覚書 090221

河藤佳彦「産業による地域振興施策」自治体国際化協会『分野別自治制度及びその運用に関する説明資料』Np.8、2008年7月。
・国は、「新産業創造戦略」に続いて2006年6月に「新経済成長戦略」を打ち出した。この戦略は、先進国として戦後初めて経験する継続的な人口減少と世界最高水準のスピードで進む高齢化に伴う成長制約を克服する持続的な経済成長を「新しい成長」とし、その実現を目標とするものである。また、そのために「強い日本経済」の再構築が必要であるとして、「国際競争力の強化」と「地域経済の活性化」の重要性を強調している。
・近年、中心市街地の衰退が著しい。その原因として考えられることは、モータリゼーションの進展を背景とした郊外大型商業店舗の進出拡大、経営者の高齢化などによる経営意欲の低下などの影響による中心市街地の商店街の衰退、地価高騰時代に進んだ公共施設の郊外移転や企業の業務機能の統廃合などである。このような状況のなかで、これまで地域住民の生活ニーズについて、文化や教養など自己実現のための高次なレベルから日用品の調達といった身近なレベルまで充足してくれた都市の機能が低下することが懸念されており、国もこの中心市街地の活性化を重要な政策課題として受け止め、様々な取り組みを行っている。その具体的な取り組みの一つが「コンパクト・シティ」の形成である。これは、都市中心部にまちの機能をコンパクトに集約することによって賑わいを取り戻し、効率性を高め、都市の活力を取り戻そうとするものである。コンパクト・シティの形成の政策手段としても注目されるのが、国による、いわゆる「まちづくり三法」による中心市街地の活性化である。3つの法律のそれぞれにおける主なポイントは、次のとおりである。1. 中心市街地活性化法(施行1998年):中心市街地の活性化のため「市街地の整備改善」、「商業等の活性化」を一体的に推進する。2. 大規模小売店舗立地法(施行2000年):大型店の立地に際して、「周辺地域の生活環境の保持」の観点からの配慮を求める。3. 都市計画法の改正によるゾーンニング(土地利用規制)(施行1998年):大型店の立地を制限する必要があると市町村が判断した場合の土地利用規制制度を措置する。この3つの法律を併せて活用することにより、地域による中心市街地の活性化への取り組みを積極的に支援することとした。すなわち、国の基本方針のもとに市町村が基本計画を策定し、中心市街地を一つのショッピング・モールと見立てて実施される施設の整備事業や顧客へのサービス増進、商業者の経営革新などソフト面での事業を実施するタウンマネージメント機関としての商工会・商工会議所または第三セクターを、財政面・税制面などで支援する。そのために、生活環境への十分な配慮を前提として大規模小売店舗の立地を原則自由とする。ただし、大規模店舗の立地などを地域の実情に応じて規制・促進などができるように、都市計画上の制度を地元の判断によって併用するというものである。しかし、まちづくり三法が施行された後数年を経ても中心市街地における店舗や売上高の減少傾向が収まる気配が見られなかったことから、国は更なる対策を立てることとし、2006年にまちづくり三法のうち、中心市街地活性化法と都市計画法について改正を行った。これらの改正は、都市の無秩序な外延的分散を抑制し、中心市街地において地域が主体的に取り組む場合の支援を強化するものである。このような中心市街地活性化のための規制策・支援策は効果が期待されるが、あくまでも活性化のためのツールが用意されているに過ぎない。重要なことは、地域が主体的に自らの都市像を明確に持ち、その実現のために積極的な取り組みを行おうとする意思を持つことであろう。そうすることによって初めて、まちづくり三法は効果を発揮することになる。
