2009年3月アーカイブ

覚書 090321

「ユーロ圏は金融不安の再燃により景気底割れリスクが高まる、英国政府が具体的な銀行の資産保護スキームを発表、BOEは量的緩和政策を導入」三菱東京UFJ銀行『経済マンスリー 西欧』2009年3月16日。
・1月に政府が発表した追加銀行支援策で示された資産保護スキームについて、その具体策が2月26日に発表された。この中では、250億ポンド以上の適格資産を保有する英国の預金取り扱い機関に適用されることや、貸し出しやCDOなどが対象資産になることが示された。また、損失表過なども、より具体的に明示されている。当初損失を除いた損失の90%を政府が負担することが記されている。しかし、当初損失額、手数料については、個々の金融機関ごとに決められるようで、実際に適用第1弾となったロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(RBS)と、3月7日に適用されたロイズバンキンググループ(ロイズBG)では異なるものとなっている。対象資産の範囲や質などが異なることから、手数料率などには個別金融機関に差が出ている。資産保護スキームは元々、銀行貸出を回復させることを目的としている。本スキームの対象資産総額は、RBSで総資産の13.5%、ロイズBGで59.6%と、海外業務のウェイトが高いRBSでウェイトが小さくなっているが、これでもって、各行が貸し出し拡大の制約となる証券化商品や不良債権などの損失処理に目処をつけ、貸し出しを増加させる環境が整うかどうかは不明である。しかし、本スキームを適用する際には、法的拘束力を持つ貸し出し業務を追うことになる。そのため、RBSは、住宅ローンと企業向け貸し出しを今後1年間でそれぞれ90億ポンド、160億ポンド増やさなければならない。また、ロイズBGも住宅ローンを30億ポンド、企業向け貸し出しを110億ポンド増加させる義務を負うことになった。また、資産保護スキームの適用金融機関の報酬政策は、金融サービス機構(FSA)が策定した報酬政策に関する指針に従わなければならなくなった。それによれば、報酬は銀行の長期的な成長に資する形で決めなければならないほか、賞与などの決定の際には、リスクを十分に考慮しなければならなくなる。今回の指針が十分に銀行経営に浸透すれば、過度のリスクをとって短期で高収益をあげるビジネスモデルは維持できなくなるであろう。ある程度、長期間の業績で、リスク調整後の収益で評価されるということになれば、銀行経営者は、より長期的な視点で、かつリスクを十分に考慮した経営を行なうことになる。こうした変化は、金融システムをより安定したものにすると考えられる。
・英国経済は、依然、後退を続けている。消費者信頼感指数は2月にやや上昇するも、水準は低く、これをもって消費者マインドが回復に向かうということはなさそうである。インフレ率の低下や追加銀行支援策の発表に伴う資金繰りの改善への期待感などが数字に表れているが、直接、個人消費に影響する購買計画は、まだ、悪化を続けている。小売売上は昨年12月、今年1月とそれぞれ前年比プラス4.3%、同プラス3.6%と比較的高めの伸びを示したが、大幅な値下げを伴ったセールの効果であり、2月以降、持続するかどうか疑問である。また、2月には再び住宅価格が下げ足を強めた。ハリファックス指数は、前年比マイナス17.7%と1月より下落幅が拡大した。住宅価格の下落は続いており、逆資産効果による個人消費への影響が懸念されるところである。また、雇用情勢も悪化している。失業保険申請者ベースの失業率は1月に3.8%まで上昇した。失業保険の申請者数は120万人を超え、1999年7月以来の水準まで増加している。これらを踏まえると、個人消費の回復には、まだ、時間がかかりそうである。
・1月の消費者物価上昇率は前年比3.0%と前月より0.1%ポイント低下した。ガソリン価格などが前年比マイナス6.4%、衣類などが10.0%と全体の上昇率を押し下げた。一方で、昨年夏から大幅に引き上げられた電気・ガス料金は、前年比プラス36.2%と依然上昇率が高いことから、前月からの上昇率の低下幅は小幅なものにとどまった。ただし、こうした公共料金のベース効果は今後、剥落してくることから、消費者物価上昇率は、徐々に低下していくと考えられる。イングランド銀行(BOE)は3月5日の金融政策委員会で、政策金利を0.5%ポイント引き下げ、0.5%とした。また、残存期間5年から25年までの中長期国債を750億ポンドまでBOEが買い取る量的緩和策の導入を発表した。量的緩和政策については、その効果が現われ始めている。最初の国債買取が3月11日の入札で行なわれた。特に、銀行からの応募が好調であっちょうである。BOEが買取の対象とした期間の国債利回りは、対象外の期間の国債利回りよりも、量的緩和政策導入前の水準からの低下幅が大きくなっている。これらを基準とする社債利回りの低下が見込まれ、資金調達環境の改善につながることが期待される。

大政美樹「主要国の金融政策動向」国際金融情報センター、2009年3月4日。
・英国:1.00% 2月5日:0.5%ポイント引き下げ1.0%へ。景気後退の勢いが強く、2008年10月以降5回連続で、計4.0%ポイントの大幅利下げ(10月:0.5pp、11月:1.5pp、12月:1.0pp、1月:0.5pp、2月:0.5pp)を実施。金利水準は1月からBOE創設以来の最低水準。次回会合は3/4-5。

大政美樹「主要国の政治動向」国際金融情報センター、2009年3月4日。
・英国:2010年までに総選挙。

財務省主計局「諸外国の景気対策と財政状況」2009年3月17日。
・英国:2008年11月、VAT(付加価値税)の一時的引下げ、公共投資支出の前倒し等を内容とする景気対策を発表。2010年3月までに総額約200億ポンド(約2.8兆円):対GDP比約1.3%。
・財政収支対GDP比(2009年度見通し):マイナス8.0%。
・財政運営目標:2008年11月、不況期を脱した後、投資支出を除いた収支を毎年改善させるという、一時的な財政運営規定を導入。
・2008年11月24日、英国財務省は、当面の景気対策を盛り込んだプレ・バジェット・レポート2008 “Pre-Budget Report 2008(PBR)”を発表。景気対策の主な内容は、VAT(付加価値税)の一時的引下げ、公共投資支出の前倒し、個人所得税の課税最低限の引上げ、年金受給者への一時金の支給等。2010年3月までに総額約200億ポンド(約2.8兆円、対GDP比約1.3%)規模。
・これまでの財政規律(ゴールデン・ルール及びサステナビリティ・ルール)は一時的に逸脱するとしている。他方で、中期的な財政の持続可能性を維持するため、2015年度までに経常的収支(投資支出を除いた収支)を均衡させ債務残高対GDP比を低下させるよう、経済が回復局面に入る2010年度以降同収支を毎年改善させるという、一時的な財政運営規定を導入。
・PBRでは、景気対策とあわせて、一時的な財政運営規定の達成に向けた財政健全化のための措置も示されている。主な内容は、所得税の最高税率の引上げ(2011年4月)、国民保険料率の引上げ(2011年4月)、行政の効率化(2010年度以降)など。
・ゴールデン・ルール:景気循環を通じて、公的部門の借入れを投資目的に限定し、投資支出以外の経常的歳出は税収等の経常的歳入により賄う。サステナビリティ・ルール:景気循環を通じて、純公債残高の対GDP比を安定的な水準(40%以下)で推移させる。

労働政策研究・研修機構「諸外国の外国人労働者受け入れ制度と実態2008」JILPT資料シリーズNo.46、2008年7月。
・2007年は移民関連の話題に事欠かない年であった。フランスでは、5月にサルコジ氏が新大統領に就任し、新移民法を成立させた。内相時代から不法移民の取り締まり強化をはじめとする移民法改正に積極的だった同氏による法改正により、高度人材を積極的に受け入れるとする一方で、不法移民への取り締まり強化など移民の管理強化姿勢が鮮明になった。一方、イギリスでは、ブレアからブラウンへと政権がバトンタッチされ、基本的には労働党が推進する積極的移民政策が踏襲された。しかし、イギリスにおいても政策の基本となっているのは、有能な人材の積極的な確保と非合法移民の制限強化という明確な方針である。さらにイギリスではポイント制が導入され、移民を5段階のレベルに階層化するという新制度がスタートしている。こうした、自国の発展に有効な人材を優遇し、そうでない移民を制限しようという概念を基調とした、いわゆる「選択的移民政策」が最近の欧州の移民政策の新しい潮流となっている。欧州の移民政策にこうした潮流が生まれた背景には、移民が関与した事件の増加があることは否めない事実だろう。こうした事件は主に過去に受け入れた移民の2世、3世が関与するものである。過去の移民政策によって生じた負の遺産とも言える影の部分が社会問題として顕在化しているのである。移民に対する欧州各国の国民感情はいま微妙な揺れを見せている。ここで焦点となるのが社会統合政策の重要性である。ドイツでは言語教育など社会統合政策を盛り込んだ新移民法を2007年7月制定した。社会統合政策の成否は今後欧州各国の経済発展に欠かせない要素となっている。
・イギリス政府は2005年2月、80種類にも及ぶ複雑化していた受け入れスキームを一つの体系に整理する新入国管理5カ年計画を発表した。この計画で移民は5段階のレベルに分類されることとなった。技能を持つ第1層と第2層の入国者についてはポイント制を導入し、5年間の就労後に定住権の申請を可能とする優遇措置を与える。他方、第3層以下の低熟練労働者はヴィザの期限の切れた時点で出国しなければならないとする帰国担保事項が強調された。この5カ年計画を表した報告書のタイトルは『選択的受け入れ(Selective Admission)』というものである。報告書にこうしたタイトルが付された理由は、この計画が、国の利益になるような高度人材は積極的に受け入れるが、低熟練労働者については最小限に止めるという方針で書かれていることによる。今後のイギリスの移民政策は、自国に都合の良い者だけを選択して受け入れるというこのコンセプトに沿って進められていくものと思われる。他方イギリスでは、国内労働者の雇用確保に配慮する動きも出始めている。2007年9月、ブラウン首相はTUC(英国組合会議)の大会挨拶で、「イギリスの仕事をイギリス人労働者に(“British jobs for British workers”)」という演説を行い喝采を浴びた。イギリスはEUが東欧圏に地図を拡大した第5次拡大時(2004年5月)、アイルランドなどと共に東欧からの移民労働者の受け入れに制限を加えなかった数少ない国の一つ。欧州の中では、移民への労働市場開放に積極的な国というイメージが定着している。自由・平等を重んじ、「移民に寛容な国」という看板を背負うイギリスであるが、果たして積極的移民政策の転換はあるのだろうか。ブラウン政権の今後の動向が注目される。
・移民を受け入れる制度は、その時々の政治、経済・社会状況を反映して刻々と変わる。イギリスの受入れ政策もこれまで、たとえば医療従事者が足りない、理工技術系学生を確保したいなどその時々のニーズに応じて策定されてきたため、受入れスキーム数が80種類にも及ぶなど制度はかなり複雑化していた。優秀な人材を迅速に確保するためには、複雑な制度を改め、手続きの簡素化を図る必要がある。政府はこうした経緯より2005年2月、従来の受入れ政策を1つの体系に整理する「入国管理5カ年計画」を導入した。この新規計画により、移民は5段階のレベルに分類されることとなった。この5カ年計画をまとめた報告書のタイトルは『選択的受け入れ(Selective Admission)』[Home Office、2005]というもの。すなわち今後英国の移民受入れ政策は、国の利益になる人のみを選んで移住させる、低熟練労働者の受入れは制限する、という明確なコンセプトに沿って進められていくものと考えられる。
・居住権を有するかまたはイギリスに定住している英国市民および欧州経済地域(EEA)の加盟国民には、イギリスにおける就労の制限がない。しかし、これ以外の人がイギリスに就労を希望する場合、基本的には就労許可の取得が義務付けられている。就労許可は一定の資格および能力を必要とする職種を対象に発給される。就労許可を取得するには、労働市場テスト(国内労働者では代替できないことを証明)を経ないといけないなど一定の手続きを踏まなくてはならず時間もかかる。このため政府は、一部の優先的に受入れたいとする人材については、就労許可を免除して受入れるという措置を講じている。こうした措置のひとつが、外国人の高度人材を優先的に受入れようとする目的で導入された「高度専門技術移民プログラム(Highly Skilled Migrant Programme:HSMP)」である。HSMPとは大学教授、医師等の資格所有者、法律、金融専門家など高度な技術を有する者が就労の機会を求めてイギリスに移住するのを許可するプログラム。2002年1月に開始された。国内の求人なしで移住できる点が特徴であり、労働市場テストの対象外という点でも労働許可とは異なる。また起業者を対象としたビジネス・ケース・ユニットのように雇用の創出や一定の投資水準などの条件も必要ない。受入れ申請の審査にはポイント制が用いられている。1. 学歴、2. 職歴、3. 過去の収入、4. 就労希望分野での業績などの分野で合計65ポイント以上取得した場合に申請が認められる。同プログラムでイギリスに入国し、1年間経済活動を行った後には在留期間の延長が認められ、さらに連続4年間イギリスに在住した後は永住許可の申請が認められる。2002年の導入以降、取得ポイントの引き下げ(75から65へ)など、細かい制度変更が加えられてきた。28歳未満と28歳以上では異なる条件で審査されているほか、28歳未満であれば5ポイント加算されるなど、HSMPのターゲットとしてはより若い人材が志向されている。
・内務省は2007年10月、他省庁と共同で作成した「移民の経済的、財政的影響」と題する報告書を発表した。移民の近年の増加について、経済成長や財政状況の改善に寄与するとともに、高齢化に伴う労働力不足緩和の一環を担うなどと、積極的な評価を下している。報告書は、人口構成、財政・経済、労働市場、就業構造などの視点から、移民の影響を分析している。2005年半ばから2006年半ばにかけての長期移民(1年以上、イギリス人含む)は、移出が38万5千人、移入が57万4千人で、18万9千人の流入超過となった。今後は年19万人のペースで移民が増加すると推計している。移民の経済成長への寄与は2006年で約60億ポンドと推定される(全体の15から20%に相当)。また、公共政策研究所(IPPR)の2003-2004年についての推計では、移民は政府収入の10%に貢献(税金等)、政府支出の9.1%相当を享受(各種給付、公共サービス)している。長期的には、財政改善や労働力不足の緩和に寄与するとともに、高齢化に伴う国民負担率の増加幅を押し下げる効果が期待される。労働力人口に占める外国人(国外出生者)の比率は、1997年の7.4%から2006年には12.5%に増加した。外国人の就業率(68%)は上昇しており、イギリス人(75%)との差は縮小傾向にある。フルタイム労働者の平均で比較した場合、技術水準はイギリス国籍労働者より高く、より高度な職業に就いている比率が高い。この結果、2006年の週当たり平均収入額の424ポンドは、イギリス人労働者の平均である395ポンドを上回っている。ただし、近年の外国人の賃金水準の低下とイギリス人労働者における上昇により、その差は2001年の76ポンドから2006年には28ポンドへと縮小している。なお、失業への影響は観察されていない。最も低い賃金水準の労働者の賃金に対してわずかな負の影響がみられるが、このグループについても賃金は上昇しており、これには最低賃金制度の効果もあると考えられる 。新規EU加盟国である東欧諸国(A8)を除いた外国人の業種・職種別の分布は、建設業で比率が低く、専門的業務で高いことを除けば、イギリス人と大きな違いは認められない。一方、A8からの移民については、業種別には流通・宿泊・飲食店業(24%)、製造業(21%)、建設業(14%)、職種別には初級の職業(elementary occupations)(38%)や加工・工場労務・機械操作(16%)などで比率が高い。移民の増加は、国内の労働力に不足している技術を補完することにより、イギリス人労働者の生産性を直接的に高めているほか、国内経済に必要なサービスを提供することにより、イギリス人労働者が他のより適した職に就くことを通じて、間接的にも生産性に寄与している。
・政府の楽観論に対して、地方自治体では外国人移民の増加による公共サービスや財政への圧迫を訴える声が強い。11月初め、イングランドとウェールズの500弱の地方自治体が構成する地方自治体協会(Local Government Association:LGA)は、独自の調査をもとに、A8などからの移民の増加が地域に及ぼしている影響について報告書を発表した。移民の受け入れによる利益は認めつつも、その急激な増加が、教育・住宅供給・医療など地域の公共サービスの維持を難しくしている、というのがその内容だ。また、犯罪の被害にさらされやすい移民や貧困家庭の児童の保護の必要性も併せて指摘している。LGAはこれらの問題への対策費として、新たに年2億5千万ポンドの予算投入を政府に要請、また調査等によるデータの整備や実態把握や、地域の実状に沿った予算配分などを求めている。地域での外国人統合政策の必要性については政府も認めており、10月には、今後3年間で5千万ポンドを投入する新たな政策パッケージの導入を決定している(2007年の予算額は200万ポンド)。これまで柱としてきた外国人に対する翻訳サービスや、特定のマイノリティ・宗教グループ等を代表する団体への援助といった支出内容を見直し、英語教育などで外国人の社会統合を支援する団体への財政援助に転換していく。また併せて、移民増加による摩擦に対応する専門家チームを地域ごとに設置するとしている。ただし一方で、外国人向け英語コース(English for Speakers of Other Languages:ESOL)の無料提供を原則廃止し、受講者(もしくは雇用主)に費用の一部を負担させた、より簡易な「仕事向け」英語コース(ESOL for Work)を新設するなどの効率化も進めている。これには、受講期間の短期化による大量の受講待ちの解消とともに、現在仕事があって、長期滞在を認められている移民に対して、優先的に受講資格を与え、実用的な英語の習得による生活の向上を支援する意図がある。LGA報告書は、同化政策における英語教育の重要性を強く主張、こうした効率化の方針にも再検討を促している。
・移民関連統計・推計の実態との乖離も指摘されている。政府は移民の受け入れを積極的に評価する報告書「移民の経済的、財政的影響」を発表したが、この発表と前後して、外国人労働者の増加数が過少に推計されていたことが判明した。政府は既に2度の訂正をしているが、これをめぐって担当大臣が国会で謝罪するなどの事態に発展した。過去10年の外国人労働者数の増加に関して当初80万人としていたが、これを110万人に訂正、さらに150万人に再訂正した。同時期に創出された雇用の8割を東欧からの労働者などが占める計算である。

