覚書 090110

「米国発金融危機の経済・ビジネスへの影響」ジェトロ海外調査部『調査レポート』2008年12月。
・米国連邦準備銀行(FRB)は、2008年第1四半期末の米国の住宅ローン市場について、貸出残高が11兆2,265億ドル、うちローン担保(モーゲージ)証券は4兆4,475億ドル、試算担保証券(ABS)は2兆620億ドル、資産価値上昇分に貸し付けるホーム・エクイティは1兆1,231億ドルと公表している。ローン返済やクレジット・カードの支払いで事故を起こした人などを対象とするサブプライム・ローン問題が深刻化し、住宅ローン審査が厳しくなった第2四半期以降は貸付総額は減少に転じているが、依然、日本のGDPのほぼ倍に匹敵する金額が貸し出されている。
・サブプライム・ローンの証券化には、政府出資を意味するGovernment-Sponsored Enterprises(GSEs)のファニーメイ(FNMA:Federal National Mortgage Association連邦住宅抵当公庫)とフレディマック(FHLMC:Federal Home Loan Mortgage Corporation連邦住宅金融抵当金庫)が大きく関わった。両社は一定の審査を踏まえてローンを基に債券化された商品を保証する機関としての役割を持つ。サブプライム・ローンも8割がこの2社を通じて証券化されている。政府出資会社である両社が証券に保証を付けることで高利回りにも関わらず高格付けの金融商品として格付けされ、世界中に販売され、莫大な手数料収入を金融機関にもたらした。また両社は事業拡大のため、多額の無担保の機関債を発行、こちらも米国財務省並みの最高格付けを得て販売された。
・IMFは2008年10月7日発表の世界金融安定性報告で、世界の金融機関の損失はすでに1兆4,500億ドルに達したと発表しているが、11月末までの金融商品下落による損失累計は世界中で約40兆ドル、世界のGDPの8割に匹敵すると見積もられている。
・各国・地域中央銀行は、2007年半ば以降流動性の枯渇や信用収縮を未然に防止すべく、短期金融市場への資金供給や、不振金融機関への緊急融資などの措置を講じてきた。2008年9月のリーマン・ショックをきっかけに、インフレリスクの後退や実態経済面の悪化懸念を背景に、金融政策を発動するに至った。今回の局面では、主要中央銀行による協調行動(短期金融市場への流動性供給、強調利下げ)や通貨交換協定(スワップ協定)の締結や上限枠の拡大などの措置が比較的早い段階で講ぜられたのがひとつの特徴となっている。また、各地域内でも中央銀行間で連携する動きが見られた。G7は10月10日に「あらゆる利用可能な手段を活用する」との行動計画を発表し、これを受けて米国、欧州先進国による金融政策が相次いで打ち出された。続く11月15日にはG20サミット(金融・世界経済に関する首脳会談)が開催され、「改革のための原則を実施するための行動計画」が公表された。国際機関では、IMFがアイスランド、ハンガリーなど5カ国への支援を決定したが、通常の上限枠を超えた融資が短期間で決定された。世界銀行も、各種プログラムを通じて、迅速な支援を行う枠組みを創設した。日本は外為特会よりIMFに対し、最大1,000億ドルの資金融通を行う準備がある旨表明したほか、世界銀行との間で途上国の銀行支援ファンドに20億ドル拠出する基本合意を締結した。実体経済への下押し圧力が顕在化する中で、今後の焦点は各国・地域政府による景気対策に移りつつある。具体的には金融機関支援に加え、雇用対策、中小企業や不動産・建設業、自動車セクターを中心とした企業支援、公共投資の拡大による実需刺激策が柱となっている。
・覚書注:各国での状況や政府などの対応策について概要が簡単にまとめられている。

桂畑誠治「海外経済 足並みが揃わない欧州の景気対策」『第一生命経済研レポート』2009年1月。
・EUは11月26日に総額2,000億ユーロの経済対策を発表した。ただし、EU予算から拠出されるのは約300億ユーロにとどまり、残りの約1,700億ユーロの実行は各国に委ねられている。
・EU発表の景気対策に対して、EU主要各国の反応はまちまちである。独財務相はEU提案の景気刺激策について、経済効果が不透明な大衆迎合政策と批判した。ドイツは、投資減税など構造改革を進める内容の総額約500億ユーロの大型景気刺激策を既に発表しており、これで十分とした。一方、フランスでは、大きな政府型の景気対策となる総額260億ユーロのインフラ整備、研究、地方自治体支援、自動車業界への支援策を表明した。
・付加価値税の引き下げは、消費者が税率の低い国に流れるため、EUはサービスや環境関連の製品などで横並びの引き下げを求めたが、決定権を持つのは加盟国だ。英国は異常な状況では異例の対策が必要とし2008年12月から暫定措置で付加価値税の引き下げに踏み切った。一方、独首相は独仏と英国とは状況が違うと付加価値税率の引き下げには否定的な認識を示した。

渡部亮「市場経済システムの歴史4」『第一生命経済研レポート』2009年1月。
・英国には、長子単独一括相続という独特の遺産相続制度があった。これは長男による単独相続(primogeniture)と一括相続(entail)が組み合わさって出来た制度である。特に土地持ち貴族(地主)の不動産は、その家の長男が単独で一括相続し、次男や三男は「家」を離れて、医者、聖職者、外交官などになった。こうした制度は、すでに13世紀の英国に存在し、人口増加の抑制も可能にしたとされる。
・大陸欧州やアジア諸国では、個人の所得権によりも家計構成員の共同所有権のほうが強く、英国とは様相を異にしていた。特に封建制が長い間続いた大陸欧州東部の国々では、個人の土地所有権の確立が遅れ、子供が増えると各人に自動的に耕作地が割り当てられた。子供は労働力でもあり年金にも相当したので出生率が高まり、食糧生産が人口に追いつかなくなった。その結果、英国の経済学者ロバート・マルサスが提起した過剰人口問題が、典型的な形で現れた。