・国が推進する地域産業振興政策における代表的なプロジェクトとして、「産業クラスター計画」と「知的クラスター創成事業」を挙げることができる。両プロジェクトは相互に連携をとりつつ進められており事業実績を上げつつある。「産業クラスター計画」は、地域主体の産業活性化の取り組み支援として、経済産業省の主導により2001年度から推進されている。この計画は、我が国産業の国際競争力を強化するとともに、地域経済の活性化を図るものである。民間のプロジェクト推進組織が中心となり、地域企業が情報提供やコンサルティングなどの支援を受けて競争力を高めるとともに、大学や研究機関などと研究開発などについて相互連携を深めることにより、地域経済全体の自立的な発展を目指すものである。また、製造業のほか情報産業やサービス産業なども対象とし、金融機関や商社など関連分野との連携も幅広く視野に入れた計画である。2001年度からの第I期計画の期間に引き続き2006年度からは第2期計画に入っている。現在、全国で17のプロジェクトが展開されており、5年間で4万件の新事業創出などの数値目標などを設定している。「知的クラスター創成事業」は、地方自治体の主体性を重視し、知的創造の拠点たる大学、公的研究機関等を核とした、関連研究機関、研究開発型企業等による国際的な競争力のある技術革新のための集積(知的クラスター)の創成を目指すものであり、文部科学省が主導して2002年度から実施されている。

小山永樹「日本の教育行政と自治体の役割」自治体国際化協会『分野別自治制度及びその運用に関する説明資料』Np.9、2008年7月。
・義務教育以降における進学率については、高等学校等への進学率は、1950年の42.5%から、1970年には82.1%、1980年には94.2%、2006年には97.7%と、教育の機会均等が促進されており、大学・短期大学への進学率は、1954年の10.1%から、1970年には23.6%、1980年には37.4%、2006年には52.3%と上昇している。
・我が国における教育行政を担う組織としては、国では文部科学省が中心であり、自治体では、都道府県、市区町村及び教育に関する事務を処理する地方公共団体の組合に設置される教育委員会が中心である。教育委員会は、自治体の執行機関の1つであり、普通地方公共団体には置かなければならないものとされている。日本国憲法では93条では、我が国の地方自治体の組織について、議事機関としての議会の議員と執行組織としての長のいずれをも住民の直接選挙により選任することを定めており、首長制(大統領制)を採用しているが、自治体の執行機関は、長を唯一の頂点とする構造にはなっておらず、教育委員会の他、人事委員会、選挙管理委員会、監査委員会など多くの委員会及び委員(しばしば「行政委員会」と総称される)から構成され、それぞれの執行機関が独立した権限を持つとともに、長が自治体を統轄・代表し、執行機関全体の総合調整を行うシステムとなっている(執行機関の多元主義)。このような多元主義が採用されたのは、1つの機関への権限集中を避け、複数の執行機関に権限を分掌させて、それぞれに独立して事務を処理させることにより、民主的な地方行政が行われることが期待されているためである。中でも教育委員会制度を設けた意義としては、文部科学省の資料によれば、次の3点が指摘されている。第1に、政治的中立性の確保である。個人の精神的な価値の形成を目指して行われる教育においては、その内容が中立公正であることは重要であり、教育行政の執行に当たっても、個人的な価値判断や特定の党派的影響から中立性を確保することが必要である。第2に、継続性、安定性の確保である。教育は、子供の健全な成長発達のため、学習時間を通じて一貫した方針の下、安定的に行われることが必要である。第3に、地域住民の意向の反映である。教育は、地域住民に身近で関心の高い行政分野であり、専門家のみが扱うのではなく、広く地域住民の意向を踏まえて行われることが必要である。
・教育委員会は、自治体の長が議会の同意を得て任命する原則5人(ただし、条例の定めるところにより、都道府県及び市又はこれらが加入する組合については6人以上、町村又は町村のみが加入する組合については3人以上とすることができる)の教育委員から構成される合議制の行政委員会である。教育委員会制度創設時の1948年には、教育委員は公選であったが、1. 選挙が実質的に政党を基盤に行われ、それが教育委員会の運営に持ち込まれたこと、2. 大きな資金を持った者や強力な支持母体を持った者が当選しやすかったこと、3. 大きな組織力を有する団体が組織力を利用して教育委員を送り込み、教育行政をコントロールしようとする傾向が増えたこと、などの理由で1956年に公選制が廃止され、現在の制度となっている。