2009年2月アーカイブ

覚書 090228

「Morgan Stanley Strategy Forum」『Morgan Stanley Research』2009年2月18日。
・金融安定化を目指した取り組みが続く中、英国について取り上げたい。弊社の英国株式ストラテジストのGraham Seckerおよび欧州金利ストラテジストであるLaurence Mutkinは、市場参加者が考えている以上に英国の財政状況について好意的な見方をしている。
・Graham Secker:英国の財政状況は悪いが、絶望的なわけではない。公的部門における純債務残高の対GDP比率(金融介入については除く)は、政府の見通しによれば、向こう数年の間に少なくとも60%へ上昇すると予想されている。我々の見るところ、同比率は70-90%のレンジへ上昇する可能性が高い。これは、確かに良い数字とは言えない。しかしながら、世界的に見た場合、英国の財政が飛びぬけて異常に悪い状態にあるわけではない。経済協力開発機構(OECD)のデータによれば、英国の政府債務の対GDP比率は現在、OECD平均を下回っており、G7諸国の中ではカナダに次いで2番目に低い。
・Laurence Mutkin:先週英国において発表された新たなニュースの中で主たるものは、イングランド銀行の四半期インフレ報告と中銀総裁の記者会見である。インフレ報告は英国経済やインフレの先行きに対して驚くほど悲観的で、極端にハト派的な内容だった。イングランド銀行は、インフレ率(CPI上昇率)を中期的に2%に維持する責務を負っている。しかしながら、先週発表されたインフレ報告では、向こう2年間インフレ率は目標の2%を大きく(少なくとも100bp)下回る可能性があるとの見通しが示されている。換言すれば、伝統的な金融政策手段の効果は薄れており、イングランド銀行もその点を認識している。そうした中銀の認識は、記者会見における量的緩和を示唆する総裁の発言に繋がった。実際、マービン・キング総裁は、11日の記者会見において、マネーを十分に供給しインフレ率を中期的に目標水準に押し上げるために、まもなくギルト債の購入を開始する用意がある、と示唆した。これは、エージェンシー債/米国債購入を正当化する理由としてFedが挙げた点(つまり、市場金利、特にモーゲージ金利の押し下げが狙い)とは非常に異なる。イングランド銀行の場合、目的は、ギルト債利回りそのものを操作することではなく、民間部門へキャッシュを投入する手段としてギルト債購入を利用するところにある。

前田宏子「第14回 イギリス政府の対中戦略ペーパー」PHP研究所『PHPリサーチニュース』Vol.7、NO.149、2009年2月6日。
・政府レベルでは、各国は中国との経済関係を重視し、関係強化に力を入れている。ケンブリッジ大学の講演のあと、イギリス政府は直ちに中国政府に謝罪し、靴を投げた人物を法に則って処罰する旨を通知した。イギリス政府は温首相の訪英に先がけて、初めて対中戦略ペーパー(China Strategy Paper)を発表し、中国重視の姿勢を示していたところであった。『イギリスと中国:関与の枠組み』と名づけられたこのペーパーには、今後4年間のイギリスの対中政策に関する指針が示されている。想定している期間・内容を見ると、戦略ペーパーというよりは、ブラウン政権の対中政策方針といったほうが相応しい気がするが、ともかく初めての対中戦略ペーパーである。内容は、イギリス外交にとって、中国との関係が今後数年の最優先事項の一つであり、中英の間に意見の相違はあっても、対立ではなく協力を基調として対話を進めていくと述べている。「中国の経済発展からイギリスが利益を獲得するために」、「中国が責任ある大国(responsible global player)となるのを促進するために」、「中国の持続可能な発展、近代化、国内改革を促すために」という三つの柱から、それぞれ政策が掲げられているが、実際にイギリス政府がもっとも重視しているのは、一つ目の経済的利益の獲得なのは明らかである。全体の考え方は、アメリカの「責任ある大国(responsible stakeholder)」論と共通しており、日本の立場から見ても、この戦略ペーパーの方針や政策に反対すべき点はない。ただ、中国の将来に対する極めて楽観的な態度と、中国の国内問題への関心の低さに(人権問題については穏当な表現ながら改善の要求がされているが)、ヨーロッパから見る中国と、我々が見る中国は異なるのだと再認識させられる。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部「米国・欧州主要国の景気概況 2009年1月号」『調査レポート』08/61、2009年2月20日。
・英国の景気は低迷している。2008年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率マイナス5.9%と、1980年以来28年ぶりの大幅なマイナス成長となった。企業部門では、12月の製造業生産は前年比10.2%減と9ヶ月連続で減少した。家計部門では、12月の小売売上が前年比3.9%増と持ち直したが、1984年の統計開始以来最大の下落幅となった住宅価格下落の影響により、消費の基調は弱い。物価動向をみると、12月の消費者物価上昇率は前年比3.1%と3ヶ月連続で低下した。BOE(イングランド銀行)は2月4日、5日の金融政策委員会(MPC)で政策金利である短期レポ金利を0.5%引き下げ1%とした。利下げは5ヶ月連続となり、史上最低の金利水準を更新した。景気低迷は一段と深刻化し、追加利下げの実施が確実視されるなか、量的緩和政策への移行が当面の金融政策の焦点となっている。

「ユーロ圏は厳しい景気後退局面が継続、英国も急速に景気が悪化、2009年はマイナス成長」三菱東京UFJ銀行『欧州経済の見通し』2009年2月23日。
・英国経済は急速に悪化している。2008年10-12月期の実質GDP成長率は前年比マイナス1.8%と前年水準を下回った。前期比ではマイナス1.5%と7-9月期のマイナス0.6%に続いて2期連続でのマイナス成長である。需要項目別の内訳をみると、設備投資などを含む総固定資本形成が引き続き落ち込んだほか、最大の需要項目である個人消費も前年水準を下回ったとみられる。多くの経済指標が悪化を示しているが、とりわけ失業率が急上昇している点が懸念される。失業率は1月に3.8%まで上昇した。こうした雇用環境の悪化は、消費者マインドを冷やし、個人消費を低迷させている。実際に消費者信頼感指数は1月に大きく低下した。内訳をみると、購買計画など全ての構成項目が悪化しており、消費の源泉である雇用所得環境の悪化が消費者マインドに影響を与えている。また、こうした雇用不安は、住宅ローンにも影響している。住宅ローンの延滞率は徐々に上昇しており、2008年9月末には1.44%と2000年12月以来の水準にある。住宅ローンの取組高は減少している。昨年12月に取り組まれた住宅ローンは、126億ポンドとなり、1年前よりほぼ半減したほか、2007年6月のピーク時より6割超少ない水準にある。昨年10月に実施された銀行支援策は、貸し出しの増加に至っておらず、住宅ローンの貸出姿勢は厳しい状況が続いている。
・1月の消費者物価上昇率は前年比3.0%と前月の同3.1%からやや低下した。電気・ガス料金などの公共料金は昨秋の大幅引き上げの影響で36.2%と高止まったが、原油価格の下落に伴うガソリン価格の大幅な低下により、個人輸送機械関連費用は前年比マイナス6.4%とマイナス幅が拡大、全体の消費者物価上昇率を押し下げた。イングランド銀行(BOE)は、2月5日に事前の市場予測通り50bpの利下げを実施し、政策金利であるレポ金利を1.0%とした。その理由として、BOEは、年後半には、インフレ率がターゲットである2.0%を下回るという見通しなどを挙げている。また、BOEは1月19日に発表された追加銀行支援策で示された資産買取策の詳細を公表した。今回はCPと社債の買取に関するもので、CP買取については2月13日から実施されたほか、社債についてもできるだけ早く買取をはじめるとするなど、流動性供給策を拡充した。

片田保「「在りし日の日本」目指すイギリス公共経営」みずほ情報総研、2009年2月24日。
・先日、イギリスの公共経営の第一人者であるバーミンガム大学のT・ボバード教授が来日された。「Assessing quality in the public sector(公共における品質の評価)」というテーマの特別講義が行われたのだが、経営モデルについて日本から多くを学んだという。
・「我々は、15年かけて経営モデルを大きく転換してきた」。極端な市場主義への偏重は、結果として公共・行政の財政的負担を増加させることになった。綿密な分厚い契約書によって委託範囲やサービス提供方法、サービス水準を定め、民間にできることは民間に任せてきたが、その調整コストがかかるだけでなく、契約で明文化できない部分は行政が担うことになる。ブレア政権後のイギリスは、住民ニーズに対する効用や満足度の最大化を目指す「有効性」重視の「ベスト・バリュー(Best Value)」に舵を切った。このような経験を通じて品質志向の経営を模索し続け、そして今、彼らが追いかけている最先端の公共経営は、かつての日本が誇った経営モデル、すなわち契約や条文、マニュアル化によって詳細に規定するのではなく、目標や信念を共有して真に品質を高めようとする「信頼」の公共経営モデルである。

大橋善晃「英国における金融教育 FSA主導による「金融に関する消費者教育」への取り組み」『証券レビュー』第49巻第2号、2009年2月。
・覚書注:横書きの論文が縦書きになった。

猿渡英明「欧州景気は後退局面が長引く公算 欧州経済概観(09/2)」新光総合研究所『SRI 欧州経済ウォッチ ユーロ圏・英国』No.09-05、2009年2月24日。
・英国は2008年10-12月期の実質GDPが前期比マイナス1.5%になり、ユーロ圏同様に急速に景気が悪化していることが確認された。部門別でみれば非製造業部門、特に金融業の落ち込みが激しく、金融業に支えられてきた英国経済の特性が裏目に出た形となっている。住宅市場の崩壊を背景とした金融部門の調整は、信用収縮を経て個人消費へと波及している。資産価格の上昇を担保にした過剰消費といった消費構造は、米国のそれとほぼ同じであり、金融部門と実体経済が連鎖的に悪化する状態に陥っている。英国景気が回復するためには、金融部門の調整が一巡することが必要不可欠であることを踏まえると、当面の間、英国景気は低迷を強いられることとなろう。バットバンク構想が立ち消えになるなど、金融対策の進捗がやや遅れがちになりつつある点は懸念材料。
・BOEは景気・物価見通しともにダウンサイド・リスクを指摘しており、年央辺りまでにゼロ近辺までの利下げを強いられよう。その際、焦点となるのはバランスシートを活用した金融政策の導入であり、特定の金融市場をターゲットにした信用緩和政策が実施される公算。
・英国では昨年から、ノーザンロックなど中小金融機関の国有化、大手金融機関への資本注入、BOEの流動性対策を中心に金融支援を行なってきた。しかし、金融機関の損失拡大などから信用収縮がさらに進行、政府は今年に入って新たな対応に乗り出した。今回は主に不良資産保有による損失に歯止めをかけ、信用機能を回復させることに主眼が置かれており、1. 損失補償スキーム、2. 資産買取プログラムなどが準備されている。しかし、不良資産をバランスシートから切り離す構想は進展がみられず、Bad Bank構想も資産査定の難しさや必要経費の問題から、実現の可能性は今のところ乏しい。金融市場回復への道のりは遠い。

松岡博司「独仏英の優勢事業体による保険関連業務 多様なアプローチのあり方」ニッセイ基礎研『REPORT』2009年3月号。
・イギリスでは2006年から郵便事業への参入が自由化されており、今日、22の郵便事業者が存在するが、伝統的な郵政事業体であるロイヤルメールがいまだ圧倒的なシェアを有している。ロイヤルメールは政府が全株式を保有する持株会社の下に、各事業会社を配する形で事業を行っている。事業領域別の収入構成比は郵便73%、小包・速配17%、郵便局窓口(金融商品の販売等を含む)9.7%で、郵便の比率が高い。独仏の郵政事業とは異なり金融サービス事業の収入構成比は小さい。郵便局窓口業務は、わが国の郵便局会社に相当するポストオフィスLtdが担当している。郵便局の赤字基調が定着する中、英国政府は郵便局の閉鎖をポストオフィスLtdに指示する一方で、郵便局が果たしてきた地域のコミュニティーセンター的な役割は重要であるという世論に配慮して、郵便サービスへのアクセスを全国民に保証するユニバーサルサービスの維持をも求めている。そのため、ポストオフィスLtdに補助金も支給している。
・ポストオフィスLtdは、金融サービスについては単独で取り組むのではなくアイルランド銀行と提携する道を選んだ。両者の提携は、外国為替業務からスタートし、2004年3月には合弁会社、ポストオフィスファイナンシャルサービス(POFS)を設立する形に発展した。POFSの使命は、郵便局チャネルまたはロイヤルメールブランドを活用した金融商品の販売推進である。郵便局顧客のニーズにマッチすべく、取り扱う金融商品のコンセプトは、シンプルでわかりやすく、価格も手頃な商品である。POFS設立以降、個人ローン、クレジットカード、インスタントセイバーアカウント(貯蓄商品)、チャイルドトラストファンド(子供が18歳になるまでの間、資金を投資する税制優遇のある貯蓄投資制度)、各種保険等へと、ポストオフィスLtdの金融サービス取扱商品が拡充された。これらのうち銀行商品はアイルランド銀行が提供しているが、銀行商品でない金融商品や保険商品は、外部の専門会社を選別して商品提供を受けている。
・英国の郵政事業は、1864年から60年あまりの間、国営の郵便保険を販売していた歴史を有している。しかし、社会保障制度の充実と民間保険会社の成長、販売実績の極端な不振等を背景に、郵便保険は1928年に廃止された。以降、郵便局は保険商品の取り扱いに慎重であったが、1995年以降、ポストオフィスLtdは、家財保険、旅行保険、住宅保険、年金等を販売する試みに着手するようになった。しかし、旅行保険を除いては不首尾に終わっていた。
・ポストオフィスLtdは保険の引受には関心を持たず、販売者としての手数料収入のみを目的としている。また、全保険商品の提供を特定の保険会社に委ねるのではなく、保険商品毎に商品提供会社を選別している。自動車保険、住宅保険においては、特定保険会社の商品を販売するのではなく、17の有力保険会社の商品が並ぶパネルの中から消費者のニーズに適した商品が販売される形態が取られている。そのためにブローカーが事業を請け負っている。
・イギリスにおける郵政事業の保険販売の形態は、独仏における郵政事業の保険販売と、かなり色合いを異にしている。ポストオフィスLtdによる保険販売の特徴をあげると以下の通りである。1. インターネット、電話、郵便を通じたダイレクト販売が中心である。旅行保険と引受が保証されるオーバー50’sライフカバーは店舗で購入できるが、他の保険商品は、店舗にはリーフレットが置いてあるのみで、申込書を郵送する形となっているようだ。2. 販売の相当部分は商品提供保険会社またはブローカーに委ねられている。ポストオフィスは、ホームページや新聞、ラジオ等での広告、店舗網へのリーフレット備置等を通じ、商品周知と顧客への訴求を図るまでは行うが、興味を抱いた顧客が見積もりの作成依頼等の申込み行動に入ると、インターネットであれば担当会社が運営するウェブページに、電話であれば担当会社のコールセンターにつながる、という形で、仕上げ段階を提携先の会社に任せている。3. ポストオフィスLtdの保険販売においてはアドバイスを避けるスタンスが明確である。英国一般に言えることであるが、金融サービス商品の販売において誤ったアドバイスを行い問題化すると、FSA(金融サービス機構)から厳しい対処が行われるだけでなく、良好なブランドイメージを損なうことになりかねないので、銀行などもアドバイスの提供有無等について細かく説明している。
・POFSが関与した金融商品の顧客数は順調に増加し、2008年5月時点では150万人に達した。商品分野別に見ると、保険商品と貯蓄商品(インスタントセイバー等)が中心で、保険契約顧客数は、2006年5月末で29万人(全金融サービス顧客47.5万人の61%)、2007年5月末で50万人(全金融サービス顧客100万人の50%)と、金融サービス顧客の半分を占めている。POFSは2007年度中に損益分岐点に達した。こうした順調な業績推移を受けて、アイルランド銀行とポストオフィスLtdのPOFSを梃子とする提携契約は2020年まで延長された。