野中郁次郎「私と経営学 09 ウィンストン・チャーチル 理想主義と現実主義を併せもつ賢慮型リーダー」『三菱総研倶楽部』2008年10月。
・prudence:賢慮

松山幸弘「地域医療提供体制改革(IHN化)の国際比較」『Economic Review』2009年1月。
・IHN(Integrated Healthcare Network:統合ヘルスケアネットワーク)の本質は、医療経営資源を共有することで重複投資を回避し、同時に医療の標準化を促すことである。
・覚書注:上記のようにIHNを規定しているが、本論ではまったく実証的に明らかにされていない。各国の医療制度と最近の制度改革について紹介しているだけである。これほど論題と叙述が乖離している論文も珍しい。

江藤宗彦「米国における電子個人医療情報の動向」『Economic Review』2009年1月。
・英国では、保健省が2002年にThe National Prgramme for ITを策定し、総額120億ポンドを投じ、イングランド全住民を対象としたNHS Care Records Service(NCRS)の提供を2015年までに実施することを目指している。NCRSは、国家レベルでのHER(Electronic Health Record:複数の医療機関間で利用される診療情報記録)であり、詳細な電子医療情報をNHS全体で共有することを目指している。また、NCRSでは、個人がインターネット上のHealth Spaceより、個人の健康要約記録を閲覧することができ、広義の意味でePHR(Electronic Personal Health Record:個人が管理する電子健康医療情報記録)と捉えることができる。現在は、NHRSを3地区にて導入する実験が行われているが、ソフトウェアの導入に時間を要し、二次医療まで完全電子化の期限が2015年に延期された。

吉田倫子「英国における「公的サービス2.0」の発想を地域SNSづくりの参考に」『Economic Review』2009年1月。
・「They Work For You」は、英国国民のオンライン・デモクラシー・プロジェクトとして、mySocietyという公認慈善事業が運営しているサイトであり、国民の政治への直接参加を促すことを目的としている。本サービスでは、自分の住んでいる地域の郵便番号を入力し、代表者である国会議員の発言等を定期的にチェックしたり、ハンサードと呼ばれる英国議会議事録を閲覧したりすることができる。また、発言ごとにコメントを書くことができ、議員の発言に対して国民同士でディスカッションを行うことができる。この団体は、他にPublicWhip.org.uk、National Rail Timetable等、同様の公的2.0サービスを提供しており、先行して1998年から提供している。「Up My Street」からサービスのヒントを得たようである。
・「Up My Street」は、引越し等で別な地域に転居する際、人々は転居先の情報収集を行うが、その際の情報収集コスト(時間・お金)を抑えることを目的として作られたサービスである。検索したい地域の郵便番号か地域名を入力すれば、その地域住民の大まかな所得層、学歴、子供を持つ家族の多さ、住宅物件情報などの地域特色や、「売ります・買います」情報などを知ることができる。
・「Hear From Your MP」は、英国下院議員からコメントをもらったり、英国下院議員や地域の人々と、自分の地域における問題についてディスカッションをしたりするサイトである。事前に登録する必要がある。
・「Fix My Street」は、地域内で壊れている箇所を修復して欲しいときにレポーティングするサイトである。周辺地域で起こっている問題、解決された問題が一覧になっており、住民同士で共有することができる。全体で何件の問題があり、何件解決されているのか、どのような問題が放置されているのかが解る。
・「Patient Opinion」は、患者、患者の家族、友人、関係者らがブログ形式で病気などについてのオピニオンを書くサイトである。サービスはNPOによって運営されている。患者がヘルスケア関連の経験を書き、共有することで、NHSのサービス向上につなげようとするのが狙いである。

三菱UFJ信託銀行「Monthly Economics」2009年1月号。
・図表のみ。

所道彦「イギリスのコミュニティケア政策と高齢者住宅」『海外社会保障研究』No.164、2008年9月。
・イギリスの高齢者の住まいをめぐる問題は、高齢者ケアをめぐる政策と密接に関係している。住宅でのケアを整備し、地域での生活を維持できるよう支援する政策が展開される一方で、そのサービスの費用負担の問題から、住宅を売却し、住み慣れた地域を離れざるを得ない高齢者も存在する。
・覚書注:ごちゃごちゃしていてわかりにくい。書いた本人も理解できていない制度や概念を、他の論文からの切り貼りで説明している。そのため統一された叙述ではなく、各部分で明らかにしたい論点が整理されてもいない。不要なことをだらだらと書いている結果、理解しにくく読みにくい論文になっている。
・覚書注:本論文が主題とする枠組みは以下である。コミュニティケア改革により在宅ケアを中心にした制度になっている。その一方で、ケアの場となる住宅はあるのかという問題がある。つまり、ケアの費用負担が重いため資産である住宅を売却して資金としなければならない、また、そもそも高齢者向けの住宅が不足している、という両側面の問題である。以上のような議論は非常に面白いが、残念ながら、著者にはそれを丁寧に論証していく力量がなかったと思われる。

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benyamin ♂

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