教育委員の任期は4年で、再任可能である。教育委員は、有権者の3分の1以上の署名による解職請求(リコール)の対象となっているが、任期中、リコールが成立した場合や、心身の故障のため職務の遂行に耐えないと認める場合、職務上の義務違反等があると認める場合など一定の事由がある場合を除いては失職・罷免されず、このような身分保障のもと、教育行政の安定が確保されている。また、同一政党所属者が委員の過半数を占めるに至った場合には、新たにその政党に所属するに至った委員を罷免することや、政治的団体の役員となったり、積極的な政治活動をするこが禁止されることにより、教育行政の政治的中立性が確保されている。
・教育委員会の在り方については、様々な問題点が指摘されている。文部科学大臣の諮問機関である中央養育審議会の教育制度分科会・地方教育行政部会が2005年1月にまとめた「地方分権時代における教育委員会の在り方について」(部会まとめ)では、1. 教育委員会は、事務局の提出する案を追認するだけで、実質的な意思決定を行っていない。2. 教育委員会が地域住民の意向を十分に反映したものとなっておらず、教員など教育関係者の意向に沿って教育行政を行う傾向が強い。3. 地域住民にとって、教育委員会はどのような役割を持っているのか、どのような活動を行っているのかがあまり認知されていない。地域住民との接点がなく、住民から遠い存在となっている。4. 国や都道府県の示す方向性に沿うことに集中し、それぞれの地域の実情に応じて施策を行う志向が必ずしも強くない。5. 学校は、設置者である市町村ではなく、国や都道府県の方針を重視する傾向が強い。また、教職員の市町村に対する帰属意識が弱い。といった点を指摘している。その他、近年、地方自治体の長と行政委員会との関係を見直す動きの一環として、長と教育委員会の関係についての議論がなされている。内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会では、「地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会の在り方に関する答申」(2005年12月)において、「住民から直接選出された長が責任を持つことが求められているにもかかわらず、この要請を満たすことができない行政分野が生じている状況を改善し、また、地方行政の総合的・効率的な運営や組織の簡素化を図る」必要があるとして、行政委員会制度の課題について指摘している。中でも、教育委員会制度については、保育所と幼稚園、私立学校と公立学校など、長と教育委員会がそれぞれ類似の事務を担当していることなどにより地方自治体の一体的な組織運営が妨げられているという問題があると指摘し、地方自治体の判断により教育委員会を接しして教育に関する事務を行うこととするか、教育委員会を設置せず、その業務を長が行うこととするかを選択できることが適当であるとしている。このような答申をする理由として、前述のような長と委員会が類似の事務を実施していることのほか、教育委員会を必置する理由として挙げられる、教育における政治的中立性の確保や地域住民の意向の反映などの必要性ということについて、国においては教育行政に関し行政委員会制度をとっていないが、これらの要請が地域における教育行政に特有のものとは考えられないこと、また、これらの要請は審議会の活用など他の方法によっても対応でき、特に地域住民の意向の反映はむしろ公選の長の方がより適切になしうることから、理由がないことを指摘している。また、同調査会は、文化、スポーツ、生涯学習支援、幼稚園、社会教育、文化財保護などもふくめ、公立小・中・高等学校における学校教育以外の事務については、地方自治体の判断により長が所掌するか、教育委員会が所掌するかの選択を幅広く認める措置を直ちに採ることとすべきとしている。このような中、2007年6月に地方教育行政法が改正され、条例の定めるところにより、地方自治体の長が、1. スポーツに関すること(学校における体育に関することを除く)、2. 文化に関すること(文化財の保護に関することを除く)のいずれか又はすべてを管理・執行することができるとされた。地方分権推進の立場からすると、自治体の執行機関の組織の形態などについて、地域の実態に応じて可能な限り自治体が選択できるようにすることは重要であり、今後一層、そのような方向での改革がなされることが期待されるところである。
