の比率が特に高い。また絶対数では、小売業(335万人)、飲食・宿泊業(181万人)、ソーシャル・ケア(育児・介護等の公的なサービス:116万人)の3業種となっている。なお、外国人労働者の間で比率が高いとの見方が一般的だが、統計上は把握されていない。
・政府は最低賃金制度の導入に際して、低所得者層への所得補助給付の一部を適正な賃金の支払いを通じて企業に負担させ、これによって財政負担を軽減するという効果をもたらすことを大きな目標の一つとして掲げている。ただし、同時に、最低賃金制度は政府が実施している「福祉から就労へ」という就業促進プログラムの一環として位置付けられ、低所得者層への就労に関連付けた税額控除制度(Working Tax Credit)の実施とならんで、失業者や無業者などにとって就労が魅力的となるような賃金・所得に関する施策ともなっている。つまり、最低賃金額を適正な水準に保つことで、求職者給付(失業手当)や就労不能給付(障害者手当)などの受給者を就業に振り向け、これを通じて一方では社会保障支出の削減、他方ではいわゆる社会的排除によって就業・教育などの面で不利な立場に置かれた人々の状況を改善することが志向されているといえる。なお、現在の最低賃金額の水準は、総じて所得補助や求職者給付など各種給付制度の週当たり支給額よりも高いといえる。このため、基本的には給付水準と最低賃金額が関連付けて論じられることはない。
・最低賃金制度の導入は、低賃金層の賃金水準の改善を通じて、所得の再分配効果をもたらしたとの見方が一般的だ。また、賃金水準に関してその恩恵を最も被ったのは、低賃金層の半分近くを占める女性パートタイム労働者であるといわれ、この層の賃金水準の改善を通じて、男女間の賃金格差が縮小されたところが大きい。雇用について、制度導入に際しての議論では、保守党や企業などが、雇用が大幅に削減されると主張し、また、より低い水準が設定される若年層に労働需要がシフトすることにより、基本賃率を適用される22歳以上層の労働者が職を失うとの懸念が提示されていた。しかし、導入から9年あまりを経て、これまでのところ主張されたような全般的な影響はみられていない。この間の雇用水準は,長期的な景気の好調に支えられて拡大、就業者数はイギリスで初めて3000万人に届こうとしており、うち約1割にあたる約300万人分は1997年からの増加分だ。
・低賃金委員会は2007年の報告書で、最賃額の大幅な引き上げに替えて企業におけるコンプライアンスを高める必要を主張、政府も同様の意向を示し、履行確保を所管する歳入税関庁の関連予算を50%引き上げて、監督官の増員や広報活動などによる制度の周知徹底を促すこととした。また、派遣労働者や外国人労働者などの立場の弱い労働者に対する搾取の問題への対応についての議論が既に一昨年前から進められており、この関連では、例えば住居費等の賃金からの徴収に関するルールの厳格化や、最賃違反に対する即時の罰金の適用および罰金額自体の引き上げ、また履行確保の強化の一環として、未払い賃金の算定方法の見直し(遡及分を現在価値に換算)や監督官の権限の拡大などもはかられる予定だ。
・最低賃金委員会が改定額の検討に際して毎年実施している関係者からの意見徴収に対して、使用者側から毎回寄せられる見解は、最賃引き上げによって生じるコストが企業の経営に大きな負担となっており、これを捻出することが年々難しくなっている、というものだ。例えば、小売業の業界団体である英国小売業協会は。2006年の最賃額6%の引き上げによるコスト増は企業全体で17億ポンドにのぼり、人件費の増加が従業員の生産性の上昇分を上回っていることから、競争力が損なわれていると主張している。またコンビニエンス・ストア協会も、人件費の増加がそもそも小さい利益をさらに侵食している、との声を寄せている。あるいは、人件費以外の原材料などに関するコスト増への対応の必要なども、使用者の間からは聞かれる。CBIは、雇用などへの影響をみるためにも、改訂の間隔を(例えば隔年などのかたちで)あけるべきではないか、と主張している。一方、労働組合側の主張は、企業の利益率は記録的に増加しており、最賃の引き上げは企業にとって十分対応可能な水準にあるというものだ。むしろ、例えば介護業界では、低劣な賃金水準を理由とする高い離職率が、新たな従業員の訓練によるコストを増加させており、在宅介護業界などではこのコストが7,800万ポンドにもおよぶとしている。また、労働組合側は現在の最低賃金の水準に不満をもっており、「生活賃金」という考え方に基づいて、最賃額の7ポンド前後への引き上げを主張している。さらに、インターンシップや就職経験プログラムを通じて就職している若年層に対して、最賃未満の賃金の支払いや、あるいは無給で就業させるなどの最賃適用違反が多発しているとの批判もある。多くは、制度に関する知識不足から行われている違反であるといわれている。
・最低賃金制度の影響に関する研究者などによる検証も、多岐にわたる問題に関して行われている。特に関心が集まっているのは、雇用と賃金水準に関する影響だ。このうち、雇用に関してはほとんどの研究成果で、悪影響は生じていないとの結論に達している。低賃金業種あるいは若年層など、とりわけ最低賃金の影響を受けやすいとされるグループに絞った研究においても、目立った雇用への減少効果はみられないとの結果を報告する論文が多い。Metcalf(2007)は、雇用への影響が抑制された要因として、1. 職場組織の見直しや訓練などの企業努力による生産性の向上、2. 価格転嫁、3. 企業収益の縮小による吸収、4. 雇用ではなく労働時間による調整が行われた、などが有力であるとしている。しかし、例えば教育訓練や企業収益などについては、最低賃金制度の影響はほとんどみられないとする研究もあり、また労働時間の調整についても、若干の減少傾向はみられるものの、使用する統計によって結果が異なるといった結果を報告する論文もあるなど、いずれの要因がより説明力を持つかついて、賛否は分かれる。また賃金水準への影響については、最低賃金の賃金水準の改善効果があったとする研究が大半だ。ただし、その効果を限定的にとらえる(ごく一部の低賃金層についてのみ改善効果があったとする)研究から、より広範に上位層まで波及効果があったとする研究までみられ、これに関しても評価は必ずしも一定していないことが窺える。
・Brownは、最低賃金制度を「政府の労働市場に対する最も立ち入った介入」(most intrusive labour market intervention)と表現しながらも、導入に際しての議会などでの激しい論争は、制度の導入以降は急速に沈静化したと述べる。もちろんこの成功には、1990年代末からの長期的な景気の好調による労働力需要への拡大が大きく寄与している。しかし同時に、最賃額がその初期から、雇用などへの影響に配慮して慎重に設定されてきたことや、三社構成の諮問機関が調査研究等を通じて現状の把握につとめ、これをベースとした実質的な議論の場として調整機能を果たしてきたことも大きいだろう。もちろん、委員会における労使委員間の合意が、外部の労使団体などによる意見の対立を解消しているということではないが、少なくとも最賃制度導入の際には激しく反対してきた保守党や使用者側から目立った廃止論が聞こえてこないことは、最賃制度が国民の多くに受け入れられ、定着してきたことの証左といえる。
・覚書注:最低賃金制度が導入された時期が、好況期であったため、指摘されているような懸念が現実化しなかったのではないだろうか。景気が著しく鈍化している昨今では、最低賃金制度の弊害が生じている可能性がある。弊害があるから制度自体に意味がないとする議論は単純であるが、実際に弊害があるなら修正しなければならないだろう。
・Brown(2005):Brown W., “The Low Pay Commission After Eight Years”, 2005.
・Metcalf(2007):Metcalf D., “Why Has the British National Minimum Wage Had Little or No Impact on Employment?”, CEP Discussion Paper, No.781, 2007.

