覚書 090207

吉田道彦「英国で日本食レストランを開業する際の留意点」中小企業基盤整備機構『中小企業国際化支援レポート』2009年1月。
・現在日本食レストランはロンドンで約400軒、英国全体では500軒程あるといわれていますが、実際にはこれよりも多いという推計もあります。直近では、世界的な金融危機のあおりで、好調であった英国の外食産業にも陰りが見え始めていますが、英国人の健康志向の高まりを背景に、日本食に対する関心は今後も衰えることはないと予想されています。
・レストランの開業に際して、まず確保しなければならないのが店舗スペースですが、英国の場合、不動産は物件ごとにその使用用途が決められています。したがって店舗物件を探す場合、立地条件とともに、その物件が飲食店として使用できるのかのチェックが必要となります。建物の使用用途は申請すれば変更可能ですが、地域によっては許可されない場合もあり、現実的にはなかなか難しいようです。
・店舗の外観は周辺の建物や街路と調和させることが求められるので、外装を変更したり看板を立てたりする際や、排気ダクトや廃棄物の貯蔵場所を設置する際には、あらかじめ当該自治体の許可を得ておく必要があります。こうした規制は、地区全体ではなく街路ごとに決められていますので、物件が立地する街路にはどのような規制があるのかを事前に調べておく必要があります。さらに英国の場合、転貸物件が数多くありますので、当該物件が転貸物件であるかどうか見極めることも必要です。転貸物件の場合には、原契約がどうなっているのかをさかのぼってチェックしておきましょう。
・調理要員の確保についてですが、英国の場合、調理師の資格といったものは特にありませんので、比較的幅広い人材のなかから選択が可能です。ただし、調理師を日本から派遣する場合には、労働許可(Work Permit)を取得する必要があります。労働許可については最近審査が厳しくなっており、複数の調理師を申請するような場合には、希望の人数が必ずしも認められないケースも出ています。また、労働許可の取得には申請後2カ月近くかかりますので、開業のタイミングに合うように時間的な余裕をみて申請する必要があります。最近では人件費の問題もあり、日本人以外の調理師を現地で雇用する傾向が強くなっており、「日本人調理師のいない日本食レストラン」も増えています。
・英国における日本食ブームは、当初日本食が健康的であるということから始まったものですが、その後、味そのものや見た目の美しさ、サービスのよさなどが評価され定着してきました。現在では、昼食時に英国人がひとりでラーメンや親子丼を食べる光景も珍しくなくなっています。

平川伸一・永田久美子・神陽介・樋口美雄「英仏の技術革新・競争力強化に向けた人的投資戦略」財務総合政策研究所『ファイナンシャル・レビュー』第5号、2008年12月。
・イギリスでは,世界トップクラスの技能水準を目指し,若年層の基礎技能の改善と成人層の技能向上を二つの柱とした改革に着手している。若年層に関しては,既に実施されてきたNew Deal政策に加え,「14歳から19歳の教育改革」として,専門ディプロマ(17分野),機能的技能(国語・数学・ICT)にかかる全国的試験などが導入されつつある。一方,既に義務教育を終えた成人層に対しては,基礎技能取得のための訓練から高度な人材の育成まで,2020年までの技能レべル別目標(リーチ報告書2006年)に向けた取組みの強化を開始した。企業側の発言力を強化し,職業関連資格の改革を行なうとともに,企業の職業訓練支援のためのコンサルティングサービスを開始,訓練のための個人勘定の導入なども図っている。