・学校は、国(国立大学法人などを含む)、自治体(公立大学法人を含む)及び学校法人のみが設置することができ、それぞれが設置した学校を、国立学校、公立学校、私立学校という。学校教育法における「学校」には、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、大学などの種類があるが、それぞれをどの主体が設置するかについて一義的には定められていない。ただし、市町村は、その区域内にある学齢児童及び学齢生徒を就学させるに必要な小学校及び中学校を設置しなければならず、都道府県は、その区域内にある学齢児童および学齢生徒のうち、一定の視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者又は病弱者を就学させるために必要な特別支援学校を設置しなければならないこととされ、これらの学校の設置については、市町村及び都道府県に義務付けられている。
・自治体の教育財政の概要を、2005年度における地方自治体(47都道府県、1,821市町村、23特別区、1,464一部事務組合及び63広域連合)の普通会計の純計決算額で見ることとする。自治体が実施する学校教育、社会教育などの教育文化行政の推進に要する経費である教育費の決算額は16兆5,778億円で、歳出総額に占める割合は18.3%となっており、歳出総額の中で最も大きな割合を占めている。教育費の構成比を団体種類別にみると、都道府県においては23.7%、市町村においては10.8%となっている。教育費の目的別の内訳をみると、小学校費が5兆992億円と最も大きな割合(教育費総額の30.8%)を占め、以下、中学校費2兆8,782億円(同17.4%)、高等学校費2兆4,988億円(同15.1%)、教職員の退職金や私立学校の振興などに要する経費である教育総務費2兆3,101億円(同13.9%)の順となっている。目的別の構成比を団体種類別にみると、都道府県においては小学校費が最も大きな割合(34.2%)を占め、以下、高等学校費(20.4%)、中学校費(19.3%)となっている。また、市町村においても、小学校費が最も大きな割合(23.1%)を占め、以下、保健体育費(20.9%)、社会教育費(20.7%)の順となっている。教育費の性質別の内訳をみると、人件費が11兆3,718億円と最も大きな割合(教育費総額の68.6%)を占め、以下、物件費2兆834億円(同12.6%)、義務教育施設整備等の経費である普通建設事業費1兆5,712億円(同9.5%)の順となっている。性質別の構成比を団体種類別にみると、都道府県においては、都道府県立学校教職員の人件費のほか、市町村立義務教育諸学校の人件費を負担していることから、人件費が大部分(84.8%)を占めている。また、市町村においても、人件費が最も大きな割合(33.2%)を占め、以下、物件費(31.9%)、普通建設事業費(22.8%)の順となっている。なお、このうち学校教育費だけ取り出してみた場合、最終支出ベースにおける国と地方の割合は国15%、地方85%であり、実際の教育行政は、ほとんどが自治体の手で実施されていることがわかる。
・義務教育費国庫負担制度とは、本来、市町村が負担すべき市町村立小・中学校教職員の給与費を都道府県の負担とした上で、国が都道府県の実支出額の原則3分の1を負担するというものである。2006年度の予算では、約70万人分、1兆6,763億円にのぼる。国庫負担の対象は、公立の義務教育諸学校教職員(校長、教頭、教諭、事務職員など)の給料・諸手当である。1953年の現行義務教育費国庫負担法制定後、負担対象経費は順次拡大されてきたが、1985年移行、国と地方の役割分担、国と地方の財政状況などを踏まえ、給料・諸手当以外の費用が国庫負担の対象から外れ、地方交付税により財源的に手当てされるようになり、現状となっている。

伊藤さゆり「金融危機下のユーロとポンド」ニッセイ基礎研究所『Weekly エコノミスト・レター』2009年2月13日。