日本銀行金融市場局「サブプライム問題に端を発した短期金融市場の動揺と中央銀行の対応」BOJ『Reports & Research Papers』2008年7月。
・中央銀行の金融市場調節(以下「金融調節」)手段は、各国の調節目標、金融市場の状況、歴史的な経緯などによって詳細が異なるが、大括りに整理すると、準備預金の積立制度、オペレーション(公開市場操作。以下「オペ」)、スタンディング・ファシリティ(「常設ファシリティ」とも呼ばれる)、の3つから構成されている。まず、準備預金の積立制度のもと、金融機関は、一定の期間に一定の残高を中央銀行に準備預金として積み立てる必要がある。金融機関の決済資金需要は日々変動するが、この仕組みによって、比較的安定した準備需要が創出される。そのうえで、中央銀行は、オペを通じて準備需要に対するマクロ的な資金過不足(財政および銀行券要因による中央銀行当座預金の変動)の調整を行い、政策金利と整合的な水準に市場金利(一般には翌日物金利)を誘導する。スタンディング・ファシリティは、金融機関からの申込みに応じて、予め定めた金利で短期の資金貸出や預金受入を受動的に行うものである。これにより、金利変動の大きい時にはその上限や下限を画し、また、そうしたファシリティが普段から利用可能であることを市場参加者に認識させることを通じて、オペによる金利誘導を補う役割を担っている。オペの基本的な枠組みや運営も、各国中央銀行に概ね共通している。しかし、銀行券需要の動向や財政資金を管理する仕組みの違いなどを反映して、前提となるマクロ的な資金過不足の大きさ・変動幅や予測可能性が国により異なることなどから、オペ運営は国・地域によって区々である。例えば、資金過不足の変動が平均的に大きいわが国の場合、日本銀行は、多様なオペ手段を有しており、各オペを様々なタイミング、期間で頻繁に実施しているが、資金過不足の変動があまり大きくない米欧では、中央銀行は規則的なオペ運営を基本としてきた。
・BOEは、2007年8月9日以降の初期段階においては、オペにより金利上昇圧力を押さえ込むのではなく、スタンディング・ファシリティの金利調整機能を活用していく姿勢をとった。しかし、翌日物金利の上昇圧力が強い状況が続いたことを受けて、9月以降、オペによる資金供給の拡大を順次図っていった。まず、「翌日物金利が高止まる場合には、申告準備額を最大25%上回る資金を供給する」旨を公表した。これに連動して、9月中旬には金融機関に求めている準備預金残高の維持要件を緩和した。申告準備額と準備預金残高との許容乖離幅(政策金利で実質的に付利される準備預金残高の範囲)を拡大し、これに見合う資金を供給することで、金融機関による準備預金残高の管理を容易にし、金利上昇圧力の緩和を図るものである。 9月14日には、在英の金融機関ノーザンロックが資金繰りに行き詰まったことを契機に、短期金融市場の逼迫感は一段と強まった。これを受け、BOEはノーザンロック向けの緊急信用供与ファシリティを設置したほか、同18日には、臨時の2日物資金供給オペを実施した。さらに9月19日には、オペ対象先を含む準備預金制度の対象先に対して、通常の適格担保に加えてMBSなどを担保とする、臨時の3か月物の入札型ターム物貸出を4回実施する旨を公表した。この貸出は、最低応札金利を市場金利より高い貸出ファシリティ金利(政策金利プラス1%)に設定したこともあって、4回とも応札は無かったが、広めの担保を受け入れ、最終的な資金繰りの調整弁を提供したことによって、市場に一定の安心感をもたらす効果があったと考えられる。 年末にかけては、資金調達不安が一段と強まったことを受けて、年末越えとなる5週間物資金供給オペを12月6日に実施した。また、5か国中央銀行による協調行動(12月12日)の一環として、定例の3か月物資金供給オペの担保範囲拡大、増額を実施した(25億ポンド100億ポンド)。2008年3-4月にかけては、短期金融市場の逼迫が改めて強まったことから、さらなる資金供給策の拡充を図った。まず、3月17日に臨時の3日物資金供給オペを実施、3月20日からの定例の1週間物資金供給オペをその分増額する形で、積み最終日(4月9日)までロールオーバーした。4月8日には、12月に増額した3か月物資金供給オペを150億ポンドまで増額した。さらに4月21日には、米国のTSLFと同様の債券貸出制度である特別流動性スキームSLS(Special Liquidity Scheme)の導入を公表した。これは、金融機関のバランスシート上の重荷となっているMBS等と英国国債を交換して、「銀行システムの流動性ポジションを改善し、金融市場の信頼を回復させる」ことを企図したものである。この措置は、貸出期間が1年(3年まで延長可)と長いこと、金額に上限がないこと、貸出英国国債は政府から新たに発行を受けるものであることなど、従来にない特徴を備えている。
・貸出ファシリティの利用先が60先程度と少ない英国でも、同ファシリティを利用した金融機関が特定されやすいとの懸念は強く、利用への抵抗感も強かったとみられる。BOEも、昨夏に短期金融市場の混乱が始まった局面で、「貸出ファシリティは、適格担保とペナルティレートを見合いにして、対象金融機関全てがいつでも利用することができる。同ファシリティは、他の機能と同様に、金融システムがストレス下の市場環境に対応できるよう設計されたものである」(8月13日)との声明を発表するなどして貸出ファシリティの利用を促したが、貸出金利と政策金利との乖離幅を100bpsのまま据え置いていることもあり、利用されない状況が続いている。なお、4月に新たに導入された債券貸出制度SLSも、金融機関の申込みに応じて実行されるものであるが、BOEは、全体の利用額や先数などの集計値も含め、徹底した情報管理を行う方針を示している。

公正取引委員会「書籍・雑誌の流通・取引慣行の現状」著作物再販協議会(第8回会合)配布資料、2008年6月19日。
・書籍・雑誌の販売金額(小売価格ベース)は2兆853億円である。このうち、書籍の販売金額は9026億円、雑誌の販売金額は1兆1827億円である(2007年)。書籍・雑誌の取次経由の販売金額(小売価格ベース)は1996年をピークに減少傾向にあり、2007年までの間に約6000億円減少している。書籍の販売金額はピークの1996年から2007年までの間に約2000億円、雑誌の販売金額はピークの1997年から2007年までの間に約4000億円減少している。
・書籍の新刊点数は7万7417点である。書籍の出回り部数(取次出荷部数のこと。新刊・重版・注文品の流通総量で、返品の活用による再出荷分を含む。)は13億1805万部、販売部数は7億5542万部である(2007年)。書籍の新刊点数は増加傾向にある。書籍の出回り部数は1997年をピークに減少傾向にある。書籍の販売部数は1988年をピークに減少傾向にあったが、2004年からは増加に転じている。
・雑誌の発行銘柄数(当年中に発行回数に関係なく1号でも刊行のあった銘柄数)は3,644銘柄である。雑誌の発行部数は39億3960万部、雑誌の販売部数は26億1269万部である(2007年)。雑誌の発行銘柄数は増加傾向にある。雑誌の発行部数は1997年をピークに減少傾向にある。雑誌の販売部数は1995年をピークに減少傾向にある。
・書籍の金額基準による返品率は39.4%、部数基準による返品率は42.6%である(2007年)。1997年頃以降、金額基準による返品率、部数基準による返品率ともに40%前後で推移している。雑誌の金額基準による返品率は35.2%、部数基準による返品率は33.7%であり、ともに上昇傾向にある(2007年)。
・媒体別広告費をみると、雑誌の広告費は最近減少している。他方、インターネット、フリーペーパー等の広告費が伸長しており、2007年にインターネット広告費(4,591億円)が雑誌の広告費(4,585億円)を上回った。
・出版社数は4,055社(2007年)である。ピークの1997年に比べると557社減少している。出版社数4,055社のうち3,126社(約77%)が東京都に所在している。次いで大阪府174社(約4%)、京都府135社(約3%)、神奈川県87社(約2%)などに所在している。出版社数4,055社のうち年間10点以上出版している出版社数は1,091社である。
・日本出版取次協会に加盟している取次は30社(2008年4月)、東京出版物卸業組合に加盟している取次は23社(2008年4月)である。書籍・雑誌取次業の上位3社累積出荷集中度(個別事業者の国内出荷における集中の状況を示す指標)は84.0%である(2006年度)。書籍・雑誌取次業の上位3社累積出荷集中度は上昇傾向にある。
・書店の店舗数は1万6342店である。書店の開店数は392店、書店の閉店数は1,228店であり、店舗数は減少傾向にあるが、書店の総売場面積は増加傾向にある(2008年)。「平成19年度版書店経営の実態」(トーハン)による書店の粗利益の総平均は約22%であり、営業利益は約マイナス0.3%である。また、「2007書店経営指標」(日販)による書店の粗利益の全国平均は約24%であり営業利益は約0.8%である。いずれの指標ともに、書店のうち書籍・雑誌を専門に扱う専業店より書籍・雑誌以外の商品も扱う複合店の粗利の方が高い。
・委託配本取引においては、書店等の希望とは必ずしも関係なく、取次が書店等の入金率や売上実績等に基づいて書店等に配本するため、書店等が希望する商品や部数の確保が保証されているわけではない。書店における新刊書籍の入荷状況について、「ほとんど入らないことが多い」とする店舗が半数強に上る。書店等は、返品が自由である一方で、返品リスクがある出版社に比べて相対的にマージンが低いため、人材育成が行われていない、値引きやポイントカードなどの読者サービスの原資が不足しがちである、という声がある。是正のための取組として特定の書籍について、書店等からの返品率を15%以内にすること及び取次からの満数配本を基本契約とし、書店等の効率販売に対する報奨金を書店等に提供する取組がある。また、書店間の協業化により、出版社からの共同仕入を行うことで希望に沿った新刊本入荷を実現するとともに、販売実績に応じたマージンを得る取組がある。

日本貿易振興機構(ジェトロ)輸出促進・農水産部「英国の食品市場への参入情報」平成19年度食品産業国際化可能性調査、2008年8月。
・「スーパーマーケット」という用語は、一般的に大型小売店という意味で使うことも多いが、英国では、営業時間や建築規制上、厳密には売り場面積に応じて下記のように定義されている。「コンビニエンスストア」:280平方メートル(3,000スクエアフィート)以下。「スーパーマーケット」:280-2,250平方メートル(3,000-25,000スクエアフィート)。「スーパーストア」:2,250-3,600平方メートル(25,000-40,000スクエアフィート)。「ハイパーマーケット」:3,600平方メートル(40,000スクエアフィート)以上。なお、売り場面積が280平方メートルを超える店舗は、日曜日について午前10時から午後5時までの間の中で、6時間しか営業を行うことができないこととなっている。
・英国においては、テスコ、アズダなどの大手スーパーの上位4社で、食品小売りの8割弱を占め、大手スーパーと、農業生産者や食品メーカーなどの供給業者との間の公正な取引の確保などが、近年、課題となり続けている。政府は、一般的に1社のマーケットシェアが25%を超えた場合は規制の制限下に置かれるとしており、2003年に業界1位のテスコと業界中堅のモリソンズが、業界4位セーフウェイの買収に名乗りをあげた際には、政府はテスコに対してセーフウェイ買収の差し止めの命令を出し、その結果、セーフウェイはモリソンズに買収された。しかし、テスコは、それ以降、このような大型買収ではなく、市街地の小型小売店を買収していくという手法でシェアの拡大を続けており、政府もそれに対する規制は行なっていない。さらに、大手スーパーの寡占化に伴い、農産物生産者や食品製造業者は価格交渉などの面で弱い立場に置かれており、大手スーパーのバイヤーに嫌われたら市場の大半を失うというのが現状である。また、大手スーパーは自社ブランド製品の拡大を進めており、このことも大手スーパーのバイイングパワーの拡大につながっていると考えられる。

猿渡英明「高まる中東欧リスク、欧州における財政・金融政策の現状 欧州経済概観09/3」新光総合研究所『SRI 欧州経済ウォッチ<ユーロ圏・英国>』No.09-08、2009年3月13日。
・英国は2008年10-12月期の実質GDP が前期比マイナス1.5%になり、ユーロ圏同様に急速に景気が悪化していることが確認された。部門別でみれば非製造業部門、特に金融業の落ち込みが激しく、金融業に支えられてきた英国経済の特性が裏目に出た形となっている。住宅市場の崩壊を背景とした金融部門の調整は、信用収縮を経て個人消費へと波及している。資産価格の上昇を担保にした過剰消費といった消費構造は、米国とほぼ同じであり、金融部門と実体経済が連鎖的に悪化する状態に陥っている。英国景気が回復するためには、金融部門の調整が一巡することが必要不可欠である。しかし、不良資産を処分するため所得の源泉が国内中心であるが故に、金融部門の正常化、景気回復は遅れる可能性があろう。当面の間、英国景気は低迷を強いられることとなろう。
・BOE(イングランド銀行)は、ECB以上に積極的な利下げを実施し、政策金利はすでに0.50%まで引き下げられている。さらに資産買取による流動性供給、いわゆる「量的緩和」を開始。今後は、買取資産の規模・対象を拡大させることにより、緩和政策を推し進めていくこととなる。但し、利下げは0.50%で打ち止めとなる公算。
・BOEが発表したAPF(資産買取ファシリティー)は、国債を中心に市場から資産を買い取ることで、流動性を供給(中銀当座預金へのブッキング)する。手順はほぼ日銀の量的緩和と同じであるが、BOEの場合は当座預金に量的なターゲット(目標)を設定するのではなく、買取資産の規模をその都度、公表する予定。今後は、買取資産の規模・対象を広げつつ、量的緩和を推し進める見通し。
・英国では金融対策として、市場への流動性供給や金融機関への資本注入を実施してきたが、金融機関の損失に歯止めがかからず信用収縮が顕在化している(言わば、穴の開いた容器に水を注いでいる状態)。このため、対策の軸は今年に入って、損失に歯止めをかける「損失補償スキーム」に移りつつある。一方、不良資産の整理・回収を行なうバッドバンクに関しては、1. 買取資産(証券化商品)の査定が難しいこと、2. 巨額の買取コストがかかる―などから、見送りとなっている。APS(損失補償スキーム)は、既に保有している不良資産から発生する損失の大半を公的に補償するプログラムであり、損失拡大に一定の歯止めをかける効果がある。しかし、このスキームに参加する代償として、金融機関は一定の参加料を支払う必要があるが、申請に追い込まれた金融機関が参加料を現金で支払う余裕はない。このため、現実的には政府が増資を引き受ける形で実施されている。すなわち、このスキームへの参加は実質国有化を意味する(安易には参加できない)。

岡久慶「イギリス 警察活動及び犯罪法案」国立国会図書館調査及び立法考査局『外国の立法』2009年2月。
・2008年12月18日、政府は下院に警察活動及び犯罪法案を提出した。法案は、警察の機構改革、性犯罪及びアルコール濫用への罰則強化、犯罪収益の没収等、多岐にわたる規定を定めているが、買春の刑事犯罪化規定が最も大きな争点になるものと目されている。
・警察活動及び犯罪法案(Policing and Crime Bill)は、「近所から全国まで:共に行う共同体の警察活動(From the Neighbourhood to the National: Policing our Communities Together)」を始めとする幾つかの協議書を基に策定し、提出された法案である。元々労働党政権は体感治安の悪化に対し非常に敏感で、これまでに数多くの刑事司法関係法を定めてきたが、この法案もその一環とみなすことができる。
・イギリスでは売春自体は犯罪ではないが、第三者による利得確保、売春宿の運営、売春目的での街頭での客引き、並びに買春目的で執拗に勧誘し、又は買春目的で車両を歩道沿いにゆっくり走らせること(kerb-crawling)等が禁止されてきた。本法案は売春に関わる条件の禁止をさらに強化し、次の規定を設ける。第3者の利益のために管理され売春を行う者の性的サービスを購入するために、金を支払うことを犯罪とし、最高で1,000ポンドの罰金を科す。この場合、購入した者が、売春を行う者が管理されていたことを知らなかったことは、抗弁事由とならない。これは特に人身取引の被害者の性的搾取を防ぐことを目的としている。買春を行う者が勧誘を行うことを犯罪とし、最高で1,000ポンドの罰金を科す。これは、執拗さ、又は車両の使用といった要件を除くことで、立件を容易にする。 警視以上の階級を持つ警官に、売春又はポルノグラフィーに関係した犯罪に使われている施設を最長6月に渡って閉鎖する権限を与える。これは売春宿の運営禁止をさらに推し進めたものといえる。 また法案は、売春以外に関しても次のような規定を盛り込んでいる。 性的な刺激を目的とした実演を提供する施設を、アダルトショップやポルノ映画館等と同列の性的施設と位置づけ、地方自治体による認可、管理を強化する。これはラップダンスを提供するクラブを標的にしており、過去4年間の間に全国で300か所にまで倍増した勢いに歯止めをかけたいとする意向がある。 性犯罪者に課される海外渡航禁止命令を改正する。従来は、16歳未満の児童に対して危険のある性犯罪者に6月まで適用されるものであったが、18歳未満の児童に対して危険のある性犯罪者に5年まで適用され、さらに当該期間の間、旅券を警察に提出することが求められる。