鈴木裕「政府系ファンドが株主になる日」『経営戦略研究』VOL.20、2009年新年号
・米国の上院銀行住宅都市委員会(Senate Committee on Banking, Housing, and Urban Affairs)は、各国の政府系ファンドの情報開示状況を米国会計検査院(The U.S. Government Accountability Office=GAO)に照会した。GAOは、現状でどのような情報が公開されているかを丹念に調査し、その結果は、「SOVEREIGN WEALTH FUNDS - Publicly Available Data on Sizes and Investments for Some Funds Are Limited」(政府系ファンド - 規模・投資に関して利用可能な情報が不十分な場合も:以下「GAOレポート」)として2008年10月に公表された。
・GAOレポートでは、何をもって政府系ファンドと言うかを検討しているが、定義付けと言うよりは、議会が関心を示すファンドの属性として、次の4点を指摘し、こうした性質のファンドの情報開示状況を調査している。1. 政府設立または政府出資の投資手段、2. 債券以外の外国資産に投資を行う、3. 財政余剰、貿易黒字、中央銀行準備金、または国有商品資産の売却益を原資とした基金、4. 年金基金ではないこと。こうして、34カ国の48ファンドを対象として政府系ファンドの情報開示状況が調査された。13ファンドはアジア太平洋地域、10ファンドが中東、25ファンドがアフリカと南北米州・カリブ海域・欧州であった。アラブ首長国連邦(UAE)、シンガポール、ロシアは2つ以上の政府系ファンドを有している。これらのうちクウェートやキリバスが1950年代に設立されているが、28ファンドは2000年以降の設立だった。調査結果の概要は、以下の通りだ。48ファンドのうち資産総額を公表しているのは60%であるが、保有内訳は4ファンドしか明らかにしていないという。情報開示に対する取り組みはファンドによって大きく異なる。ほとんど情報を明らかにしないものもあれば、運用資産の詳細を開示する政府系ファンドもある。クウェート投資庁(Kuwait Investment Authority)は、クウェート政府に対して詳細な報告を行なっているが、それが公表されることは無い。情報はあるが公表はされないということだ。ノルウェーでは、保有資産の詳細が公表されている。シンガポールの政府系ファンドの一つ、Temasek Holdingsは2004年からアニュアル・レポートを公表しているが、同じシンガポールのGIC(Government of Singapore Investment Corporation)は、今年になって設立以来はじめてのアニュアル・レポートを公にしており、同じ国でありながらも対応が異なることもある。
・国際通貨基金(International Monetary Fund=IMF)は、政府系ファンドの情報開示等のあり方について検討を進め、一年が経過した2008年11月に、その規制原則を明らかにした。これは、政府系ファンドの投資目的や投資実態を開示させることで、投資対象となった国側が不信感を抱くこと無しに対内投資を受け入れられるようにして、国際的な資金流通を活発化させることを意図している。新たに公表された規制ルールは、「行動規範・慣行に関する原則合意」(Generally Accepted Principles and Practices=GAPP)と呼ばれる。公表にさきだち2008年9月にチリのサンチャゴで集中的な討議を行なったことから、別名サンチャゴ原則とも言われている。このGAPPは、政府系ファンドの適切な投資慣行、およびガバナンスとアカウンタビリティ(説明責任)の取り決めの指針となる自主的な枠組みである。2007年からの欧米諸国を中心とする金融不安では、政府系ファンドが資金を供給して衝撃を緩衝する役割を果たしたと言える。政府系ファンドは、長期的な投資スタンスを持ち、また、通常レバレッジをかけていないこともあり、安定的、長期的な資金の提供主体として期待されているのである。GAPPは、自主的(Voluntary)なもので、たとえ遵守しなかったとしても、これによって直接制裁を課すようなものではないが、多くの政府系ファンドはこれに従うであろうと期待されている。市場の安定は政府系ファンドにとっても利点が多いからだ。政府系ファンドが、GAPPの行動規範・慣行を遵守することで投資受け入れ側の懸念を払拭し、それによって政府系ファンドの投資に対する保護主義の台頭を抑えられるし、また、国際的な資本移動に対する規制が過度に及ぶことを防止するのに役立つとみられる。
・GAPPの第19原則は、政府系ファンドの投資は、リスク調整後の収益を最大化するために、経済的理由(economic and financial grounds)に基づいて行なわれるべきであるとしている。収益最大化は、政府系ファンドの中心的な目的であり、投資行動はこの目的と整合的でなければならないというものである。第19原則は抽象的であるが、投資を受ける個別の企業や規制官庁にとって原則として経済的な目的のみによる投資が一応保証されたことは、前向きにとらえることができるだろう。投資における説明責任と透明性が政府系ファンドに要求されたことで、これが遵守されるのであれば、これまでの警戒感は払拭されることとなる。また、第20原則は、政府系ファンドが、政府であることを利用して民間投資家よりも優位に特別な情報を得たり、不当な影響力を行使するべきではないとしている。他の投資家には無い政治的影響力を認めては、市場の公正な競争が歪められる。こうした点も、政府系ファンドは厳しく律していかなければならない。
・中東や中国・ロシアの政府系ファンドの投資動向に政治的意図を読み採るとすれば、それに対抗する行動も投資を通じて行なうことが検討されても不思議ではない。フランスのサルコジ大統領は、GAPPによる情報開示だけでなく、より積極的に防衛的な政府系ファンドの設立を強く主張している。株価の急落によって買収が容易になった会社が、公共利益に密接に関わる場合には、好ましからざる買収を防止するために、政府が株式を購入することも検討すべきではないかということである。EUの議長国として、EU全体での政府系ファンド設立を提唱したが、政府系ファンドへの警戒という点では一致しているドイツのメルケル首相は、保有規制によって適切に対処できることを理由にこれに反対しているし、EUのバロッソ委員長も、保護主義に結びつく懸念を表明して反対しているほどだ。現状ではEUの協調による政府系ファンド設立は、困難になっているが、代わって、フランス独自の政府系ファンドを創設している。フランスの政府系ファンドは、新規の資金と他にフランス政府所有の民間会社株式を移管によって200億ユーロのファンドを組成するとのことである。このファンドは、産業政策や安全保障政策に対する外国資本の介入を防止するものであるから、政治的な目的の遂行を主たる目的としていると言えるのではないだろうか。海外の政府系ファンドによる政治的投資を排除するために、政治的目的をもったファンドを創設するわけで、苦渋の選択とも思えるが、矛盾した態度とも言えそうである。
・世界最大の政府系ファンドであるアブダビ投資庁(The Abu Dhabi Investment Authority)は、早くもGAPPを遵守することを表明している。また、アブダビ投資庁次官、米国財務長官、シンガポール財務大臣の連名で公表された論説(Open Editorial)では、政府系ファンドが長期・安定的投資家であり、世界の金融市場の安定に大きな貢献をしており、GAPPは、国際市場の自由と公正を維持するための重要なステップであると位置づけている。

「GLA(グレーター・ロンドン・オーソリティー)における気候変動対策」自治体国際化協会『CLAIR REPORT』No.336、2009年2月20日。
・グレーター・ロンドン・オーソリティー(Greater London Authority、以下GLA)はロンドン全域を管轄する広域自治体である。
・ロンドン気候変動局(London Climate Change Agency:LCCA)は2006年6月にロンドン市長によりロンドン開発公社内に設立された組織である。その目的は、ロンドンにおけるエネルギー、廃棄物、水道、交通を起源とする温室効果ガスを削減するためのプロジェクトを行うことである。ロンドン開発公社の100%出資により設立され同公社の監督を受ける気候変動局は、営利企業として有限責任会社の形態をとっている。 職員の数は20名ほどで、責任者であるCEOにはWoking Brough CouncilにおいてCHP(Combined Heat and Power:熱電併給システム)、代替燃料、燃料電池などの普及に大きな実績を上げたAllan Jones氏が就任している。 ロンドン気候変動局は、EDF EnergyやBP等といった民間企業等と提携し、それらから寄付金提供を受けながら、官民一体となって気候変動対策を進めている。GLAの気候変動対策実施について文字通りの中核を担う機関である。
・2006年時点でロンドンの二酸化炭素排出量は4,400万トンで、英国全体の排出量の8%を占めている。ただし、これには京都議定書で削減目標が設けられていない航空機関連の排出は含まれていない。最大の二酸化炭素発生源は一般家庭で、ロンドンの排出量全体の38%をしめ、そのうち4分の3は暖房を起源とする。商業部門はこれに迫るが、起源は電力消費によるものが多い。工業部門からの排出量は少なく、ロンドンの経済活動の性格が変わるにつれて減少している。地上交通輸送は総排出量の4分の1未満だが、その半分近くが自動車からの排出である。
・1990年以来、ロンドン全体の二酸化炭素排出量は微減している。1991年から2004年にかけて人口が70万人増加し、雇用が40万人増加したにも拘らず、年間排出量は1990年の4,510万トンから2006年には4,430万トンへ減少した。GLAでは、この原因を、英国内の他地域または英国外へ工業活動の移転が進み工業を起源とする排出量が半減したためと分析している。GLAは、将来のロンドンの経済成長と人口増加に伴い、現状のまま何も対策を講じなかった場合、2025年の二酸化炭素排出量は2006年比で15%増の5,100万トンに達すると予測している。
・2004年2月に発表されたエネルギー戦略のなかでロンドン市長は2050年までに二酸化炭素排出量を1990年比で60%削減するという目標を掲げた。これは先に政府のエネルギー白書で掲げられた国家としての目標をそのままロンドンに適用したものである。
・GLAが2007年2月に発表したグリーン・ホームズ・プログラムの目的は、ロンドン市民の二酸化炭素排出削減への取り組みをより安価に、より容易にすることである。つまり、気候変動に関して高い関心を有し排出削減に関与する意思を持っているにも拘らず具体的にどのような行動を起こして良いのかわからないロンドン市民に対して、既存のプログラムの中から最も効果的な方策は何かを明確に示すことである。グリーン・ホームズ・プログラムは省エネルギートラストと共同で実施される。初年度である2007年度の予算は約700万ポンド(約16億1,000万円)である。
・ロンドンでは、電力・ガスの消費による二酸化炭素排出量が年間3,500万トンに上り、総排出量の75%を占めている。そのため、GLAではエネルギー供給の構造変革により大幅な炭素排出量の削減を目論んでいる。 現在ロンドンで消費されるエネルギーの65%はガス管から供給されるガスによるものであり、32%が送電線により供給される電気によるものである。しかしながら、国内送電網からの電気はガスに比べて炭素強度が強いため、これを二酸化炭素排出量で見ると半分以上が電気を起源とするものとなっている。また、火力発電所では投入エネルギーの約3分の2が廃熱として消失し、更に9%が送電の過程で失われている。GLAはこの点を問題視し、発電所で発電した電気を送電して使うという従来の構造を改め、電気は地域内で発電してその際に発生した熱も有効利用するという発電施設の小規模分散化(Decentralisation)を目指している。
・GLAでは市民の行動変革を促す諸施策の立案にあたり、ソーシャル・マーケティングと呼ぶアプローチを用いている。イングランドでは2007年7月1日から公共の空間における喫煙が禁止された。法律の施行前にはその効力に疑念を抱く声が囁かれたが、いざ施行されてみると前日まで紫煙で燻っていたパブもぱったりと煙草を吸う人はいなくなり、大きな混乱は生じなかった。GLAではこの市民の行動変革の成功に着目し、これを気候変動対策の各種施策にも応用しようとしている。 まず、その成功の要因を以下のように分析する。1. 喫煙による害と禁煙による利益について、長年の科学的コンセンサスによる実証がなされていた。2. 禁煙化について政党間の争いがなかった。全政党が禁煙の正当性を認めており、有権者もそれを認めざるを得なかった。3. 公共機関がありとあらゆる政策で禁煙を推進した。各種規制、課税、情報発信、広告等のミックスが個人の行動と社会の態度を変革した。そして、これらに学び、科学的裏づけによる行動変革促進のためのPRを繰り返しあらゆる手段・チャンネルを用いて行い、健康、教育、都市計画、交通政策等のあらゆる分野でとり得るあらゆる施策を複合的に実施しているのである。
・C40 Cities(以下、C40)、別称Climate Leadership Group(気候先導グループ)は2005年にロンドン市長の提唱により創設された気候変動対策に取り組む世界の大都市の集まりである。日本からは、東京都が2006年12月より参加している。その目的は、全世界のエネルギーの75%を消費し全世界の温室効果ガスの80%を排出する大都市が、協働して炭素排出量を削減し、気候変動に順応することである。
・2008年2月の時点で、下記の40都市がC40に参加している。アフリカ(3都市:アジスアベバ、カイロ、ヨハネスブルグ)、アジア(12都市:バンコク、北京、デリー、ダッカ、ハノイ、香港、ジャカルタ、カラチ、ムンバイ、ソウル、上海、東京)、オセアニア(2都市:メルボルン、シドニー)、北米(6都市:シカゴ、ヒューストン、ロサンゼルス、ニューヨーク、フィラデルフィア、トロント)、中?米(8都市:ボゴタ、ブエノスアイレス、カラカス、ラゴス、リマ、メキシコ・シティ、リオデジャネイロ、サンパウロ)、ヨーロッパ(9都市:アテネ、ベルリン、イスタンブール、ロンドン、マドリッド、モスクワ、パリ、ローマ、ワルシャワ)。上記以外に、提携都市(Affiliate Cities)という位置付けで下記の12都市がC40に関わっている。オースチン、バルセロナ、コペンハーゲン、クリチバ、ハイデルベルグ、ニュー・オーリンズ、ポートランド、ロッテルダム、ソルトレイクシティ、サンフランシスコ、シアトル、ストックホルム。
・日本では英国というと「保守的」というイメージがあるが、それはある意味ではあたっているものの、ある意味ではあたらない。筆者の見るところ英国人は歴史的景観、伝統文化、自然環境といった一旦失われると二度と取り戻せないものについては、頑ななまでに保守的になり、必死に保存しようとするが、その一方で、社会制度などの変革については実に大胆である。英国の気候変動対策を含む環境施策にはまさにこの保守/革新の二面性が現れているように思われる。すなわち、失われたら二度と取り戻せない自然環境という財産を守るために、大胆な目標が設定され、バイク・ハイヤー・スキームのような、ある意味耳目を集める施策が矢継ぎ早に打ち出される。そこには官僚的慎重さを跳ね返して実現してしまう政治的決断の強さがある。

明治安田生命『経済ウォッチ』2008年度vol.22、2009年2月第4週号。
・英国経済は、金融不安の深刻化や住宅バブルの崩壊を背景に悪化のペースが加速している。金融・サービス業のウェイトが大きい英国では、金融不安が家計や企業のマインドを諸外国よりも大きく悪化させており、2009年の英国はユーロ圏以上の大幅なマイナス成長(マイナス3.5%)を余儀なくされよう。家計や企業のマインドが持ち直し、回復に向かうのは2010年後半になると予想する。BOEは2月に50bpの利下げを行い、政策金利を1.0%とした。エネルギー価格の調整と、景気減速基調の強まりから、今後はデフレ懸念が台頭してくると考えられる。BOEは、引き続き緩和姿勢を継続し、政策金利をゼロ%近辺まで引き下げ、米国型の「信用緩和」に移行していくと予想する。
・BOE(イングランド銀行)は2月5日のMPC(金融政策委員会)で、市場の事前予想通り、政策金利を50bp引き下げ、1.0%にすることを決定した。リーマン・ブラザーズの破綻以降、英国の金融機関にも経営不安が広がり、それに伴って景気が急速に悪化したことから、昨年10月以降、5ヶ月連続で累計400bpの大幅利下げを行っている。
・政策金利をゼロ%近辺まで引き下げた後、BOEが追加的に打つ手は、CPや社債、国債などの買い取りを通じて、信用市場に直接働きかけるとともに、通貨供給量の量的な拡大を目指す政策(米国型の量的緩和)と考えられる。すなわち、CPや社債などを買い取ることによって、貸し渋りの見られる信用市場の改善を図るとともに、長期国債の購入によって、国債の増発懸念から上昇しがちな長期金利を直接低下させる。それらの資金を紙幣の増刷によって賄うことで、BOEのB/Sを拡大させ、通貨供給量の増大に訴えかけていくという政策がとられる可能性が高い。BOEは、既に2月17日からCPの買い取りを始めているが、これまでは、購入の資金が財務省の短期国債の発行で賄われていたため、信用市場の緩和には効果があっても、通貨供給量の増大につながるものではなかった。しかし、キング総裁は「名目支出てこ入れに向けた通貨供給量の拡大を目指す公算がある」と発言している。2月18日に公表された2月5日のMPCの議事要旨によると、こうした「量的緩和」の導入の許可を政府に求めることが全会一致で決められた。既にキング総裁はダーリング財務相と会談するなど、量的緩和導入に向け動き始めている。そのため、3月のMPCでは0.25%への利下げとともに、既に実施されているCP買い取りの規模の拡大や、より低格付けのCPや社債などへの買い取り資産の範囲拡大、長期国債の買い取りなどの具体策が発表される可能性が高い。

・血圧 115/55mmHg 75bpm

 今日は今野緒雪『マリア様がみてる ハロー グッバイ』(2009年、コバルト文庫)を読みました。

 本書は祥子がついに卒業を迎えるお話です。『マリみて』を祐巳と祥子の物語として見れば、二人の関係に区切りがつく今回が事実上の最終回となります。

 最終回にふさわしい内容だったと思います。元薔薇様たちなど縁の深い人物たちが全員登場して、雰囲気を盛り上げています。あのゴロンタまでも登場し、聖に愛撫されています。

 個人的には蓉子と可南子の登場が嬉しかったです。蓉子は相変わらず聖と江利子に振り回されていました。可南子は初登場時と打って変わって、小鳥を愛でる良い娘になりました。

 連載途中では瞳子の性格が崩壊しかかるなど連載長期化に心配していましたが、最終回まで無事たどり着けたことを嬉しく思います。瞳子も甘え上手の良い妹に育ちました。

 今回は黄薔薇の話題が多かったように思います。前代未聞の珍事を連発してきた由乃が卒業式で中学生の菜々を妹にする場面が、物語の最高潮に位置づけられています。

 黄薔薇は狂言回しの役回りなので、どうしてもこうなってしまうのでしょう。とくに由乃は物語の問題提起係です。彼女が暴れてくれないと物語は動きません。

 逆に言えば、由乃が落ち着いたときが物語の静止となります。その意味では、由乃に妹ができたところを最終回とした設定は、非常に秀逸だと思いました。

 続編を期待する声もあるかと思いますが、私は今回で終わりで良いと思います。むしろ、理想的な終わり方であったと思いますので、これ以上を希望することはできません。

 強いて言えば、三奈子が登場しなかったことが残念です。ただ、前書で祥子や令と十分に絡んでいますので、今回は外れてしまったのでしょう。彼女も由乃と同じ狂言回しですから。

 長いおつきあいでした。私は2000年頃から読み始めましたので、かれこれ8年くらいのおつきあいです。長い間読み続けてしまうくらい佳作であったと思います。

 お疲れさまでした。そして、ありがとうございました。ごきげんよう!