脳死患者が出産した事例

 今日は脳死患者が出産した事例です。

英国人女性、脳死診断の2日後に女児出産
2009年 01月 14日 10:41 JST

 英国人女性が脳死と診断されてから2日後に、未熟児ながらも健康な女児を出産したと、地元メディアが13日報じた。
 女性は、元アイススケート選手のジェーン・ソリマンさん(41)。自宅で転倒して脳出血を起こし、そのまま回復しなかった。
 当地のオックスフォードにあるジョン・ラドクリフ病院の医師団が今月9日、当時妊娠25週目だったジェーンさんに対し、帝王切開による出産を執刀。女児の体重は972グラムだった。
 出産後、ジェーンさんに施されていた延命措置は止められた。女児の父親でエジプト出身のマームード・ソリマンさん(29)は、デーリー・メール紙に対し「母親になるのがジェーンの夢だった」と語っている。

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-35849120090114

 珍しい事態ではありませんが、覚書として取り上げました。特記するとすれば、出産と言っても自然分娩ではないという点です。

 出産事例もある脳死患者を死者と認定することはできないと脳死反対論では主張されますが、その議論には脳死患者も自然分娩で出産する、という前提があるのではないでしょうか。しかし、実のところ帝王切開での出産です。これは今回の事例のみならず他の事例にも言えることです。例外的に流産のような出産もあるようですが、通常は帝王切開です。この点は強調しておきたいと思います。

 私は脳死を死とすることには肯定的です。ただ、それは臨床的に見れば脳死は人の死であるという文脈においてです。社会通念として考える場合には、脳死状態を人の死として受け入れられない立場もありますから、画一的に規定してしまうことはできないでしょう。

 その一方で、脳死反対論のなかには根拠が曖昧な主張もあります。それが今回の出産です。出産ができるから身体は生きていると見なされますが、それはおそらく脳死患者の出産が帝王切開による出産であることを認識していない議論であると思います。こうした間違った見方については今日の記事などを提示して認識を改めてもらう必要があるでしょう。

 生まれてきた女児が健康に育っていくことを願っています。脳死議論に専念して忘れられがちですが、脳死患者から生まれてきた子供は未熟児であったり、胎内での循環悪化の影響を受けたりするため、身体的な発育に困難が伴います。何とか大きく成長してくれると良いのですが。

元号一覧表

 今日は元号一覧表です。

 日本の元号が列挙されています。実はWikipediaさんにも同じ内容の項目があり、こちらのほうが見やすくて詳細です。

 645年の大化から始まって、飛鳥時代中期に50年くらい元号なしの時期があるものの、現在の平成までおよそ240の元号が続いています。年数で言えば1300年を超えます。