・イギリス政府は、想定以上の景気悪化、金融機関の損失拡大に対して、1月19日に不良資産対策を含む第二弾の金融対策を欧州主要国の中でいち早く打ち出した。また、イングランド銀行(BOE)の政策金利は、2月には1%まで引き下げられ、ECBの2%を下回っている。さらに、今月11日に公表された「インフレ報告」では、追加で0.75%まで利下げを行った場合でも2009年中のプラス成長の回復は難しく、物価は中期的に2%という政策目標を下回るリスクが高いという見通しが示されている。この見通しに基づき、キング総裁は、「(マネーサプライを増やす手法も含む)あらゆる手段を用いインフレ目標への回帰と潜在力に見合った成長を回復する」と述べており、3月4日から5日の金融政策委員会(MPC)など近い将来に量的緩和に踏み切る見通しが強まった。

「欧州経済・金融市場の概況」みずほ総合研究所『みずほ欧州経済情報』2009年2月号。
・英国景気は1991年以来のリセッション(2四半期連続の景気後退)に陥ったことが確認された。10-12月期の英実質GDPは前期比マイナス1.5%と、1980年4-6月期以来の大幅なマイナス成長となった。需要項目は未発表だが、個人消費、設備投資など内需悪化が主因とみられる。業種別にみると、10-12月期は製造業セクターの落ち込みが大きく押し下げた。10-12月期の鉱工実質総付加価値は前期比マイナス3.9%となり、実質GDPをマイナス0.6Pt程度押し下げた。英国はサービス業が中心だが、昨年末は世界的な輸出急減による影響を免れなかった。
・住宅価格の下落による逆資産効果、バランスシート調整圧力、雇用・所得環境の悪化が個人消費を抑制することになろう。歴史的な低水準まで低下した貯蓄率(2008年7-9月期:1.8%)は徐々に上昇していくとみている。雇用情勢の悪化は2008年末にかけて急激に加速し始めた。1月の失業者数(失業保険申請ベース)は1,233千人、3ヶ月前差プラス236千人と、前回景気後退に陥った1991年のペースに近づいている。
・12月からVATが引き下げられたこともあり、1月のインフレ率はプラス3.1%(前月比マイナス1.0Pt)と大きく低下した。他方、ポンド安による影響で、12月の輸入物価(石油除く)が前年比プラス14.0%と急上昇している。デフレを回避したいBOEにとって、輸入物価上昇はプラス材料となろう。もっとも、内需悪化や雇用コスト削減によって、今後の国内物価への価格転嫁は限定的と見込まれる。

大橋善晃「英国における金融教育 FSA主導による「金融に関する消費者教育」への取り組み」『証券レビュー』2009年2月号。
・英国の金融教育の特色は、それが金融サービス市場法という法律によって位置づけられていることである。同法は、FSA (Financial Service Authority)の規制目的として、市場の信頼性、公衆の啓蒙、消費者の保護、金融犯罪の削減の4つを掲げたが、このうち、公衆の啓蒙、消費者の保護という目的を達成するための業務が「消費者教育」と呼ばれるものであり、FSAは、これを、金融サービス市場における公正で効率的な機能を高めるという彼らの規制課題の重要な一部であると位置づけた。
・英国では、1997年の総選挙で労働党政権が成立すると、直ちに金融サービス業や金融・資本市場の規制体系を全面的に変革する方針が打ち出された。その内容は、従来の業種ごとの分散型の規制方式から単一の規制機関である金融サービス機構(FSA)による規制方式に改めるというものであった。この背景には、1986年のビッグバン開始以降、金融自由化の進展に伴って、銀行や証券等の従来の枠組みが崩れてきたことや、業態ごとの自主規制機関が公益と業界利益の双方を担うことに矛盾や批判があったことなどが挙げられている。金融サービス市場法は、2000年6月、議会を通過し、女王の裁可を得て成立した。金融サービス市場のもとで、FSAは、唯一の規制・監督機関として明確に位置づけられ、従来の9つの規制・監督機関の役割を引き継ぐほか、弁護士、会計士などの専門職団体及びロイズ保険組合の監督を担うことになった。FSAの法的形態は保証有限責任の私的会社であり、その運営費用は主に認可業者からの手数料によって賄われることとされた。