毎日新聞の限界

 今日は毎日新聞の限界です。

 先日の中川財務大臣辞任の背景では、毎日新聞の功績を評価しましたので、今回は駄目な部分を紹介しようと思います。何事も一方的ではいけません。

記者の目:日韓関係、歴史和解を棚上げするな=堀山明子
2009年2月25日 0時05分

 韓国の李明博(イミョンバク)政権が25日で発足1年を迎える。日韓関係はこの1年間、首脳間のシャトル外交が復活し、歴史問題でギクシャクする以前の状況まで修復した。年明けから麻生太郎首相、中曽根弘文外相が相次いでソウルを訪れ、李大統領と会談し、北朝鮮の核問題のみならずアフガニスタン復興など国際分野の協力にも合意した。日韓協調が世界に果たす役割を互いが認識し、実践する「新時代」に踏み出したといえる。

 こうした日韓の国際協調の流れを評価したうえで、あえて問いたい。なぜ歴史問題だけが抜け落ちているのか。特に2010年の、日韓併合から100年という節目を前にした今、両国の首脳、外相の会談で歴史が話題にならない方が不自然ではないだろうか。

 ある日本外務省当局者は歴史に触れないのは李政権が目指す「成熟した日韓関係」への実践だと説明し、「歴史問題は両国関係がこじれない程度に対処すればよい」と解説した。歴史を取り上げれば「違いを浮き彫りにするだけ」との疲労感が双方の外交当局にある。来年の節目も「韓国で反日感情が高まり、政治問題化することのないよう」にしているとみられる。

 日韓基本条約締結40周年の節目の05年も、日本政府は「歴史問題で波風を立てない」方針でのぞんだ。だが、日韓双方が領有権を主張する竹島について、島根県議会が「竹島の日」の制定に関する条例を可決し、青少年交流が止まる事態にまで発展した時、きちんと対応できただろうか。

 当時は小泉純一郎首相が毎年靖国神社を参拝している時期で、韓国国民の不信が高まっていた。竹島問題は発火点にすぎず、ひとたび爆発すれば対処は難しい。麻生首相が創氏改名を肯定した過去の発言は、現在も韓国国民の記憶の中にあり、火種はくすぶる。

 90年代半ば、村山富市政権は歴史の和解について、民間から寄付を募り韓国人元慰安婦に「償い金」を贈る「アジア女性基金構想」を推進したが、韓国から「日本政府の補償責任があいまい」と厳しく批判を受け、頓挫した。日本では政府だけでなく、運動を進めた人にも挫折感が残り、今も政治的な努力に距離を置く雰囲気が強いように見える。

 一方、韓国では盧武鉉(ノムヒョン)政権が05年に日韓基本条約に関する文書を公開し、交渉経緯の検証を経て「日本から経済協力資金を受けた韓国政府の責任を果たす」と、強制連行被害者に追加支援を行う方針を決めた。これをきっかけに、戦後補償問題に対する韓国国民の意識は大きく変わった。

 被害者団体の中からも現実的な選択を模索する機運が生まれつつある。韓国政府の支援は法的補償ではなく人道支援との立場だが、被害者団体は受け入れた。さらに支給条件をめぐる被害者間の亀裂を越え、歴史を次世代に伝える議論も始まった。日本との歴史和解を目指すための領域は、10年前に比べ広がった。

 04年からソウル特派員として、韓国政府が被害者に「慰労金」を支給する国外強制動員犠牲者等支援法が07年11月に成立するまでの過程と、昨年6月の実施後の状況を見続けてきた。

 支援法の救済基準づくりは、対象になる者と切り捨てられる者を選別する、いわば痛みを伴う作業だった。日本で負傷せずに帰国したため慰労金支給の対象から外れた生存者らの中には法改正を求める声もある。国民全体でのコンセンサスづくりは道半ばだが、戦後補償の政策論が多角的にできる土台はできた。

 韓国国内の被害者救済が進む中、日本政府の協力は非常に限定的だ。慰労金支給のための韓国人の被害認定は軍人・軍属が8割程度進んだのに対し、民間企業に徴用された労働者は2割余にとどまる。日本政府は07年11月、軍人・軍属11万人分の名簿を韓国政府に提供したが、労働者分は渡していない。本籍が「朝鮮」の元徴用工を拾い出してデータベース化する作業のため、日本政府は人と予算を付ける政治判断ができないだろうか。韓国政府や国会の政治判断を間近に見てきただけに、もどかしく感じる。

 日韓の国際協力を広げ、歴史の和解を含めた2国間の信頼を深める--。その作業は車の両輪だ。韓国国民の自衛隊アレルギーが表面化すれば、アフガン復興など国際協力も機能しなくなりかねない。「日本の軍事大国化」という韓国国民の不信を緩和するためにも、歴史の和解に向けた努力は不可欠だ。

 100年の節目を、しっかりした両輪で走り始める出発点とすべきだと思う。「成熟した日韓関係」をさらに具体化するためにも、協調の流れにある李明博政権の今こそ、信頼醸成のチャンスではないか。(ソウル支局)

http://mainichi.jp/select/opinion/eye/news/20090225k0000m070125000c.html

 冒頭で「あえて問いたい」と書いていますが、毎日新聞のいつもの論調を繰り返しているだけです。あえて新しい論点を提起しているわけではありません。自らの従来の言説にあえて疑問を呈しているわけでもありません。

 いつもの論調とは、日韓関係を改善するためには日本が全面的に譲歩するべきだということです。韓国側が主張している歴史問題や領土問題はまさに正当なものであり、日本はそれを一方的に受け入れよ、と毎日新聞は言っています。

 もちろん、韓国の主張を正当だとする根拠は示されていません。強いて言えば、韓国の国民感情を傷つけるという点くらいでしょう。韓国人の感情に配慮して、歴史問題や領土問題については韓国の言う通りにすべきだとしています。

 ソウル支局の記事とはいえ、相変わらず酷い内容です。日本の新聞記者が日本よりも韓国の利益を代弁している姿に辟易します。コラムで日本をこき下ろし続けているFTの東京支局長David Pillingの矜持を見習ってもらいたいものです。

 なお、今日の記事の表題それ自体には賛成します。つまり、昨今の日韓関係では歴史和解を進める条件があるという点では、私もそうだと考えています。ただし、もちろん、毎日新聞とは逆の立場で、ですが。

 世界的な金融危機のなかで韓国経済がへろへろになっているため、現在、韓国は日本に助けを求めてきています。日本としては手を差し伸べる代わりに、歴史問題や領土問題を一気に片付けることができる状況にあります。この機会を逃すべきではありません。

 麻生政権は、残念なことですが、余命は長くないでしょう。それならば、数々の歴史的業績を成し遂げて退陣した安倍政権のように、特定アジアとの間にある歴史問題に片をつけて、歴史に名を残してもらいたいと思います。

覚書 090221

河藤佳彦「産業による地域振興施策」自治体国際化協会『分野別自治制度及びその運用に関する説明資料』Np.8、2008年7月。
・国は、「新産業創造戦略」に続いて2006年6月に「新経済成長戦略」を打ち出した。この戦略は、先進国として戦後初めて経験する継続的な人口減少と世界最高水準のスピードで進む高齢化に伴う成長制約を克服する持続的な経済成長を「新しい成長」とし、その実現を目標とするものである。また、そのために「強い日本経済」の再構築が必要であるとして、「国際競争力の強化」と「地域経済の活性化」の重要性を強調している。
・近年、中心市街地の衰退が著しい。その原因として考えられることは、モータリゼーションの進展を背景とした郊外大型商業店舗の進出拡大、経営者の高齢化などによる経営意欲の低下などの影響による中心市街地の商店街の衰退、地価高騰時代に進んだ公共施設の郊外移転や企業の業務機能の統廃合などである。このような状況のなかで、これまで地域住民の生活ニーズについて、文化や教養など自己実現のための高次なレベルから日用品の調達といった身近なレベルまで充足してくれた都市の機能が低下することが懸念されており、国もこの中心市街地の活性化を重要な政策課題として受け止め、様々な取り組みを行っている。その具体的な取り組みの一つが「コンパクト・シティ」の形成である。これは、都市中心部にまちの機能をコンパクトに集約することによって賑わいを取り戻し、効率性を高め、都市の活力を取り戻そうとするものである。コンパクト・シティの形成の政策手段としても注目されるのが、国による、いわゆる「まちづくり三法」による中心市街地の活性化である。3つの法律のそれぞれにおける主なポイントは、次のとおりである。1. 中心市街地活性化法(施行1998年):中心市街地の活性化のため「市街地の整備改善」、「商業等の活性化」を一体的に推進する。2. 大規模小売店舗立地法(施行2000年):大型店の立地に際して、「周辺地域の生活環境の保持」の観点からの配慮を求める。3. 都市計画法の改正によるゾーンニング(土地利用規制)(施行1998年):大型店の立地を制限する必要があると市町村が判断した場合の土地利用規制制度を措置する。この3つの法律を併せて活用することにより、地域による中心市街地の活性化への取り組みを積極的に支援することとした。すなわち、国の基本方針のもとに市町村が基本計画を策定し、中心市街地を一つのショッピング・モールと見立てて実施される施設の整備事業や顧客へのサービス増進、商業者の経営革新などソフト面での事業を実施するタウンマネージメント機関としての商工会・商工会議所または第三セクターを、財政面・税制面などで支援する。そのために、生活環境への十分な配慮を前提として大規模小売店舗の立地を原則自由とする。ただし、大規模店舗の立地などを地域の実情に応じて規制・促進などができるように、都市計画上の制度を地元の判断によって併用するというものである。しかし、まちづくり三法が施行された後数年を経ても中心市街地における店舗や売上高の減少傾向が収まる気配が見られなかったことから、国は更なる対策を立てることとし、2006年にまちづくり三法のうち、中心市街地活性化法と都市計画法について改正を行った。これらの改正は、都市の無秩序な外延的分散を抑制し、中心市街地において地域が主体的に取り組む場合の支援を強化するものである。このような中心市街地活性化のための規制策・支援策は効果が期待されるが、あくまでも活性化のためのツールが用意されているに過ぎない。重要なことは、地域が主体的に自らの都市像を明確に持ち、その実現のために積極的な取り組みを行おうとする意思を持つことであろう。そうすることによって初めて、まちづくり三法は効果を発揮することになる。
・国が推進する地域産業振興政策における代表的なプロジェクトとして、「産業クラスター計画」と「知的クラスター創成事業」を挙げることができる。両プロジェクトは相互に連携をとりつつ進められており事業実績を上げつつある。「産業クラスター計画」は、地域主体の産業活性化の取り組み支援として、経済産業省の主導により2001年度から推進されている。この計画は、我が国産業の国際競争力を強化するとともに、地域経済の活性化を図るものである。民間のプロジェクト推進組織が中心となり、地域企業が情報提供やコンサルティングなどの支援を受けて競争力を高めるとともに、大学や研究機関などと研究開発などについて相互連携を深めることにより、地域経済全体の自立的な発展を目指すものである。また、製造業のほか情報産業やサービス産業なども対象とし、金融機関や商社など関連分野との連携も幅広く視野に入れた計画である。2001年度からの第I期計画の期間に引き続き2006年度からは第2期計画に入っている。現在、全国で17のプロジェクトが展開されており、5年間で4万件の新事業創出などの数値目標などを設定している。「知的クラスター創成事業」は、地方自治体の主体性を重視し、知的創造の拠点たる大学、公的研究機関等を核とした、関連研究機関、研究開発型企業等による国際的な競争力のある技術革新のための集積(知的クラスター)の創成を目指すものであり、文部科学省が主導して2002年度から実施されている。

小山永樹「日本の教育行政と自治体の役割」自治体国際化協会『分野別自治制度及びその運用に関する説明資料』Np.9、2008年7月。
・義務教育以降における進学率については、高等学校等への進学率は、1950年の42.5%から、1970年には82.1%、1980年には94.2%、2006年には97.7%と、教育の機会均等が促進されており、大学・短期大学への進学率は、1954年の10.1%から、1970年には23.6%、1980年には37.4%、2006年には52.3%と上昇している。
・我が国における教育行政を担う組織としては、国では文部科学省が中心であり、自治体では、都道府県、市区町村及び教育に関する事務を処理する地方公共団体の組合に設置される教育委員会が中心である。教育委員会は、自治体の執行機関の1つであり、普通地方公共団体には置かなければならないものとされている。日本国憲法では93条では、我が国の地方自治体の組織について、議事機関としての議会の議員と執行組織としての長のいずれをも住民の直接選挙により選任することを定めており、首長制(大統領制)を採用しているが、自治体の執行機関は、長を唯一の頂点とする構造にはなっておらず、教育委員会の他、人事委員会、選挙管理委員会、監査委員会など多くの委員会及び委員(しばしば「行政委員会」と総称される)から構成され、それぞれの執行機関が独立した権限を持つとともに、長が自治体を統轄・代表し、執行機関全体の総合調整を行うシステムとなっている(執行機関の多元主義)。このような多元主義が採用されたのは、1つの機関への権限集中を避け、複数の執行機関に権限を分掌させて、それぞれに独立して事務を処理させることにより、民主的な地方行政が行われることが期待されているためである。中でも教育委員会制度を設けた意義としては、文部科学省の資料によれば、次の3点が指摘されている。第1に、政治的中立性の確保である。個人の精神的な価値の形成を目指して行われる教育においては、その内容が中立公正であることは重要であり、教育行政の執行に当たっても、個人的な価値判断や特定の党派的影響から中立性を確保することが必要である。第2に、継続性、安定性の確保である。教育は、子供の健全な成長発達のため、学習時間を通じて一貫した方針の下、安定的に行われることが必要である。第3に、地域住民の意向の反映である。教育は、地域住民に身近で関心の高い行政分野であり、専門家のみが扱うのではなく、広く地域住民の意向を踏まえて行われることが必要である。
・教育委員会は、自治体の長が議会の同意を得て任命する原則5人(ただし、条例の定めるところにより、都道府県及び市又はこれらが加入する組合については6人以上、町村又は町村のみが加入する組合については3人以上とすることができる)の教育委員から構成される合議制の行政委員会である。教育委員会制度創設時の1948年には、教育委員は公選であったが、1. 選挙が実質的に政党を基盤に行われ、それが教育委員会の運営に持ち込まれたこと、2. 大きな資金を持った者や強力な支持母体を持った者が当選しやすかったこと、3. 大きな組織力を有する団体が組織力を利用して教育委員を送り込み、教育行政をコントロールしようとする傾向が増えたこと、などの理由で1956年に公選制が廃止され、現在の制度となっている。教育委員の任期は4年で、再任可能である。教育委員は、有権者の3分の1以上の署名による解職請求(リコール)の対象となっているが、任期中、リコールが成立した場合や、心身の故障のため職務の遂行に耐えないと認める場合、職務上の義務違反等があると認める場合など一定の事由がある場合を除いては失職・罷免されず、このような身分保障のもと、教育行政の安定が確保されている。また、同一政党所属者が委員の過半数を占めるに至った場合には、新たにその政党に所属するに至った委員を罷免することや、政治的団体の役員となったり、積極的な政治活動をするこが禁止されることにより、教育行政の政治的中立性が確保されている。
・教育委員会の在り方については、様々な問題点が指摘されている。文部科学大臣の諮問機関である中央養育審議会の教育制度分科会・地方教育行政部会が2005年1月にまとめた「地方分権時代における教育委員会の在り方について」(部会まとめ)では、1. 教育委員会は、事務局の提出する案を追認するだけで、実質的な意思決定を行っていない。2. 教育委員会が地域住民の意向を十分に反映したものとなっておらず、教員など教育関係者の意向に沿って教育行政を行う傾向が強い。3. 地域住民にとって、教育委員会はどのような役割を持っているのか、どのような活動を行っているのかがあまり認知されていない。地域住民との接点がなく、住民から遠い存在となっている。4. 国や都道府県の示す方向性に沿うことに集中し、それぞれの地域の実情に応じて施策を行う志向が必ずしも強くない。5. 学校は、設置者である市町村ではなく、国や都道府県の方針を重視する傾向が強い。また、教職員の市町村に対する帰属意識が弱い。といった点を指摘している。その他、近年、地方自治体の長と行政委員会との関係を見直す動きの一環として、長と教育委員会の関係についての議論がなされている。内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会では、「地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会の在り方に関する答申」(2005年12月)において、「住民から直接選出された長が責任を持つことが求められているにもかかわらず、この要請を満たすことができない行政分野が生じている状況を改善し、また、地方行政の総合的・効率的な運営や組織の簡素化を図る」必要があるとして、行政委員会制度の課題について指摘している。中でも、教育委員会制度については、保育所と幼稚園、私立学校と公立学校など、長と教育委員会がそれぞれ類似の事務を担当していることなどにより地方自治体の一体的な組織運営が妨げられているという問題があると指摘し、地方自治体の判断により教育委員会を接しして教育に関する事務を行うこととするか、教育委員会を設置せず、その業務を長が行うこととするかを選択できることが適当であるとしている。このような答申をする理由として、前述のような長と委員会が類似の事務を実施していることのほか、教育委員会を必置する理由として挙げられる、教育における政治的中立性の確保や地域住民の意向の反映などの必要性ということについて、国においては教育行政に関し行政委員会制度をとっていないが、これらの要請が地域における教育行政に特有のものとは考えられないこと、また、これらの要請は審議会の活用など他の方法によっても対応でき、特に地域住民の意向の反映はむしろ公選の長の方がより適切になしうることから、理由がないことを指摘している。また、同調査会は、文化、スポーツ、生涯学習支援、幼稚園、社会教育、文化財保護などもふくめ、公立小・中・高等学校における学校教育以外の事務については、地方自治体の判断により長が所掌するか、教育委員会が所掌するかの選択を幅広く認める措置を直ちに採ることとすべきとしている。このような中、2007年6月に地方教育行政法が改正され、条例の定めるところにより、地方自治体の長が、1. スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く)、2. 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く)のいずれか又はすべてを管理・執行することができるとされた。地方分権推進の立場からすると、自治体の執行機関の組織の形態などについて、地域の実態に応じて可能な限り自治体が選択できるようにすることは重要であり、今後一層、そのような方向での改革がなされることが期待されるところである。
・学校は、国(国立大学法人などを含む)、自治体(公立大学法人を含む)及び学校法人のみが設置することができ、それぞれが設置した学校を、国立学校、公立学校、私立学校という。学校教育法における「学校」には、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学などの種類があるが、それぞれをどの主体が設置するかについて一義的には定められていない。ただし、市町村は、その区域内にある学齢児童及び学齢生徒を就学させるに必要な小学校及び中学校を設置しなければならず、都道府県は、その区域内にある学齢児童および学齢生徒のうち、一定の視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者を就学させるために必要な特別支援学校を設置しなければならないこととされ、これらの学校の設置については、市町村及び都道府県に義務付けられている。
・自治体の教育財政の概要を、2005年度における地方自治体(47都道府県、1,821市町村、23特別区、1,464一部事務組合及び63広域連合)の普通会計の純計決算額で見ることとする。自治体が実施する学校教育、社会教育などの教育文化行政の推進に要する経費である教育費の決算額は16兆5,778億円で、歳出総額に占める割合は18.3%となっており、歳出総額の中で最も大きな割合を占めている。教育費の構成比を団体種類別にみると、都道府県においては23.7%、市町村においては10.8%となっている。教育費の目的別の内訳をみると、小学校費が5兆992億円と最も大きな割合(教育費総額の30.8%)を占め、以下、中学校費2兆8,782億円(同17.4%)、高等学校費2兆4,988億円(同15.1%)、教職員の退職金や私立学校の振興などに要する経費である教育総務費2兆3,101億円(同13.9%)の順となっている。目的別の構成比を団体種類別にみると、都道府県においては小学校費が最も大きな割合(34.2%)を占め、以下、高等学校費(20.4%)、中学校費(19.3%)となっている。また、市町村においても、小学校費が最も大きな割合(23.1%)を占め、以下、保健体育費(20.9%)、社会教育費(20.7%)の順となっている。教育費の性質別の内訳をみると、人件費が11兆3,718億円と最も大きな割合(教育費総額の68.6%)を占め、以下、物件費2兆834億円(同12.6%)、義務教育施設整備等の経費である普通建設事業費1兆5,712億円(同9.5%)の順となっている。性質別の構成比を団体種類別にみると、都道府県においては、都道府県立学校教職員の人件費のほか、市町村立義務教育諸学校の人件費を負担していることから、人件費が大部分(84.8%)を占めている。また、市町村においても、人件費が最も大きな割合(33.2%)を占め、以下、物件費(31.9%)、普通建設事業費(22.8%)の順となっている。なお、このうち学校教育費だけ取り出してみた場合、最終支出ベースにおける国と地方の割合は国15%、地方85%であり、実際の教育行政は、ほとんどが自治体の手で実施されていることがわかる。
・義務教育費国庫負担制度とは、本来、市町村が負担すべき市町村立小・中学校教職員の給与費を都道府県の負担とした上で、国が都道府県の実支出額の原則3分の1を負担するというものである。2006年度の予算では、約70万人分、1兆6,763億円にのぼる。国庫負担の対象は、公立の義務教育諸学校教職員(校長、教頭、教諭、事務職員など)の給料・諸手当である。1953年の現行義務教育費国庫負担法制定後、負担対象経費は順次拡大されてきたが、1985年移行、国と地方の役割分担、国と地方の財政状況などを踏まえ、給料・諸手当以外の費用が国庫負担の対象から外れ、地方交付税により財源的に手当てされるようになり、現状となっている。