 元号に批判的な人もいます。天皇制を批判するついでに廃止が主張されたり、覚えるのが面倒だと使用が嫌われたりします。

 嘆かわしいことです。日本の黎明期である飛鳥時代から受け継がれてきた元号がもつ、1300年の重みを真摯に受け止めましょう。

派遣村の正体

 今日は派遣村の正体です。

 みんな大好き派遣村ですが、いろいろと胡散臭い状況になっているようです。純粋な奉仕活動として始まった取り組みに、プロの人々がもりもり入り込んでいます。

 私が最も疑問に感じた点は、派遣村における1日の活動です。

1月2日撮影の写真より「1/2日の予定」
 9:00 朝食
 10:00 風呂・床屋
 12:00 昼食
 13:00 レクリエーション
 15:00 夕食準備
 17:30 夕食
 19:00 交流タイム
 21:00 映画鑑賞会

年越し派遣村websiteより「5日の予定」
 6時50分 ボランティア集合
 8時 朝食
 9時半 村民大移動式
 10時半 厚生労働省行動
 12時 国会請願デモ
 13時半 国会院内集会
 14時半 バスに分乗して大移動

 年末年始でハローワークが休みであるとはいえ、具体的な就職につなげる活動がまったくありません。誰が見ても非常に違和感を覚えるでしょう。

 派遣村に紛れ込んでいるプロは何をしているのでしょうか。炊き出しなどの奉仕活動をして満足してしまっているのではないでしょうか。

 派遣村のwebsiteによれば、カンパが2000万円以上が集まっています。こうした資源を活用して求人者との村人をつなげる活動ができるはずです。

 プロはやはり抗議行動のプロでしかなかったようです。大声で政府と大企業を批判するだけが目的の人々です。またもやプロたちによって日本の労働運動は後退したと思いました。

−−−

検証・「年越し派遣村」 その実態は
2009.1.12 21:33

http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090112/trd0901122133016-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090112/trd0901122133016-n2.htm
http://sankei.jp.msn.com/life/trend/090112/trd0901122133016-n3.htm

 年末から年始にかけて、多くのメディアに登場した「年越し派遣村」。どのような人たちが運営し、どんな成果があったのかを検証する。(敬称略)

■NPOや労組が基盤

 村の設立に携わったのはNPOや労働組合など約20団体。村長に選ばれたのがNPO法人「自立生活サポートセンターもやい」の事務局長の湯浅誠だ。
 昭和44年生まれの湯浅は日本政治思想史を専攻し、東京大学大学院まで進学した経歴を持つ。友人に誘われて野宿者の炊き出しにかかわったことから、貧困問題を意識。「もやい」を立ち上げ、困窮者の生活支援をしている。講演料や本の印税が主収入という。
 村の立ち上げについて湯浅は「同様の問題意識を持つ人たちと昨年暮れに、東京・飯田橋の居酒屋で飲んでいて、話が決まった」と証言する。湯浅の記憶だと、労働問題を専門にする労働弁護団弁護士、棗(なつめ)一郎らが提案。「人は集まらないかもしれないが、雇用や貧困問題を提起できればいいじゃないか」という思いだった。
 労働組合の連合、全労連、全労協も支援メンバーに加わった。運動の在り方をめぐって考えが異なる3つの労組が統一戦線を組むのは極めて異例。ほかに、非正規労働者の支援活動で実績のある「派遣ユニオン」「首都圏青年ユニオン」などが村政を支えた。
 湯浅は「炊き出しなど現場経験がある自分が村長の役回りになった」と話す。

■与野党を超えた人脈

 運動の一つの山が、2日夜に厚生労働省の講堂が宿泊場所として開放された場面だ。実行委員会の用意したテントの宿泊能力は150人分。村には300近い人が集まっていた。
 開放を決断したのは厚労副大臣の大村秀章(自民)。湯浅とは12月に放映された、労働問題をテーマにしたNHKの番組で名刺交換していた。2日昼過ぎに入った湯浅からの「テントに入りきらず病人も出ている。受け入れ施設を用意してほしい」という電話に、大村は「直感的にヤバイと思った。あの現場をみたら助けないわけにはいかないだろ」と振り返る。
 厚労省幹部も危機感を抱いていた。「厚労省の目の前の日比谷公園で、失業者が凍え死んだとなれば批判を浴びるどころか、内閣が吹っ飛ぶ」(幹部)。村を訪れた菅直人(民主)ら政治家らも与野党の枠を超えて、官房長官の河村建夫や厚労相の舛添要一に電話を入れ支援を求めた。
 午後5時過ぎ、「講堂に暖房を入れろ!」と大村が指示。9時過ぎには260人の村民が講堂に入った。

