『京都花街の経営学』

 今日は西尾久美子『京都花街の経営学』(2007年、東洋経済新報社)を読みました。

 京都花街と言えば、一見さんお断りの閉鎖的な空間であり、何も縁がない人にはうかがい知れない世界です。本書はその花街の実態に経営的側面から迫っています。

 とはいえ、本書はその試みに成功しているとは言えません。本書の大半は、花街に関する一般的な知識で構成されています。肝心の経営的側面に関する叙述はほんのわずかです。

 最後のほうで、申し訳程度に経営学的考察が行なわれていますが、項目が羅列されているだけです。本来であれば、これを冒頭で示して、本論で深く分析していくべきでしょう。

 本書は著者が神戸大学で課程博士を取得した博士論文が下敷きになっています。一般向けに編集されているものの、本書からは元の博士論文の水準も容易に推測できます。

 経営学の学術的性格を如実に体現する本書ですが、京都花街に関する一般的な知識を得ることはできます。読み物として見た場合は面白く読みやすいと思います。

 例えば、京都には5つの花街がありますが、それぞれの芸妓さん舞妓さんの人数とその推移が本書に掲載されています。以下に示しておきましょう。

人数:芸妓/舞妓(2007年2月28日現在)
 祇園甲部:86/28
  宮川町:40/27
  先斗町:41/10
  上七軒:18/7
  祇園東:11/5
   合計:196/77

推移:1955/1965/1975/1985/1995/2005年
 芸妓:674/548/372/260/199/202
 舞妓:なし/76/28/58/78/71

 舞妓さんの数はほぼ一定と言えますが、芸妓さんの数は低下傾向にあります。独立した芸妓さんを支援する人が減少していることを示唆していますが、もちろん本書では分析されていません。

 もっとも、京都花街の性質を考えると、お客さんの情報は一切明かさないはずですから、何人くらいのお客さんがいるのかどうかも不明だと思います。

 したがって、芸妓さんの減少についても、日本経済の状況が良くないといった程度で分析するしかありません。とどのつまり、言葉を濁して叙述するしかないのです。

 本書で科学的な検証に耐えうる考察がなされていないことにはこうした理由があるのでしょう。基本的な情報が得られない世界を研究対象にしたことが根本的におかしいのです。

 それでも課程博士を取得できる神戸大学は素晴らしい大学だと思いました。

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benyamin ♂

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