伊藤さゆり「金融危機下のユーロとポンド」ニッセイ基礎研究所『Weekly エコノミスト・レター』2009年2月13日。
・イギリス政府は、想定以上の景気悪化、金融機関の損失拡大に対して、1月19日に不良資産対策を含む第二弾の金融対策を欧州主要国の中でいち早く打ち出した。また、イングランド銀行(BOE)の政策金利は、2月には1%まで引き下げられ、ECBの2%を下回っている。さらに、今月11日に公表された「インフレ報告」では、追加で0.75%まで利下げを行った場合でも2009年中のプラス成長の回復は難しく、物価は中期的に2%という政策目標を下回るリスクが高いという見通しが示されている。この見通しに基づき、キング総裁は、「(マネーサプライを増やす手法も含む)あらゆる手段を用いインフレ目標への回帰と潜在力に見合った成長を回復する」と述べており、3月4日から5日の金融政策委員会(MPC)など近い将来に量的緩和に踏み切る見通しが強まった。

「欧州経済・金融市場の概況」みずほ総合研究所『みずほ欧州経済情報』2009年2月号。
・英国景気は1991年以来のリセッション(2四半期連続の景気後退)に陥ったことが確認された。10-12月期の英実質GDPは前期比マイナス1.5%と、1980年4-6月期以来の大幅なマイナス成長となった。需要項目は未発表だが、個人消費、設備投資など内需悪化が主因とみられる。業種別にみると、10-12月期は製造業セクターの落ち込みが大きく押し下げた。10-12月期の鉱工実質総付加価値は前期比マイナス3.9%となり、実質GDPをマイナス0.6Pt程度押し下げた。英国はサービス業が中心だが、昨年末は世界的な輸出急減による影響を免れなかった。
・住宅価格の下落による逆資産効果、バランスシート調整圧力、雇用・所得環境の悪化が個人消費を抑制することになろう。歴史的な低水準まで低下した貯蓄率(2008年7-9月期:1.8%)は徐々に上昇していくとみている。雇用情勢の悪化は2008年末にかけて急激に加速し始めた。1月の失業者数(失業保険申請ベース)は1,233千人、3ヶ月前差プラス236千人と、前回景気後退に陥った1991年のペースに近づいている。
・12月からVATが引き下げられたこともあり、1月のインフレ率はプラス3.1%(前月比マイナス1.0Pt)と大きく低下した。他方、ポンド安による影響で、12月の輸入物価(石油除く)が前年比プラス14.0%と急上昇している。デフレを回避したいBOEにとって、輸入物価上昇はプラス材料となろう。もっとも、内需悪化や雇用コスト削減によって、今後の国内物価への価格転嫁は限定的と見込まれる。

大橋善晃「英国における金融教育 FSA主導による「金融に関する消費者教育」への取り組み」『証券レビュー』2009年2月号。
・英国の金融教育の特色は、それが金融サービス市場法という法律によって位置づけられていることである。同法は、FSA (Financial Service Authority)の規制目的として、市場の信頼性、公衆の啓蒙、消費者の保護、金融犯罪の削減の4つを掲げたが、このうち、公衆の啓蒙、消費者の保護という目的を達成するための業務が「消費者教育」と呼ばれるものであり、FSAは、これを、金融サービス市場における公正で効率的な機能を高めるという彼らの規制課題の重要な一部であると位置づけた。
・英国では、1997年の総選挙で労働党政権が成立すると、直ちに金融サービス業や金融・資本市場の規制体系を全面的に変革する方針が打ち出された。その内容は、従来の業種ごとの分散型の規制方式から単一の規制機関である金融サービス機構(FSA)による規制方式に改めるというものであった。この背景には、1986年のビッグバン開始以降、金融自由化の進展に伴って、銀行や証券等の従来の枠組みが崩れてきたことや、業態ごとの自主規制機関が公益と業界利益の双方を担うことに矛盾や批判があったことなどが挙げられている。金融サービス市場法は、2000年6月、議会を通過し、女王の裁可を得て成立した。金融サービス市場のもとで、FSAは、唯一の規制・監督機関として明確に位置づけられ、従来の9つの規制・監督機関の役割を引き継ぐほか、弁護士、会計士などの専門職団体及びロイズ保険組合の監督を担うことになった。FSAの法的形態は保証有限責任の私的会社であり、その運営費用は主に認可業者からの手数料によって賄われることとされた。
・金融サービス市場法は、FSAが担う目的についても、金融サービス市場法の規制目的(regulatory objectives、あるいは、statutory objectives)として以下の4つが明記された。1. 市場の信頼性、2. 公衆の啓蒙、3. 消費者の保護、4. 金融犯罪の削減。これらの規制目的を達成するために、FSAには次のような広範な権限が与えられている。1. 規則策定:業務基準、規制手続き、消費者・業者の救済などに関わる規則及びガイダンスの策定、2. 認可:業者が特定の規制業務を遂行することを許可する、3. 監視:調査権限などを行使して、業務が適切な基準に従って遂行されているかを監視する、4. 教育及び訓練:業者の能力・規制業務に対する理解向上、金融市場・商品の性質に関する消費者意識の向上を促進する、5. エンフォースメント:介入・制裁・訴追権限を行使することによって、規制の実効性を確保する、6. 救済:業者への苦情処理、業者の破綻などに伴う損失補償といった、消費者の救済手段を整備する。
・金融サービス市場法によって、FSAは、金融システムに対する公衆の理解増進、適切な水準の消費者保護の確保という法定の目的を付与されたのであるが、この新たな目的を達成するための業務が、「消費者教育」(Consumer Education)として知られるものであり、FSAは、これを、金融サービス市場における公正で効率的な機能を高めるという彼らの全体的な規制課題の重要な一部であると位置づける。そして、当時の公衆の知識水準を勘案すれば、消費者教育は、公衆の金融システムに対する認識と理解を喚起するために必要な金融リテラシー(financial literacy)を高めるための優先課題を幅広く盛り込む必要があるとしたのである。ここで金融リテラシーというのは、「情報に基づく判断を行い、資金の活用及び管理に関して効率的な意思決定を行なう能力」と定義されている。

国際投信投資顧問株式会社「投資戦略マンスリー」2009年2月号。
・英国では、住宅という資産価格の下落と実体経済悪化の同時進行を止めるべく、政府と中銀は1月19日に包括的な対策を発表しました。つまり、1. 中銀によるCPなどの金融資産買取り、2. 金融機関から発生する損失の政府肩代わりなどです。2008年に発表していた公的資金注入策から、より踏み込んだ形です。一方、政府負担の強まりで、英国の財政赤字は悪化が予想されます。英中銀の推計では、今回の金融危機で見込まれる英国の損失額は1,226億ポンドとGDPの約8.5%になると予想されています。これらに係る費用を国債発行で賄う場合、財政赤字は現在の見込値からさらに膨らむと思われます。また、今後はこれら対策でバランスシート縮小をいかに最小限に留めるかが課題になります。
・英国は1月19日に金融システム安定化策を発表しました。即ち、1. AAA格の資産担保証券(ABS)への政府保証、2. 中銀による金融資産買取り(総額500億ポンド)、3. 政府による金融機関の損失肩代わりなどです。昨年は公的資金注入を主要金融機関に行いましたが、貸出し縮小は止まらず、より抜本的な対策に乗り出したとみられます。今後は、3に関して金融機関が抱える不良債権処理の厳格化に政府が何処まで踏み込めるかが鍵になると思われます。これら対策の財源は新規に国債を発行して賄われる予定です。政府の財政赤字対GDP比(英財務省の2008年11月時点の見積もりでは2009年マイナス5.3%、2010年マイナス4.7%)はさらに拡大が見込まれます。金融安定化策の進捗度は先進国の中でも進んでいるとみられますが、あく抜け感が出てくるまではポンドには売り圧力が掛かりやすいでしょう。

「英国におけるREACH施行の評価」NEDO『海外レポート』1038、2009年2月12日。
・環境・食糧・農村問題省(DEFRA:Department for the Environment, Food and Rural Affairs)の話を聞いた結果によれば、化学品製造・輸入業者とその下流部門のユーザーはそもそもREACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals:化学物質の登録、認可、評価、制限に関する規則)を、野心的に過ぎ、官僚的で、法外かつ不必要な高コストを要する法律と見ているものの、現在大半が同法を遵守しているという意見が主流だった。2008年11月1日、欧州化学物質庁(ECHA:European Chemicals Agency)は、EU/EEA諸国(EU加盟27ヵ国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)内の予備登録水準に関する統計を発表した。加盟国中ドイツが最も事前登録の件数が多く、次いで英国が多かった。英国は、適切な指標を明らかにし、評価と監視のメカニズムを開発して、国内におけるREACH施行の進捗状況を評価する意向である。DEFRAは指標を評価するプロポーザルを現在検討しているが、監視プログラムの整備、影響の評価、2010年までの報告書完成を目指すなど、かなり広範なものになると述べた。また、健康、環境、ビジネスに影響が浸透するには数年かかると思われ、英国におけるREACHの影響のより正確な評価は、2015年の報告書作成を待たねばならないだろうと述べた。

大政美樹「主要国の金融政策動向」国際金融情報センター、2009年2月5日。
・英国:1.50% 1月8日に0.5%ポイント引き下げ1.50%へ。危機後退の勢いが強く、過去最低水準に。10月以降今回まで、計3.5%の大幅利下げ(10月:0.5%ポイント、11月:1.5%ポイント、12月:1.0%ポイント)を実施。次回は2月4-5日。

大政美樹「主要国の政治動向」国際金融情報センター、2009年2月5日。
・英国 2009年:総選挙(予定)。

藤森克彦「英国ブラウン政権の雇用対策 将来を見据えた人材への「投資」を重視」みずほ情報総研、2009年2月17日。
・英国の雇用情勢が、悪化の一途を辿っている。最新の雇用統計によれば、08年度10-12月期の失業率は6.3%となり、わずか1年で1.1%ポイントも上昇した。失業者数は1年前と比べて、36万9千人増加して197万人。これは1997年以来の高い水準である。今後も失業者は増え続け、2010年までに300万人を超えるとの観測も出されている。
・注目すべきは、職業訓練にも一層力を入れようとしている点である。今年1月に国内の経営者や労働組合などを集めて「雇用サミット」を開催したが、その中でブラウン首相は、低所得者層への経済支援などを説明した後に、「しかし最善の支援は、人々にスキルを身につけさせて、将来への投資をすることである。それが、回復期に向けた準備になる」として、将来に向けて今こそ人材へ投資をしなくてはいけないことを強調した。もっとも、不況期ではいくらスキルを身につけても、求人が少ないので効果が薄いという批判もある。しかし現在でも、英国内には50万件の求人があり、毎日新たに1万件の求人が登録されている状況だという。ブラウン首相は、「政府は常に人々を失業しないようにできるわけではないが、失業者の再就職を支援することはできる」と語り、半年以上の長期失業者への就職活動支援や職業訓練を一層強化するとした。そのための施策として、従来からのニューディール政策に加えて、「地方における雇用のパートナーシップ(Local Employment Partnerships:LEP)」などが進められている。これは、各地の職業安定所や職業訓練機関が求人企業と協力して、長期失業者に当該企業に合った効果的な訓練を行って、就職に結びつけようというものだ。職業安定所や訓練機関のスタッフは、LEPに調印した企業の人材ニーズを把握して、それに合った訓練計画を立て、訓練を行っていく。他方、調印した企業は、訓練を修了した失業者に面談や職業体験の機会を与える。採用するか否かは企業の判断によるが、2007年の実施以来、9万人以上がLEPを通じて就職したという。英国政府は、LEPによってさらに20万人の就職を目指している。

岡久慶「イギリス 2008-2009年会期の立法計画」国立国会図書館調査及び立法交差局『外国の立法』2009年1月。
・2008年12月3日、イギリス議会の2008-2009年会期の開院式が行われ、政府は14件の政府法案を発表した。2008-2009年会期における開院勅語は、イギリス経済の安定化を政府最大の優先事項に位置付け、家族及び企業が景気後退を凌ぐのを助けると論じ、政府の立法プログラムにおける経済及び福祉方面の重要性を強調している。
・銀行業務法案(Banking Bill):経営不振に陥った金融機関を救済する恒久的な法的枠組を整え、金融市場の監督を行う三大機関(イングランド銀行、金融サービス機構及び財務省)の連携を強化し、イングランド銀行に経営不振の銀行への短期的匿名融資を行わせ、預金者保護の額を3万5000ポンドから5万ポンドに引き上げる。前会期からの継続審議法案である。
・セービング・ゲイトウェイ口座法案(Saving Gateway Accounts Bill):低所得層800万人を対象に、最長で2年間、月1ポンドの貯蓄に対して50ペンスの割合で政府拠出金(最高額で25ポンドに対する12.5ポンド、満期で300ポンドになる)を与え、貯蓄促進を図る制度。2010年施行予定。
・福祉改革法案(Welfare Reform Bill):手当受給から就労への移行を促す法案と位置づけられ、所得補助金を廃止し、受給者を健康であれば求職者手当、健康に問題があれば雇用・生活補助手当へと移管し、常に就労するよう圧力がかかる状態に置く。給付申請者に嘘発見器のテストを義務付ける規定を盛り込むことが、一部のメディアによって報道されている。
・児童貧困法案(Child Poverty Bill):労働党政府は2020年までに児童貧困を一掃するという目標を掲げている。しかし、現状では2010年の中間目標達成も困難であり、保守党がこの目標を守る意思がないことを踏まえ、目標達成に法的拘束力を与える規定を設ける。
・警察活動及び犯罪法案(Policing and Crime Bill):人身取引の被害者の女性を買春することを犯罪化し、ラップダンスを提供するクラブを取り締り、地方自治体に公共秩序紊乱の原因となっている酒場が酒の安売り等で客寄せすることを禁ずる権限を与える。特に買春に関しては、スミス内相が、女性が人身取引の被害者であることを知らなかった場合でも、これが抗弁の理由とならない旨を明らかにしており、議論が予想される。
・国境、移民及び市民権法案(Borders, Immigration and Citizenship Bill):市民権獲得に必要な条件を、合法的な職、納税、共同体への参加(ボランティア活動)、犯罪歴のないことと入国以来6年経過していることと定め、ボランティアに参加しない者には8年の期間が必要となることを定める。期間満了までの間に失業した者、家族関係で入国したにもかかわらずその関係が消滅した者には、国外退去を求めることができる。また新しい移民には、地元の公共サービスに対する移民増加による負担の代償として、課金を賦課することが可能となる。

岡久慶「イギリス 日本と韓国に関する下院外交問題特別委員会の報告書」国立国会図書館調査及び立法交差局『外国の立法』2009年1月。
・2008年11月12日、イギリス議会下院外交問題特別委員会は、2007年度の第10回報告として、「世界的安全保障:日本と韓国」を発表した。報告書は両国の国際的役割及び対英関係について考察し、幾つかの結論及び政府に対する勧告を提示している。
・日韓関係の改善は、特に北朝鮮問題への対応の上でも重要であり、これを歓迎する。竹島/独島問題の継続を遺憾とし、紛争のエスカレートを避け、恒久的解決の枠組みを築くよう働きかけることを勧告する。第二次世界大戦中の従軍慰安婦問題に関しては、日本も含めて国際的にその重要性が認識されるべきである。
・核問題と拉致被害者問題が進展すれば、日本と北朝鮮の関係正常化は可能だが、これらの問題は、別個に解決すべきである。拉致問題が日本にとって感情的なしこりとなる問題であることは国際的に認識されるべきであり、政府も北朝鮮に問題解決の働きかけを行うべきであるが、国際的に重要なのは朝鮮半島非核化である。
・日本の安保理常任理事国入りを、原則として支援する政府方針を是とする。
・捕鯨は日本の文化的伝統もあり、短期で止めさせることは困難だが、継続的圧力をかけ続ける政府方針を是とする。
・覚書注:捕鯨がなぜ項目に挙げられているのかわからない。外交問題なのだろうか。

中川財務大臣辞任の背景

 今日は中川財務大臣辞任の背景です。

中川辞任、財務省の“謀略”説も…情報流出が早すぎる
扱いにくい大臣として有名

 中川昭一前財務・金融相の辞任騒動をめぐり、永田町ではさまざまな情報が飛びかい、謀略説すら出始めている。14日にローマで開かれたG7(主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議)後の記者会見で、中川氏がろれつが回らない醜態をさらした背景や経緯に関する情報流出が詳細かつ早過ぎるのだ。「麻生内閣を見限った霞が関、特に財務省周辺が動いたのでは」(自民党筋)という見方が出ている。

 18日の毎日新聞朝刊の「検証ローマの2日」という記事は痛烈だった。中川氏が14日のG7昼食会を途中で抜け出し、ホテル内のレストランで財務省局長と同行した女性記者、イタリア人通訳ら数人と会食したと指摘。