岡久慶「イギリス 福祉改革法案」国立国会図書館調査及び立法考査局『外国の立法』2009年2月。
・2009年1月14日、政府は下院に福祉改革法案を提出した。法案は、2007年に制定された同名の法律と同様に、失業者の労働市場復帰を目的としたもので、就労のために厳しい圧力をかける仕組みが盛り込まれている。しかし与党内外からは、厳しい経済状況に鑑みて、同措置の妥当性を問う声も出ている。
・イギリス政府は、かねてから慢性的な求職者手当(失業者手当のこと)受給者を労働市場に復帰させることを重要な政策課題と位置付けており、公開協議書「誰も失敗として片付けない(No one written off)」及びそれを踏まえた白書「期待を高く、支援を厚く(Raising expectations and increasing support)」によって、求職者手当受給者に就労のための準備をさせ、必要な圧力と制裁を加える福祉改革案を提案した。現在、景気後退の波を受け、2008年12月における失業者が180万を超え、求職者手当受給者が8年ぶりに100万の大台を突破している。このため失業者に過剰な圧力をかけることを危惧する声も出されたが、イギリス産業連盟等に後押しされる形で福祉改革法案(Welfare Reform Bill)として下院に提出されることとなった。政府はこの法案によって被雇用率80%を達成することができると論じている。なお、法案には失業者を対象とした規定と並んで、児童養育に関連して結婚していない父親、別居中の父親の責任をより強化する規定が盛り込まれている。
・従来の所得補助金受給者は、収入に相関した求職者手当又は雇用・生活補助を給付され、満額受給のためには、主務大臣が規則で定めた就労に向けた活動(work-related activity)に従事しなければならない。当該活動は技能向上及び就労に向けた生活習慣の調整等を含み、活動時間や活動量も規則に従う。これに従わなかったと見なされた場合、給付額が削減されることとなる。

伊藤さゆり「欧州経済見通し 懸命の政策対応も落ち込みは続く」ニッセイ基礎研究所『Weeklyエコノミスト・レター』2009年3月13日。
・リーマン・ショック後、イギリスが欧州主要国で最も早く積極的な対策に打って出たが、金融と経済のスパイラル的悪化に歯止めをかける追加的な動きでも先行している。1月に公表した第2弾の金融安定化策は、公的資本注入と銀行の債務に対する政府の保証を柱とする第1弾に対して、1. 一定の手数料の見返りに特定の資産から生じる超過損失を財務省が負担する資産保護スキーム(Asset Protection Scheme:APS)、2. 資産担保証券(ABS)に対する保証、3. BOEの資産買い取りファシリティー(Asset Purchase Facility:APF、当初500億ポンド、社債、CP、シンジケート・ローン、一部のABSなど優良資産が対象)の創設を柱とし、金融機関の損失拡大と信用収縮への対応という面が色濃い。うち、APSの申請期限は3月末とされているが、2月26日にはRBSが3250億ポンド、3月7日にはロイズが2600億ポンドの不良資産への適用について財務省と合意し動き始めた。合意の内容は、1. 自行で負担する損失(first loss)は、RBSは195億ポンド、ロイズは250億ポンドまでで、これを超える損失は自行の負担が10%、残り90%は政府が負担する、2. APSへの参加料(participation fee)は、RBSは65億ポンド、ロイズは156億ポンド、3. APSの見返りとして、2009年内にRBSは250億ポンド、140億ポンドの融資の拡大を行なう、4. RBSには130億ポンドの追加の資本注入を行い、ロイズには昨年秋の公的資本注入時の優先株を普通株に転換することで、政府の保有比率をそれぞれ80%超、65%に引上げる、などである。APFも動きだしている。2月にイングランド銀行(BOE)がCPの買い取りを開始したのに続いて、BOEは、3月の金融政策委員会(MPC)で、政策金利を0.5%に引き下げると同時に、金融政策目的でこの枠組みを活用する、すなわちBOEの資金を原資として国債等の買い取りを行う量的緩和に踏み切ることを決めた。買い取りの規模は、最大1500億ポンドまで拡大する可能性があるが、当面は向こう3カ月で主に中長期国債を750億ポンド(2008年GDP比5.2%)分を買い取るとしている。

菊地端夫「イギリス行政改革における市民の信頼回復への取り組み ブレア政権の「政府の現代化」を中心に」『会計検査研究』No.39、2009年3月。
・ブレア政権では、1998年と2001年にそれぞれ地方政府白書を公表し、ベスト・バリューや自治体版公共サービス合意(Local Public Service Agreements)などの20以上の具体的な改革プログラムが、自治体現代化アジェンダ(Local Government Modernisation Agenda)として取り組まれている。この取り組みは、改革の直接的な内容のみならず改革の中長期的な成果(アウトカム)を把握しようとしている点に特徴がある。現代化の取り組みによりサービスの向上(service improvement)、アカウンタビリティの向上(accountability)、コミュニティー内のリーダーシップの向上(community leadership)、市民など利害関係者の参加(stakeholder engagement)、そしてこれらの取り組みによる市民の自治体への信頼の向上(public confidence)を長期的に把握しようという試みである。この取り組みの成果指標の一つが市民の自治体への信頼(Public Confidence in Local Government)であり、改革の成果を検証するための調査が、副首相府内のコミュニケーション・地方政府部とカーディフ大学によって実施されている(Office of the Deputy Prime Minister(2005))。自治体現代化アジェンダのうち、市民の信頼回復のために行われた施策として検証されているのが、自治体の議員と職員の行動規範を定めた、新倫理基準(New Ethical Framework)の策定である。これは、各自治体で議員と職員の行動規範を定め、市民からの苦情や申し立てを審査する第三者機関を設置することにより、汚職や不祥事を防止する取り組みである。先の信頼の構成要素に則すと、公務従事者の誠実性(honesty)に対する評価や、市民の有効性感覚(efficacy)を高め、政府や行政の行動に対する信頼を高めようという施策である。2005年時点での評価によれば、この取り組みによって市民の自治体に対する信頼が向上したかどうかを判断するのは困難であるという。その理由として、この取り組み自体が市民にほとんど知られていないこと、また行動規範の策定が実際に自治体職員や議員の活動に影響与えたかどうかが不明瞭であるからとする。しかし少なくとも、長期的にはこの施策の存在が市民の間に広まり、職員や議員が自らの活動が規範に則しているかを意識するようになることによって、自治体職員や議員に対する市民の信頼が向上する可能性を含んでいる施策である。また、これらの取り組みによって、市民ではなく、自治体の職員が市民の信頼を重要視するようになったことが明らかになっている。市民の信頼への着目と信頼回復策への取り組みは、少なくとも自治体職員の意識が変化したという効果をもたらしている。

東信男「イギリス中央政府における国際会計基準(IAS/IFRS)の導入 公会計の目的に対応させながら」『会計検査研究』No.39、2009年3月。
・中央政府の財務諸表は、2009-10年度より国際会計士連盟(International Federation of Accountants)のIASB(International Accounting Standards Board:国際会計基準審議会)が設定する国際会計基準(IAS/IFRS)に準拠して作成することとなった。この背景として、イギリスの上場及び非上場の企業は、2004年の会社法改正によりIAS/IFRSに準拠して財務諸表を作成できるようになったことが挙げられる。ASB(Accounting Standards Board:会計基準委員会)は適用時期を決定してはいないもののIAS/IFRSをUK GAAP(Generally Accepted Accounting Practice:イギリス一般認定会計基準)として導入する方針を示しているため、今後、ASBのFRS(Financial Reporting Standards:財務報告基準)、SSAP(Statements of Standard Accounting Practice:会計実務基準書)等に代わり、IAS/IFRSがUK GAAPとなる。IASBはその前身である国際会計基準委員会(IASC)が設定した会計基準をそのまま採用しているため、現在のIAS/IFRSは、1. IASCが設定した国際会計基準(International Accounting Standards:IAS)、2. IASB が設定した国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards:IFRS)、3. 解釈指針委員会(Standing Interpretations Committee:SIC)が作成した解釈指針(Interpretations)、4. 国際財務報告解釈指針委員会(International Financial Reporting Interpretations Committee:IFRIC)が作成した解釈指針(Interpretations)で構成されている。イギリスでは中央政府へのIAS/IFRSの導入は、2000年に行われたRABの導入以来の大改革と捉えられており、財務省は既にIAS/IFRSをベースにしたFreM(Government Financial Reporting Manual:政府財務報告マニュアル)の作成を終了している。FReMには、項目別に、IAS/IFRSがそのまま適用される場合には当該会計基準の番号とタイトルが示され(直接適用)、公共部門の特性に応じてIAS/IFRSがそのまま適用されない場合には会計処理を修正したり(修正適用)、新たな会計処理を追加したりしている(追加適用)。

FTの懺悔

 今日はFTの懺悔です。

Seeds of its own destruction
By Martin Wolf
Published: March 8 2009 19:13 | Last updated: March 8 2009 19:13

Another ideological god has failed. The assumptions that ruled policy and politics over three decades suddenly look as outdated as revolutionary socialism.

“The nine most terrifying words in the English language are: ‘I’m from the government and I’m here to help.’” Thus quipped Ronald Reagan, hero of US conservatism. The remark seems ancient history now that governments are pouring trillions of dollars, euros and pounds into financial systems.

“Governments bad; deregulated markets good”: how can this faith escape unscathed after Alan Greenspan, pupil of Ayn Rand and predominant central banker of the era, described himself, in congressional testimony last October, as being “in a state of shocked disbelief” over the failure of the “self-interest of lending institutions to protect shareholders’ equity”?

In the west, the pro-market ideology of the past three decades was a reaction to the perceived failure of the mixed-economy, Keynesian model of the 1950s, 1960s and 1970s. The move to the market was associated with the election of Reagan as US president in 1980 and the ascent to the British prime ministership of Margaret Thatcher the year before. Little less important was the role of Paul Volcker, then chairman of the Federal Reserve, in crushing inflation.

Yet bigger events shaped this epoch: the shift of China from the plan to the market under Deng Xiaoping, the collapse of Soviet communism between 1989 and 1991 and the end of India’s inward-looking economic policies after 1991. The death of central planning, the end of the cold war and, above all, the entry of billions of new participants into the rapidly globalising world economy were the high points of this era.

Today, with a huge global financial crisis and a synchronised slump in economic activity, the world is changing again. The financial system is the brain of the market economy. If it needs so expensive a rescue, what is left of Reagan’s dismissal of governments? If the financial system has failed, what remains of confidence in markets?

It is impossible at such a turning point to know where we are going. In the chaotic 1970s, few guessed that the next epoch would see the taming of inflation, the unleashing of capitalism and the death of communism. What will happen now depends on choices unmade and shocks unknown. Yet the combination of a financial collapse with a huge recession, if not something worse, will surely change the world. The legitimacy of the market will weaken. The credibility of the US will be damaged. The authority of China will rise. Globalisation itself may founder. This is a time of upheaval.

How did the world arrive here? A big part of the answer is that the era of liberalisation contained seeds of its own downfall: this was also a period of massive growth in the scale and profitability of the financial sector, of frenetic financial innovation, of growing global macroeconomic imbalances, of huge household borrowing and of bubbles in asset prices.

In the US, core of the global market economy and centre of the current storm, the aggregate debt of the financial sector jumped from 22 per cent of gross domestic product in 1981 to 117 per cent by the third quarter of 2008. In the UK, with its heavy reliance on financial activity, gross debt of the financial sector reached almost 250 per cent of GDP.

In a recent paper Andrew Haldane, the Bank of England’s executive director for financial stability, shows how little banks understood of the risks they were supposed to manage. He ascribes these failures to “disaster myopia” (the tendency to underestimate risks), a lack of awareness of “network externalities” (spill overs from one institution to the others) and “misaligned incentives” (the upside to employees and the downside to shareholders and taxpayers).

. . .

After the crisis, we will surely “see finance less proud”, as Winston Churchill desired back in 1925. Markets will impose a brutal, if temporary, discipline. Regulation will also tighten.

Less clear is whether policymakers will contemplate structural remedies: a separation of utility commercial banking from investment banking; or the forced reduction in the size and complexity of institutions deemed too big or interconnected to fail. One could also imagine a return of much banking activity to the home market, as governments increasingly call the tune. If so, this would be “de-globalisation”.

Churchill called also for industry to be “more content”. In the short run, however, the collapse of the financial system is achieving the opposite: a worldwide industrial slump. It is also spreading to every significant sector of the real economy, much of which is clamouring for assistance.

Yet if the financial system has proved dysfunctional, how far can we rely on the maximisation of shareholder value as the way to guide business? The bulk of shareholdings is, after all, controlled by financial institutions. Events of the past 18 months must confirm the folly of this idea. It is better, many will conclude, to let managers determine the direction of their companies than let financial players or markets override them.

A likely result will be an increased willingness by governments to protect companies from active shareholders ? hedge funds, private equity and other investors. As a defective financial sector loses its credibility, the legitimacy of the market process itself is damaged. This is particularly true of the free-wheeling “Anglo-Saxon” approach.

No less likely are big changes in monetary policy. The macro economic consensus had been in favour of a separation of responsibility for monetary and fiscal policy, the placing of fiscal policy on autopilot, independence of central banks and the orientation of monetary decisions towards targeting inflation. But with interest rates close to zero, the distinction between monetary and fiscal policy vanishes. More fundamental is the challenge to the decision to ignore asset prices in the setting of monetary policy.

Many argue that Mr Greenspan, who succeeded Mr Volcker, created the conditions for both bubbles and subsequent collapse. He used to argue that it would be easier to clean up after the bursting of a bubble than identify such a bubble in real time and then prick it. In a reassessment of the doctrine last November, Donald Kohn, Fed vice-chairman, restated the orthodox position, but with a degree of discomfort.

Mr Kohn now states that “in light of the demonstrated importance to the real economy of speculative booms and busts (which can take years to play out), central banks probably should always try to look out over a long horizon when evaluating the economic outlook and deliberating about the appropriate accompanying path of the policy rate”. Central banks will have to go further, via either monetary policy or regulatory instruments.

. . .

Yet a huge financial crisis, together with a deep global recession, if not something far worse, is going to have much wider effects than just these.

Remember what happened in the Great Depression of the 1930s. Unemployment rose to one-quarter of the labour force in important countries, including the US. This transformed capitalism and the role of government for half a century, even in the liberal democracies. It led to the collapse of liberal trade, fortified the credibility of socialism and communism and shifted many policymakers towards import substitution as a development strategy.

The Depression led also to xenophobia and authoritarianism. Frightened people become tribal: dividing lines open within and between societies. In 1930, the Nazis won 18 per cent of the German vote; in 1932, at the height of the Depression, their share had risen to 37 per cent.

One transformation that can already be seen is in attitudes to pay. Even the US and UK are exerting direct control over pay levels and structures in assisted institutions. From the inconceivable to the habitual has taken a year. Equally obvious is a wider shift in attitudes towards inequality: vast rewards were acceptable in return for exceptional competence; as compensation for costly incompetence, they are intolerable. Marginal tax rates on the wealthier are on the way back up.

Yet another impact will be on the sense of insecurity. The credibility of moving pension savings from government-run pay-as-you-go systems to market-based systems will be far smaller than before, even though, ironically, the opportunity for profitable long-term investment has risen. Politics, like markets, overshoot.

The search for security will strengthen political control over markets. A shift towards politics entails a shift towards the national, away from the global. This is already evident in finance. It is shown too in the determination to rescue national producers. But protectionist intervention is likely to extend well beyond the cases seen so far: these are still early days.

The impact of the crisis will be particularly hard on emerging countries: the number of people in extreme poverty will rise, the size of the new middle class will fall and governments of some indebted emerging countries will surely default. Confidence in local and global elites, in the market and even in the possibility of material progress will weaken, with potentially devastating social and political consequences. Helping emerging economies through a crisis for which most have no responsibility whatsoever is a necessity.

The ability of the west in general and the US in particular to influence the course of events will also be damaged. The collapse of the western financial system, while China’s flourishes, marks a humiliating end to the “uni-polar moment”. As western policymakers struggle, their credibility lies broken. Who still trusts the teachers?

These changes will endanger the ability of the world not just to manage the global economy but also to cope with strategic challenges: fragile states, terrorism, climate change and the rise of new great powers. At the extreme, the integration of the global economy on which almost everybody now depends might be reversed. Globalisation is a choice. The integrated economy of the decades before the first world war collapsed. It could do so again.

On June 19 2007, I concluded an article on the “new capitalism” with the observation that it remained “untested”. The test has come: it failed. The era of financial liberalisation has ended. Yet, unlike in the 1930s, no credible alternative to the market economy exists and the habits of international co-operation are deep.