・金融サービス市場法は、FSAが担う目的についても、金融サービス市場法の規制目的(regulatory objectives、あるいは、statutory objectives)として以下の4つが明記された。1. 市場の信頼性、2. 公衆の啓蒙、3. 消費者の保護、4. 金融犯罪の削減。これらの規制目的を達成するために、FSAには次のような広範な権限が与えられている。1. 規則策定:業務基準、規制手続き、消費者・業者の救済などに関わる規則及びガイダンスの策定、2. 認可:業者が特定の規制業務を遂行することを許可する、3. 監視:調査権限などを行使して、業務が適切な基準に従って遂行されているかを監視する、4. 教育及び訓練:業者の能力・規制業務に対する理解向上、金融市場・商品の性質に関する消費者意識の向上を促進する、5. エンフォースメント:介入・制裁・訴追権限を行使することによって、規制の実効性を確保する、6. 救済:業者への苦情処理、業者の破綻などに伴う損失補償といった、消費者の救済手段を整備する。
・金融サービス市場法によって、FSAは、金融システムに対する公衆の理解増進、適切な水準の消費者保護の確保という法定の目的を付与されたのであるが、この新たな目的を達成するための業務が、「消費者教育」(Consumer Education)として知られるものであり、FSAは、これを、金融サービス市場における公正で効率的な機能を高めるという彼らの全体的な規制課題の重要な一部であると位置づける。そして、当時の公衆の知識水準を勘案すれば、消費者教育は、公衆の金融システムに対する認識と理解を喚起するために必要な金融リテラシー(financial literacy)を高めるための優先課題を幅広く盛り込む必要があるとしたのである。ここで金融リテラシーというのは、「情報に基づく判断を行い、資金の活用及び管理に関して効率的な意思決定を行なう能力」と定義されている。

国際投信投資顧問株式会社「投資戦略マンスリー」2009年2月号。
・英国では、住宅という資産価格の下落と実体経済悪化の同時進行を止めるべく、政府と中銀は1月19日に包括的な対策を発表しました。つまり、1. 中銀によるCPなどの金融資産買取り、2. 金融機関から発生する損失の政府肩代わりなどです。2008年に発表していた公的資金注入策から、より踏み込んだ形です。一方、政府負担の強まりで、英国の財政赤字は悪化が予想されます。英中銀の推計では、今回の金融危機で見込まれる英国の損失額は1,226億ポンドとGDPの約8.5%になると予想されています。これらに係る費用を国債発行で賄う場合、財政赤字は現在の見込値からさらに膨らむと思われます。また、今後はこれら対策でバランスシート縮小をいかに最小限に留めるかが課題になります。
・英国は1月19日に金融システム安定化策を発表しました。即ち、1. AAA格の資産担保証券(ABS)への政府保証、2. 中銀による金融資産買取り(総額500億ポンド)、3. 政府による金融機関の損失肩代わりなどです。昨年は公的資金注入を主要金融機関に行いましたが、貸出し縮小は止まらず、より抜本的な対策に乗り出したとみられます。今後は、3に関して金融機関が抱える不良債権処理の厳格化に政府が何処まで踏み込めるかが鍵になると思われます。これら対策の財源は新規に国債を発行して賄われる予定です。政府の財政赤字対GDP比(英財務省の2008年11月時点の見積もりでは2009年マイナス5.3%、2010年マイナス4.7%)はさらに拡大が見込まれます。金融安定化策の進捗度は先進国の中でも進んでいるとみられますが、あく抜け感が出てくるまではポンドには売り圧力が掛かりやすいでしょう。

「英国におけるREACH施行の評価」NEDO『海外レポート』1038、2009年2月12日。