 この席で、≪ビュッフェ形式のサラダとパスタとともに赤のグラスワインを注文≫≪昨年9月の財務相就任以降、G7などの海外出張では同行の女性記者を集めて飲食を行うことが恒例化していた≫と報じた。

 中川氏は夕刊フジなどの取材に「ワインは口に含んだだけ」と証言しているが、気になるのは一連の情報が流れた経緯だ。

 「泥酔疑惑」が問題化したのは15日午後だが、翌16日には「G7昼食会後、問題の記者会見までに正式日程にない会食があった」との情報が流れ、17日午前には「新聞社と民放のEさんとHさんという美人記者が同席していた」「会食をセットした財務省局長は中川氏のお気に入り。ワインのソムリエの資格を持っている」という個別情報まで広まった。

 中川氏は16日夜まで大臣留任に意欲を燃やしていたが、17日午前に委員会出席をキャンセルして病院に。同日昼、財務省内で記者会見して来年度予算案と関連法案の衆院通過後の辞任を表明したが、野党の徹底抗戦の姿勢を受けて同日夕に辞任した。

 この水面下で、前出のような情報戦があったのは間違いない。

 自民党中堅は「情報流出が詳細かつ早過ぎる。同席した女性記者からというより、霞が関関係者、特に財務省周辺から漏れたのではないか。中川氏は『扱いにくい大臣』として有名で官僚らに敬遠されているうえ、内閣支持率の低下から『麻生内閣は長くない』と見限ったのでは」と語る。

 中川氏には酒にまつわる数々の失敗がある。それだけに、かつて中川氏が大臣を務めた経産省の幹部も「そもそも、あんな状態で中川氏に記者会見させたことは財務省にも問題がある。日銀総裁だけに任せる方法もあったのではないか」と、同省の危機管理のあり方に大きな疑問を投げかけた。

 自民党支配の終焉とともに、永田町と霞が関の固い絆も綻びつつあるのか。

http://www.zakzak.co.jp/top/200902/t2009021828_all.html

 昨日の続きです。中川大臣は霞ヶ関が仕掛けた策略にはまった可能性が出てきました。件の記者会見の前に不自然な飲み会が開催されていたのです。

 飲み会には大臣に同行した財務官僚や記者が参加していました。大切な記者会見の前に大臣と酒を飲んでいたのです。財務官僚の玉木林太郎や女性記者は飲み会に疑問を感じなかったのでしょうか。理解に苦しみます。

 ところで、女性記者とはでしょうか。3人とも綺麗な女性だと勝手に推測しています。とくに新聞記者の女性は男受けする見た目でしょうと思い込んでいます。若くて美しい女性に囲まれて煽られれば、男は酒を飲んでしまうものです。たとえ体調不良であろうとも、たとえ重要な会見の前であろうとも。

 そういえば、記事にもあるように、今回は毎日新聞が良い仕事をしました。毎日新聞の暴露により、不自然な飲み会が明らかになりました。女性記者たちの名前や写真なども暴露していただけると助かりましたが、とりあえずは良い仕事だったと思います。

 変態記事以降、他の新聞社から仲間はずれにされている毎日新聞の仕返しでしょう。国民から二度とマスコミだと位置づけられることはない毎日新聞ですが、そのおかげで、他のマスコミを売ることができました。GJです。

中川財務大臣の辞任

 今日は中川財務大臣の辞任です。

Shoichi Nakagawa resigns as Japanese Finance Minister over 'drunken' performance at G7
February 17, 2009 Leo Lewis in Tokyo

Japan’s Finance Minister has fallen on his sword and resigned amid growing public rage over what appeared to be drunken behaviour at last weekend’s G7 summit in Rome.

Shoichi Nakagawa’s resignation, which was accepted with immediate effect today, could not come at a more fragile time for the government of Prime Minister Taro Aso ? a leader who is fast becoming Japan’s most unpopular ever, and who stands accused by the public of dithering on the country’s rapidly deteriorating economic problems.

Mr Nakagawa will be replaced by Kaoru Yosano, the Economic and Fiscal Policy Minister, who has indicated that he would consider additional stimulus measures to rescue the economy.

Mr Nakagawa’s decision to step down came as he faced an opposition-led censure motion, which he would almost certainly have lost, and a rising tide of disgust from within his own party.

Mr Nakagawa, who was sticking today with his excuse that a combination of jetlag and cough mixture got the better of him, initially said that he would stay on until parliament gave the green light to a supplementary budget aimed at steering Japan out of the sharpest recessionary plunge in its history. A few hours later, under a barrage of condemnation, he said that he would depart immediately because of "the atmosphere in parliament”.

A number of politicians have come forward today with anecdotal evidence of Mr Nakagawa's odd behaviour ? he has, for example, been spotted bumping into the doorframes along the corridors of power.

Kenji Yamaoka, the head of the parliamentary affairs committee of the opposition Democratic Party of Japan, said yesterday that there was "nobody in the Diet [parliament] who did not know" about Mr Nakagawa's fondness for a tipple.

Video footage has also surfaced of an incident in parliament in 2006 when Mr Nakagawa stopped speaking during a speech and stood silent and virtually motionless for about half a minute before sitting down. At the time, he blamed medicine he was taking for back pain.

Monday’s quarterly GDP figures showed Japan’s exports ? the engine of national growth ? sliding at record pace. Tokyo stocks tumbled on the combined miseries of an economy in distress and the lack of a steady rudder in government.

Naomi Fink, a strategist at the Bank of Tokyo Mitsubishi UFJ, said that the markets were finally waking up to the political crisis that has put Japanese democracy in its current “leadership nadir”.

She added: “This time the media are not the only ones taking notice; markets have woken up to the realities of Japan’s deteriorating political situation and do not like what they see."

Japanese stocks, which were all but impervious to the largest quarterly decline in growth since the 1970s, had taken notice this time, she said.

In addition to the growing financial turmoil gripping Japan, over the past three years the leadership of the country has changed three times, with countless cabinet reshuffles and resignations in between.

In a hastily convened press conference today, Mr Nakagawa apologised “for causing such a big fuss”. But in what appeared to be confirmation of public and parliamentary suspicions that he was indeed drunk during his Rome press conference, he hinted that may soon hospitalise himself to “prevent myself doing any further damage”.

Rumours regarding Mr Nakagawa’s fondness for alcohol have been swirling in political circles for many years. The former prime minister, Yoshiro Mori, said yesterday that he was aware of the Finance Minister’s fondness for a drink and had previously warned him not to overdo things.

“The TV footage was shocking,” Seiko Noda, the Consumer Minister, said. “A Cabinet minister must be fit and he needs more self -control.”

http://www.timesonline.co.uk/tol/news/world/asia/article5751583.ece

 中川大臣がG7後の記者会見に酩酊状態で出席したことの責任を取り、辞任しました。これは酷い事件です。いや、酩酊状態の中川大臣が酷いではなく、彼に記者会見を強行させたことが酷いと思いました。

 元記事には日本のテレビでも放映された映像が掲載されています。ろれつが回らない話し方で応答したり、記者の質問が聞き取れなかったり、質問とは違う筋の回答をしたり、中川大臣の酷い姿が映っています。痛々しくて見ているのが辛いです。

 誰もが疑問の感じるところでしょうが、なぜこのような状態の大臣を記者会見に出席させたのでしょう。大臣に同行した人々はなぜ止めなかったのでしょう。へろへろの中川大臣が適切に記者会見を乗り切れるとは小学生でも考えないでしょう。

 報道の側としても、なぜこのような状態の中川大臣の姿を報道しようとしたのでしょう。会場にいた記者たちのなかには、これはまずいと感じて会見の中止や代役を求める人はいなかったのでしょうか。面白ければそれで良いのでしょうか。

 とはいえ、日本のマスコミが死んでいることは世界の常識ですから、こちらの点は置いておきましょう。不思議に感じる点は前者です。つまり、大臣の同行者たちは何をしていたのか、という点です。

 記者会見を強行した事情はあるでしょう。今回のG7は世界的な金融危機のなかで開催されたものであり、そのような重要な会議後の記者会見に中川大臣を出席させないわけにはいかなかった、という事情です。しかし、これに納得できる人はいないでしょう。

 酩酊状態の中川大臣を公式の場に出せば、辞任に追い込まれるような事態になることは予測できたはずです。それを予測できないような人しか同行しなかったとでもいうのでしょうか。あまりにも対応が杜撰です。

 なお、酩酊状態という言葉は意図的に使っています。今日の記事にある映像を見る限り、酒に酔っているというよりも、服薬による作用がお酒で増幅されていると感じたからです。風邪薬、正確には解熱剤でも服薬していたのではないでしょうか。

 いずれにしても、酷い事件です。もっとも、こうした事態を回避できなかった中川大臣にも責任はあると思います。服薬しながら飲酒してしまった責任というよりも、酩酊状態で記者会見に無理矢理出席させられた責任ですが。

 さて、ネット上では中川大臣は実は酩酊状態ではなかった、という説が有力視されています。酩酊ではなく恍惚だったという説です。いわゆるガチホモ説です。案外、これが真相なのかもしれません。

覚書 090214

吉川真裕「ヨーロッパの株式保有構造」日本証券経済研究所『証研レポート』1652号、2009年2月。
・ヨーロッパ全体の2007年の株式保有状況についてみると、外国人が37%で最も多く、次いで国内機関投資家が22%、事業法人が17%、個人が14%、国内金融機関が5%、公的部門が5%となっている。これに対して、わが国の2007年の株式保有状況では、外国人が27.6%で最も多く、次いで事業法人が21.3%、個人が18.2%、国内金融機関が16.4%、国内機関投資家が16.1%、公的部門が0.4%となっている。そして、両者の差をとってみると、ヨーロッパでは外国人が9%、国内機関投資家が6%、公的部門が5%、わが国より大きく、逆に国内金融機関が11%、事業法人が4%、個人が4%、わが国よりも小さいことがわかる。外国人の持ち株比率が高く、個人の持ち株比率が低いことではヨーロッパはわが国以上であり、こうした傾向は世界的なもので、わが国でとりわけ顕著であるということはないことが確認できる。ただし、国ごとのばらつきは大きく、外国人持ち株比率ではキプロスの11%からスロバキアの74%まで、個人持ち株比率ではスロバキアの3%からイタリアの27%まで、さまざまである。
・ヨーロッパでドイツ株についで取引シェアが大きいイギリス株(22%)の株式保有状況をみると、金融機関が44%、外国人が40%、個人が13%、事業法人が3%、公共部門が0%となっている。ヨーロッパ全体との差をとってみると、イギリスでは金融機関が17%、外国人が3%大きく、逆に事業法人が14%、公的部門が5%、個人が1%小さいことがわかる。また、わが国と比べると外国人が12.4%、金融機関が11.9%、公的部門が0.3%高く、事業法人が18.6%、個人が5.4%低い。金融機関と外国人の大きさが目につくが、外国人の持ち株比率はヨーロッパ全体とさほど変わらず、金融機関の持ち株比率の高さと事業法人の持ち株比率の低さがイギリスの株式補給構造の顕著な特徴であり、ヨーロッパ全体の株式保有構造とはやはり大きく異なっている。イギリスでは外国企業によるイギリス企業の買収が多く、外国人の株式比率が高いとみられているが、さほどでもなく、むしろドイツとは逆に企業法人の持ち株比率の低さとファンドを含めた金融機関の持ち株比率の高さが顕著である。そして、金融機関や外国人の持ち株比率が高いことがMTF(取引所類似施設)の取引シェアの高さと関係しているものと考えられる。

「英国の雇用対策」リクルートワークス研究所『欧米主要国の雇用対策』2009年2月10日。
・2008年10月、政府は失業者の再就職支援に向こう3年間で1億ポンドを投入することを発表。現在、人員整理の対象となっている労働者や失業者のスキルアップを図り、現職の分野または新たな分野の継続的な仕事に就けるようサポートする。なお、同年12月に、予算を5,800万ポンド追加し、総額1億5,800万ポンドとすることが発表された。
・2008年11月発表の2008年プレ予算案で、失業者の円滑な再就職を支援するために、向こう2年間で13億ポンドの追加予算を投じることが公表された。
・2009年中に、教育、交通、住宅部門を中心に400億ポンドを投じ、労働者のスキルの底上げや最高10万人の雇用創出を目指す。具体的には、校舎の修復、新たな鉄道の建設、病院関連プロジェクト、超高速ブロードバンドの普及、エコプロジェクト(電気自動車、風力・波力発電)の分野の雇用を増やす。
・失業期間が6カ月以上に及ぶ失業者に対する支援策。2009年4月から2年間で総額5億ポンドを投じ、こうした人材を雇用する企業への報奨金や新たな職業訓練プログラムなどを提供する。
・EU加盟国のパートナー組織と連携し、労働者の就業機会の拡大とスキルアップのために新たな手法を開発、試行、運営する地域的なプロジェクト。イングランドのみで実施。プロジェクトは2009年春に開始予定で、最高3年間実施される。1つのプロジェクトにつき、最高約100万ポンドまで支給される。総予算は2,700万ポンドで、欧州社会基金から拠出される。
・従業員のスキルや専門知識を形成することで、中小企業が不況を乗り切れるようサポートする。1. 助成金を受けられる訓練の種類の柔軟化(事業改善、チームワーク、カスタマーサービス、リスク管理などの領域の短期訓練パッケージを提供)。2. 全国資格枠組みのレベル2の資格を既に取得している従業員に対しても、同レベルの他の資格を取得するための費用を全額支給、および、レベル3の資格を取得するための費用を一部補助する。3. リーダーシップ・マネジメント・プログラムの費用支給対象の拡大(これまで、従業員数10人以上の企業を対象としていたのが、従業員数5人以上の企業へ拡大)。
・9,800万ポンドを投じ、今後必要とされる、様々な分野の高技能労働者を養成するために、個々の企業のニーズに合った職業訓練を提供する。対象となる産業は、1. 化学、医薬品、原子力、石油、2. 土木、3. 放送メディア。
・教育・訓練の計画・資金供給を担当する学習技能評議会(LSC)の2009/10年度予算を121億ポンドに倍増し、若年者の教育・訓練への参加および大学と企業との協力を促進する。2015年以降、全ての若者は18歳になるまでは教育や訓練を継続することが求められる。
・従業員に対して、就業時間中に職務に関連した職業訓練を受ける時間を申請する権利を与えるという趣旨の法案。従業員から申請された場合、雇用主はこれを真剣に検討しなければならない。2010年から導入予定。
・今後3年間で建設業に7,000人分、小売大手数社に3,000人分の見習い訓練を設ける計画。一定数の見習い訓練生を受け入れることを条件としたPFI契約によって、建設業の見習い訓練を創出する見込み。
・1億4,000万ポンドを投じ、2009/10年度に3万5,000人分の見習い訓練を追加する。これで、政府支援の見習い訓練は総計25万人分以上に。
・向こう2年間で8,300万ポンドを投入し、失業期間6カ月以上の失業者7万5,000人に対して、高度な職業訓練を提供し、再就職支援を行う。失業者に提供される職業訓練の概要は以下の通り。また、地域ごとに、LSC、ジョブセンタープラス、地域開発局、部門別技能評議会が協力し、求人市場の状況や雇用主の求めるスキルを特定する。

後藤あす美「英国経済 長期安定成長の清算」大和総研『海外情報 世界経済見通し 景気刺激策の効果を待つ』2009年2月10日。
・2008年Q4のGDP成長率は前期比マイナス1.5%、前年比マイナス0.6%となった。1992年Q3以降、安定的なプラス成長を続けてきた英国が、鋭角的にリセッション入りした背景には、肥大化した金融業が存在した。市場主義を遂行させたことによって、金融システムと消費者・企業の関係が密接になり、金融業(仲介業も含め)はGDPの3割を稼ぎ出し、雇用の2割を担う規模まで拡大した。金融業は民間企業に対しては対GDP比で4割近く、家計に対しては同9割以上の貸付を行うまでに発展した。家計に対する融資は、住宅ローンが中心である。
・英国人の消費動向に深刻な危機感が感じられない。2008年12月の小売売上高は前月比プラス1.6%、前年比プラス3.9%と大幅に落ち込む兆しが見られない。BoEが大幅な利下げを断行し、政府はVAT税率の引き下げを08年12月から実施し、消費の底上げを図った。更に政府は住宅ローン返済サポートを2009年に入って拡充させており、これによって、家計の危機的状況に対する認識が甘くなっている。
・このような経済構造を踏まえると、英政府やBoEの施策が、金融業界への対応や家計の下支えに集中してしまうのは致し方ない。しかし、金融機関の動向は二極化している。英国の公的資金を受け入れたロイズTSBやRBSは、資産のオフバランス化や政府保証を利用すると考えられる。けれども、対策に充てられる資金では不十分と考えられる。逆に、HSBCやスタンダード・チャータード等は、融資拡大条件を突きつけられるならば、自力でバランスシートの改善や収益確保を行うことに尽力する姿勢でいる。この場合、金融安定化の足並みが揃うまでの時間・費用が嵩み、景気下振れ長期化が予想される。
・覚書注:金融業が肥大化したとか、家計の消費に対する認識が甘くなっているとか、根拠もなく言い切っている割には、ネガティブすぎる内容に満ちたレポートである。分析に弱気になっている姿勢を如実に示している。あるいは、上司から指示だろうか。