国土交通省国土交通政策研究所「地方分権社会における広域的観点からの都市整備に関する研究(中間報告) 大規模小売店鋪の立地における広域的観点」『国土交通政策研究』第78号、2007年10月。
・英国では、開発案件に対して、自治体は国の指針や地域レベル及び自治体レベルの計画に即した判断を下しているが、その判断が正しいとはいえないケースに対しては、国が強制介入し自治体に代わって許可又は不許可の決定を行うコールイン制度がある。大規模小売店舗の立地は広域的な影響を派生させる問題であるが、これに関して国の計画指針(PPS6)の中で示されている観点は、1. 中心地間のネットワークと序列、2. RSSの位置づけ、の2点である。これらの観点は、広域計画との整合性や、規模・立地の妥当性等の事項において評価される。許可/不許可の判断の際には、地域活性化や雇用創出といったその他の考慮事項も併せて評価され、総合的に判断されている。
・英国では(本稿では特にイングランドを示す)、中心地(Town Centre11)の活性化を目的とした、大規模小売店舗の立地規制への取組みが日本より先行していることから、英国の大規模小売店舗の立地規制・誘導における広域的な都市整備のあり方に関する国の判断基準や、広域的な調整方法について考察を加えることとする。大規模小売店舗の開発案件に対する判断は、原則的には、個別の開発案件に関する許可権限を有する地方自治体が主体となって判断を下している。しかし、その判断が正しいとはいえない開発案件に対しては、国が強制介入し地方自治体に代わって許可又は不許可の決定を行うコールイン(Call in)制度がある。大規模小売店舗はコールインされる案件の中でも比較的多い。これは、大規模小売店舗の立地問題は立地自治体の中心地の活性化に悪影響を及ぼすだけでなく、立地自治体の境界を越え周辺自治体に影響を及ぼす可能性があり、広域的に検討すべき問題に発展することが多いためと考えられる。
・英国では、全国をカバーする国土計画は存在せず、ロンドンを含む9つの地域ごとに作成する広域地方計画が最上位の計画である。基本となる法制度は都市農村計画法(Town and County Planning Act)であるが、2004年に制定された計画・強制収用法(Planning and Compulsory Purchase Act 2004)により、都市・地域計画体系は変更された。従来の国、地域、カウンティ(County Council)、基礎自治体の4段階の計画体系から3段階の体系となった。カウンティが策定していたストラクチャープラン(Structure Plan)は廃止され、地域レベルの計画に吸収されることになった。この改革により計画体系が簡潔となり、基礎自治体と地域レベルの計画が直接的に結びつき、それらと国の計画方針との整合性が図られることにより、計画の一貫性が高まることが期待される。
・2004年の計画・強制収用法による都市計画制度の改革により、非法定の計画ガイダンスであった地域計画ガイダンス(Regional Planning Guidance notes、以下「RPG」)は、法定文書である地域空間戦略(Regional Spatial Strategies、以下「RSS」)に変更された。RSSは、イングランド内の9つの地域ごとに策定される空間戦略であり、国土計画としては最上位となる。PPS11の策定指針と分野ごとのPPS(Plannning Policy Statements:都市計画の個別内容ごとの指導書)に基づき、開発プロジェクトの大まかな地理的範囲を示した概念図(キーダイアグラム)が添付され、敷地の特定はディベロップメントプランに委ねることになっている。RSSの主な目的は、基礎自治体が地方開発フレームワーク(Local Development Framework、以下「LDF」)や交通計画(Local Transport Plans)等を作成する際に、15年から20年後を見据えた地域レベルの枠組みを提供することにある。また、当該地方における新規住宅供給の量と配分、環境、交通、インフラ、経済開発、農業、鉱物、廃棄物処理についての優先順位などについて示すべきものとされている。新制度では、RSSが法定計画となり地域政策の重要性が高められたことで、基礎自治体レベルの都市計画との結びつきが強まり、計画主導(plan-led)システムが強化される結果となった。また、郡が策定していたストラクチャープランが廃止されたため、同プランの策定主体であったカウンティがRSSの策定に関与していくことにより、地方自治体より上位の機関の広域的観点が確保されることが期待されている。また、策定主体が地方自治体の代表を含む広域組織に委ねられたことから、RSSはディベロップメントプランの一部と位置づけられた。
・制度改革以前は、地域協議会(Regional Chamber)が国の地方支分局と連携してRPGを策定していたが、2004年以降、地域計画組織(Regional Planning Body、以下「RPB」)として地域議会(Regional Assembly、以下「RA」)がRSSの正式な策定主体として認定された。RSSの原案を最終的に国がチェックし承認した上でRSSが公表されることになった。RAは、国立公園管理局(National Park Authorities)及び地方自治体からの代表者を中心として(最高7割まで)、英国産業連盟(Confederation of British Industry)や商工会議所等の地域のステークホルダーを3割以上含む、多様な主体で構成されることが求められている。これは地域レベルの計画の策定権限の分権化ととらえられる。