・環境・食糧・農村問題省(DEFRA:Department for the Environment, Food and Rural Affairs)の話を聞いた結果によれば、化学品製造・輸入業者とその下流部門のユーザーはそもそもREACH(Registration, Evaluation, Authorization and Restriction of Chemicals:化学物質の登録、認可、評価、制限に関する規則)を、野心的に過ぎ、官僚的で、法外かつ不必要な高コストを要する法律と見ているものの、現在大半が同法を遵守しているという意見が主流だった。2008年11月1日、欧州化学物質庁(ECHA:European Chemicals Agency)は、EU/EEA諸国(EU加盟27ヵ国とノルウェー、アイスランド、リヒテンシュタイン)内の予備登録水準に関する統計を発表した。加盟国中ドイツが最も事前登録の件数が多く、次いで英国が多かった。英国は、適切な指標を明らかにし、評価と監視のメカニズムを開発して、国内におけるREACH施行の進捗状況を評価する意向である。DEFRAは指標を評価するプロポーザルを現在検討しているが、監視プログラムの整備、影響の評価、2010年までの報告書完成を目指すなど、かなり広範なものになると述べた。また、健康、環境、ビジネスに影響が浸透するには数年かかると思われ、英国におけるREACHの影響のより正確な評価は、2015年の報告書作成を待たねばならないだろうと述べた。

大政美樹「主要国の金融政策動向」国際金融情報センター、2009年2月5日。
・英国:1.50% 1月8日に0.5%ポイント引き下げ1.50%へ。危機後退の勢いが強く、過去最低水準に。10月以降今回まで、計3.5%の大幅利下げ(10月:0.5%ポイント、11月:1.5%ポイント、12月:1.0%ポイント)を実施。次回は2月4-5日。

大政美樹「主要国の政治動向」国際金融情報センター、2009年2月5日。
・英国 2009年:総選挙(予定)。

藤森克彦「英国ブラウン政権の雇用対策 将来を見据えた人材への「投資」を重視」みずほ情報総研、2009年2月17日。
・英国の雇用情勢が、悪化の一途を辿っている。最新の雇用統計によれば、08年度10-12月期の失業率は6.3%となり、わずか1年で1.1%ポイントも上昇した。失業者数は1年前と比べて、36万9千人増加して197万人。これは1997年以来の高い水準である。今後も失業者は増え続け、2010年までに300万人を超えるとの観測も出されている。
・注目すべきは、職業訓練にも一層力を入れようとしている点である。今年1月に国内の経営者や労働組合などを集めて「雇用サミット」を開催したが、その中でブラウン首相は、低所得者層への経済支援などを説明した後に、「しかし最善の支援は、人々にスキルを身につけさせて、将来への投資をすることである。それが、回復期に向けた準備になる」として、将来に向けて今こそ人材へ投資をしなくてはいけないことを強調した。もっとも、不況期ではいくらスキルを身につけても、求人が少ないので効果が薄いという批判もある。しかし現在でも、英国内には50万件の求人があり、毎日新たに1万件の求人が登録されている状況だという。ブラウン首相は、「政府は常に人々を失業しないようにできるわけではないが、失業者の再就職を支援することはできる」と語り、半年以上の長期失業者への就職活動支援や職業訓練を一層強化するとした。そのための施策として、従来からのニューディール政策に加えて、「地方における雇用のパートナーシップ(Local Employment Partnerships:LEP)」などが進められている。これは、各地の職業安定所や職業訓練機関が求人企業と協力して、長期失業者に当該企業に合った効果的な訓練を行って、就職に結びつけようというものだ。職業安定所や訓練機関のスタッフは、LEPに調印した企業の人材ニーズを把握して、それに合った訓練計画を立て、訓練を行っていく。他方、調印した企業は、訓練を修了した失業者に面談や職業体験の機会を与える。採用するか否かは企業の判断によるが、2007年の実施以来、9万人以上がLEPを通じて就職したという。英国政府は、LEPによってさらに20万人の就職を目指している。

岡久慶「イギリス 2008-2009年会期の立法計画」国立国会図書館調査及び立法交差局『外国の立法』2009年1月。
・2008年12月3日、イギリス議会の2008-2009年会期の開院式が行われ、政府は14件の政府法案を発表した。2008-2009年会期における開院勅語は、イギリス経済の安定化を政府最大の優先事項に位置付け、家族及び企業が景気後退を凌ぐのを助けると論じ、政府の立法プログラムにおける経済及び福祉方面の重要性を強調している。