■成果と課題

 講堂開放では与野党を超えた協力態勢があったものの、派遣村に政治色やイデオロギーがちらついたのも事実。5日に日比谷公園から国会までを歩いたデモでは共産党と行動を同じくすることが多い、全労連、自治労連の街宣車が村民らを先導。「総選挙で政治を変えよう!」「消費税値上げ反対!」とシュプレヒコールを上げる光景もあった。
 実行委員会では、12日までの動きを振り返り、行政側が緊急の小口融資を柔軟に支給した点などを「各地で生活に困っている人にも応用できる貴重な経験だ」と肯定的にとらえる。
 一方で、行政側への今後の要望も多い。村民に行われた、生活保護の受給決定や行政の保護は「当たり前」というのが実行委のスタンスだ。実行委では、今回の派遣村のような一時避難所を行政もかかわって全国につくることや、大企業に再就職支援のための基金設置などを求めていくという。(赤堀正卓、神庭芳久、蕎麦谷里志)

覚書 090110

「米国発金融危機の経済・ビジネスへの影響」ジェトロ海外調査部『調査レポート』2008年12月。
・米国連邦準備銀行(FRB)は、2008年第1四半期末の米国の住宅ローン市場について、貸出残高が11兆2,265億ドル、うちローン担保(モーゲージ)証券は4兆4,475億ドル、試算担保証券(ABS)は2兆620億ドル、資産価値上昇分に貸し付けるホーム・エクイティは1兆1,231億ドルと公表している。ローン返済やクレジット・カードの支払いで事故を起こした人などを対象とするサブプライム・ローン問題が深刻化し、住宅ローン審査が厳しくなった第2四半期以降は貸付総額は減少に転じているが、依然、日本のGDPのほぼ倍に匹敵する金額が貸し出されている。
・サブプライム・ローンの証券化には、政府出資を意味するGovernment-Sponsored Enterprises(GSEs)のファニーメイ(FNMA:Federal National Mortgage Association連邦住宅抵当公庫)とフレディマック(FHLMC:Federal Home Loan Mortgage Corporation連邦住宅金融抵当金庫)が大きく関わった。両社は一定の審査を踏まえてローンを基に債券化された商品を保証する機関としての役割を持つ。サブプライム・ローンも8割がこの2社を通じて証券化されている。政府出資会社である両社が証券に保証を付けることで高利回りにも関わらず高格付けの金融商品として格付けされ、世界中に販売され、莫大な手数料収入を金融機関にもたらした。また両社は事業拡大のため、多額の無担保の機関債を発行、こちらも米国財務省並みの最高格付けを得て販売された。
・IMFは2008年10月7日発表の世界金融安定性報告で、世界の金融機関の損失はすでに1兆4,500億ドルに達したと発表しているが、11月末までの金融商品下落による損失累計は世界中で約40兆ドル、世界のGDPの8割に匹敵すると見積もられている。
・各国・地域中央銀行は、2007年半ば以降流動性の枯渇や信用収縮を未然に防止すべく、短期金融市場への資金供給や、不振金融機関への緊急融資などの措置を講じてきた。2008年9月のリーマン・ショックをきっかけに、インフレリスクの後退や実態経済面の悪化懸念を背景に、金融政策を発動するに至った。今回の局面では、主要中央銀行による協調行動(短期金融市場への流動性供給、強調利下げ)や通貨交換協定(スワップ協定)の締結や上限枠の拡大などの措置が比較的早い段階で講ぜられたのがひとつの特徴となっている。また、各地域内でも中央銀行間で連携する動きが見られた。G7は10月10日に「あらゆる利用可能な手段を活用する」との行動計画を発表し、これを受けて米国、欧州先進国による金融政策が相次いで打ち出された。続く11月15日にはG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会談)が開催され、「改革のための原則を実施するための行動計画」が公表された。国際機関では、IMFがアイスランド、ハンガリーなど5カ国への支援を決定したが、通常の上限枠を超えた融資が短期間で決定された。世界銀行も、各種プログラムを通じて、迅速な支援を行う枠組みを創設した。日本は外為特会よりIMFに対し、最大1,000億ドルの資金融通を行う準備がある旨表明したほか、世界銀行との間で途上国の銀行支援ファンドに20億ドル拠出する基本合意を締結した。実体経済への下押し圧力が顕在化する中で、今後の焦点は各国・地域政府による景気対策に移りつつある。具体的には金融機関支援に加え、雇用対策、中小企業や不動産・建設業、自動車セクターを中心とした企業支援、公共投資の拡大による実需刺激策が柱となっている。
・覚書注:各国での状況や政府などの対応策について概要が簡単にまとめられている。

桂畑誠治「海外経済 足並みが揃わない欧州の景気対策」『第一生命経済研レポート』2009年1月。
・EUは11月26日に総額2,000億ユーロの経済対策を発表した。ただし、EU予算から拠出されるのは約300億ユーロにとどまり、残りの約1,700億ユーロの実行は各国に委ねられている。
・EU発表の景気対策に対して、EU主要各国の反応はまちまちである。独財務相はEU提案の景気刺激策について、経済効果が不透明な大衆迎合政策と批判した。ドイツは、投資減税など構造改革を進める内容の総額約500億ユーロの大型景気刺激策を既に発表しており、これで十分とした。一方、フランスでは、大きな政府型の景気対策となる総額260億ユーロのインフラ整備、研究、地方自治体支援、自動車業界への支援策を表明した。
・付加価値税の引き下げは、消費者が税率の低い国に流れるため、EUはサービスや環境関連の製品などで横並びの引き下げを求めたが、決定権を持つのは加盟国だ。英国は異常な状況では異例の対策が必要とし2008年12月から暫定措置で付加価値税の引き下げに踏み切った。一方、独首相は独仏と英国とは状況が違うと付加価値税率の引き下げには否定的な認識を示した。