・英国の都市・地域計画の根底には、計画主導システム(plan-led system)がある。計画主導システムでは、申請された開発に対する許可/不許可の決定は、当該地域のディベロップメントプランに沿うことを原則としている。さらに、ディベロップメントプランは、国の方針に沿って策定されるべきものであることから、理論的には国の政策が末端の開発許可まで行き渡るような仕組みとなっている。しかし、すべてのケースにおいてその原則が守られるというわけではなく、広域的な観点からは望ましくないと思われるような開発や、国の指針に反すると思われる開発が、LPAによって認められないとも限らない。英国の都市・地域計画システムでは、国の方針が伝達され、RSSとLDFが連携する枠組みの中で、垂直的な広域調整が行われる仕組みを内包しながら、調整機能が充分に果たされない場合のセーフティネットとして、国がLPAの都市計画権限に関与する強制介入するコールイン制度が用意されている。
・コールインされる開発案件で最も多いのは住宅開発で、次いで商業施設開発の件数が多く、小売業、レジャー施設を合わせて約25%を占めている。
・大臣は基本的にいかなる開発案件にもコールインする権限を有する。しかし、どのような案件に対してコールインするかについては、「指示通達」(Direction Circular)によって示されている。コールインに関する指示通達は5つ発出されている。そのうち、大規模小売店舗に関係するのは、「ディペロップメントプランに位置づけられていない開発に関する指示通達」と、「小売店に関する指示通達」の2つである。これらの指示通達によると、コールインの対象となる小売店は、ディベロップメントプランへの位置づけがない5,000平方メートル以上の店舗、または、20,000平方メートル以上の店舗となっている。加えて、「小売店に関する指示通達」により、既に商業集積のある立地においては2,500平方メートル以上の店舗はコールインの対象となる場合がある。
・2000年1月から2006年12月の間に小売店の開発申請に対するコールインの決定件数は108件あった。そのうち、内容が確認できた決定通知書を元に算出した結果、許可(条件付を含む)が38件、不許可が12件であった。
・基礎自治体が望んでも、広域的な観点から重大な影響があると考えられる開発案件に対しては、国が直接介入し判断することができる。そして、これを実行することによって、国の計画方針を徹底させ、基礎自治体の理解を促進しているといえる。英国のコールイン事例をみると、広域的な観点からの大規模小売店舗の立地に関する判断は、国の計画方針であるPPS・PPGや地域レベルの計画であるRSS・RPGに基づいて中心地の活性化を軸に広域的な影響を評価するとともに、地域経済や雇用への効果といった地域の事情も評価している。しかし、特例として個別に許可を与えるのではなく、あくまでもPPSに示した国の方針に即した「根拠(evidence)」に基づいて判断している。個々の判断に違いがあるように見えるのは、個々の事情が異なることにより、総合的な判断が異なったという結果によるものである。一方で、コールインに関連した制度の見直しの動きもある。現在のコミュニティ・地方自治省の大臣の下ではコールインの件数を削減する傾向にあるが、これはグリーンフィールドに関わるコールインを以前に比べて抑制したことにもよる。グリーンフィールドに関わるコールインは主に住宅開発におけるコールインケースでよくみられたが、一時期件数が増加し、政府、基礎自治体、開発者の時間的・経済的負担が問題となったことからそれらを軽減しようとする意図もあった。グリーンフィールドに関する指示通達37は2007年4月に廃止されている。2002年には118件あったコールイン件数が、2006年には51件となっているが、これはグリーンフィールドに関わるコールインが徐々に減らされてきたことによる。他方、小売店だけをとりあげてみてみると、コールインの検討対象となる開発件数は微増傾向にある。実際にコールインされた件数を見てみても、増加傾向にはないが、開発全体の傾向のようには減少していない。このことから、大規模小売店舗の立地規制が、都市計画の上で重要と位置づけられていることがわかる。さらに、都市計画・土地利用計画制度の硬直性や非効率性を極力排除し、経済効率性をさらに高めることや、市場の競争原理を維持することを目的に、制度改革が検討されている。これは、土地利用や都市計画においても、経済発展の側面をより考慮した政策の推進を提言したバーカーズレビューを受けた土地利用政策の見直しの一環である。例えば、大規模小売店舗のコールイン案件の判断基準となっているPPS 6における5つの立地評価項目のうち、開発に対するニーズ分析を廃止することが決定された。これは、基礎自治体や開発者に対する負担を減らすとともに、経済活動の一層の促進を図ろうとしている。このように、その時の政権や大臣の方針で多少の変更は加えられてはいるが、コールイン制度は開発の規制・誘導における「警察官」のような役割を果たし、個々の基礎自治体の利害を超えた判断を直接的に下す権利を有している。ここで下される個々の開発案件に対する判断は、国の方針に基づきながら、広域的な観点と地域の事情のバランスを考慮して示される一つの指針であるといえる。
・覚書注:コールイン制度を通じて政府が事実上開発を管理している。ただし、開発の計画は地域の自治体が立案しており、制度運営において地方自治が尊重されている。したがって、制度ではなくイギリス地方自治の性質が特徴的であると言える。日本が参考すべき点があるとすれば、それは制度ではない。

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benyamin ♂

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