後藤あす美「英国経済見通し G20までの土台作りへ」大和総研『海外情報』2009年2月10日。
・2月5日、BoEは市場予想通り、政策金利を50bpt引き下げ、1%にすることを決定した。BoEの声明文には、利下げの理由として、新興国にまで広がった世界的な景気悪化、英国内での生産・消費・融資状況のタイト化、物価の急速な低下が挙げられている。同様に50bptの利下げを実施した1月の金融政策委員会の議事録では、2008年10月以降の大幅且つ急激な利下げに対して、効果を慎重に見極める必要性があるとのスタンスが垣間見られた。しかし、最終的な決議の際は、雇用市場の縮小を危惧し、ブランチフラワー委員が100bptの利下げを主張するなど、追加利下げを強く要求する動きもあった。また、足元では、市場の期待に対しネガティブサプライズになる判断をBoEがした場合、株式市場や為替、債券市場を押し下げる危険性があった。2月の金融政策委員会の時点では、BoEは、英政府から民間部門の資産買取の権限も得ており、市場の期待をどう判断するか、前回以上に気にしていた可能性もある。今回(2月)の決定時も、追加利下げの有効性、景気下振れ指標の吟味、BoEの判断に対する市場の許容範囲の3つの観点が議論に挙がっていたと考えられる。
・消費者信頼感指数の構成項目の購買意欲のみが改善している。賃金上昇率に関しては、着実に抑制されているが、その速度が遅い。2007年時点からボーナスカット等でコスト削減に努めていたセクターは小売業や建設業、機器メーカー等であった。一方で、金融業や公共部門では、前年比で伸びは低いものの、ボーナスを支給してもらっているケースが多い。公的資金を注入された金融機関のボーナス支給に関する議論が続いているが、それとは別に、職を失ったことによって一時的に拡大した手元資金によって、家計の消費への危機感が薄らいでしまったようだ。2008年12月から2009年1月にかけての大幅値下げも家計に活気を与えたように見えた。価格が大きく下落した住宅購入に関しても、前向きな指数となってきていた。しかし、その消費は、企業倒産の急増とそれに伴う失業者増加、更に46年ぶりと言われる寒波到来で、急低下する可能性が出てきた。大雪は、空港閉鎖・地下鉄ストップと経済混乱をもたらし、英小企業連盟(FSB)の発表では35億ポンドの経済損失と試算されている。もちろん大雪対策に関連する商品は品切れになる状況だが、家具・家電等ただでさえ苦戦していた分野は厳しいと予想される。
・金融安定化策に関しては、2008年4月発表の流動性特別スキーム発表以降、2008年9、10月で預金保護や空売り規制、オペ受け入れ担保の拡大、公的資金注入、銀行間取引の政府保証債発行等を即時実施し、順次期間や規模の見直しを図ってきた。2009年1月19日に発表された金融安定化策第二弾に関しても、民間部門の資産の買取は2月13日よりCPの買取という形で徐々に起動してきており、金融機関の不良資産の保証は2月最終週までに詳細が発表され、ABS保証制度は4月から創設される予定だ。ある程度の目処が立っており、過去の対応も考慮すると、比較的迅速な対応と評価できよう。ただ、景気対策に関しては他国と比較して、遅れをとっていると同時に、既に講じられている対策の効果は限定されている。VAT 税率引き下げや、児童手当・年金受給額増額などは、規模が小さく、寧ろ小売業の大幅値下げや資源価格の低下の方が好材料となった。唯一、いち早く手がけた住宅市場の救済は多少の効果を生み出しているのかもしれない。住宅価格指数が、前月比での下落率を一方的に拡大してゆく気配は無い。1月のハリファックス住宅価格指数の場合は前月比プラス1.9%となった。しかし、その裏で、2008年10-12月期の個人破産件数は、前期比プラス8.2%増の2.9万件と急増した。いくら住宅ローンの利払いに猶予が出来たとしても、雇用の不安定さを勘案すると、住宅市場を反発に導くほどの効果をもたらしてはいない。
・2008年11月24日発表のプレ・バジェットに30億ポンド規模の資本支出計画を前倒し(2011年度実施分を2009年度と2010年度に)することが盛り込まれており、2009年1月5日には、ブラウン首相が2010年までに総額400億ポンドの公共事業(対GDP比で2.8-3.0%程度)を行って、10万人雇用創出を目指すことも明言した。しかしながら、1月12日に発表された雇用対策は、7.5万人を対象にした職業訓練プログラムの実施や、向こう2年間で半年以上失業状態にある人を雇用した企業には最大2500ポンドずつ支給する制度の設置であり、政府は本腰で対策を講じているのか疑いたくなるものであった。
・英政府は4月2日にロンドンで開催されるG20金融サミットに並々ならぬ熱意を傾けている。ちょうど、アジア通貨危機を踏まえて開催された1998年のバーミンガム・サミットに近い状況だ。英国としては、金融セクターの回復を目指すために、会計基準や、バッドバンク構想に関係する不良資産の買取基準等を協議したいからである。欧州委員会のアルムニア委員もバッドバンク構想についてG20で協議される見通しを示唆した。仏サルコジ大統領は為替問題も議論したいとしている。ある意味、G20金融サミットには英政府の威信がかかっている。だからこそ、3月中には、英政府の打ち出した方針に、英国の金融機関等から一致した賛同を得ている必要がある。そうなると、G20後の4月末位までには金融安定化策の第2弾の詳細が詰められ、実行される可能性は高い。国の威信が問われる

「英国の地域再生政策」自治体国際化協会『CLAIR REPORT』No.253、2004年5月28日。
・英国で地域再生政策が導入された最大の理由は、1960年代に都市部を中心に顕在化したインナー・シティ問題であり、特に産業構造の転換等による経済的衰退とそれに伴う高失業率が問題の深刻さに拍車をかけた。衰退地域の居住者には、少数民族、失業者、低所得者など社会的弱者が数多く含まれていたため、政府が実施する政策は社会福祉分野に重点が置かれていたが、1977年政策報告書により、都市部の経済的衰退が最大の問題であるとの認識が定着した。その結果、アーバン事業は経済開発を重視する方向へと修正されたが、同時に環境、レクリエーション事業を含む広範な事業が対象となった。このため、政策目標が曖昧になり、後の保守党政権の政策に見られるような、一定期間に期限を区切った戦略性の高い政策と異なる印象は否めない。これに対し、1979年に成立したサッチャー保守党政権は、政権発足当初こそアーバン事業の基本的枠組みを継承したものの、新たに経済開発に特化した地域再生政策を導入した。具体的には、都市開発補助金(Urban Development Grant:UDG)及び都市再生補助金(Urban Regeneration Grant:URG)の補助金に加え、都市開発公社(Urban Development Corporations:UDC)及びエンタープライズ・ゾーン(Enterprise Zones:EZ)という制度的枠組みが導入された。両政党間の地域再生政策の相違点を詳細に分析した研究は数多く存在するため詳しく説明することは避けるが、端的に言えば、地域再生政策の実施・推進機関としての地方自治体の役割に関する評価の違いが具体的政策に反映されていると考えられる。英国の地方自治体は、開発計画に関し、一般的に強い法的権限を有している。自治体構造が2層制の地域においては、広域自治体(County)が土地利用、住宅配置、雇用、通信輸送体系を含む長期の「基本計画(Structure Plan)」を担当し、基礎的自治体(District)は、基本計画に基づいて「地方計画(Local Plan)」を策定・実施する。すなわち、開発計画の作成及び実施は、本来地方自治体の業務であり、中央政府の役割は法律等の制定、地方自治体間の調整、地方自治体に対する財政支援とそれぞれの役割が明確に分かれているのが大きな特徴である。サッチャー保守党政権は、こうした従来の開発方式を大幅に変更した。インナー・シティ問題をはじめ、地方自治体だけでは手に負えないほど衰退が進んだ地域においては、政府の直接的な介入が必要であり、開発計画に関する地方自治体の権限は開発の阻害要因であると判断されたのである。地方自治体の開発計画の実施権が移管された都市開発公社(UDC)や規制緩和措置により企業誘致を図ったエンタープライズ・ゾーン(EZ)は、こうした地方自治体の開発行政権限を抑制しようとする試みであったと言える。地域再生政策の主体という論点に関連して、パートナーシップの重要性について触れておく。本節で紹介したとおり、1977年政策報告書において、地方自治体が政府、民間部門、ボランティア団体等と協力する必要性について言及されてはいたが、パートナーシップに対する関心は乏しく、地域住民を含め地域における地方自治体以外の主体に対する期待は小さかった。サッチャー政権の推進した経済政策は、地方自治体の役割を抑制し、政府と民間部門の直接的な結びつきを強化したが、その経験は後のブレア労働党政権により推進されるパブリック・プライベート・パートナーシップ(Public Private Partnerships)の展開を促す結果につながっていると評価できるのではないか。
・英国の地域再生事業に対する資金支援策は、極めて広範囲に及び、目的、配分方式なども複雑であるが、資金の出所に着目すれば、1. 欧州連合(European Union、以下「EU」と略称)、2. 政府及び地方自治体、3. 政府及び地方自治体以外の準公的部門の3類型に大別することができる。このうち、政府から事業主体(地方自治体、パートナーシップを含む)に対する資金支援策に見られる一般的特徴をまとめると次のとおりとなる。第一の特徴は、広く薄く配分される補助金の割合が減少している点である。より具体的には、1. 地方自治体やパートナーシップから自由提案方式で寄せられた事業計画の中から、地域性や独創性を反映した補助対象事業を選考する「競争原理」を導入した補助金の配分方式、2. 使途が特定されない包括的な補助金であっても、荒廃状況が著しく、他の地域との社会的・経済的格差の大きい特定地域を選択するなど、地域再生の必要性や優先順位の高い地域に対し集中的に資金投入する方式が主流になりつつある。第二の特徴として、地域再生事業を運営、実施する主体が必ずしも地方自治体に限定されない点を指摘することができる。例えば、「近隣地域再生資金(Neighbourhood Renewal Fund)」の受給に当たっては、地方自治体、民間企業、ボランティア団体などにより構成される「地域戦略パートナーシップ(Local Strategic Partnership)」の設置が義務づけられている。地域再生政策が、地域固有の問題点を長期的視点に基づき改善していく試みである以上、地域住民や利害関係者の主体的な参画を促す政策の導入は当然の流れと言えよう。第三の特徴は、前記のパートナーシップの促進に関連して、補助金の使途が必ずしも設備建設費や事業運営費だけに限定されず、パートナーシップにおいて地域再生を図るための有効な方策を議論し、実施計画を策定するための活動支援などに充当することが可能な点である。
・2003年9月25日、監査委員会(Audit Commission)は「経済及びコミュニティの再生:監査から得られた教訓(Economic and community regeneration : Learning from inspection)」と題する報告書を公表した。経済及びコミュニティの再生に焦点を絞った地域再生事業を展開する66地方自治体に対する監査結果に基づき、地方自治体別に総合評価及び将来的な改善の可能性を示した初めての包括的報告書という点に意義がある。
・1970年代に都市問題が深刻化したことに伴い、「1978年都市中心地域法(Inner Urban Areas Act 1978)」が制定されたが、この法律により、インナーシティー・パートナーシップという考え方が提唱された。ここでのパートナーシップとは、中央政府と地方自治体との協働を目指すものであった。1980年代になると、サッチャー政権は中央政府と民間企業との間にいわゆるPPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)の考え方を導入し、民間活力を導入することに成功した。しかしながら、この段階では地方の声が反映されないといった反省点が浮上してきた。そこで、1990年代に入ると、ボランティアやコミュニティーなどにより形成されるパートナーシップの積極的な導入が図られ、地方自治体にはパートナーシップを構築・運営する上で主要な役割が期待されることとなった。1997年に成立した労働党政権は数々の改革に着手したが、その多くは特別地区の設置に重点を置いたものであり、例えば失業者に対する職業訓練制度を実施する「エンプロイメント・ゾーン(Employment Zone)」など、個別の行政課題に対応した特定区域が設定された。1999年末現在、12地区で地域再生計画が実施され、30地区でその他の計画が行われるようになった。これ以外にも地方自治体協議会(Local Government Association)が20の先進自治体とパートナーシップを形成し、5か年の地域再生プログラムを開始している。しかしながら、名前は地域再生であるが、この組織は地域から自発的に芽生えたのではなく、中央政府及び地域開発公社1が提唱する戦略に則って形成された存在に過ぎなかった。したがって、地域にとって何が重要であるかという一番重要な論点について、地方自治体や住民が自主的に判断するという意識に乏しく、戦略のための地域再生という逆説的な結果に陥ってしまった。2000年代になると、パートナーシップという用語は様々な分野で用いられるようになった。しかしながらパートナーシップが増えすぎ、限られた助成金が様々な機関に無原則に配分され、効率よく事業を実施できないという問題が新たに浮上してきた。政府は、こうした反省点を踏まえ、より多くのパートナーシップを包括する総合的なパートナーシップである地域戦略パートナーシップ(Local Strategic Partnership)の導入を発表した。この制度により、無計画に増加し続けるパートナーシップの数を抑制するとともに、効果的に運営されているパートナーシップについては権限の拡大が推進されたため、より地域に根ざしたパートナーシップが結成できるようになった。政府はパートナーシップに関する情報を他地域でもうまく活用できるようにするという間接的な役割を果たすこととなった。
・英国の都市再生の歴史は1940年代に遡る。産業構造の変化による失業率の増大、戦災地区などを中心とした都市の荒廃に対処するため、「1947年都市・田園計画法(Town and Country Planning Act 1947)」によって総合開発地区(Comprehensive Development Area)制度が設けられた。これにより政府は強制収用権を用いて総合的な都市計画を推進することとなる。政府は1960年代までこの総合開発地区制度によるスクラップ・アンド・ビルドによる開発を進めた。しかしながら、シビックトラストなどの活動が盛んになり人々の環境、歴史への関心が高まると、それまでの資本への投資、開発だけではなく社会生活への関心も同じように必要だと認識されるようになった。そこで「1967年シビック・アメニティー法(Civic Amenities Act1967)」を成立させ、歴史的地区の保全を行い、「1969年住居法(Housing Act1969)」による住宅街の整備を行うようになった。1970年代後半になると、中心市街地再生が経済問題の重要な鍵を握ると考えられ始め、民間資本とのパートナーシップにより多くの大規模建設が行われた。1979年には「1979年都市地域法(Inner Urban Areas Act1979)」の制定により、経済、社会的な衰退の著しい都市を国が指定し、長期かつ低利の貸付金によって産業振興が行われるようになった。また、1980年には「1980年地方自治・計画・土地法(Local Government, Planning and Land Act1980)により都市開発公社(Urban Development Corporation)の設立、エンタープライズゾーン(Enterprize Zone)の指定を行うなどの積極的な介入を政府は行ってきた。しかしながら、90年代後半になると、それまでの政策によって建築された大規模建築物がコミュニティー意識を失わせている原因の一因であるとその開発方式が疑問視されるようになった。そこで資本の整備だけではなく、住宅、公共スペース、中心市街地へ関心が向けられるようになった。現在の政策は地域間格差の是正に焦点が当てられている。このため、数多くの荒廃地域を抱える大都市域の地方自治体に地域再生関連の補助金が重点的に配分される傾向があり、結果的として田園地域に所属する地方自治体は、地域再生事業の積極的実施が困難な状況に置かれている。
・英国の田園地域が持つ美しい景観は日本においても有名であるが、観光地として広く認知された一部の地域を除いては、経済基盤の脆弱性という問題を抱えており、かなり以前から地域再生の必要性は認識されていた。しかしながら、開発か保護かという論争的なテーマを内包していることから、田園地域における地域再生政策はなかなか軌道に乗れない状態が長く続いていた。1949年には「1949年国立公園・田園地域への交通法(National Park and Access to the Countryside Act 1949)」が制定されたが、十分な予算措置等は伴わず、田園地域の活性化という行政課題は事実上放置されていた。こうした状況を踏まえ、政府は1966年に政策報告書「田園地域におけるレジャー(Leisure in the countryside)」を公表するとともに、「1968年田園地域法(Countryside Act 1968)」を制定し、当時存在していた国立公園協会を廃止して、より広範な権限を持ち、予算規模も大きい田園地域協会を発足させた。同時に地方自治体の権限を広げ、田園地域に公園を設置できるようにした。田園地域における公園は、国立公園ほど規制が厳しくなかったため、地方自治体によるレジャー産業として公園の運営は順調に進んだ。1972年の地方自治体の大規模な再編に伴い、管轄区域内に国立公園を持つ地方自治体は、その運営を行う専門機関を設けるべきとの声が上がり、1995年には「1995年環境法(Environment Act 1995)」により国立公園特別協会が設立され、全ての国立公園がその管理下に置かれることとなった。また、1980年代後半から90年代にかけて発生した狂牛病も、農業を中心とする田園地域の経済に深刻な影響を与えた。こうした情勢を受け、田園地域の再生には、農業だけでなく多様化した経済基盤が必要であるとの認識が醸成された。そのアプローチのひとつが、「2000年田園地域・通行権法(Countryside and Rights of Way Act 2000)」の制定である。この法律は、地方における交通整備や自然保護、自然との共存を図ることを目的としており、観光分野に関する田園地域の経済基盤を整えものである。このほかにも、RDAが中心となったルーラル・ルネッサンス事業(次節参照)により、経済基盤の強化が図られている。
・英国の地域再生政策は、その制度面に着目すれば、財政支援措置及び開発・計画制度ともに国(中央政府)において基本的な制度設計が行われ、地域(Region)更に地方自治体へと政策が収斂される仕組みとなっており、政府主導の政策であるとの印象を受ける。国際競争力の低下につながる地域間格差を是正するという観点からも地域再生政策を推進している政府としては、問題解決の突破口となる成功事例を出来る限り多く積み上げ、それを国全体へ拡大・浸透させたいとする意図の表れでもある。しかしながら、こうしたトップダウン式の制度だけでは、地域住民の意見や要望を的確に把握し、現実の政策運用に反映させることが困難であるという問題点がどうしても残ってしまう。そこで、地方自治体と諸団体がパートナーシップを形成することにより、地域住民の多様な意見を可能な限り吸収する仕組みを講じるとともに、開発・計画制度においては、骨格となる指針のみを政府が策定し、開発許可などその具体的運用に関しては、地方自治体に比較的広範な裁量権が付与されている。地方自治体から更にコミュニティ・レベルにまで視点を移してみたい。イングランドの地方選挙における投票率が30%台で低迷している事実からも明らかなように、地域住民の公共活動全般に対する参画意識・関心の低さは英国においても大きな課題である。例えば、ブローンストン地区では、公営住宅の解体・撤去案と大規模修繕案を争点に実施された住民投票において80%以上の投票率を記録した反面、住民協議会の運営方針に関するアンケート調査の回収率は2.1%に過ぎなかった。この数字が示すとおり、地域住民は直接的な利害関係のある身近な争点に関しては強い関心を示すものの、地域全体の将来などより広範な公共活動に対する関心は極めて低調であり、日本の実情とも共通する課題である。 端的に言えば、英国の地域再生政策から日本が学ぶべき点は、実施されている事業の内容そのものよりも、パートナーシップを活用したその運営方法にあると言えるのではないだろうか。この場合、英国全体で20万以上存在すると言われる非営利団体(Non-profit Organisation:NPO)が地域において多大な貢献をしているという裾野の広さの違いを無視することはできない。しかしながら、ボランタリズムに関する日英間の歴史的・文化的背景の違いを過度に強調する一般的論調から日本の地方自治体が得るものは少ない。パートナーシップの形成を補助金の交付要件とし、地域再生政策の重要な担い手である地域住民の資質・能力を向上させるための少額の経費を地域再生政策の補助金として認定して運用するなど、英国においては地味ではあるが継続的な努力が払われている点が改めて認識されてよいと思われる。