“I’ve a feeling we’re not in Kansas any more,” said Dorothy after a tornado dropped her, her house and dog in the land of Oz. The world of the past three decades has gone. Where we end up, after this financial tornado, is for us to seek to determine.

http://www.ft.com/cms/s/0/c6c5bd36-0c0c-11de-b87d-0000779fd2ac,dwp_uuid=ae1104cc-f82e-11dd-aae8-000077b07658.html

 画面スクロールお疲れさまです。

 さて、昨今の世界的な金融危機を受けて、この原因となる各種の改革を進めてきた張本人たちの懺悔が大流行しています。日本では中谷巌さんが有名ですし、アメリカではグリーンスパン元FRB議長がいます。そうした懺悔の列についにFTも加わりました。

 各種の改革とは基本的には、いわゆる自由市場を作り出す改革です。政府の規制は悪であり、規制のない自由市場こそが善であるとの考え方の下、政府の介入を徹底的に排除した新しい資本主義を目指してきました。

 今日の記事では、長々と書いていますが、要するに、そうした新しい資本主義の試みは失敗したと認めるべきだと主張しています。しかも、これは懺悔組の常套句ですが、金融危機を「its own destruction」(自滅)と性格付け、勝手に危機になったかのような言い方です。

 散々自由市場を煽っていたお前が言うな、という感じですが、裏返せば、FTが自由市場路線を批判するくらいですから、この考え方は早晩後退していくでしょう。政府規制の組み替えを指向するには絶好の時期です。くれぐれも乗り遅れないようにしましょう。

医者をなぜドクターと呼ぶのか

 今日は医者をなぜドクターと呼ぶのかです。

 リンク先の質問者と同じ疑問を私も持っていました。つまり、ドクターとは大学院の博士課程を修了して博士号を取得した人のことであり、大学院に行ってもいない医者をドクターと呼ぶのはなぜなのか、という疑問です。

 質問に対して回答者が回答していますが、意味不明です。博士号を取得していない医師をドクターと呼ぶ理由を質問しているにもかかわらず、医師のなかには大学院に進む人もいるというとんちんかんな回答をしています。回答者は間違いなくアホです。

 とはいえ、そうして罵倒したところで、疑問は何も解決しませんので、ちょっといろいろと調べてみました。その結果、確信のある回答だとは言えないものの、オックスフォード英英辞典から妥当な回答を発見しました。

1.
・a qualified practitioner of medicine; a physician.
・a qualified dentist or veterinary surgeon.
informal a person who gives advice or makes improvements.
2.
・(Doctor) a person who holds a doctorate.
archaic a teacher or learned person.
3.
・an artificial fishing fly.

adapted from "The Oxford American Dictionary".

 doctorの意味として第1番目に医者が挙げられています。博士号取得者の意味は第2番目です。ここから類推するに、doctorはもともと医者のことを呼ぶ言葉であり、医者の博識さから意味が派生して博士の人を呼ぶ言葉になった、と考えられます。

 つまり、質問者も私も発想が逆であったのです。ドクターは博士の呼称であるから医者の呼称としてはおかしい、のではなく、医者の呼称であるドクターが博士にも用いられているというのが実際のところである、ということです。

 もちろん、これが絶対的な回答だとは思いません。たとえ英語のdoctorの意味が私の類推通りだとしても、日本語としてのドクターが同じ意味だとは限りません。もう少し詳しく調べる必要があります。

 とはいえ、あのアホ回答者の回答よりは納得できる妥当な回答だと思います。この回答者の他の回答を見る限り、この人はおそらく歯科医です。他の質問には丁寧に回答していますが、なぜか今回はふざけた回答をしています。不埒な医者ですな。

麻生政権の業績

 今日は麻生政権の業績です。

<外交>
2008.10.03 「竹島は固有の領土」とする答弁書を閣議決定
2008.10.06 「麻生氏は外相時代、中韓との関係を損ねた」とするNYタイムス誌の捏造批判記事に反論投稿
2008.10.07 日本の不良債権処理の成功経験から、米国に対し資本注入を促すよう指示
2008.10.10 北朝鮮経済制裁の半年延長を閣議決定
2008.10.12 G7行動計画を支持、日本は外準活用の支援表明=IMFC ★重要★
2008.10.19 安保理事国に当選。非常任理事国としては史上最多の10回目
2008.10.25 IMFがアイスランドに緊急融資。アイスランド外相の政治顧問が「日本のおかげ」と感謝
2008.10.27 日印安保共同宣言に署名。インドと安保、経済、環境、エネルギーなど幅広い分野で戦略的協調 ★重要★
2008.10.31 大陸棚拡張を国連に申請決定。日本国土の倍が新たな海底資源の採掘領域へ ★重要★
2008.11.01 水産庁、韓国漁船の違法操業の防止強化の方針決める
2008.11.14 麻生首相「金融危機打開には、日本の経験が有効」とする論文を米紙に寄稿
2008.11.14 大陸棚拡張を国連に申請完了
2008.11.15 日本と世銀が途上国の銀行支援ファンド設立決定
2008.11.23 日露首脳会談で、事務レベル領土交渉への反映・平和条約を要求。露大統領「領土問題を次世代には委ねない」
2008.11.24 中国の胡錦濤国家主席との会談を通じ、金融危機での日本の存在感を内外へ印象付ける
2008.12.03 国連で日本が提出した「核兵器の全面的廃絶に向けた新たな決意」が圧倒的賛成多数で採択
2008.12.09 外務省HPの「竹島は日本の領土」という宣伝資料を10カ国に拡大
2008.12.09 豪雨による洪水被害を受けたイエメン共和国に約80万ドル(約9,000万円)の緊急無償資金協力
2008.12.18 日豪の安全保障協力促進の共同文書発表。防衛協力と情報共有の促進
2009.01.24『日中遺棄化学兵器処理問題終結』 ★重要★ (最大60兆円の血税が、中国に毟り取られる可能性のあった 遺棄化学兵器問題が実質終結した)
2009.01.25 日本の排他的経済水域(EEZ)の起点となる「国境離島」を含む無人島などの保全・活用に本格的に取り組む
2009.01.29 李大統領による日韓首脳会談での「慰安婦謝罪要求放棄誓約」

<内政>
2008.09.29 所信表明演説。反日マスコミは批判したが、櫻井よしこ氏を初めとする健全な国民は高評価
2008.10.15 2年ぶりに拉致対策本部の会合を開く
2008.10.16 一次補正予算成立
2008.10.29 朝鮮総連傘下組織を家宅捜索。税理士法違反容疑(無資格で確定申告書作成)
2008.11.27 税理士法違反で朝鮮総連傘下団体元幹部を逮捕
2008.11.27 朝鮮総連傘下団体の捜査中に公妨容疑で逮捕
2008.11.28 事故米不正転売の次官ら幹部25人を処分。農水相は報酬自主返納
2008.12.03 税理士法違反で朝鮮総連傘下団体総務部長を逮捕
2008.12.13 初めて政府主催で拉致問題の集会を開く
2008.12.16 「道徳・情操教育を拡充」「教科書ページ倍増」教育再生懇 第2次報告案 ★重要★
2008.12.17 社会保障費抑制のため、年金特別会計の「埋蔵金」から1400億円程度を充当する方針を固める
2008.12.17 食品偽装業者をすべて公表するため、JAS法の運用指針を改正
2008.12.17 交付税増額分で雇用を創出するよう、地方6団体に要請
2008.12.17 公益法人から1076億円を国庫に返納させることを決定 ★重要★
2008.12.17 商店街活性化の政策ビラを配布
2008.12.18 障害福祉サービスへの報酬を2009年4月から平均5.1%引き上げ
2008.12.19 教育再生懇を再開。「理念」より「質」の点から公立学校を学力アップさせ、新たな内需喚起狙う ★重要★
2008.12.19 改正国家公務員退職手当法が成立。在職中の不祥事発覚で退職金の強制返納が可能に ★重要★
2008.12.19 民主党とマルチ業界の癒着に関する中間報告。来期通常国会で追及へ
2008.12.24 失業者に旧公団空き家活用 471戸・家賃2割引き
2008.12.26 社保庁のヤミ専従問題で現役・OB計40人を刑事告発 ★重要★

 意外に多くの業績を積み重ねています。どれもこれもマスコミでは報道されませんが、なかには歴史的に大きな仕事もあり、麻生政権が今後の日本にとって重要な分岐点となる可能性を示しています。

 外交面では、歴史問題や領土問題に着手してる点を注目すべきです。とくに、中国での遺棄化学兵器問題を事実上終結させ、韓国の慰安婦謝罪要求を放棄させたことは、非常に意義のあることでしょう。昨今の金融危機で日本の存在感を訴えている点も評価すべきです。

 内政面では、朝鮮総連の不正資金問題に果敢に切り込んでいます。これは安倍政権から受け継いだ仕事です。麻生政権も安倍政権も執拗な攻撃、というか、醜い揚げ足取りが展開されましたが、その理由は切り込んだ相手から反撃を食らっているためだと思われます。

 いずれにしても、マスコミは麻生政権のあら探しが自己目的化しておかしくなっています(事例:)ので、書籍やネットなどを活用して情報収集に努めましょう。麻生政権に評価を下すのは、そうした作業の先にあるはずです。

お風呂で石鹸を使わない日々 その後

 今日はお風呂で石鹸を使わない日々のその後です。

 ネット界隈では、お風呂で石鹸やシャンプーを使わないことについて、いささか論争になっているようです。論争が起こるほど、人々に注目されていることの裏返しでしょうが、否定派と推進派が過激な議論を繰り返していますので、実態が見えにくくなっているように思います。

 今回は私の経験を書きたいと思います。

 私は2年ほど前からお風呂で石鹸を使っていません。髪の毛や体を石鹸やシャンプーで洗わずに、お湯にじっくり浸かることで汚れを落としています。石鹸を使わなくとも、何も問題はありません。否定派が指摘するように、体や頭がかゆくなることもありませんし、垢や臭いも十分にとれます。

 まずはこの点を確認しておきます。体のベタベタがとれないと否定する人もいますが、それは間違いです。十分にとれます。ただし、もちろんこれは私の場合です。他の人も必ず同じ結果が得られるとは限りません。が、おそらくは多く人が石鹸なしでも十分に汚れがとれると思います。

 また、私は整髪料や化粧品などは使っていません。これらを使う人は、やはり石鹸やシャンプーを使わざるをえないでしょう。お湯だけでこうした人工的な油は落ちないと思います。この点では化粧が必須の人には石鹸なしの生活は無理でしょう。

 一方、賛成派が主張するような反文明論的な効果については、私は実感していません。石鹸に含まれる成分が肌を痛めつけていると言われますが、石鹸を使わなくなっても、私の肌の状態は変化ありません。少なくとも、何も変わらないように感じます。

 アトピーや乾燥肌への効果も不明です。私はアトピーでも乾燥肌でもないので、もとより検証は不可能です。ただ、以前は冬になると左上腕の外側がかゆくなっていましたが、石鹸を使わなくなってからかゆみは生じていません。

 賛成派が強弁するように、石鹸を使わないことに崇高な理由付けを求めるべきではないでしょう。化学物質がどうのこうのとか、皮膚に優しいとか、そうした理由を私は掲げてはいません。石鹸会社が肌に悪い石鹸を推奨していることへの反対運動とかにも与しません。

 私が理屈を言うことも可能です。人間の体の汚れはお湯に溶けるようにできているので、本来からして石鹸を使う必要がない、といった理屈です。とはいえ、これは他人を説得するための議論でしょうから、私の行動を決定する要因とはなりません。

 したがって、私はお風呂で石鹸を使わないことを推奨することもしません。石鹸の使用、不使用によって何かが変わることはないと思います。石鹸を使わないことに興味がある人が自由に試してみれば良いと思います。意外に面白いですよ。

 そうです。私は面白いから石鹸を使わないのです。今までは石鹸で体を洗うことが当然でしたが、実のところ、そうしなくても大丈夫であることが明らかになりました。これは非常に面白いことだと思っています。

 今まで当然にしていた行為が実は意味がないことが明らかになったのです。こうした経験はなかなか稀なことだと思います。2年前の些細な発見、でも、衝撃的な発見に感動した私は、以来、お風呂にたっぷり浸かって汚れを落とす日々を過ごしています。

 今後もお風呂で石鹸を使わない日々を続けるでしょう。おそらく一生使うことはないと思います。かれこれ2年間続けていますので、もはやこれが普通の入浴方法になっています。石鹸で体を洗っていた日々は遠い昔の思い出となりました。

覚書 090314

伊藤さゆり「3月 BOE 金融政策委員会:0.5%に利下げ、量的緩和も開始」ニッセイ基礎研究所『経済・金融フラッシュ』No.08-159、2009年3月6日。
・イングランド銀行(BOE)は、4-5日に金融政策委員会(MPC)を開催、50bpの利下げを決め、政策金利を過去最低水準の0.5%に引き下げた。これと同時にBOEの資金で国債等の買い取りを行う量的緩和に踏み切ることを公表した。
・今回の声明文では、利下げ幅を50bpに留めた理由は「低すぎる政策金利は市場の機能や銀行の貸出余力に対して逆効果を及ぼす」、量的緩和に踏み切った理由は、2月の「インフレ報告」で示したように、「利下げのみでは2%のインフレ目標を下回る大きなリスクが残る」と説明された。
・声明文によれば、当初、量的緩和のための資産買い取り枠は750億ポンドに設定、この枠を向こう3カ月間で消化するとの方針が示されている。企業金融支援のためのCPや社債等の買い取りも行なうが、「主たる買い取り対象は中長期の国債」とされている。買い取りの規模は最大1500億ポンドまで拡大する可能性がある。声明文は、「MPCは今後、量的緩和の効果を注視し、買い取りのスピードや規模を調整する」と締めくくられている。BOEの利下げは0.5%で打ち止めとなる可能性が濃厚であり、今後は量的緩和のスピードや規模の調整が金融政策の主要な手段となろう。

「にぎわう関西に向けた地域観光戦略 実態調査に基づく分析」関西社会経済研究所マクロ経済分析プロジェクト、2009年3月。
・日英の観光事情を比較する上でまず注目したい数字が、両国の国際観光収支である。2007年の英国の国際環境収支は、34,700(百万米ドル)もの支出超過となっており、日本も17,200(百万米ドル)の支出超過と、両国とも大幅な支出超過である。世界各国・地域の国際観光支出上位(7位の日本まで)をみていくと、支出超過なのは1位ドイツと3位の英国だけである。支出・収入の規模に日英で違いがあるため一概に比較・断定はできないが、観光に関しては英国は日本と同じ悩みをもっていると見受けられる。
・英国観光事情をさかのぼってみていくと、1990年代後半にやはり国際観光収入(外国人観光客)を増加させようという政策がとられていた。それがクール・ブリタニアである。クール・ブリタニアとはもっと広義な政策のことで、「伝統・保守・旧態依然」という英国がもつ従来イメージからの脱却を計り、「創造性・革新性・オリジナリティのあるクールでモダンな国」へとイメージ転換させるために実施された国家ブランディング戦略のことである。この中で、「才能のある人間の集積」「国際貿易・投資への経済効果」「政治的地位の向上」といった観点とともに、「国際観光客の誘致」といった観点からもこの国家戦略は議論されていった。英国における2003年の入国者が2,470万人、出国者が6,140万人であったのに対し、2007年は入国者3,250万人で、出国者7,000万人と入国者数は確実に増加し、一定の成果があった。ただしこれを出入国者数の差で比較すると、2003年で3,670万人の出国者超過、2007年で3,750万人の出国者超過とほぼ横ばいという結果になっている。入国者数は着実に増加しているものの、なかなか出国者超過が改善されないというのもまた事実なのである。

「米国・欧州主要国の景気概況」三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部『調査レポート』08/64、2009年2月号、2009年3月9日。
・英国の景気は低迷している。2008年10-12月期の実質GDP成長率は前期比マイナス1.5%(年率換算でマイナス6.0%)と、1980年以来28年ぶりの大幅なマイナス成長となった。企業部門では、12月の製造業生産は前年比10.2%減と9ヶ月連続で減少した。家計部門では、12月の小売り売り上げが前年比3.6%と持ち直したが、1984年の統計開始以来最大の下落幅となった住宅価格下落の影響により、消費の基調は弱い。物価動向をみると、1月の消費者物価の上昇率は前年比3.0%と4ヶ月連続で低下し、9ヶ月ぶりの低い伸びにとどまった。BOE(イングランド銀行)は3月4、5日に開催された金融政策委員会(MPC)で、過去最低水準にある政策金利をさらに0.5%引き下げ0.5%とした。利下げは6ヶ月連続となる。また、同時に総額750億ポンドにのぼる国際など金融資産の買い取りを通じ、市場に資金供給を行なう量的緩和政策の実施を決定した。金利の引き下げ余地が限られる中、今後は量的緩和の拡充が政策の焦点となる見通しである。

「域外からの受け入れ条件を厳格化 雇用情勢悪化で内務省引き締め策」労働政策研究・研修機構『海外労働情報』2009年3月。
・統計局が発表した2008年第4四半期の就業者数は、イギリス人労働者の約15万人減に対して、外国人労働者は6万人あまり増加している。うちEU域内の労働者はむしろ4000人減少しており、増分は基本的に域外からの労働者だ。特に、東欧諸国(A8)からの労働者の減少が著しく、前期比で3万4000人減の46万9000人となった。イギリス国内の景気の悪化による雇用機会の減少や、ポンドの下落、母国での好況などの影響とみられる。ただし、農業関係者は、外国人労働者の減少に伴う人手不足のため、季節農業労働者スキーム(SAWS)の受け入れ枠の5000人分の拡大を政府に要請している。同スキームは、現在ルーマニアおよびブルガリアからの労働者を対象に実施されているもので、既に昨年には、農業労働者不足の緩和を目的に受け入れ枠を5000人分拡大し、2万1250人としていた。関係者によれば、農業労働はほぼ最賃レベルの低賃金と重労働のため、国内で募集をかけてもイギリス人労働者の応募はほとんどないという。しかし、小売企業からはコスト抑制を迫られるため、賃金の引き上げが難しいことから、外国人の受け入れでこれに充てたいというのが彼らの主張だ。