渡部亮「市場経済システムの歴史4」『第一生命経済研レポート』2009年1月。
・英国には、長子単独一括相続という独特の遺産相続制度があった。これは長男による単独相続(primogeniture)と一括相続(entail)が組み合わさって出来た制度である。特に土地持ち貴族(地主)の不動産は、その家の長男が単独で一括相続し、次男や三男は「家」を離れて、医者、聖職者、外交官などになった。こうした制度は、すでに13世紀の英国に存在し、人口増加の抑制も可能にしたとされる。
・大陸欧州やアジア諸国では、個人の所得権によりも家計構成員の共同所有権のほうが強く、英国とは様相を異にしていた。特に封建制が長い間続いた大陸欧州東部の国々では、個人の土地所有権の確立が遅れ、子供が増えると各人に自動的に耕作地が割り当てられた。子供は労働力でもあり年金にも相当したので出生率が高まり、食糧生産が人口に追いつかなくなった。その結果、英国の経済学者ロバート・マルサスが提起した過剰人口問題が、典型的な形で現れた。

野中郁次郎「私と経営学 09 ウィンストン・チャーチル 理想主義と現実主義を併せもつ賢慮型リーダー」『三菱総研倶楽部』2008年10月。
・prudence:賢慮

松山幸弘「地域医療提供体制改革(IHN化)の国際比較」『Economic Review』2009年1月。
・IHN(Integrated Healthcare Network:統合ヘルスケアネットワーク)の本質は、医療経営資源を共有することで重複投資を回避し、同時に医療の標準化を促すことである。
・覚書注:上記のようにIHNを規定しているが、本論ではまったく実証的に明らかにされていない。各国の医療制度と最近の制度改革について紹介しているだけである。これほど論題と叙述が乖離している論文も珍しい。

江藤宗彦「米国における電子個人医療情報の動向」『Economic Review』2009年1月。
・英国では、保健省が2002年にThe National Prgramme for ITを策定し、総額120億ポンドを投じ、イングランド全住民を対象としたNHS Care Records Service(NCRS)の提供を2015年までに実施することを目指している。NCRSは、国家レベルでのHER(Electronic Health Record:複数の医療機関間で利用される診療情報記録)であり、詳細な電子医療情報をNHS全体で共有することを目指している。また、NCRSでは、個人がインターネット上のHealth Spaceより、個人の健康要約記録を閲覧することができ、広義の意味でePHR(Electronic Personal Health Record:個人が管理する電子健康医療情報記録)と捉えることができる。現在は、NHRSを3地区にて導入する実験が行われているが、ソフトウェアの導入に時間を要し、二次医療まで完全電子化の期限が2015年に延期された。

吉田倫子「英国における「公的サービス2.0」の発想を地域SNSづくりの参考に」『Economic Review』2009年1月。
・「They Work For You」は、英国国民のオンライン・デモクラシー・プロジェクトとして、mySocietyという公認慈善事業が運営しているサイトであり、国民の政治への直接参加を促すことを目的としている。本サービスでは、自分の住んでいる地域の郵便番号を入力し、代表者である国会議員の発言等を定期的にチェックしたり、ハンサードと呼ばれる英国議会議事録を閲覧したりすることができる。また、発言ごとにコメントを書くことができ、議員の発言に対して国民同士でディスカッションを行うことができる。この団体は、他にPublicWhip.org.uk、National Rail Timetable等、同様の公的2.0サービスを提供しており、先行して1998年から提供している。「Up My Street」からサービスのヒントを得たようである。
・「Up My Street」は、引越し等で別な地域に転居する際、人々は転居先の情報収集を行うが、その際の情報収集コスト(時間・お金)を抑えることを目的として作られたサービスである。検索したい地域の郵便番号か地域名を入力すれば、その地域住民の大まかな所得層、学歴、子供を持つ家族の多さ、住宅物件情報などの地域特色や、「売ります・買います」情報などを知ることができる。
・「Hear From Your MP」は、英国下院議員からコメントをもらったり、英国下院議員や地域の人々と、自分の地域における問題についてディスカッションをしたりするサイトである。事前に登録する必要がある。
・「Fix My Street」は、地域内で壊れている箇所を修復して欲しいときにレポーティングするサイトである。周辺地域で起こっている問題、解決された問題が一覧になっており、住民同士で共有することができる。全体で何件の問題があり、何件解決されているのか、どのような問題が放置されているのかが解る。
・「Patient Opinion」は、患者、患者の家族、友人、関係者らがブログ形式で病気などについてのオピニオンを書くサイトである。サービスはNPOによって運営されている。患者がヘルスケア関連の経験を書き、共有することで、NHSのサービス向上につなげようとするのが狙いである。