「英国の地方選挙風景(地方版マニュフェストの実情)」自治体国際化協会『CLAIR REPORT』No.272、2005年10月14日。
・英国のマニフェストについては国政については多く紹介されている。一般に各政党の「政権公約」を意味し、マニフェストを通じて各政党は、政権を獲得した時には「必ず実行する政策」を国民に約束する。しかし、地方版マニフェストについてはこれまで実態が明らかにされてはいない。
・英国において、マニフェストは有権者が各政党の具体的な政策を理解するための手段として定着している。近年日本でも多く紹介されているように、英国の「国政選挙」においては、各政党が発表するマニフェストは期限・目標・財源付きで政権獲得後に実現する政策を明記したものとなっている。英国のメディアも総選挙時には各党のマニフェストを比較し、有権者が投票する時の重要な判断材料となっている。しかし、英国の「地方選挙」のマニフェストに目を移すと、目標を達成する具体的な手段と財源が明示されているものは少なく、有権者への配布部数も極めて少ない。この背景には、英国の地方自治体の役割が、英国議会から授権された事務のみを行うという限定されたものになっていることがある。財政状況は一般的に8割弱を政府からの補助金等に依存し、財政面での自主性も極めて限られている。英国の地方版マニフェストを読み進める上で、日本より更に中央集権的な一面を持つ英国の中央・地方関係を理解する必要があるであろう。
・英国では地方選挙における投票率は概ね25-35%と低迷している。2004年6月に実施された地方選挙の平均投票率は40%と若干上向いたものの、相変わらず低調であった。これは、国政選挙(70-80%程度、ただし、2001年6月の国政選挙は59.2%)や他のEU諸国の地方選挙と比較しても低い水準にある。投票率低迷の要因として、伝統的にほとんどの選挙区で小選挙区制が採用されているため死票が多くなることや、政党政治が地方まで浸透し、各政党の「地盤」が明確であらかじめ勝つ候補者がわかるため有権者の関心が低いこと、さらには地方自治体の権限が小さいため「地方自治」そのものに対する関心が低いことなどが指摘されている。また、現在の英国経済が順調なため、大きな争点がないということも投票率低下の原因のひとつとも言われている。
・2002年地方選挙において、郵便投票制度のパイロット・スキームを実施した地方自治体において平均で14%投票率が上昇するなど目覚ましい結果が見られた。これを受け、政府は郵便投票の拡大に乗り出している。2004年6月10日に行われた地方選挙においては、イングランドの4地域で従来のような投票所での投票を行わず、有権者全員が投票用紙の郵送による郵便投票を行う「全面的郵便投票制度」が試みられた。当初選挙管理委員会はこの政府の方針に懸念を表明しており、郵便投票時の本人確認登録手続を明確に規定する法の枠組みを整備することを求めていた。また、英国議会貴族院も郵便投票制度によって不正行為が行われることを懸念しており、投票者本人が申告する本人確認(Security statement)に代えて第三者による本人確認(Witness statement)を投票用紙に添付する制度を導入するよう政府に要求していた。貴族院の要求事項を取り入れた新法案は2004年4月1日に成立したが、同年6月の投票日は間近で、地方自治体が新法の下で選挙を実施するための準備時間はほとんど残されていなかった。特に、全有権者の自宅に投票用紙が投票日までに届くかどうか大きな疑問が呈されていた。6月の選挙を終え、イングランド4地域で実施された全面的な郵便投票の結果は、良い結果と悪い結果の双方を示した。肯定的側面としては、当該4地域の平均投票率が郵便投票を行わなかった地域より5%高かったことである。一方、否定的側面として、投票用紙の配布及び不正行為の申し立ての二点において問題が発生したことである。4地域における全面的郵便投票の結果をまとめた選挙管理委員会の報告書では、これらの地域において不正行為が広範囲に発生した事実を否定している。また、選挙管理委員会が実施したアンケートでは、4地域の住民が全面的郵便投票制度に大きく満足している結果が出ている。しかし、郵便投票が行われなかった地域に比べて不正行為が行われやすいことに住民が大きな懸念を持っていることもアンケートで明らかにされている。選挙管理委員会の主な考え方は、全面的郵便投票制度をやめて、郵便投票を望む人だけがその選択肢を採れるようにすることである。政府が好ましいと考えている選挙方法もマルチ・チャンネル式の選挙方式であり、有権者が郵便投票か従来型の投票所での投票の2つの選択肢を与えられるべきとしており、今後この制度をイングランド全体に拡大していくことを検討している。
・中央政府は地方自治体に対して強大な権限を保持しており、自主財源も乏しい中、地方自治体の改革にも限界がある。その結果、マスメディアも国政選挙と違って地方選挙の報道にそれほど力を入れていない。選挙運動期間中、特別なニュースがない時に候補者討論会の模様を報道するくらいである。ほとんどの放送局は、メディアを管轄している文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture, Media and Sport)との間で交わしている公共サービス規則に従って、地方選挙での候補者討論会の模様を最小限に報道している。各新聞で地方選挙キャンペーンについての記事は掲載されるが、大々的に紙面で取り扱われることは少ない。メディアの主要な選挙報道方法は政党政見放送(the Party Election Broadcasts)であり、主要なテレビチャンネル(BBC、ITV等)で放映される。「1990 年報道法(the Broadcasting Act 1990)」の規定により、各主要政党は選挙期間中最低一回は政見放送を行う権利があり、政党は自らの政策を述べ、対立政党の政策を非難する。ただし、「政党政治放送に関する委員会(The Committee on Party Political Broadcasting)」の定める「50議席ルール(the fifty seat rule)」により、政党が総選挙及び地方選挙で政見放送を行うためには、前回総選挙において最低50議席を確保しなければならないことが取り決められている。ただし地方選挙の場合であっても、テレビ局は首相や党首といった国会議員をしばしば起用する。従って、ロンドン市長選などを除き、地方政治家がテレビの政見放送で政策などを論じる機会はほとんどない。英国では、地方選挙は中央政権の政策遂行能力を評価するための中間投票であると言われることもある。地方選挙投票日の夜、BBC放送は投票時間が終わると選挙結果に関する報道特別番組を編成し、どの自治体で支配政党が代わったかを表示して、選挙結果に対する国会議員の反応をニュースで伝える。これまで述べたように地方選挙の投票率は概して低く、マスメディアで選挙結果を見守る人も少ない。その他では地方選挙結果を大きく報道する媒体は少ない。一般的に地方選挙について報道する媒体は、公共放送であるBBC、「ガーディアン」や「タイムズ」といった高級新聞紙である。英国には日本のような新聞宅配制度はなく、高級新聞紙よりも王室スキャンダルなどのゴシップ記事を多く載せている「サン」や「デイリー・ミラー」などのタブロイド紙を購入している人が多いので、地方選を報道しないそれらの新聞購読者は興味を示さないままに終わる。このようにマスコミで地方選が注目されないことも地方選挙の低投票率の原因となっているであろう。しかし、2004年6月に行われたGLA(ロンドン)市長選挙については市民・マスコミの注目度も高く、各新聞や雑誌で盛んに政策論議が行われ、市長候補者達はBBCの選挙討論番組で熱い政策論争を広げていた。
・英国の選挙では、日本のような顔写真のポスターは少なく、候補者を連呼する選挙カーはほとんど見かけない。候補者が選挙カーに乗り拡声器で支持を訴えたりすると、有権者に不快感を与えることになりかねない。支持者の庭先や家の窓に政党のポスターが貼られることもあるが、それほど多くはない。それでは、英国の候補者達が何に力を入れているかといえば政策論争である。自分の所属政党が発表する公約を掲げて相手候補者と討論し、各家庭を戸別訪問して公約のダイジェスト版(チラシ)を渡して支持を訴える。英国では、米国など多くの国々と同様に、戸別訪問をしても選挙違反には問われない。禁止されていないどころか、戸別訪問は選挙運動の主体となっている。また、近年は各政党ともインターネットを重要な選挙運動の手段と位置付けている。マニフェストの配布についても、電話で要請を受けて郵送するよりもインターネット上からダウンロードするケースが一般的になっている。合わせて電子メールも活用しており、支持者に対して定期的にメールニュースを流すなど、政党にとって安価な宣伝手段として位置づけられている。また、2004年GLA市長選では、政党ホームページ上で支持者からのメールでの提言・質問を受け付け、マニフェストの政策作りに活かしている事例も見受けられた。英国の候補者達は、選挙期間中、会社の有給休暇を使い、落選後に元の会社に復帰すことも普通である。前述のGLA市長選の自由民主党候補者も国会議員の地位を保持したまま選挙戦を戦い、落選したので再び国会議員の職を続けている。
・英国のマニフェストというと、国政選挙での各政党の政権公約が知られているが、地方レベルの選挙でもマニフェストは存在する。地方選挙でも、候補者個人がマニフェストを作成するのではなく、各政党がマニフェストを作成するのが一般的である。地方版マニフェストで具体的な政策を掲げると、カウンシル事務職員も目標に向けて仕事がしやすく、有権者にも政党の考え方を知ってもらうことができ多くの利点がある。しかし、もしその公約を達成できなければ激しい非難を受けることになる。その理由から、リバプール自由民主党など現在地方自治体の支配政党となっているところでも、地方版マニフェストを作成せずに選挙戦を戦っている地方政党も存在している。
・英国では地方選挙における投票率は低迷している。地方版マニフェストも国政レベルのマニフェストほど注目されず、マスメディアも地方選挙結果の報道に熱心ではない。地方版マニフェストの事例を見ても、政権獲得後に実現する政策を「期限」「数値目標」「財源」付きで明記したものは必ずしも多くない。この背景として、地方自治体の権限の小ささが挙げられる。地方自治体は、英国議会が制定する法律により個別に授権された事務のみを処理できる。業務が限定的であるため、独自性を発揮した政策を打ち出しにくい面がある。また、英国の地方自治体の財政状況は、一般的に8割弱を政府からの補助金等に依存しており、自主性は極めて限られている。自主財源の乏しい英国の地方財政状況は、EU諸国の中で最も中央集権的なものであると批判されており、大きな論争の的となっている。このような背景から、英国の地方版マニフェストの多くは目標を達成するための具体的な手段と財源が明示されているものは少なく、外部からの検証も厳密にはなされていない。しかし、マニフェストを比較することによって、住民は各政党や候補者の具体的な政策をよく理解することができ、投票時の重要な判断材料となっているのも事実である。有権者に地方選挙の関心を持ってもらうことが英国政府の大きな課題である。

Google検索結果名刺

 今日はGoogle検索結果名刺です。

 こんなのができました。画像を保存して適当にプリントアウトすれば実際に使用できる名刺になると思います。

 項目を真面目に書けば、実生活でも普通に使えそうです。公式な場所では容認されないかもしれませんが、試しに知り合いに配ってみようかと思います。

アメリカで八つ子誕生の実情

 今日はアメリカで八つ子誕生の実情です。

米国の8つ子、「6つの胚を移植した結果」=母親
2009年 02月 9日 17:39 JST ロサンゼルス 6日 ロイター

 約2週間前に8つ子を出産した米カリフォルニア州の女性、ナディア・スールマンさん(33)は6日、テレビのインタビューで、8つ子の誕生は対外受精した6つの胚を移植した結果だったと明かした。

 スルマンさんは同様の対外受精で、先に6人の子どもを出産していたことも分かった。

 NBCテレビとのインタビューで、スールマンさんはまた、多くの子どもを持とうした自身の決断について話し、シングルマザーであることが厳しい非難の的になっている要因の1つではないかと述べた。

 スールマンさんは、カリフォルニア州医事局が、予定より9週半早い出産となった今回の不妊治療に対する調査を開始したため、身元などを公表した。

 スールマンさんは「私が型にはまらない方法で命を授かったために、顕微鏡で検査されているかのうように感じる。私は子どもたちが欲しかっただけ。母親になりたかった」などとNBCニュースに語った。

 今回の件に関して、生殖医療の専門家の中には失望する声もある。専門家らは、母子いずれにもリスクになるため、極端な多胎妊娠を避けるよう努力しているという。

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-36379520090209

 先日取り上げた記事の続報です。やはり不妊治療を受けていた妊婦でした。もちろん、それ自体はまったく糾弾されるべきことではありません。問題は八つ子であった点です。

 記事の後段にあるように、多胎妊娠には危険が伴います。多胎妊娠とは双子以上の妊娠です。不妊治療で問題になる多胎妊娠は四つ子以上です。

 三つ子までは自然妊娠でもありえます。しかし、四つ子以上となると、自然妊娠では起こりえないため、妊娠の継続や出産の過程で母体や胎児に対する危険性が極度に高まります。

 不妊治療では妊娠の可能性を高めるために、できる限り多くの胎児を妊娠させようとします。それは自然妊娠を超えた多胎妊娠が可能な状態を人工的に作り出すことを意味します。

 ただし、不妊治療でも三つ子以上にはならないように処置されます。体外受精でも子宮に入れる受精卵は3つまでとなっています。母子の健康を考えて多胎妊娠を避けるためです。

 以上のことから、今回の八つ子誕生は非常に問題であると思っていました。結果的には母子無事で良かったものの、だからといって容認されることではありません。

 これは当事者もわかっていたことでしょう。当初の報道では不妊治療を受けたことなどの背景が伝えられていませんでした。おそらくは意図的な情報操作です。

 その後の調査で、記事によれば、受精卵を6つも移植したことが明らかになりました。このうち2つが双子となり、合計8胎の胎児となったのでしょう。逸脱した不妊治療です。

 アメリカの論壇でもこの点が非常に批判されていると記事にあります。当然です。いくら子供が欲しいからと言っても、8胎も妊娠させ、出産させることは危険な行為です。

 何度も言いますが、八つ子が問題なのです。不妊治療を受けたことに何も問題はありません。むしろ、不妊治療を経た妊娠や出産に対する偏見はなくなって欲しいと思います。

 ですから、記事にあるような、シングルマザーであることや、型にはまらない方法で命を授かったことは批判対象とすべきではないでしょう。論点がずれています。

 その一方で、危険な多胎妊娠を強行したことには大いに批判が寄せられるべきです。これは倫理的問題ではなく医学的問題です。両者を混同して論じてはいけません。

 八つ子を出産した女性は、母親になりたかった、子供が欲しかった、と言っているようです。これは倫理的問題への回答でしょう。その気持ちは尊重されるべきです。

 しかし、すべての問題に通用する免罪符にはなりません。不妊治療が今後制限される要因のとなるような行為をしてしまったことを真摯に省みるべきだと思います。

ファミコンとロリコン

 今日はファミコンとロリコンです。

<ファミコンとロリコンの見分け方>

子供が触りたがるのがファミコン
子供を触りたがるのがロリコン

子供がヤリたがるのがファミコン
子供とヤリたがるのがロリコン

既製品なのがファミコン
規制品なのがロリコン

必死に中古を探すのがファミコン
必死に中古を避けるのがロリコン

ハマると赤い目になるのがファミコン
ハマると白い目で見られるのがロリコン

今までの常識を打ち破ったのがファミコン
今までの常識が通用しないのがロリコン

日本の誇りなのがファミコン
日本の埃なのがロリコン

上上下下左右左右BAがファミコン
ウヘウヘニタニタ左右左右JSがロリコン

友達とできるのがファミコン
友達ができないのがロリコン

やりすぎると親に叱られるのがファミコン
やりすぎると警察に叱られるのがロリコン

ファミコンは幼い子供達に大人気
ロリコンには幼い子供達が大人気

ファミコンは勇者になれる
ロリコンは魔法使いになれる

ファミコンはフーしないといけないけど
ロリコンはフーフー言ってる

ファミコンは大人気だが
ロリコンは大人気ない

ファミコンは挿入しなきゃ始まらないが
ロリコンは挿入したら終わる

ファミコンは機械
ロリコンは奇怪

ファミコンは度が過ぎるとお母さんに取り上げられるが
ロリコンは度が過ぎると自分が取り上げられる

 とてもわかりやすい見分け方です。みなさんも間違えないようにしてください。

 なお、途中で出てくるJSとは女子小学生の略号です。高度なテクニカルタームですが、紳士であれば誰でも知っている言葉です。是非とも覚えておきましょう。

 私はロリコンではありません。よく間違えられますが、違います。ホントだよ。

覚書 090207

吉田道彦「英国で日本食レストランを開業する際の留意点」中小企業基盤整備機構『中小企業国際化支援レポート』2009年1月。
・現在日本食レストランはロンドンで約400軒、英国全体では500軒程あるといわれていますが、実際にはこれよりも多いという推計もあります。直近では、世界的な金融危機のあおりで、好調であった英国の外食産業にも陰りが見え始めていますが、英国人の健康志向の高まりを背景に、日本食に対する関心は今後も衰えることはないと予想されています。
・レストランの開業に際して、まず確保しなければならないのが店舗スペースですが、英国の場合、不動産は物件ごとにその使用用途が決められています。したがって店舗物件を探す場合、立地条件とともに、その物件が飲食店として使用できるのかのチェックが必要となります。建物の使用用途は申請すれば変更可能ですが、地域によっては許可されない場合もあり、現実的にはなかなか難しいようです。
・店舗の外観は周辺の建物や街路と調和させることが求められるので、外装を変更したり看板を立てたりする際や、排気ダクトや廃棄物の貯蔵場所を設置する際には、あらかじめ当該自治体の許可を得ておく必要があります。こうした規制は、地区全体ではなく街路ごとに決められていますので、物件が立地する街路にはどのような規制があるのかを事前に調べておく必要があります。さらに英国の場合、転貸物件が数多くありますので、当該物件が転貸物件であるかどうか見極めることも必要です。転貸物件の場合には、原契約がどうなっているのかをさかのぼってチェックしておきましょう。
・調理要員の確保についてですが、英国の場合、調理師の資格といったものは特にありませんので、比較的幅広い人材のなかから選択が可能です。ただし、調理師を日本から派遣する場合には、労働許可(Work Permit)を取得する必要があります。労働許可については最近審査が厳しくなっており、複数の調理師を申請するような場合には、希望の人数が必ずしも認められないケースも出ています。また、労働許可の取得には申請後2カ月近くかかりますので、開業のタイミングに合うように時間的な余裕をみて申請する必要があります。最近では人件費の問題もあり、日本人以外の調理師を現地で雇用する傾向が強くなっており、「日本人調理師のいない日本食レストラン」も増えています。
・英国における日本食ブームは、当初日本食が健康的であるということから始まったものですが、その後、味そのものや見た目の美しさ、サービスのよさなどが評価され定着してきました。現在では、昼食時に英国人がひとりでラーメンや親子丼を食べる光景も珍しくなくなっています。