「加盟国間の建設労働者の派遣めぐり労使紛争」労働政策研究・研修機構『海外労働情報』2009年3月。
・大規模な建設事業をめぐり、他のEU加盟国からの進出企業が母国などから外国人労働者を呼び寄せて、イギリス人労働者の雇用機会を奪っているとの不満が建設業労働者の間で噴出し、労使紛争に発展した。1月末から約一週間にわたり、全国20カ所以上の精油所や発電所などで数千人が非公認ストや同情ストなどに参加したとみられる。発端となったイギリス中東部の精油所では、政府機関の介入を経て労使合意が成立したものの、不況により多くの産業で雇用が落ち込む中、国内の雇用機会をめぐる摩擦は今後も続きそうだ。
・イギリス人労働者に平等な機会を与えよ、との労組側の主張に理解を示す一部の労働党議員は、政府に対策を講じるよう要請した。しかしブラウン首相は、国内労働者の雇用への不安には理解を示したものの、労使間の対話を通じて問題の解決をはかるべきであるとして違法ストを批判、自らの発言については、保護主義的な意味合いではなく、あくまで技能水準を高めて就業に結び付けたいとする従来の説明を繰り返すにとどまった。また、労使関係を所管するビジネス・企業・規制改革相は、外国人労働者を呼び寄せるという企業の選択は法律に違反しておらず、加盟国の労働者の自由な移動を保障することは国外で働くイギリス人とっても重要であるとして、制度的な対応を求める意見を批判した。ストに対する批判や懸念の声は、イタリア・ポルトガル両国の外相や欧州委員会、さらにはイタリアの労組(CGIL)など国外からも聞かれた。
・ストの進展に伴って、改めてクローズアップされたのは、進出企業に母国からの労働者の派遣を認める海外派遣指令の存在だ。域内の企業には、欧州共同体設立条約(EC条約)によって他の加盟国でのサービス提供の自由が認められており、海外派遣指令は、これに伴う他国への一時的な労働者の送り出しに際して、受け入れ国が法律や労使協約などを通じて設定している労働時間や賃金、安全衛生などの基準の順守を義務付けている。ただし、労使協約が基準とみなされるためには、全国レベルの労使によって締結され、全国一律に適用される協約や、対象となる地域や職種・業種に属する全ての企業を対象とすることを宣言する仕組みを通じた協約であることを要する。このため、企業ごとの労使協約などに賃金水準等の設定を委ねている加盟国では、こうした協約に基づく基準を進出企業および派遣された労働者に課すことの当否が裁判で争われるなど、EUレベルでも数年にわたり議論がなされているところだ。これについて、欧州司法裁判所は2007年、企業のサービス提供の自由を阻害するとして、これを基準とは認めないとの判断を示したが、欧州議会やETUCはこの判断に異議を唱えており、個別的な労使協約を基準として認める指令の改正を求めている。欧州委員会は、当面は指令改正の必要はないとしたうえで、欧州裁の判決の各国への影響を検討するためのプロジェクトを立ち上げる意向を示している。イギリスには、全国レベルで協約の効力を確保する制度はなく、今回のケースでこれに近い位置づけにある「全国協定」も、建設業企業全般に適用されるものではない。このため、賃金水準については、適用される基準は全国最低賃金のみとなる。労働組合や労働党議員の間には、進出企業による外国人労働者の派遣で国内労働者の雇用機会が圧迫されることと同時に、現時点では「全国協定」に準拠した賃金や労働条件の設定に合意しても、先々には合法的に賃金などの切り下げが可能であることから、国内の労働条件の低下につながりかねないとの懸念があるという。

後藤あす美「英国経済見通し 量的緩和だけでは効果は限定的」大和総研、2009年3月10日。
・3月5日、BoEは市場予想通り政策金利を50bpt引き下げ、0.5%にすることを決定した。同時に、前月から示唆されていた量的緩和に関しても開始を表明した。声明文によれば、BoEは引き続き、英景気が下振れリスクに晒されており、一段の対策が必要とされていると判断している。2008年10-12月期の実質GDP成長率は前期比マイナス1.5%で、民間消費の大きな落ち込みが確認された。また、外部環境の悪化は顕著で、純輸出ベースではプラス寄与であったものの、輸出には急ブレーキがかかってしまった。
・今回の金融政策委員会でBoEは量的緩和の開始を表明し、英国の金融政策は新たな局面に突入した。量的緩和に関しては早い段階から、議論がなされてきたが、「漸く」の実施となった。今後、基本的にはBoEは政策金利を据え置き、ベースマネーを拡大してゆくことが主な仕事となるだろう。利下げが打ち止めになる理由として、利下げの有効性に疑問が出てきたことが挙げられる。これまで大幅利下げを敢行してきた理由は、2つ存在する。1つは家計・企業のローン支払い負担の軽減を図り、家計・企業のマインドの下支えをすること。もう1つは金融機関の貸し渋り改善への圧力であった。家計・企業の利払い負担等は多少軽減してきている様子が窺える。モーゲージ金利負担の推移は歴史的な下落率を記録している。そして、消費者マインドの購入意欲指数に関しては、2008年10月の世界同時利下げを機に、大きく改善した。ただ、住宅ローン金利の動向を確認すると、2007年12月から2008年4月までの利下げ、及び2008年10月の世界協調利下げ以降の利下げを反映しきれていないのが実情である。調達コストとの比較をしても、スプレッドの縮小は見られない。そして、BoE発表のマネーサプライ、英銀行による融資の統計からは、家計と非金融民間企業の資金繰りの難しさが浮き彫りとなっている。M4は前年比で拡大しているにも拘わらず、非金融民間企業の保有額に関しては、1993年以来久々に前年割れとなっている。金融機関からの融資状況を確認すると、セクター間で格差はあるが、総じて抑制傾向にある。投資関連業の打撃は説明する必要もないほどだろうが、個人サービス関連や建設業、昨年末から倒産が相次いだ小売業1などへの融資が極端に圧縮されたことが確認された。家計の場合、2008年10-12月期に前期比で429億ポンドも融資残高が圧縮された。家計・非金融民間企業は手元資金の欠如という状況からは脱していないようだ。
・今後、量的緩和が金融安定化策の軸となってゆくだろうが、手法には改善が必要と考える。量的緩和のスキームは以下の通り。今後3ヶ月で750億ポンド(最大1500億ポンド)相当の買い入れを行う。3月11日から国債の買い入れを開始。11日の買い入れは20億ポンド規模。買い入れ対象は、残存期間が5-25年の国債(11日の買取対象は2014-2018年満期の国債)。入札は週2回(月曜日と水曜日)。国債以外の資産(社債・CP・ABS)の買取も方針に含まれている。準備預金残高の目標は決めず。準備預金残高には政策金利で利息の支払いを行う。
・BoEはマネタリーベースの拡大が、金融機関からの融資拡大に繋がることを狙っている。英国債の発行残高は5370.2億ポンド(マーケット価格ベース、物価連動債を除く、2008年末時点)である。規模に問題は無いと思われる。ただ、国債によるスキームはこれまでも行っており、金融機関が処理にてこずっている資産は国債以外のリスクのある資産である。2月13日からは一足先に500億ポンドのCP買取で民間部門へ直接資金の供給を実施しているが、出来るだけ早い段階で社債とABSの買取も開始しなければ、量的緩和の効果が確認されるまで、相当な時間が掛かってしまうだろう。そして、より融資拡大を確実にするために、英政府は2月26日にはRBSと、3月7日にはロイズTSBと不良資産に対する政府保証スキーム(アセット・プロテクション・スキーム:APS)で合意に達した。これで、RBSは3250億ポンドの資産の政府保証と引き換えに(うち195億ポンド超の損失は政府が肩代わり)、今後2年で融資を500億ポンド増額する義務を負うことに。現在の融資残高3000億ポンドに上乗せする。ロイズTSBも156億ポンドの手数料を支払って、2600億ポンドの資産の保証と引き換えに(うち250億ポンド超となった損失を政府が肩代わり)、今後2年間で280億ポンドの融資拡大を行う見通しだ。国有化されているノーザン・ロックは既に今後2年間で140億ポンドの新規住宅ローン貸出を行う6方針を明らかにしている。

山崎加津子「ユーロ圏経済見通し 金融対策を急げ」大和総研、2009年3月10日。
・同じ欧州の中でイギリスは2月末に銀行の不良資産から発生する損失を国が肩代わりする損失保証スキームを始動させ、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドとロイズ・バンキング・グループがその適用を受けることになった。同様の枠組みを他の欧州諸国が設定できるかが注目される。4月2日にロンドンで開催されるG20サミットを前に、新しい金融システム構築のための動きを欧州から起こそうとしているが、その一環として金融機関の不良資産処理の具体策を進められないと、金融不安がいつまでも解消されないことになってしまうであろう。

Morgan Stanley『Strategy Forum』2009年3月11日。
・現下の経済/金融危機への対応を強化するために、イングランド銀行は先週5日、量的緩和の導入を決めた。量的緩和は、間を置かずに早急に実行に移されるだろう。イングランド銀行は、ギルト債を中心に、また企業が資金調達のために発行するコマーシャル・ペーパーや社債も購入対象として、大量の資産を今後購入していく。今回採用されたこうした方法は、イングランド銀行のバランスシートの大幅な拡大に繋がり、商業銀行が中央銀行に預け入れることになっている準備預金残高、そして英国の狭義・広義のマネーサプライを押し上げることになるだろう。
・向こう3ヵ月間の資産買い取り枠は当初750億ポンドに設定され、この大半はギルト債の購入に充てられる。この買い取り枠750億ポンドは、英国のGDPの約5%に相当するが、この先買い取り規模は拡大され、対GDP比率はこの倍に達する可能性がある。バランスシートの拡大に際して原則上イングランド銀行は何ら制約を受けない。
・ イングランド銀行が打ち出した量的緩和プログラムの買い取り枠は、ギルト債全発行残高の約15%に相当する。また、重要なのは、イングランド銀行が買い取りに充てようとしている期間。イングランド銀行は、3ヵ月を目標としている。これは、買い取り規模に照らして見た場合、驚くべきペースと言えよう。イングランド銀行が買い取り対象としているのがギルト債市場のうち償還期限が5-25年の中長期セクターである点を鑑みれば、実のところ、計画されている買い取り規模は、中長期ギルト債発行残高の25~30%に相当する。

「英国が独自の月面探索機計画を発表」技術開発機構『NEDO 海外レポート』1040、2009年3月11日。
・2008年2月15日に英国国立宇宙センターは、英国の主導が予定されている月面探査機計画を発表した。この計画はMoonLITEと呼ばれ、米国航空宇宙局(NASA)の協力を得ながら進めていく。MoonLITEとはMoon Lightweight Interior and Telecom Experimentの略称であり、MoonRakerと呼ばれる別の計画と対になったもので、無人探査機を月面に送り込み、測定装置を月の内部に射入して地質構造や組成を調べ、あわよくば水や有機物の存在を確認しようとするきわめて意欲的なものである。この計画については、既に2007年1月には構想が示されていたが、今回の発表はNASAとの共同作業で内容を詰めてきた結果である。
・MoonLITE計画の主眼は月の地質学的な調査である。今回のミッションでは、衛星を月周回軌道に乗せ、月面にダーツ(penetrator)を打ち込み、ダーツに備えられた測定器を月面地下に射入し月の内部構造を調べる。そのうえで、月がどのようにして形成されたかを研究するためのデータを取得する。周回軌道上の衛星は、その後は月面上の測定器ネットワークと地球とを結ぶ通信基地として作動し、測定器の1年間の寿命の間にわたって、月の地震(Moonquake) の規模と頻度、ならびに月表面外皮と中心核の厚さに関する情報を地球に中継する。当面はその実現可能性(フィージビリティ)を確かめるための技術研究に焦点が当てられている。

「光合成内部の仕組みが強力な新しいレーザー技術により明らかに 太陽エネルギーの植物内部での移動を示す瞬間写真を初めて撮影」技術開発機構『NEDO 海外レポート』1040、2009年3月11日。
・これらの瞬間写真は、地球で最も効率的な太陽エネルギープロセスである光合成内部の仕組みについて明らかにするであろう。太陽エネルギーを食物として格納したり、二酸化炭素を取り入れる化学反応を促進するために、太陽エネルギーは光合成タンパク質の内部で分子を横切って効率的に移動する。化石燃料に替わる新しいエネルギーの解決策を探求する時に、研究者はこのプロセスを利用したいと望んでいる。これを利用するためには、このエネルギー輸送プロセスをより詳細に理解する必要がある。
・エネルギー輸送の理解は、地球で最も効率的な太陽エネルギープロセスである光合成の仕組みに対する新しい洞察力を与えることになる。これまでの、大きな障害の1つは、分子と電子の間のエネルギーの流れに関する基礎的なメカニズムを調べる直接的な方法が欠如していたことにあった。

佐野邦明「諸外国の年金制度における公的年金と企業年金の役割分担について」三菱UFJ信託銀行、企業年金政策研究会資料、2009年2月18日。
・公的年金(2階建て) 基礎年金:定額年金。全国民共通。付加年金:所得比例年金。被用者が対象。主に職域年金のない企業の給付を補う。
・職域年金(企業年金)、個人年金 職域年金(または個人年金)が付加年金以上に充実している場合は、付加年金に加入しなくて良い。適用除外職域年金(または適用除外個人年金)
・ステークホルダー年金 確定拠出型の個人年金。加入は任意であり、職域年金、適用除外個人年金との選択制。
・公的年金:公的年金の水準が低い。(付加年金を含めても、平均給与の48%)。基礎年金額は、毎年、男子労働者平均賃金の約20%の水準に、夫婦の場合はその約1.6倍の水準に設定される。満額年金週額(独身:87.30ポンド、夫婦:139.60ポンド)、月額(独身:約349ポンド、83,760円、夫婦:約558ポンド、133,920円)(2007年)。物価スライドあり(支給開始時は賃金スライドあり)。支給開始年齢:男子は65歳、女子は60歳(2010-2020年に65歳に段階的引き上げ)。財政は、賦課方式、原則国庫負担なし。
・企業年金:企業年金(職域年金)への加入率が低い(個人勘定の創設へ)。従業員は、職域年金か個人年金か選択可能(公務員を除く職域年金加入率が低下、1991年40%から2005年25%)。DBの設計は、通常、最終所得×1/60×勤続年数。終身年金で物価スライドがあるのが通常(長寿リスク)。受け取り方法は、DB・DC制度とも、原則年金。DC制度では、一時金で受け取り可能なのは残高の25%まで。DC制度では退職時に個人年金を購入。
・2004年年金法:年金保護基金(PPF)の設立。年金監督機関の強化(TPR)。積立基準の変更(制度固有積立基準)。
・2007年年金法:支給開始年齢の引き上げ(2046年までに、段階的に68歳へ)。確定拠出型による適用除外を廃止。基礎年金の給付額改善のため物価スライドから賃金スライドへ。個人勘定のための準備機関を創設。
・2008年年金法:2012年に、従業員は強制的に加入する確定拠出型制度である個人勘定を創設(事業主が従業員を自動加入させること)。掛金は、従業員4%、企業3%、国1%。

「危機シナリオ作成にあたって:イギリス、北欧諸国における危機シナリオを事例として」『危機管理政策の国際比較 危機対応の経済政策論に向けて』RIETI Policy Discussion Paper Series 08-P-002、2008年5月。
・危機シナリオの作成にあたり、大きく分けて二種類のシナリオがあるという点を理解する必要がある。一つは「予測的シナリオ(proactive scenario)」、もう一つは「反応的シナリオ(reactive scenario)」である。この二種類のシナリオは、想定された危機に対するアプローチが各々異なっており、両者の相違を最初に認識することがシナリオ作成の第一歩となる。「予測的シナリオ」とは、ある想定された危機に至るまでの発生のプロセスについてのシナリオである。このシナリオにおいては、「どのような経路をたどって」そして「どのような要素がどの程度影響することによって」予測対象となる危機へといたるのか、という点に焦点が置かれることになる。つまり、ある一定度の確率を伴って予測、予見が可能であるような危機について、その発生に至るまでのプロセスを予測するものがこの「予測的シナリオ」に該当する。一方「反応的シナリオ」とは、ある危機が発生してから現状復帰にいたるまでのプロセスについてのシナリオのことを指す。地震、風水害などの突発的な自然災害や疫病、労働災害、あるいはテロリズムといった、事前の発生予測が極めて難しいものがこのシナリオにおける対象となっている。
・イギリスにおけるコンティンジェンシー・プランは次の二つに分類される。一つはロンドンをはじめとする大都市におけるテロリズムを想定した、ビジネス継続性の確保を目的としたものである。もう一つは、鳥インフルエンザやSARSを代表とする感染症発生を想定した、ビジネス継続性の確保と市民生活の早期回復についてである。前者についてはイギリス内務省(UK Home Government)やその付属機関であるMI5(治安総局)を中心に、後者についてはNHS(国立保健局)を中心に数多くの資料が公開されている。特に前者については、2005年、2007年のテロの影響のためか、非常に詳細かつ実践的なプランが数多く見受けられる。首都におけるテロリズムの被害を過去に経験しており、テロリズム対策のための「予測的シナリオ」「反応的シナリオ」の両側面において詳細なシナリオ作成がなされていた。コンティンジェンシー・プランとは文字通り「偶発的に発生した危機への対応計画」を示すが、イギリスの場合特筆すべきは、そうした「偶発的に発生する危機」をも「予測的シナリオ」において予測、未然防止を目指している点である。例えば、テロリストの大都市侵入の未然防止、またテロリストが実際に侵入してしまったという前提のもと、いかに彼らを発見、監視するかという点についてのネットワーク網の構築など、文字通りあらゆるケースを想定しながらテロリズム発生の「予測的シナリオ」を作成している点である。テロリズム対策のシナリオ作成においておそらく問題となる点は、どの程度そうしたシナリオを一般向けに公開するか、という問題である。テロリズムに国境はなく、従ってテロリズム対策は地域、国を横断して取り組まれなければその有効性は限定されたものとなるであろう。その点で、テロリズム対策シナリオの積極的な公開を通じて、国レベル・民間レベルを問わず意識を高めることは今後欠かせない課題となるであろう。しかし同時に、テロリズム対策シナリオの公開は、国内政治の事情から機密にしておきたい情報をも公開してしまう可能性が常に存在する、という点である。特にインターネット上で閲覧可能な対策シナリオは文字通り誰でも閲覧することが可能であり、テロリストらがこうした対策シナリオを先回りする形で行動をとり、結果的に対策シナリオが機能しなくなってしまう可能性も否定できない。
・イギリス国内における感染症シナリオは、鳥インフルエンザ発生のそれが大多数であり、国レベルだけでなく地方政府レベルにおいても共通の課題として取り組まれていた。鳥インフルエンザは東南アジア諸国という、ヨーロッパ諸国からは比較的遠隔な地域を発生源とした疫病ではあるが、食肉としての鶏肉の輸入、または家禽としての鶏の輸入を通じて感染が拡大する恐れがあり、決して対岸の火事ではないというイギリス政府の認識を垣間見ることができる。鳥インフルエンザの猛威を実際に経験しているイギリスでは、将来において発生が予測される疫病対策として、イギリス中央政府だけでなく各地方政府(ウェールズ、スコットランド、北アイルランド各地方政府)においても綿密な対策シナリオが組まれている。これは疫病対策が国レベルの対策だけでなく、国と地方との連携とコミュニケーションの重要性が強く認識されていることの表れであるといえるだろう。またイギリスに特徴的な感染症シナリオは、口蹄疫(foot and mouth disease)のそれであった。イギリス国内で過去三回発生し、猛威をふるったこの疫病に対する危機意識は相当強く、農家に直接対策を呼びかけるようなプランも見受けられた。例えば農家用に配布されたパンフレットにおいては、口蹄疫発生に際してとるべき対策が箇条書きにしてまとめられていた。このような配布物も、その内容は簡単ながら「危機シナリオ」として考えることが可能である。この疫病は、大陸への食用牛肉輸出にも大きな影響を与えるため、口蹄疫関連の感染症シナリオはビジネス・コンティンジェンシー・プランとしても読み替えることが可能であろう。
・イギリスにおける気候変動シナリオは、特にスコットランド政府が精力的に取り組んでいる印象が見受けられ、最も多くみられた災害シナリオは「海水面上昇」と「洪水」についてのそれであった。これは気候変動にともなう気温の上昇がその直接の原因となって引き起こされると分析されており、特に後者については一見意外だが、季節循環サイクルの変化、および高地に残存する積雪が融解することによって引き起こされると説明されている。海水面上昇についても、黒海、北極海沿岸地域(おもにスコットランド地方が対象)において2010年、2050年、2100年というタイムスパンを取った時にどの程度の沿岸地域の海水浸食が想定されるか、という分析がなされていた。このような災害は、都市部・非都市部また沿岸部・内陸部において被害の程度は異なるであろうし、被害対策も当然その地域が固有に有する地理的制約条件を考慮にいれなければ、効果的な自然災害シナリオを作ることは難しいであろう。
・イギリスにおける国民保護計画はテロリズム関連、そして疫病関連が多数を占める。前者については、テロ関連の法案が21世紀に入ってから新しく、ないし従来の治安関連の法律を改正する形で次々と施行されてきている。テロ関連法案が多くみられるもう一つの理由は北アイルランド紛争によるところも大きく、実際北アイルランド政府は独自の保護計画を作っているようである。9/11テロなどの武力テロだけではなく、CBRN兵器(生物・化学・放射能兵器)による生物・化学テロリズムの懸念も同時に高いことから、様々な可能性を含んだ保護計画を作成しているのが現状である。また疫病についての保護計画も、テロのそれに劣らず数多く立案、作成されている。これはイギリス国内におけるBSE(狂牛病(、口蹄疫(foot and mouth disease)など家禽類への疫病の大量感染が近年立て続けに発生していることとも無関係ではなく、実際これらの疫病拡大の阻止のための、農家向けの防止マニュアル、パンフレットも多く見られた。コンティンジェンシー・プラン同様、疫病など発生後の被害拡散が極めて速い危機が想定されている場合には、こうした一般市民向けの平易なマニュアルも法律と同様、場合によってはそれ以上の効用を発揮しうるのであり、「国民保護計画」が最終的には国民自身の自覚をいかに促すかという点に懸っているともいえる。したがって、「国民保護計画」の想定に当たっては、具体的な「法」「対策計画」といった法律・行政面での整備もさることながら、一般市民向けの危機管理マニュアルの配布といった活動も、「国民保護計画」の欠くべからざる要素の一つであるという点についての自覚が必要であろう。