三菱UFJ信託銀行「Monthly Economics」2009年1月号。
・図表のみ。

所道彦「イギリスのコミュニティケア政策と高齢者住宅」『海外社会保障研究』No.164、2008年9月。
・イギリスの高齢者の住まいをめぐる問題は、高齢者ケアをめぐる政策と密接に関係している。住宅でのケアを整備し、地域での生活を維持できるよう支援する政策が展開される一方で、そのサービスの費用負担の問題から、住宅を売却し、住み慣れた地域を離れざるを得ない高齢者も存在する。
・覚書注:ごちゃごちゃしていてわかりにくい。書いた本人も理解できていない制度や概念を、他の論文からの切り貼りで説明している。そのため統一された叙述ではなく、各部分で明らかにしたい論点が整理されてもいない。不要なことをだらだらと書いている結果、理解しにくく読みにくい論文になっている。
・覚書注:本論文が主題とする枠組みは以下である。コミュニティケア改革により在宅ケアを中心にした制度になっている。その一方で、ケアの場となる住宅はあるのかという問題がある。つまり、ケアの費用負担が重いため資産である住宅を売却して資金としなければならない、また、そもそも高齢者向けの住宅が不足している、という両側面の問題である。以上のような議論は非常に面白いが、残念ながら、著者にはそれを丁寧に論証していく力量がなかったと思われる。

『世界の日本人ジョーク集』

 今日は早坂『世界の日本人ジョーク集』(2006年、中公新書ラクレ202)を読みました。

 ジョークにはその社会の一般的認識が反映されています。みんなが思っていることや知っていることを少しひねって大げさに言うことがジョークだからです。

 本書では世界で言われているジョークのうち、日本人が登場するジョークをまとめています。そうしたジョークを通じて日本人に対する世界の一般的認識を読み取ろうという試みです。

 ジョークに垣間見える日本人像は、ハイテク、お金持ち、勤勉、集団行動、英語下手、時間に正確、貞淑な日本人女性、無宗教、対米従属、アニメ、などです。

 例えば、本書の冒頭では次のようなジョークが紹介されています。

 あるアメリカの自動車会社が、ロシアと日本の部品工場に以下のような仕事の発注をした。
「不良品は1000個につき1個とすること」
 数日後、ロシアの工場からメールが届いた。
「不良品を1000個に1個というのは、大変困難な条件です。期日にどうしても間に合いません。納期の延長をお願いします」
 数日後、日本の工場からもメールが届いた。それにはこう書かれていた。
「納期に向けて作業は順調に進んでおります。ただ、不良品の設計図が届いておりません。早急に送付してください」

 ロシアのテキトーさと対比させながら、日本の生産技術が非常に高いことをジョークにしています。ジョークになるくらい日本の技術力は世界で評価されているのです。

 世界経済における日本の役割がわかるジョークも紹介されています。

 新製品が世に流通するまでには、全部で四つの段階がある。
 まず、アメリカの企業が新製品を開発をする。
 次にロシアが、「自分たちは同じ物を、もうすでに30年前に考え出していた」と主張する。
 そして、日本人がアメリカ製以上のクオリティのものを造り、輸出し始める。
 最後に、中国人が日本製のものに似せた偽物を造る。

 ここでも日本の高い技術力が笑いの対象になっています。また、日本はアメリカ製品の模倣製品を作って輸出している物真似国家だ、という皮肉も含まれています。

 このジョークには登場国がもっと多い型もあります。本書では紹介されていませんが、以下のようなジョークです。

 ドイツが発明した製品を、フランスが権威付けし、イタリアがデザインを考え、イギリスが投資し、アメリカが大量生産し、日本が改良と小型に成功する。その後、中国が偽物を作り、韓国が起源を主張する。

 先のジョークでのロシアの位置に韓国がいます。こちらのほうが現代的ですが、昨今では大量生産はアメリカではなく中国の役割ですので、やや古い認識と言えるでしょう。

 本書で紹介されているジョークに反映されている日本人像が、世界の一般認識であるのかどうかについては定かではありません。しかし、ジョークから世界が日本人をどのように見ているかを読み取ろうとする本書の試みは面白いと思いました。

初詣 第1回目

 今日は初詣の第1回目です。

 近所の神社に初詣に行ってきました。年始はばたばたしていたので、今頃になってやっとです。しかも、時刻は16時を過ぎていました。日付も時間も両方の意味で、遅い初詣になりました。

 今年も精進することを誓って参拝した後、おみくじを引いてきました。小吉でした。顕示欲を抑えて謙虚になれ、との小言をいただきました。まったくその通りです。人の忠告を素直に受け取れない私です。

 と、こうして淡々と書いているのは、遅くにいったため、巫女さんがいなかったからです。すでに撤収済みでした。例年楽しみにしている、巫女さんが給仕してくれる甘酒、通称「巫女汁」も飲めませんでした。