平川伸一・永田久美子・神陽介・樋口美雄「英仏の技術革新・競争力強化に向けた人的投資戦略」財務総合政策研究所『ファイナンシャル・レビュー』第5号、2008年12月。
・イギリスでは,世界トップクラスの技能水準を目指し,若年層の基礎技能の改善と成人層の技能向上を二つの柱とした改革に着手している。若年層に関しては,既に実施されてきたNew Deal政策に加え,「14歳から19歳の教育改革」として,専門ディプロマ(17分野),機能的技能(国語・数学・ICT)にかかる全国的試験などが導入されつつある。一方,既に義務教育を終えた成人層に対しては,基礎技能取得のための訓練から高度な人材の育成まで,2020年までの技能レべル別目標(リーチ報告書2006年)に向けた取組みの強化を開始した。企業側の発言力を強化し,職業関連資格の改革を行なうとともに,企業の職業訓練支援のためのコンサルティングサービスを開始,訓練のための個人勘定の導入なども図っている。

国土交通省国土交通政策研究所「地方分権社会における広域的観点からの都市整備に関する研究(中間報告) 大規模小売店鋪の立地における広域的観点」『国土交通政策研究』第78号、2007年10月。
・英国では、開発案件に対して、自治体は国の指針や地域レベル及び自治体レベルの計画に即した判断を下しているが、その判断が正しいとはいえないケースに対しては、国が強制介入し自治体に代わって許可又は不許可の決定を行うコールイン制度がある。大規模小売店舗の立地は広域的な影響を派生させる問題であるが、これに関して国の計画指針(PPS6)の中で示されている観点は、1. 中心地間のネットワークと序列、2. RSSの位置づけ、の2点である。これらの観点は、広域計画との整合性や、規模・立地の妥当性等の事項において評価される。許可/不許可の判断の際には、地域活性化や雇用創出といったその他の考慮事項も併せて評価され、総合的に判断されている。
・英国では(本稿では特にイングランドを示す)、中心地(Town Centre11)の活性化を目的とした、大規模小売店舗の立地規制への取組みが日本より先行していることから、英国の大規模小売店舗の立地規制・誘導における広域的な都市整備のあり方に関する国の判断基準や、広域的な調整方法について考察を加えることとする。大規模小売店舗の開発案件に対する判断は、原則的には、個別の開発案件に関する許可権限を有する地方自治体が主体となって判断を下している。しかし、その判断が正しいとはいえない開発案件に対しては、国が強制介入し地方自治体に代わって許可又は不許可の決定を行うコールイン(Call in)制度がある。大規模小売店舗はコールインされる案件の中でも比較的多い。これは、大規模小売店舗の立地問題は立地自治体の中心地の活性化に悪影響を及ぼすだけでなく、立地自治体の境界を越え周辺自治体に影響を及ぼす可能性があり、広域的に検討すべき問題に発展することが多いためと考えられる。
・英国では、全国をカバーする国土計画は存在せず、ロンドンを含む9つの地域ごとに作成する広域地方計画が最上位の計画である。基本となる法制度は都市農村計画法(Town and County Planning Act)であるが、2004年に制定された計画・強制収用法(Planning and Compulsory Purchase Act 2004)により、都市・地域計画体系は変更された。従来の国、地域、カウンティ(County Council)、基礎自治体の4段階の計画体系から3段階の体系となった。カウンティが策定していたストラクチャープラン(Structure Plan)は廃止され、地域レベルの計画に吸収されることになった。この改革により計画体系が簡潔となり、基礎自治体と地域レベルの計画が直接的に結びつき、それらと国の計画方針との整合性が図られることにより、計画の一貫性が高まることが期待される。
・2004年の計画・強制収用法による都市計画制度の改革により、非法定の計画ガイダンスであった地域計画ガイダンス(Regional Planning Guidance notes、以下「RPG」)は、法定文書である地域空間戦略(Regional Spatial Strategies、以下「RSS」)に変更された。RSSは、イングランド内の9つの地域ごとに策定される空間戦略であり、国土計画としては最上位となる。PPS11の策定指針と分野ごとのPPS(Plannning Policy Statements:都市計画の個別内容ごとの指導書)に基づき、開発プロジェクトの大まかな地理的範囲を示した概念図(キーダイアグラム)が添付され、敷地の特定はディベロップメントプランに委ねることになっている。RSSの主な目的は、基礎自治体が地方開発フレームワーク(Local Development Framework、以下「LDF」)や交通計画(Local Transport Plans)等を作成する際に、15年から20年後を見据えた地域レベルの枠組みを提供することにある。また、当該地方における新規住宅供給の量と配分、環境、交通、インフラ、経済開発、農業、鉱物、廃棄物処理についての優先順位などについて示すべきものとされている。新制度では、RSSが法定計画となり地域政策の重要性が高められたことで、基礎自治体レベルの都市計画との結びつきが強まり、計画主導(plan-led)システムが強化される結果となった。また、郡が策定していたストラクチャープランが廃止されたため、同プランの策定主体であったカウンティがRSSの策定に関与していくことにより、地方自治体より上位の機関の広域的観点が確保されることが期待されている。また、策定主体が地方自治体の代表を含む広域組織に委ねられたことから、RSSはディベロップメントプランの一部と位置づけられた。
・制度改革以前は、地域協議会(Regional Chamber)が国の地方支分局と連携してRPGを策定していたが、2004年以降、地域計画組織(Regional Planning Body、以下「RPB」)として地域議会(Regional Assembly、以下「RA」)がRSSの正式な策定主体として認定された。RSSの原案を最終的に国がチェックし承認した上でRSSが公表されることになった。RAは、国立公園管理局(National Park Authorities)及び地方自治体からの代表者を中心として(最高7割まで)、英国産業連盟(Confederation of British Industry)や商工会議所等の地域のステークホルダーを3割以上含む、多様な主体で構成されることが求められている。これは地域レベルの計画の策定権限の分権化ととらえられる。
・英国の都市・地域計画の根底には、計画主導システム(plan-led system)がある。計画主導システムでは、申請された開発に対する許可/不許可の決定は、当該地域のディベロップメントプランに沿うことを原則としている。さらに、ディベロップメントプランは、国の方針に沿って策定されるべきものであることから、理論的には国の政策が末端の開発許可まで行き渡るような仕組みとなっている。しかし、すべてのケースにおいてその原則が守られるというわけではなく、広域的な観点からは望ましくないと思われるような開発や、国の指針に反すると思われる開発が、LPAによって認められないとも限らない。英国の都市・地域計画システムでは、国の方針が伝達され、RSSとLDFが連携する枠組みの中で、垂直的な広域調整が行われる仕組みを内包しながら、調整機能が充分に果たされない場合のセーフティネットとして、国がLPAの都市計画権限に関与する強制介入するコールイン制度が用意されている。
・コールインされる開発案件で最も多いのは住宅開発で、次いで商業施設開発の件数が多く、小売業、レジャー施設を合わせて約25%を占めている。
・大臣は基本的にいかなる開発案件にもコールインする権限を有する。しかし、どのような案件に対してコールインするかについては、「指示通達」(Direction Circular)によって示されている。コールインに関する指示通達は5つ発出されている。そのうち、大規模小売店舗に関係するのは、「ディペロップメントプランに位置づけられていない開発に関する指示通達」と、「小売店に関する指示通達」の2つである。これらの指示通達によると、コールインの対象となる小売店は、ディベロップメントプランへの位置づけがない5,000平方メートル以上の店舗、または、20,000平方メートル以上の店舗となっている。加えて、「小売店に関する指示通達」により、既に商業集積のある立地においては2,500平方メートル以上の店舗はコールインの対象となる場合がある。
・2000年1月から2006年12月の間に小売店の開発申請に対するコールインの決定件数は108件あった。そのうち、内容が確認できた決定通知書を元に算出した結果、許可(条件付を含む)が38件、不許可が12件であった。
・基礎自治体が望んでも、広域的な観点から重大な影響があると考えられる開発案件に対しては、国が直接介入し判断することができる。そして、これを実行することによって、国の計画方針を徹底させ、基礎自治体の理解を促進しているといえる。英国のコールイン事例をみると、広域的な観点からの大規模小売店舗の立地に関する判断は、国の計画方針であるPPS・PPGや地域レベルの計画であるRSS・RPGに基づいて中心地の活性化を軸に広域的な影響を評価するとともに、地域経済や雇用への効果といった地域の事情も評価している。しかし、特例として個別に許可を与えるのではなく、あくまでもPPSに示した国の方針に即した「根拠(evidence)」に基づいて判断している。個々の判断に違いがあるように見えるのは、個々の事情が異なることにより、総合的な判断が異なったという結果によるものである。一方で、コールインに関連した制度の見直しの動きもある。現在のコミュニティ・地方自治省の大臣の下ではコールインの件数を削減する傾向にあるが、これはグリーンフィールドに関わるコールインを以前に比べて抑制したことにもよる。グリーンフィールドに関わるコールインは主に住宅開発におけるコールインケースでよくみられたが、一時期件数が増加し、政府、基礎自治体、開発者の時間的・経済的負担が問題となったことからそれらを軽減しようとする意図もあった。グリーンフィールドに関する指示通達37は2007年4月に廃止されている。2002年には118件あったコールイン件数が、2006年には51件となっているが、これはグリーンフィールドに関わるコールインが徐々に減らされてきたことによる。他方、小売店だけをとりあげてみてみると、コールインの検討対象となる開発件数は微増傾向にある。実際にコールインされた件数を見てみても、増加傾向にはないが、開発全体の傾向のようには減少していない。このことから、大規模小売店舗の立地規制が、都市計画の上で重要と位置づけられていることがわかる。さらに、都市計画・土地利用計画制度の硬直性や非効率性を極力排除し、経済効率性をさらに高めることや、市場の競争原理を維持することを目的に、制度改革が検討されている。これは、土地利用や都市計画においても、経済発展の側面をより考慮した政策の推進を提言したバーカーズレビューを受けた土地利用政策の見直しの一環である。例えば、大規模小売店舗のコールイン案件の判断基準となっているPPS 6における5つの立地評価項目のうち、開発に対するニーズ分析を廃止することが決定された。これは、基礎自治体や開発者に対する負担を減らすとともに、経済活動の一層の促進を図ろうとしている。このように、その時の政権や大臣の方針で多少の変更は加えられてはいるが、コールイン制度は開発の規制・誘導における「警察官」のような役割を果たし、個々の基礎自治体の利害を超えた判断を直接的に下す権利を有している。ここで下される個々の開発案件に対する判断は、国の方針に基づきながら、広域的な観点と地域の事情のバランスを考慮して示される一つの指針であるといえる。
・覚書注:コールイン制度を通じて政府が事実上開発を管理している。ただし、開発の計画は地域の自治体が立案しており、制度運営において地方自治が尊重されている。したがって、制度ではなくイギリス地方自治の性質が特徴的であると言える。日本が参考すべき点があるとすれば、それは制度ではない。

『変わる家族 変わる食卓』

 今日は岩村暢子『変わる家族 変わる食卓 真実に破壊されるマーケティング常識』(2003年、勁草書房)を読みました。

 本書は衝撃的な内容を提示しています。家庭の食卓風景を調査している本書は、そこで普通の家庭における食事が劇的に変化している様子を描いています。調査対象は1960年代生まれ以降の主婦です。彼女らから聞き出した赤裸な告白により、現代食卓の姿が明示されます。

 現代食卓における決定的な傾向は費用削減の対象であることです。経済的に苦しいので食費を削るのではなく、家計における食費の優先順位が娯楽や旅行、衣類、住居などよりも低くなっています。なかには携帯電話の費用を捻出するために食費を削る家庭もあります。

 予算が回っていないため、食事の内容も貧弱です。夕食が冷凍食品であったり、インスタント食品が食卓に並ぶことは当たり前で、それ以外にもコンビニエンスストアで買ってきたおにぎりや菓子パン、サンドイッチを家族全員が食事として食べています。

 もちろん、子供もです。むしろ、子供のほうが冷凍食品やインスタント食品を食事としています。これらは口当たりが良く、子供が好んで食べることは普通のことです。ただ、従来であれば、食事の準備ができない場合などに、やむなく子供に食べさせていた食材です。

 ところが、現代では食事を用意しているにも関わらず、子供にだけインスタント食品を与えています。子供は魚や野菜が嫌いだから、その食事のときは子供が勝手にメニューの変更を訴え、代わりのインスタント食品を要求するのです。

 好き嫌いの多い子供を躾けようとする姿勢は見られません。躾は強要することであり、それは現代では過度に忌避されています。子供の要求通りにインスタント食品を与えたり、夕食の時間にコンビニエンスストアに行って好きな弁当を選ばせることが日常となっています。

 かといって、親たちは子供を放置しているわけではありません。公園に連れて行ったり、習い事をさせたり、家族で遊園地やキャンプに行ったりします。子供にいろいろな経験を積ませることが大切だと考え、実際に実践しています。

 その一方で、食事や料理という経験は子供には与えられていません。一緒に料理をすることや、いろいろな食材や味付けを食べてみることを子供は経験できていないのです。食事内容よりも公園や習い事に通うことのほうが重要視されています。

 コンビニエンスストアでテキトーに買ってきたもので食事をする理由は、食費削減だけではなく、忙しくて時間がないことも理由なのです。食べることに手間と時間をかけるよりも、子供の送迎をしてあげることが良い親だと考えられています。

 本書では現代家庭におけるこうした食卓の変化をアンケート調査に基づいてまとめています。家庭での生の声をで構成される叙述は相当の迫力があるとともに、現代の食卓が大きな変化を迎えていることを鮮明に示しています。

 食育が叫ばれる昨今ですが、私はそれが提唱される理由がよくわかりませんでした。朝食の欠食が増えているため、朝ご飯を食べるようにしようといった程度の中身かと思っていました。が、食卓の実情はそんな程度ではなかったことを本書は明らかにしました。

 本書にはもう1つ重要な貢献があります。それは副題が示唆するように、アンケート調査の限界です。本書での調査方法はアンケート調査が主軸ですが、その上で面談をするという二重の調査手法を採っています。これで暴露された真実がありました。

 アンケートに本当のことを書いていないのです。世間で一般的に正しいと考えられていると回答者が推測したことを書いています。つまり、正解に近い回答をするだけで、それと自分の考えや気持ちはまったくの別だということです。

 ある回答者は、家族の健康のことを考えて必ず野菜を料理に使う、と書いていました。しかし、面談で確かめてみると、生の野菜は高いから買わない、と言います。詳しく聞いてみると、レトルトカレーに入っている野菜で必要な野菜は足りていると考えていました。

 安全のことを考えて牛乳は生協でしか買わない、とアンケートで回答した人が、面談では、スーパーで売られている牛乳ばかりを飲んでいると言いました。アンケートと面談との間は1週間です。この間に大きな思想上の変革があったのでしょうか。

 とどのつまり、アンケート調査で回答していることと、実際に思っていることや行なっていることとの間には無限の距離があるのです。アンケート調査では、ある設問に対して、これが妥当な回答だと考える人が何人いるか、といった結果しか得られていません。

 したがって、マーケティングリサーチでこうしたアンケート調査を土台とすることは危険であると本書は警鐘を鳴らします。マーケティングでは顧客の声をアンケートで調べることが主ですが、そこには顧客の声が反映されていない可能性のほうが高くなっているのです。

 加えて、本書は他の分野でも各種調査が同じような限界を抱えているのではないかと危惧しています。本書が投げかけるこちらの論点は、非常に普遍的な問題を含んでいると思いました。方法論上の問題であるからです。

 私は普段から社会学の実態調査やマスコミが行なう世論調査に対して疑問を投げかけてきました。それは本書が言うところの、調査への回答と実際の言動とが大きく乖離していることが容易に推測できるからです。

 社会学調査もそうですが、世論調査は実際の政治を左右する動力になっています。世論調査が国民の声であると考えられ、政治は国民の声を踏まえて行なうべきですから、世論調査が政治を左右することは理論上当然です。

 ですが、世論調査が国民の声であることが検証されることはありません。実のところ、世論調査が国民の声を正確に反映していないとすれば、政治がそれに基づかなければならない根拠はありません。あやふやな世論調査に政治が左右されるべきではないと思います。

 閑話休題。そんだこんだで、本書は非常に意義深い内容が書かれている本でした。現代における家庭の実情を知るためにも、また、その知る方法についての限界を把握するためにも、本書は広く一般的に読まれるべきだと思います。

 なお、本書では調査対象となった主婦たちが駄目主婦だと言いたいわけではありません。本書にも冒頭で書かれていますが、ここでも明記しておきます。現象としては主婦たちの食卓への姿勢は駄目ですが、それが彼女たちが駄目であることを意味しません。

 個人的な性質の問題ではなく、もっと社会的な構造の問題である点を本書は強調しています。例えば、中学校における家庭科の教科書では、1970年代前後に調理から食物へと重点が映されます。工夫して料理することよりも、栄養学の側面が強くなるのです。

 学校で教えられる内容が、食事を作って食べることよりも、適当な栄養素を摂取することになっています。そうした教育を受けた主婦が本書での調査対象となっています。彼女らがとにかく何かを食べておけば良いと考えることは自然な成り行きです。

 本書の狙いは主婦を攻撃することではありません。本書で登場する主婦たちを見て駄目だと言うことは簡単ですが、彼女たち個人を槍玉に挙げて論難しても生産的ではありません。もちろん、単に怠惰で無能な駄目主婦も実在するでしょうが、それは時代普遍的な問題です。

 現代の食卓は大きく変わっています。その変化について実情を本書は丁寧にまとめています。本書からはその実情を素直に学ぶべきでしょう。この業績を踏まえて、その背景や原因を探っていく作業が次に来るべきです。批判や論難は出番があったとしても、せいぜいその次くらいの段階だと思います。

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benyamin ♂

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