「ヨーロッパにおけるワークライフバランス」労働政策研究・研修機構『JILPT 資料シリーズ』No.45、2008年7月。
・イギリスでは、出産休暇、育児休暇をとることを労働者の権利として認めることを義務付けるというEUの政策に対応して、子供が5歳になるまでの間に、両親の双方が、それぞれ、3カ月ずつの育児休暇をとることができるようになっている。また、2003年以降、子供が幼い雇用者は雇用主に対し、パートタイムあるいはフレックス制度で働くことを要求できるようになった。さらに、2005年、Department for Trade and Industry(DTI:現在は、Department for Business Enterprise and Regulatory Reformビジネス・企業・規制改革省)は、従来の出産休暇を拡張する法案を提出した(Department for Trade and Industry 2006)。この法律は2007年4月に施行されたが、それによると、従来から行われている26週間の通常出産休暇(Ordinary Maternity Leave)を義務付ける。加えて、雇用者は26週間の追加出産休暇(Additional Maternity Leave)を要求できる。通常出産休暇を取っている女性は解雇されず、休暇期間は法律で定められた雇用者の権利のための期間に含められるほか、年功、年金、その他の給与にかかわる制度のための就業期間とみなされる。出産休暇をとる女性は、休暇期間中も雇用者であり、雇用主と円滑なコミュニケーションをとることが推奨されている。また、実際の訓練や会議への出席などを要する仕事が出産休暇中に生じた場合、最高10日まで、こうした仕事をするために出社が許される(Keeping in touch days)。これらの仕事に対する報酬は、雇用主と雇用者の間での交渉に委ねられる。雇用者が育児休暇をとるためには、出産が予定されている週より15 週前に雇用主に、出産予定日といつから出産休暇をとるかを知らせなければならない。出産休暇をいつから始めるかについては、28日前までなら、変更が可能。また、出産休暇は出産が予定されている週より11週前以前からは始めることはできない。ただし、4週間前に妊娠にかかわる理由で雇用者が休暇をとった場合は、自動的にその日より出産休暇が始まる。通常の出産休暇を終え、仕事に戻る時は、8 週間前までなら変更が可能。復職の意思がない場合は、個別の雇用契約で定められている期間に従ってこれを雇用主に知らせなければならない。通常の出産休暇後を終了して復職する際は、出産休暇の前に行っていたものと同じ仕事に就くことができる。出産休暇中の給与は、39週間にわたって保証される。2006年に成立したWork and Families Act 2006によって、出産休暇中の保証期間が26週から39週に変更された。このうち、最初の6週間は雇用者の週給の平均の90%、残りの33週は定額の112.75ポンドあるいは、女性の週給の平均の90%のいずれか少ない方が支払われる。これらの法定の出産休暇中の給与については、雇用主側に対する特待制度がある。前の財政年度の間に支払った法定の出産休暇中に払った給与のうち、最大92%が、党外の機関に支払う源泉徴収税、社会保険料、学生ローンなどから差し引かれる。前年に支払った税金の総額が45,000ポンド以下の小企業に対しては、100%が差し引かれ、さらに税金の4.5%が免除される。
・新しく子どもが生まれる父親には、父親休暇(paternity leave)をとる権利が与えられる。ただし、出産予定日の15週前までに、26週間連続して同じ雇用主のもとで働いていなければならない。父親休暇の期間は、子供が生まれてから8週間以内に1-2週の連続した休暇をとることができる。女性の出産休暇と同様、112.75ポンドあるいは週給の90%のいずれか少ない額の給与を受給できる。
・イギリス政府のビジネス・企業・規制改革省(Department for Business Enterprise and Regulatory Reform:以下BERRと略称)では、2000年以来、Work-Life Balance Surveyとよばれる調査を企業と雇用者の双方を対象に行ってきた。調査時点から2年前の間に女性従業員が出産休暇をとった例がある企業は全体で32%。少なくとも1人の女性従業員が妊娠したという企業では94%が出産休暇をとった例があると回答した。
・イギリスのWork and Family Actでは、育児休暇をとった女性は、休暇終了後、休暇に入る前についていたのと同じ、もしくは類似した仕事に就くことができるとされている。2006年に行われたWork-Life Balance Surveyで、過去2年間に出産休暇、育児休暇をとった女性が休暇終了後に以前と同じ仕事に就いたか否かを尋ねている。育児休暇をとった女性が復職しなかった場合を除くと、休暇をとった女性がいると答えた企業の83%で、休暇取得者は同じ仕事に復職していた。しかし、同じ仕事に復職しなかった場合でも、休暇をとった女性が復職後の仕事に不満を持っているわけではないという回答が大勢を占めている。出産休暇や育児休暇をとった女性が復職する時のために仕事を用意しておくことに困難を感じている企業の比率は約20%であった。特に、民間企業、組合のない企業、小企業などで相対的に困難を感じている企業が多かった。民間企業では、その24%が困難を感じているのに対し、公的部門の事業所で困難を感じていると答えた企業は8%であった。組合のない企業では26%が困難を感じていると答えたが、組合のある企業で困難を感じていると答えた企業の比率は12%だった。また、従業員が1000人未満の企業の28%が困難を感じているとしたのに対し、従業員が1000人以上いる企業で困難を感じていると答えた企業の比率は9%だった。困難を感じていると答えた企業の62%は民間の企業で、従業員数が5から24人の小企業であり、それらの企業の79%が労働組合を持っていない。出産休暇や育児休暇をとった女性のために仕事を用意しておくことに困難を感じている企業の約半分は、この問題は深刻なものだと答えている。困難の内容については、休暇取得中の間に、一時的に仕事をカバーする要員の確保を上げるものが最も多かった(67%)。次に、多い答えは、こうした一時的要員を確保するためにコストがかかるとするものだった。この結果は、前に示したEUで行われた調査の結果とも一致する。そのほかに挙げられた課題は、事業のパフォーマンスにネガティヴな影響が出た、熟練したスタッフが出産休暇をとったことによって組織内にスキルのギャップが生まれてしまったというものだった。このように、イギリスの企業においても出産休暇、育児休暇の制度の導入は積極的に進められているが、休暇取得者がやっていた仕事をどのようにカバーするかという人事上の課題は残っている。出産休暇、育児休暇に関するもう一つの問題は、休暇を取得した後に復職しない女性が相当数いるということである。特に、高い技能を持つもの、長い勤務経験を持つものが復職しない場合には問題は深刻になる。
・BERRが行った第3回Work-Life Balance Surveyの結果をみると、調査対象となった企業の29%が、過去2年の間に男性の従業員が、妻あるいはパートナーの女性の出産前後に休暇をとった例があると報告している。また、約11%の企業で、こうした例が2 件以上あった。該当する男性従業員は、法定の父親出産休暇をとる権利があるのだが、すべての場合で父親出産休暇を取得したわけではない。父親出産休暇をとることを選択せずに、年次有給休暇をとった例が少なからずあった。この場合、給与が全額支払われるからである。子供が生まれる前後に休暇をとった男性従業員のうち88%が法定の父親出産休暇を取得している。

道頓堀のカーネル・サンダース人形

 今日は道頓堀のカーネル・サダース人形です。

道頓堀川に投げ込まれたカーネル人形、24年ぶりに発見
2009年 03月 11日 16:31 JST 東京 11日 ロイター

 プロ野球の阪神タイガースが1985年にリーグ優勝した際、熱狂したファンによって大阪の道頓堀川に投げ込まれて行方が分からなくなっていたケンタッキー・フライドチキンのマスコット、カーネル・サンダース人形が24年ぶりに見つかった。

 同河川に不発弾がないか確認するための清掃作業で10日に人形の上半身が見付かり、11日には下半身も回収された。

 朝日新聞では、「サンダース像の発見を聞き、歴史が終わったと感じた」という1985年当時阪神の監督だった吉田義男さん(75)のコメントを伝えている。

http://jp.reuters.com/article/oddlyEnoughNews/idJPJAPAN-36926420090311

 あの人形が見つかったようです。懐かしいものが発見されたと感慨に耽り、良かった良かったと喜んでいる人もいるでしょう。

 が、忘れてはいけません。カーネル・サンダース人形は阪神タイガースの優勝に乗じて暴れ回った阪神ファンが道頓堀に放り込んだものです。理性を失った暴徒がいかに恐ろしいかを示す証拠です。美談でも何でもありません。

 記事では「熱狂したファン」といった程度の表現になっていますが、それどころではありません。当時を知る人は今でも生温かい恐怖を感じるくらいの狂いぶりです。人形は暴徒の犠牲となって川底に沈められたのです。

 変わり果てた姿で発見されたカーネル・サンダース人形を見て、阪神ファンは何を考えるのでしょうか。当時の暴行を真摯に反省するべきだと思います。

季節外れの健康診断

 今日は季節外れの健康診断です。

 ちょいとわけあって、健康診断を受けてきました。以下に結果を書いておきます。

身長:180.0cm
体重:76.2kg
BMI:23.5
標準体重:71.3kg
肥満度:6.9%

視力:右眼1.5 左眼0.8

血圧:131/78mmHg 86bpm

 身長や体重はいつもこれくらいです。体重が標準体重を5kgほど超えていますが、おそらく筋肉の重さだと思います。ええ、そうなのです。

 身長がピタリの数字ですが、これは偶然です。……ウソです。ピタリを狙って、3回ほどやり直しました。自分で勝手に測る器具でしたので、納得できるまで測りました。

 視力はおそらく左眼のほうが正確なところでしょう。右眼は計測時に勘が冴えた結果です。適当に方向を示していたら、何となく正解したのです。いい加減なものです。

 血圧は私にとってはちょっと高めです。調子が良いときは上が100強です。ちょっとばたばたしながら測定したので、血圧も心拍数も上がってしまったようです。

 なお、レントゲン検査と尿検査、聴力検査も受けました。すべて異常なしと診断され、いたって健康であることがわかりました。今後も健康でありたいものです。

観たい映画リスト 第2版

 今日は観たい映画リストの第2版です。

いのちの食べかた
28週後

サッチャーリズムとイギリス映画
リヴァプールからの手紙:イギリスにおける南北格差
マイ・ビューティフル・ランドレット:サッチャーリズムによる自助努力の成果
ラスト・オブ・イングランド:フォークランド紛争の暗闇
コックと泥棒、その妻と愛人:姦通、報復、復讐
ストーミー・マンディ:イギリスとアメリカの経済的関係
シャロウ・グレイブ:個人主義のブラックユーモア
バタフライ・キス:社会から見放された個人
ヴァージン・フライト:孤独の先にあるコミュニティ
トゥエンティフォー・セブン:コミュニティーの再生
マイ・ネーム・イズ・ジョー:分断されたコミュニティの中で黙々と生きる人々

ビリー・ワイルダー
サンセット大通り:1950年
麗しのサブリナ:1954年
七年目の浮気:1955年
昼下がりの情事:1957年
お熱いのがお好き:1959年
アパートの鍵貸します:1960年

2009年3月8日追加
ワルキューレ:ヒトラー暗殺映画。
THIS IS ENGLAND:1983年の閉塞感漂う英国を舞台にした青春映画。

 2つを追加しました。

覚書 090307

「世界地方自治体憲章と各国の対応」平成15年度比較地方自治研究会調査研究報告書、自治体国際化協会、2004年6月。
・地方自治のスタンダードを設定した世界で初めての多国間条約、ヨーロッパ地方自治憲章(「地方憲章」)が発効してから、すでに15年が経過する。一般に、地方自治は主権国家の国内事項であり、他国の地方制度について干渉することは許されないとされている。従って、地方自治のスタンダードを設定し、一国家を超えてこれを保障しようとする場合、国家間の合意、すなわち条約を通じて国際的に保障していくという手法がとられる。
・ヨーロッパ地方自治憲章は、ヨーロッパ評議会(Council of Europe : CE)の閣僚委員会(決定機関)が1985年6月27日に採択し、1988年9月1日に発効した。
・英国では、1999年代に入り保守党メイジャー政府の積み重ねを経て、1997年5月に発足した労働党ブレア政府が和平を積極的に推進することとなった。1997年9月、IRA(Irish Republican Army)の再度の停戦を受けて全当事者による交渉が開始され、曲折の結果、1998年4月10日にベルファストにおいて、北アイルランド各政治党派とイギリス及びアイルランド共和国政府との間で包括的な和平合意が成立した。和平合意は、北アイルランドが連合王国の一部であることを確認し、アイルランド共和国は、北アイルランドに対する領域権を主張する憲法の規定を削除すること、108名の議員を比例代表制で選出する北アイルランド議会(Assembly)と12名の議員からなる行政部を設立すること、また、南北アイルランド間の協力機関や軍事組織の武装解除等が含まれる。この和平合意は5月に北アイルランドと南のアイルランド共和国でそれぞれレファレンダムに付され、両領域とも圧倒的な支持を得た。引き続いて同じ1998年6月には比例代表制(単記移譲式)による北アイルランド議会選挙が行われ、7月には議会が発足して首席大臣(首相 First Minister)及び副首席大臣(副首相 Deputy First Minister)が選出された。また、同じ7月には、和平合意を履行し北アイルランド議会への分権を実施するための法案がUK国会に提出され、11月に北アイルランド法(Northern Ireland Act 1998, c.47)として成立した。北アイルランド議会への権限の移譲は、翌1999年12月に行われ、同時に、和平合意によって、和平を促進し実効性を支えるために設置が合意された。
・北アイルランド法は、北アイルランドに分権議会と執行府を設立するとともに、複雑で深刻な政治的、社会的な分裂と対立を反映して、興味深い極めてユニークな組織編成と運用方法を定めている。その根幹は、対立する両勢力による権力の分有(power sharing)である。また、プロテスタント系によるカトリック系住民の差別と排除の歴史を受け、すべての北アイルランド住民の宗教による差別からの保護と、人権や機会の均等の実施方法が重視されている。
・北アイルランド議会の意思決定、すなわち議決には、プロテスタント系のUKへの残留派(Unionists)と主にカトリック系のUKからの分離派(Nationalists)の両派に鋭く分裂している社会を背景とした議会における意思形成の方法として、ユニークな特別の要件が課されている。「各コミュニティを超えた支持」(cross-community support)による意思決定である。「各コミュニティを超えた支持」による意思決定には、1. 残留派及び分離派それぞれの多数を含む投票者全体の多数の支持によるか、2. 残留派及び分離派それぞれの40%を含む投票者全体の60%の支持によらなければならない。残留派及び分離派の所属議員は、議事規則に従って登録される。
・北アイルランドの行政部には、首席大臣=副首席大臣の一体性以外には全く一体性がなく、また、議会からの独立性もない。執行委員会は、議会の一委員会として、議会が個別的に付与した職務を遂行する各大臣の集合体であり、それを統合するための首席大臣=副首席大臣の統制権もない。北アイルランド社会の分裂と対立を議会のみならず行政部においても包含し、カトリックとプロテスタントの対立、さらに加えて和平派と和平反対派の対立を包み込みつつ調和させ、それらを統合して和解の道を切り開こうとするこの「権力分有」のシステムが、北アイルランド分権の政治制度の極めて大きな特徴である。また、上述した北アイルランド議会への権限の移譲の範囲及び方法に加えて、北アイルランド行政部の活動に対する法律上の制限とUK政府の直接的な干渉権も大きな特徴である。このように、同じ第一次立法権の移譲といっても、スコットランドの分権の構造とは大きな違いが存在している。
・しかし、分権後の北アイルランドでの和平の進展は曲折を重ね、分権のシステムはこの大きな困難を克服できないまま今日に至っている。北アイルランドにおける分権は、和平の停滞によって長期にわたって停止され、1998年の和平合意を圧倒的に支持した住民の中での幻滅感も広がりつつあるといわれる。