 後日もう一度、行きます。

覚書 090104

寺島実郎「時代の象徴としてのドバイ 巨大開発の光と影」三井物産戦略研究所『脳力のレッスン』2008年11月号。
・ドバイはアラブ首長国連邦(UAE)を構成する7つの首長国の一つである。1833年以来、マクトウム家という首長一族がこの地を治めてきた。実はドバイには〃UAEのアブダビと比べ石油はあまり出ず、1966年に油田が発見され、1980年代までドバイを潤した時代もあったが、現在の繁栄基盤を築いた建国の父シェイク・ラシードは「石油に依存しない国造り」を考えたのである。
・ドバイは1853年に他の首長国とともに英国の保護領となった。大英帝国によってインド支配の中継地としてドバイは重要だった。また、中東に大勢力を誇っていたオスマントルコやペルシャ、そしてこの地域への影響力の拡大を狙うロシアやフランスを牽制するためにも「首長」という存在を利用する戦略が採られ、それが今日に至るまでこの地に埋め込まれたのである。
・1967年に英国はスエズ以東からの撤退を発表、1971年にUAEは独立を迎える。1967年に「ポート・ラーシッド計画」という港湾開発に着手したシェイク・ラシッドは、1985年にはジュベル・アリ・フリーゾーンにまで構想を発展させ、ドバイを中東の一大物流拠点とした。2007年の世界港湾ランクにおいてはついに7位にまで上がってきた。ドバイは「中東のシンガポール」ともいわれるが、国土面積も狭く資源に乏しく、人口も工業生産力も小さな国が世界に冠たる経済国家になりうる事例として、両国には共通性がある。物流拠点というだけでなく、ITの時代に対してメディア・シティ、インターネット・シティを建設し、医療特区としてのヘルスケア・シティ、そして国際金融センターを育成し、そこに世界からのビジネスや観光、コンベンション(会議)を目的とする訪問客をひきつける豪華ホテルや巨大ショッピングモール、エンターテインメントパークを配置するという総合戦略が展開され、付加価値を増幅させたのである。

「カーボン・オフセットとは? 低炭素社会における新しいビヘイビア」中央三井トラスト・ホールディングス『調査レポート』No.64、2008年冬。
・カーボン・オフセットとは、私たちの日常生活や経済活動において、避けることが出来ないCO2等の温室効果ガス排出について、まず、できるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出されてしまう温室効果ガス分について、その排出量を見積もり、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等によって、排出されてしまう温室効果ガスを埋め合わせするという考え方です。排出枠(クレジットと呼ばれます)そのものを購入する方法もありますし、あるいは、その利用により排出される予想CO2量をオフセットすることを事前に約束した商品・サービスを購入して、自己の排出量を相殺するという方法もあります。これが、昨今、ニュースなどでも取り上げられる「カーボン・オフセット付き○○」という商品群になります。
・覚書注:カーボン・オフセットとして投資した資金が具体的にどのように活用されているかが明示されている必要があるだろう。そうでなければ、エコだとお金を投入している、単なる自己満足となってしまう。街角募金との違いがわからない。

生田孝史「低酸素社会に向けた民生部門対策の設計」富士通総研経済研究所『研究レポート』No.333、2008年12月。
・海外では、省エネルギーの推進を目的として、「スマートメーター」と呼ばれる計測器の導入計画が進行している。特に家庭部門を対象として広範な普及を図るために、国や地域レベルでの全戸配布を目指した取り組みが行われている。例えば、英国では、2007年のエネルギー白書において10年間で全世帯4,500万台のスマートメーター導入を明記し、導入に向けた方策を検討している。
・スマートメーターは、機械式の計測器と異なって、データ通信機能を持つ計測器である。電力量を計測するタイプが多いが、電力・ガス両用タイプもある。リアルタイムのエネルギー消費量把握による消費者の省エネ促進効果だけでなく、エネルギー供給事業者にとっても負担平準化や自動検針による業務効率化が図れるなどのメリットがある。
・英国では、2008年度末までに、配電事業者に対して家庭へのスマートメーター導入を義務付けるかどうかの結論を政府が行うことになっている。導入義務付けが決定すれば、2019年までに全世帯4,500万台の導入計画が実施されることになる。設置費用は配電事業者が負担することになるが、負担分はスマートメーター導入によるコスト削減で回収できると考えられており、政府から長期融資(15年程度)も受けられる予定である。また、併せて、時間帯別料金制度についても検討されている。
・スマートメーター導入に関して英国で行われている議論は、電力市場自由化の度合いと大きく関係している。日本と異なり、英国では電力市場が完全自由化しているため、一般家庭で自由に配電(小売)事業者を選択することができる。このため、配電事業者は、様々なサービスメニューを提案して顧客獲得競争を行っているが、一方で、顧客の流出入が煩雑になることにもつながっている。スマートメーターの導入は、本来、配電事業者にとって、自動検針によるコスト削減に加えて、リアルタイムの需要把握に基づく最適な負担制御や配電自動化、停電復旧管理、送電損失低減など、様々なコスト削減効果が期待される。しかし、顧客が流動している英国では、配電事業者は、最適な負担管理が困難なためメリットが少ないとして、スマートメーター導入にあたって「地域フランチャイズモデル」の採用を提案している。このモデルは、英国内をいくつかの地域に分割して、地域ごとにメーター設置を行う配電事業者を入札で選ぶという方式であり、計画に則った確実なメーター導入を保証する一方で、地域ごとの配電事業者によるコントロール強化につながり電力市場完全自由化から後退するとして、論点になっている。