・銀行業務法案(Banking Bill):経営不振に陥った金融機関を救済する恒久的な法的枠組を整え、金融市場の監督を行う三大機関(イングランド銀行、金融サービス機構及び財務省)の連携を強化し、イングランド銀行に経営不振の銀行への短期的匿名融資を行わせ、預金者保護の額を3万5000ポンドから5万ポンドに引き上げる。前会期からの継続審議法案である。
・セービング・ゲイトウェイ口座法案(Saving Gateway Accounts Bill):低所得層800万人を対象に、最長で2年間、月1ポンドの貯蓄に対して50ペンスの割合で政府拠出金(最高額で25ポンドに対する12.5ポンド、満期で300ポンドになる)を与え、貯蓄促進を図る制度。2010年施行予定。
・福祉改革法案(Welfare Reform Bill):手当受給から就労への移行を促す法案と位置づけられ、所得補助金を廃止し、受給者を健康であれば求職者手当、健康に問題があれば雇用・生活補助手当へと移管し、常に就労するよう圧力がかかる状態に置く。給付申請者に嘘発見器のテストを義務付ける規定を盛り込むことが、一部のメディアによって報道されている。
・児童貧困法案(Child Poverty Bill):労働党政府は2020年までに児童貧困を一掃するという目標を掲げている。しかし、現状では2010年の中間目標達成も困難であり、保守党がこの目標を守る意思がないことを踏まえ、目標達成に法的拘束力を与える規定を設ける。
・警察活動及び犯罪法案(Policing and Crime Bill):人身取引の被害者の女性を買春することを犯罪化し、ラップダンスを提供するクラブを取り締り、地方自治体に公共秩序紊乱の原因となっている酒場が酒の安売り等で客寄せすることを禁ずる権限を与える。特に買春に関しては、スミス内相が、女性が人身取引の被害者であることを知らなかった場合でも、これが抗弁の理由とならない旨を明らかにしており、議論が予想される。
・国境、移民及び市民権法案(Borders, Immigration and Citizenship Bill):市民権獲得に必要な条件を、合法的な職、納税、共同体への参加(ボランティア活動)、犯罪歴のないことと入国以来6年経過していることと定め、ボランティアに参加しない者には8年の期間が必要となることを定める。期間満了までの間に失業した者、家族関係で入国したにもかかわらずその関係が消滅した者には、国外退去を求めることができる。また新しい移民には、地元の公共サービスに対する移民増加による負担の代償として、課金を賦課することが可能となる。

岡久慶「イギリス 日本と韓国に関する下院外交問題特別委員会の報告書」国立国会図書館調査及び立法交差局『外国の立法』2009年1月。
・2008年11月12日、イギリス議会下院外交問題特別委員会は、2007年度の第10回報告として、「世界的安全保障:日本と韓国」を発表した。報告書は両国の国際的役割及び対英関係について考察し、幾つかの結論及び政府に対する勧告を提示している。
・日韓関係の改善は、特に北朝鮮問題への対応の上でも重要であり、これを歓迎する。竹島/独島問題の継続を遺憾とし、紛争のエスカレートを避け、恒久的解決の枠組みを築くよう働きかけることを勧告する。第二次世界大戦中の従軍慰安婦問題に関しては、日本も含めて国際的にその重要性が認識されるべきである。
・核問題と拉致被害者問題が進展すれば、日本と北朝鮮の関係正常化は可能だが、これらの問題は、別個に解決すべきである。拉致問題が日本にとって感情的なしこりとなる問題であることは国際的に認識されるべきであり、政府も北朝鮮に問題解決の働きかけを行うべきであるが、国際的に重要なのは朝鮮半島非核化である。
・日本の安保理常任理事国入りを、原則として支援する政府方針を是とする。
・捕鯨は日本の文化的伝統もあり、短期で止めさせることは困難だが、継続的圧力をかけ続ける政府方針を是とする。
・覚書注:捕鯨がなぜ項目に挙げられているのかわからない。外交問題なのだろうか。

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