「欧米における地方議会の制度と運用」平成16年度比較地方自治研究会調査研究報告書、自治体国際化協会、2005年4月。
・従来からの英国の地方自治体の内部組織形態は「委員会」制度であり、議会(Council:本会議と委員会)は地域住民から直接選挙により選出される議員によって構成される地方自治体における最高の意思決定機関であると同時に執行機関でもあり、行政分野又は地域別に委員会や小委員会を設置して行政の執行にあたり、最終的な執行責任も負っていた。この制度における議長(Chairman又はMayer)は議員の互選により選出され、議事進行を取り仕切るとともに対外的に地方自治体を代表する。しかし議長は実質的な政治的権限を有しておらず、議会多数党の議員により互選されるリーダー(Leader)が実質的な政治的権限を有しており、施策の決定や自治体の運営に大きな影響力を有していた。
・「リーダーと議員内閣」制度は従来の委員会制度における政策資源委員会や各サービス委員会の執行機能を内閣に集中したものであり、リーダーの指揮の下に内閣が執行機能を担い自治体の日々の政策に関する意思決定を行う制度である。リーダーは本会議において選任され、それ以外の内閣構成員はリーダー或いは議会から任命される。またこの制度では本会議又はリーダーが内閣の構成員数を決定するが、その数はリーダーを含めて10名以内という上限が法律で定められている。リーダーから内閣構成員又は内閣から事務部局への権限の委譲はリーダーの決定により行うことができる。
・「直接公選首長と議員内閣」制度は先に述べた「リーダーと議員内閣」制度と同様に内閣が日々の政策に関する意思決定及び執行機能を担うが、その大きな違いは、内閣を率いる首長が地方自治体の有権者により直接選挙される公選首長(任期4年)であるという点である。この直接公選首長は、従来の地方自治体でリーダー、議長及び事務総長の3者によって担われてきた役割、即ち、1. リーダーの持つ重要事項に関する意思決定者としての役割、2. 議長の持つ儀式への出席など対外的な地方自治体の代表者としての役割、3. 事務総長の持つ日々の行政サービスに対し責任を負う事務方の長としての役割、を併せ持つことになり、直接公選首長には強力なリーダーシップの下に当該地方自治体全般にわたる政策を遂行することと効率的に地方自治体を運営することが期待されている。また直接公選首長制の導入により当該地方自治体運営の最終責任者が明確になることから、地方選挙の投票率の低下に歯止めがかかることも期待されている。
・「直接公選首長とカウンシル・マネージャー」制度は、「直接公選首長と議員内閣」制度と同様に有権者により直接選任された首長の強力な指導の下に地方自治体の政策が遂行されるが、「直接公選首長と議員内閣」制度との大きな違いは、内閣の代わりにカウンシル・マネージャーが設置される点である。カウンシル・マネージャーは議会本会議により任命され、本会議により罷免することが可能である。この制度の下では通常公選首長が根本的な政策枠組みに関する提案を行い、それについて議会が決定を下す。他方でカウンシル・マネージャーが日々の政策の実施を担当することになる。カウンシル・マネージャーはその担当する職務を首長と共同で実施すること、またその担当する職務を他の事務職員や地域委員会等へ委譲することも可能であるが、その権限の委譲や実施方法については首長からの指示を考慮して決定しなければならないこととされている。またカウンシル・マネージャーは政策評価委員会以外の議会の各種会議に出席し発言することが可能であるが、議決権は与えられていない。また政策評価委員会には出席要求された場合にのみ出席し発言することが可能である。政策評価委員会の役割については前記の2つの制度と同様である。

田村秀「2 イギリスの地方自治法体系に関する予備調査」自治体国際化協会、比較地方自治研究会、2006年3月。
・日本では地方自治に関する書物が多数出版されているが、イギリスにおけるこの分野の文献は限られている。地方自治法体系に関する書物は更に限定されており、書店に陳列されているのはごくわずかである。そのような中で、S. H. Bailey 著による「Cross on Principles of Local Government Law (Third Edition)」(「プリンシプル」)、5分冊からなる「Encyclopedia of Local Government Law」 (「百科事典」)が参考になる。この百科事典は前述のプリンシプルと内容で重なる点が数多く見られた。これはプリンシプルの元々の著者が序文を書いており、プリンシプルの詳細版となっている感がある。百科事典は地方自治法体系に関する多くの法律だけでなく、日本では入手が困難である通達なども数多く掲載しており、新規立法や新たな判決が定期的にシートに加えられるスタイルを取っている。両者は出版社も同じであり、プリンシプルが百科事典のコンサイス版といっても過言ではないと思われる。
・百科事典の目次については以下の構成となっていた。第1章:序章、第2章:1972年地方自治法、第3章:他の法律、第4章:命令・規則、第5章:付録、第6章:通達・覚書、第7章:先例、第8章:イングランド地方行政委員会。このうち、第1章の序章が地方自治法体系に関する解説であり、プリンシプルはこの部分のダイジェスト版と考えられる。また、ダイジェスト版といっても箇所によっては百科事典とプリンシプルの記載が完全に一致しているところもある。百科事典の特徴の1つは地方自治関係の基本的な法律の関係条文などを掲載しているところである。今回の調査では条文に関しては一部しか収集できなかったが、百科事典を見れば重要な条文を全て見ることが出来る。更に重要なのは、命令、規則、通達等が掲載されていることである。これらについては、最近のものはインターネットなどで見つけることも可能ではあるが、そもそもどの通達が重要であるか否かまたは現時点でどの規則が有効であるかなどを我々が判断することは不可能である。これらの文書はイギリスの法体系の実態を理解するうえでは欠かすことが出来ないものである。
・イギリスの地方自治法体系を説明する中で最も重要な原理は権限踰越(ultra vires)の原則である。自然人は法律が禁止すること又は法律と相容れないこと以外は何でも出来るとされている。しかしながら、地方自治体は制定法によって直接あるいは暗示的に授権されたことしかすることが出来ない。一方、日本の地方自治体は大陸法の影響を受けており、自然人同様、法律に違反しない限り地域における事務を実施することが出来る。この点は日英の地方自治体の活動を比較する上で最も留意しなければならない事項である。このほか、EUが定める法律や協定も地方自治体の活動に様々な制約を与えている。
・地方自治体は制定法によって権限を与えられるが、特定の団体が一般的な規定以外の権限を得るためには幾つかの方法がある。その1つが地域(限定)立法(local legislation : local bill and private bill)である。これは特定の地方自治体にのみ適用される法律である。このほか、当該地方自治体の承認によって立法化される選択法(adoptive act)などがある。地方自治体が立法過程への影響を及ぼすものとして2つの手法がある。1つは個別の地方自治体が自らに新たな権限を付与する内容の私法律案(private bill)の制定を推進することであり、もう1つがLGA(Local Government Association)などの地方自治体による協議会による公式、非公式の働きかけである。
・プリンシプルによれば、中央政府による統制として、以下の類型を示している。借金、資本支出及び経常支出における統制。補助金システムを通した統制。規制を通した統制。監査を通した統制。義務を怠った団体に対する権限行使。職員に対する統制。条例の承認。指揮監督。告訴。個別行為の同意。情報提供の求め。監査。CPA(Comprehensive Performance Assessment)。
・イギリスでは、民間企業では一般的に終身雇用の人事制度が採用されていないこともあり、地方公務員の世界においても、1つの地方自治体に留まる者は少なく、幾つもの地方自治体を渡り歩く中でキャリアアップしていくのが常である。採用された後、若者たちは種々の専門的試験のために勉強し、地方団体を次々に移動することによって昇進し、やがて最も優秀なものは部局長にもなっているとの指摘もある。そもそも、イギリスには日本の地方公務員法のように、地方公務員の身分、処遇等について定めた法律もなく、地方自治体職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、地方自治体と職員との雇用契約によって決められる。その基本となるのが全国合意(National Agreement)であり、労使双方の代表者が全国レベルで勤務条件について交渉を行い、合意がなされるものである。この交渉機関は、職域毎に分かれており、単純労働者の機関から、チーフエグゼクティブのものまで20以上ある。職員の採用、昇進は、ポストに欠員が生じた都度に行われる。その際、必要とされる技術、資格、経験等が明確にされている。我が国の場合、最近になって外部から課長職などについて公募を行う地方自治体が現れ始めたが、それも一部のポストに限られているのに対して、イギリスでは、管理職を中心に多くのポストについて全国紙あるいは地方紙などに求人広告が出され、当該団体の職員のみならず、他の地方自治体職員や民間企業の職員など様々な立場のものが応募を行い、対等な立場で選考がなされることが大きく異なる。なお、全国紙の求人欄を見ると年収2万ポンド以下と、日本の自治体では係長以下の職員に相当するものも数多く出されており、基本的には全てのポストで公募が行われているといっても過言ではないと思われる。これらのことからも明らかなように、日本では、同一団体の中で幅広い職務を経験しながら昇進していくスタイルが一般的なのに対して、イギリスでは、専門分野をはっきりと持ち、その分野内の資格、経験を積み重ねてキャリアアップしていくスタイルが一般的である。なお、イギリスの地方公務員数は、地方自治体の再編による団体数の減少、強制競争入札の導入による民間委託化、一部業務のエージェンシー化等により、年々減少の傾向にあるが、フルタイム、パートタイムを合わせると約250万人とイングランドだけでも全雇用者数の約1割を占めている(1998年時点)。また、フルタイム職員の7割が女性であることも特徴の一つとして挙げられる。

田村秀「3 イギリスにおける地方自治関係法令のあらましについて」自治体国際化協会、比較地方自治研究会、2007年3月。
・イギリス憲法は不文憲法であり、その法源も一つではない。また、法源も明文化されているのは一部だけである。すなわち、イギリスという国には我が国の日本国憲法のような成文憲法典は存在せず、統治構造に関する法の多くは判例法と国会制定法の中に存在し、その他に統治構造に関する様々な慣習が存在する7のである。
・地方自治体にとって最も重要であり、しかもやっかいな原理が権限踰越(ultra vires)の原則である。地方自治体は法律で明示的に授権された事務権限しか執行してはならないのであって、その範囲を逸脱した行為は越権行為とされ、裁判で争われれば違法とされ無効となる。なお、この反対概念は権限内(intra vires)である。この原則が厳密に適用されれば、地方自治体の活動は大きな制約を受け、適切な対応は困難となる。その一方で、実際の地方自治体の活動については相当程度の裁量権が認められている分野も少なくない。例えば都市計画分野における開発許可については、広範な裁量権によって、街並保全のために開発行為は大きな制約を受け、結果としてイギリスの都市の多くでは良好な都市景観が保たれている。
・地方政府が活動する際には、常に制定法上の根拠が必要とされ、それを欠けば、たとえ地域住民の利益向上を目的とした行為であっても、裁判所は権限踰越(ultra vires)として無効の判断を下すとされている。その枠組み自体、わが国にはなじみのないものであるが、事態をさらにわかりにくくしているのは、このような統制があるにもかかわらず、地方政府は、事実上相当な裁量権を行使してきたという点である。中央政府は、地方政府との間で「合意と協議」という関係を保ちながら、地方の実質判断を尊重する傾向にあったし、裁判所もまた、制定法上の権限に付随する領域を合理的な範囲で認め、地方政府が独自の判断で活動する余地を容認してきたのである。その背後には、長きにわたる自治の伝統が大きく横たわっていると考えられるだけに、容易には説明しがたい実態である。

馬場健「イギリスにおける都市再開発を巡る中央地方関係に関する調査報告 ロンドン・オリンピック2012のためのドックランド再開発を例として」自治体国際化協会、比較地方自治研究会、2007年3月。
・1981年から1998年まで存在したLDDC(ロンドン・ドックランド開発公社(London Dockland Development Corporation))によるロンドン・ドックランドの再開発は、民間活力を積極的に導入するサッチャー政権による都市再開発の典型とされ、当該地域の復興はロンドン再開発の目玉として当時注目を集めた。だが、2012年のロンドン・オリンピックの開催地としてこの場所が選定された理由の一つとして、オリンピック招致が当該地域の再開発に資するとの評価(この招致により12,000人の新規雇用が将来にわたって確保されるなど)を得たことが挙げられた。この両者の乖離についての事前調査から、ドックランド地域の現在の状況がある程度明らかとなった。すなわち、LDDCにより再開発が進んだのは、ロンドン中心部から比較的近いカナリー・ウォルフまでの地域で、それより以東の地域(Low Lea Valley)は交通機関の未整備などによって民間企業が立地しないため再開発が進まず、この結果当初LDDCが意図した産業構造の転換が図られないまま現在に至っており、失業率と児童の貧困率のともに高い地域となっている。したがって、GLA(グレーター・ロンドン・オーソリティ(Greater London Authority))が策定した大ロンドン計画においてもこの地域の再開発は重点課題に挙げられ、さらにオリンピックの招致に伴う交通機関の整備とともに官民双方による再開発が進めば、この状況が緩和されると期待されている。その一方で、ロンドンの再開発をその実施主体という観点からみると、そこには複雑な構造が浮かび上がる。すなわち、ロンドンではGLAが創設されたことにより、ロンドン全体にわたる再開発の企画立案権限はGLAが、その執行権限は各LBC(ロンドン区(London Borough Council))がそれぞれ担当するという体制が整えられている。さらにGLAの管理下に再開発の実施(強制収用の権限を持つ)を担当するLDA(ロンドン開発庁(London Development Agency))が置かれている。これらに加えて、当該地域には、LDDCが保有していた財産(不動産)の管理と開発を行うイングリッシュ・パートナーシップ(English Partnership)、ロンドンの再開発を担当するために2005 年に中央政府によって設置されたLondon Development Corporation、オリンピック開催のために中央政府により先頃設置されたOlympic Delivery Authorityなどが存在し、そのおのおのがそれぞれの権限を持って当該地域の再開発に当たることになっている。