小笠原浩一「田口典男著『イギリス労使関係のパラダイム転換と労働政策』と上田眞士著『現代イギリス労使関係の変容と展望 個別管理の発展と労働組合』を読む」『日本労働研究雑誌』No.576、2008年7月。
・1990年代の労働組合会議(TUC)は、「個別主義的労働組合へのパラダイム転換に対応するために」「表面的な対応はおこなったが」「団体主義的労使関係に基づく基本方針を変えたわけではな」かった。「経営者との新しい関係」を築きつつ、「労働者との新しい関係」を構築しなければならなかったにも関わらず、この2つの課題を達成することができず、労働組合は、「その存在を否定される危機に直面した」。
・1980年代後半から全国職業組合資格制度(NVQ)やその一部である現代的徒弟訓練制度(MA)が展開し、仕事遂行能力を形成する場として企業の重要性が強調されるようになった。そうしたイギリス労使関係の変化を今後の労働組合運動の可能性という視点から敷衍して、「サプライサイドの平等主義」の担い手としての労働組合の可能性を指摘している。
・従業員との公開・非公開の情報共有型コミュニケーションの増加や各種特別休暇制度の拡充、あるいは、従業員との信頼感醸成の取り組みなどは活発になっている。これらの多くは、TUCが中心になって「より公正なイギリスを目指す仕事空間づくり」運動として労働組合側が求めてきているものであり、「雇用における権利キャンペーン」において職場における権利と均等の保障のために直接的な立法規制強化と結びつけて主張される領域が多く含まれている。
・最低賃金制度についても、雇用硬直化効果や能力開発機会への負の影響といった当初の経営側からの懸念が払拭されつつあるのに伴って、労働市場全体における熟練不足解消策との連携や企業内における訓練投資促進への配慮といった、いわゆる適正水準問題に焦点が移ってきており、ここでも、企業内・事業所内における「個別管理」と社会的妥当性との政策的調整が問題になっている。つまり、イギリス労使関係は雇用管理における効率的公正性と社会的な意味での市民主義的公正性の調整というルール問題をこれまでとまったく変わることなく内包させたまま推移している。
・覚書注:イギリスの労働組合については、サッチャー政権時代に潰されたとの被害者的位置付けでの議論が支配的であるが、これらの著書では、労使関係の変化に対応できなかった労働組合側の限界が指摘されており、新鮮であった。労働組合が弱体化することで、労働組合を通さず、労働者と雇用主が直接交渉する、あるいは、職場での関係のなかで対応する取り組みが進んでいる実情が認識できた。労働組合はこの文脈では適正な労使関係を阻害している可能性がある。また、サッチャー政権以降、イギリスの労使関係のあり方が日本のように企業・事業所単位で編成されているため、労働組合の目指す方向として日本のあり方が参考にされている点が紹介されており、この叙述も新鮮であった。日本のあり方は海外と比べてダメだと議論されることが多く、また、サッチャー政権の取り組みもイギリスを破壊したと批判されることとが多いが、両著のような冷静な研究があることに安心した。

丸尾美奈子「医療特区再考について 社会の多様化を視野に入れた医師偏在解決の処方箋」『ニッセイ基礎研 REPORT』2009年1月。
・わが国では患者の診断や治療及びそれに関連する一連の検査等の診療を行なうために、日本の医師(歯科医師)免許取得が必要であり、外国の医師(歯科医師)免許では診療を行なえない。例外的に外国人医師が国内で医療を行なえるケースとして、「医師免許二国間協定制度」並びに「臨床修練制度」が法律で認められている。「医師免許二国間協定制度」をわが国は英・仏・シンガポール(・米国)と締結しているが、許可枠は数人単位に過ぎず、しかも外国人の診療しか認めていないケースもあるなど、実効性に欠けた制度になっている。また、「臨床修練制度」とは、一定の制約の下で診療を行なう研修であるが、大都市に位置する指定病院に限られているほか、日本の指導医が外国人医師を監督する必要があり、報酬(診療対価としての収入)も認められていないなど、医師不足解消の受け皿には程遠い内容となっている。2008年にインドネシア人の看護師・介護福祉士の受け入れが始まり、フィリピンとのEPA(経済連携協定)の批准も進んでいるが、看護師・介護福祉士の国家資格取得を前提としており(各々3年以内、4年以内の取得が必要)、取得できない場合は帰国措置が予定されている等、ここでも「わが国の国家資格取得」第一の方針が徹底されている。
・覚書注:日本で外国人医師による診察を望む意見があるのだろうか。先進国の実例があるからといって、誰も望まない制度を検討することに意味はないだろう。空虚な議論である。

「2009年海外経済の展望」三菱東京UFJ銀行『経済レビュー』No.2008-16、2008年12月26日。
・英国は住宅バブル崩壊、金融危機の深刻化の中で、先進国のなかでも際立って厳しい景気後退が予想される。2010年まで総額200億ポンドの経済対策が発表された。付加価値税の一時的引き下げ、子供手当や年金支給額の増額などが中心だが、一方で将来の負担増も示されている。このため重い債務負担に苦しむ英国の家計が、消費を増やすとは考え難く、景気押し上げ効果は限定的であろう。2009年前半にかけ景気後退が深刻化しよう。実質GDP成長率は2008年0.8%から2009年マイナス1.8%と先進国のなかでももっとも厳しい景気後退となろう。

あけましておめでとうございます!

 今年もよろしくお願いします。

自己紹介

benyamin ♂

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