兼村高文「1 英国(イングランド)の財政調整制度について」自治体国際化協会、比較地方自治研究会、2007年3月。
・英国の予算は、1960年代より国・地方・国有企業を含めた公共部門全体を5年から3年程度の中期支出計画(Public Expenditure Survey, Public Expenditure Analysis)等をもとに運用してきたが、ブレア政権ではこれを中期の新たな戦略的な予算フレームである「Spending Review」(「歳出レビュー」、「歳出見直し」、「支出計画」などと訳されているが、ここでは「SR」または「歳出レビュー」と記す)としてリニューアルした。「SR」は、3ヵ年度にわたる政府および各省庁の戦略目標とその財源を表した政府内部の予算であり、従来の単年度の議決を要する議定費歳出予算(予算法)(Appropriation Act)とは別に作成される予算フレームである。「SR」は議会での議決を要しないが実質的な予算となっている。「SR」の内容は、1. 向こう3ヶ年度の「歳出計画」(Spending Plan)、2. 各省庁が歳出計画で達成する目標を公約した「公共サービス協約」(Public Expenditure Agreement : PSA)、3. PSAの具体的な内容である「サービス供給協約」(Service Delivery Agreement : SDA)から構成され、3ヵ年度予算であるが3年度目に見直しが行われるため実質的には2ヵ年度の予算である。また「歳出計画」は、3ヵ年度にわたる「省庁別歳出限度」(Departmental Expenditure Limits : DEL)と社会保障関係費や利払費など1年度の「単年度管理歳出」(Annually Managed Expenditure : AME)よりなり、これらは発生主義会計に基づいて経理され、それぞれ経常予算と資本予算に分けられている。なお英国政府の発生主義会計は、資源会計予算(Resource Accounting and Budget)として運用されており、省庁別の発生主義決算が1999年度から始められ、2001年度からは発生主義予算が作成されている。
・国から地方に対する財源移転は、国の予算フレームである「歳出レビュー」において「歳出計画」の「省庁別歳出限度額」(DEL)と「単年度管理歳出」(AME)でその額が示される。その決定にあたっては、わが国と同様に財務省が実質的に権限をもち決めているのであるが、地方側が直接に財務省と交渉する場はないものの地方歳出総額見込みや補助金総額などについて地方財政を所管する担当省と地方自治体代表、それに地方自治体協議会(Local Government Association : LGA)が協議する機会は設けられている。「SR2004」の「歳出計画」で地方財政への支出をみると、DELとAMEがそれぞれ3,252億ポンドと2,455億ポンドで合計した「総管理歳出」(TME)は5,707億ポンドとなっている。このうち、地方財政へは副首相府から支出され、DELで2006年度の経常予算では483億ポンド、資本予算では2億ポンドである。
・地方自治体の機能を歳出構成でみると、英国はわが国のように地方自治法のような基本法で包括的に権限が授権されているわけではなく、個別に議会制定法で授権されているため限定的である。主要な機能を経常収支会計(Revenue Expenditure)の目的別歳出の構成比でみると、教育が36.8%と最も多く、次いで社会福祉サービスの17.7%、警察の10.8%、文化・環境・都市計画の9.3%、道路維持管理の5.3%などであり、ほかに公営住宅補助が12.0%となっている。一方、歳入についてみると、2006年度から地方交付税に相当する歳入援助交付金の多くが教育目的の特定補助金となったため特定補助金が57.9%で最も多く、次いで地方税であるカウンシル税が22.3%、譲与税である事業用レイトが17.4%であり、歳入援助交付金はわずか3.4%である。財源構成からみると、一般財源と特定財源の割合はおよそ4対6であり、いわゆる歳入自治は低い。なお経常歳入には計上されない使用料・手数料(Fees and Charges)があり少なからず住民の負担となっている。
・英国政府の予算会計制度は、前述のように「歳出レビュー」という3ヵ年度予算が(完全)発生主義会計とともに1999年度より管理予算として実施されている。いわゆる予算マネジメントが予算プロセスとして運用されている。しかし、地方の予算会計制度については、(修正)発生主義会計が1982年度より導入され決算もバランスシート等の財務諸表が作成されているが、評価制度を組み込んだ予算マネジメントは地方予算制度としては実施されていない。ただ評価制度として、監査委員会(Audit Commission : AC)等が設定した評価項目である業績指標(Performance Indicators : PIs)についてACが評価し評価結果を公表している。この評価結果は特定補助金の決定に利用されているものもあり、また国との間で個別の公共サービスについて地方公共サービス協約(Local Public Service Agreement : LPSA)を取り決める制度がありこれも評価結果により特定補助金が増額される措置等がある。英国の予算会計制度が発生主義会計にもとづいているため、国も地方も経常と資本の複式の予算決算となっている。自治体の会計区分は、経常会計(Revenue Account)と資本会計(Capital Account)に分けられ、経常会計には一般経常会計(General Fund Revenue Account)、住宅経常会計(Housing Revenue Account)、公営事業経常会計(Trading Revenue Account)などがある。また自治体の決算では、バランスシートをはじめとした企業類似の財務諸表が作成されている。
・英国には政府がイングランド以外の地域(Scottish Parliament、Wales Assembly、Northern Ireland Assembly)に支出している補助金(Block Grant)がある。この補助金は、イングランドとその他の地域の格差を前提に支出されてきた一般補助金であり、その配分は1970年代までは政府(財務省)の裁量で行われていたが、1979年からは「公共支出計画」(Public Expenditure Survey)においてそれぞれの地域の人口シェアを基準とするバーネット算定式(Barnet Formula)によって計算されてきた。ここでバーネット算定式とは、法定されたものではなく政府によって運用されているものであり、行政需要は人口に関連しているという単純な仮定のもとに設定された。各地域に配分されるこの補助金は現在は「歳出レビュー」において「省庁別歳出」のスコットランド省、ウェールズ省、北アイルランド省にそれぞれ計上されている。バーネット算定式はもともと一時的な配分基準として導入されたものであったが、その後も引き続き用いられてきた。その結果、創案者のバーネット卿自身も述べているように、イングランド以外の地域の公共支出を膨らませる結果を招いてきた。2003年度の地域別人口1人当りの公共支出をみてわかるように、イングランド以外の3地域はいずれも大きくイングランドを上回っている。バーネット算定式については見直しすべきという議論もあるが、「SR2004」でも3地域への財源配分の基準として運用されている。
・英国の財政調整は、わが国と同様に国から地方への垂直的財政調整のみである。また財政調整は国の絶対的優位のもとで制度が運用されており、ブレア労働党政権においても権限と財源の集権化は以前とそれほど変わっていない。なお、国から地方へ移転される財源の用語は現在すべてGrantで表されている。したがって、使途の自由な一般補助金もそうでない特定補助金もすべてGrantである。なお、わが国の地方交付税(Local Allocation Tax)に相当する一般交付金は現在、歳入援助交付金(Revenue Support Grant : RSG)である。英国政府はイングランドの地方財政制度が複雑で難解であるとの批判を受けて、わかりやすい用語で解説した「地方財政対策のガイド」(A guide to the Local Government Finance Settlement)を1998年から作成している。
・補助金は、使途の自由な一般補助金(Formula Grant)と使途が決められている特定補助金(Specific Formula Grant)に分けられる。ここで「Formula」が用いられているのは、政府が決めた補助金総額を一定の算定式(formula)により計算して配分するという意味であり、一般補助金については「地方財政対策」で算定式が示される。一般補助金は、わが国の地方交付税に相当する歳入援助交付金(RSG)、譲与税である事業用レイト(Business Rate, Non Domestic Rate : NDR、ないしNational Non Domestic Rate : NNDR)、それに警察自治体に交付される一般警察補助金(Principal Formula Police Grant)からなる。また特定補助金は、「地方財政対策」とは別に決められる補助金であり、Ring-Fenced Grantsは国の優先施策や特定の事業に関連して決められる使途の制限された政策目的補助金といえ、Unfenced GrantsないしTargeted Grantsは算定式によらず決められ政策メニューや政策評価(Comprehensive Performance Assessment : CPA)の優良団体に支出される使途に制約がない補助金で奨励的補助金といえる。
・イングランドの財政調整制度は、地方財政制度全般を含めて歴史的にみて多分に中央政治によってその制度が決められてきた感がある。地方財政は政権政党の用具と揶揄することもできよう。そこでの地方自治は、住民自治こそ政府の地方自治白書等で強調しているが財政的な自治はほとんどない。2006年度から一般交付金(RSG)のシェアが削減された現状が語っている。また最優先政策の遂行のために補助金を梃子にして果敢に制度改革を実行する。ブレア政権では教育改革において地方教育当局(Local Education Authorities)が十分な役割を果たしていないことを理由に補助金をカットして財政統制を強めている。

日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター「海外経済展望」2009年3月。
・大幅な景気悪化が持続。08年10-12月期の実質GDPは前期比年率マイナス6.0%と、速報値から小幅下方修正。内外需の落ち込みや信用逼迫を受け、企業活動は一段と縮小。付加価値税率引き下げや物価下落などが実質消費の下支えに作用しているものの、雇用所得環境の悪化は加速。
・2009年の実質成長率の見通しを下方修正。先行きの英国景気は、政府の景気刺激策の効果を勘案しても、長期にわたり大幅なマイナス成長が続く見通し。1. 設備投資の大幅な縮小、2. 主力産業である金融業の活動沈滞、さらに、3. 雇用悪化や家計のバランスシート調整を背景とする個人消費低迷、などが対策効果を上回る成長下押し要因となるため。インフレ率は、年後半以降前年比マイナスに転じる見通し。エネルギー価格が年央以降物価下押しに寄与し始めるほか、ユーロ圏と比較して柔軟な労働市場や企業の価格設定行動を映じて、景気悪化に伴うコアインフレ率の鈍化が一段と加速するとみられるため。
・BOEは、3月にも政策金利をゼロ%台の水準に引き下げ、量的緩和政策に踏み込む公算。金融システムの機能不全が続き、実体経済の調整が長期化する恐れが強まるなか、国債買い入れなど新たな政策を打ち出す見通し。
・10年債利回りは、景気悪化が金利低下要因ながら、利下げ余地が限られるなか、3%台半ばを中心としたもみ合い傾向が続く見通し。中期的に景気刺激策や金融安定化への財政支出拡大が上振れリスクに。

三菱UFJ信託銀行「Monthly Economics」2009年3月号。
・図表のみ。

長田訓明「英米のリバース・モーゲージ市場の動向」2008年度冬号、2009年3月。
・リバース・モーゲージとは、字義どおりの意味では、融資の実行後、元利金の返済が進むにつれて残高の減少する通常の元利金等償還の住宅ローンをフォワード・モーゲージ(前進型ローン)と呼ぶのに対し、リバース(逆進型ローン)として、元利金の返済の代わりに元本の継続的追加投資や利息相当額の元本組み入れにより元本が逓増する住宅ローンの呼称とされる。そして、所得から定期的な返済が行なわれるフォワード・モーゲージに対して、所得からの返済の代わりに将来における担保不動産の売却による一括償還を想定することから、持ち家を保有し、退職により所得が減少して元利金の定期返済が負担となる高齢者向けの住宅担保融資制度とされる。英国において普及している高齢者向けのリバース・モーゲージは、「エクイティー・リリース」と呼ばれ、エクイティー(住宅の資産価値剰余)を取り出して活用する制度として、住宅価格上昇につれて1990年代末からその融資実績は増加を示し、2003年以降はほぼ横ばいに転じたものの融資残高はなお増加を続けている。
・所得からの返済に依存せず、借り手の退去後の住宅処分によって回収されることを想定し、担保物件の売却ないし譲渡による返済にあたって残債務が生じた場合の返済義務を生じない「ノンリコース・ローン」とされており、貸し手にとっての回収確実性は住宅価格の動向と担保住宅の資産価値の維持に依存することから、慎重な担保評価とフォローが行なわれる。このため、同じく住宅の資産価値に着目しながらも住宅価格の大幅な上昇を前提に投機的な融資が行なわれた「サブプライム・ローン」とは一線を画す制度として、住宅価格が下落に転じ、一般の住宅ローン市場が縮小した状況でも着実な融資が継続されている。
・英国のリバース・モーゲージはエクイティー・リリースと総称されるが、貸出期間を債務者の死亡または住宅退去時までの不定期とし元本の返済を一括弁済とする住宅担保ローンとしての「ライフタイム・モーゲージ」と呼ばれる住宅ローンの一括返済型のものと、融資の当初に住宅の所有権の全部または一部を「リバージョン・カンパニー」と呼ばれる資産管理会社に売却し、借り手は家賃なしで生存中の住居が保障される「ホーム・リバージョン・プラン」の2つに大別される。
・英国のエクイティー・リリースは、生命保険会社のあるノリッジ・ユニオン、プルーデンシャル、スコティッシュ・ウイドウズと住宅金融組合からの業態転換したノーザン・ロックなど15機関と限られた金融機関が提供している。
・エクイティー・リリースには、リバース・モーゲージとして借り手の死亡による期日到来まで元本償還されないことによる不定期償還のリスク、資金固定化のリスク、償還が担保不動産の将来の売却額に依存するという担保割れリスクという3つのリスクが管理の困難なものとして存在する。そして、死亡時償還のリスクでは、借り手の長寿化によりこれらのリスクが増幅される長生きリスクが問題となる。この長生きリスクは、死亡の早期化で損失リスクの増大する生命保険と逆相関となっており、長寿化で支払いの増加する終身年金と相関することから双方の商品を扱う生命保険会社にとってなじみの分野であり、英国では前述のようにいくつかの生命保険会社が参入して市場が拡大してきている。金利リスク、資本固定化リスクは、当初は変動金利ローンとして、借り手に転嫁されていたが、多くのローン破綻を生じ、固定金利商品が中心となってきている。これにより、貸し手の金利リスクが生じることとなり、一定の資産運用ニーズのある生命保険会社では引き受け能力があるが金利リスクがあり、また、保有能力にも限界はある。エクイティー・リリースの貸し出し上位の機関であるノリッジ・ユニオン、ノーザン・ロックは固定金利ローンの証券化を行なってきている。

篠原雅道「「事業継続」の国際規格「BS25999」 その最新動向と今後の展望」『CIO Magazine』2009年1月号、2008年12月。
・世界には事業継続に関するガイドラインや法規制が多数存在するが、その中でも英国規格協会(BSI)から発行されている事業継続マネジメント(BCM)の規格「BS25999」は、多くの民間企業の意見を反映させた包括的なガイドラインとして高い評価を得ている。災害復旧のみならず、事業の復旧にも力点を置いた規格であり、事業継続を組織の文化として定着させることを重視しているところが特徴である。
・006年11月28日、事業継続マネジメント(BCM)を実現するためのガイダンス規格「BS25999-1(英国規格25999-1)」が英国規格協会(British Standards Insti tution:以下、BSI)により発行された。同規格は、BCMのベスト・プラクティスと称され、事業継続に関する優れた規範の集大成として、関係者の注目を集めている。 同規格の発行の目的は、「組織内におけるBCMの理解、発展および実施の基礎となること」ならびに「企業間取引および顧客と企業間の取り引きを確かなものにすること」である。したがって、BS25999-1では、その目的を達成するために必要となるBCMの定義やフレームワークなどが説明されている。また同規格は、BCMを構築する際の指針とするのはもちろん、すでにBCMを導入している組織であれば、その実効性を推し量る「ものさし」として活用することもできる。 BS25999-1に続いて、2007年11月20日には、事業継続マネジメント・システム(BCMS)の第三者認証用規格として「BS25999-2(英国規格25999-2)」が発行された。
・BS25999は英国内のみならず、国際的に認知・評価された規格として、世界中のさまざまな企業・組織から高い関心が寄せられている。すでにBS25999-2が発行される前から、約120の企業が認証取得を計画し、数百の企業が認証取得の検討を進めていたとも言われており、BS25999-2も発行と同時に民間企業2社がBSIから認証を取得した。現在は、世界各地域の約300の企業が認証取得を決定し、認証審査を待つ段階にある。英国では消防や警察当局などの行政も認証取得を検討しており、米国では米国規格協会(ANSI)が中心になってBS25999-2をベースに国内規格化を進めている。発行されて間もない規格がこのように急速に普及するのはきわめてまれなケースであり、BS25999が企業や政府から高い支持を得ている証左と言えよう。また、日本でも民間企業3社がBS25999の認証取得を完了している。インターリスク総研が、2008年2月に日本の全上場企業を対象に実施した動向調査の結果を見ると、約12%の企業が、英国規格の認証取得を決定、もしくは前向きに検討していることが判明した。これに対応するかのように、日本情報処理開発協会(JIPDEC)がBCMS適合性評価制度(第三者認証制度)の実証を2008年8月から開始した。BCMSの第三者認証取得を目指している組織は、今後、国内の最新動向を注視する必要があるだろう。 一方、国際標準化機構(ISO)では、BCMの国際標準化が検討されており、BS25999が同標準の有力候補に挙げられている。この国際標準化は2010年以降に制定される見通しだ。

『問題な日本語』

 今日は北原保雄編著『問題な日本語』三部作を読みました。

 具体的には、北原保雄編『問題な日本語 どこがおかしい? 何がおかしい?』(2004年、大修館書店)、同編著『続弾!問題な日本語 何が気になる? どうして気になる?』(2005年、大修館書店)、同編著『問題な日本語 その3』(2007年、大修館書店)です。

 本書は、題名が示すように、巷に流布している間違った日本語、気になる日本語、違和感のある日本語などを取り上げ、どこが問題であるのか解説を加えています。いわゆる日本語の乱れを指摘する本であり、この点では類書がいくつもあるかと思います。

 本書が他の類書と決定的に異なっている点は、その接近方法です。一般の本などでは日本語の乱れは正すべきだとされていますが、本書では必ずしもそうした主張はしません。間違っている日本語であっても、それがなぜ使われているかかにまで立ち入って検討を加えています。

 例えば、本書ではいわゆる若者言葉がいくつか取り上げられます。「ありえない」や「っす」、「全然いい」などです。よく耳にする言葉だと思います。生真面目な大人が聞けば、これは何たることかと日本語の将来を憂い、果てには日本の未来まで心配が及んでしまうでしょう。

 本書も若者の言葉遣いをいさめる姿勢も見せますが、それ以上に若者がそうした言葉で何を表現しようとしているのかを見据えようとします。頭ごなしに若者を見下すのではなく、その言葉が用いられている状況や文脈をまずは正確に把握する作業に取り組んでいます。

 上に示した言葉を個別に解説していくと、まず「ありえない」は、実際に発生した事態を否定する論理矛盾を抱えているものの、あえてそれを強く提示することで強調の比喩表現となっているとされます。実はこうした言葉は昔からあり、「信じられない」、「嘘つけ」、「冗談じゃない」などが該当します。これらの現代版が「ありえない」です。

 次の「っす」ですが、これは敬語として用いられる言葉です。基本的には俗な言い方だと本書は否定しながらも、丁寧な表現である「です」や「ます」を統合した進化形態であると評価しています。「です」や「ます」はそれぞれ名詞や動詞に限定して付く言葉ですが、「っす」は名詞や動詞、形容詞などにも付けることができるからです。

 最後の「全然いい」は、「全然」を肯定的な意味で用いている点が問題だと一般に指摘されますが、夏目漱石や芥川竜之介も小説で用いている表現であり、誤用ではありません。これは、「大丈夫?」「全然平気!」というように、否定的な状況や懸念に対して、まったく問題がないことを示す表現になります。

 また、「全然」には他の意味合いもあります。2つの物事を比較して使う用法です。つまり、「こちらのほうが全然いい」と言う場合です。これは「断然」との類似から広まったと本書では説明されています。こちらはやや誤用と言えなくはないものの、若者言葉だからといって一方的に間違いだと決め付けていません。

 若者言葉以外では、「注文は以上でよろしかったでしょうか」も取り上げられています。マニュアル言葉として否定的に見られがちなこの言葉ですが、本書では許される言葉遣いであると説明されています。ただし、「よろしかった」はあまり使われない言い方であるので、やや違和感が残る表現だとしています。

 以上のように、本書は問題な日本語について非常に好意的な態度で分析しています。編著者は『明鏡国語辞典』の編者であり、日本語の守護者のような人ですが、その人が日本語の乱れをそれほど否定的に考えていないことが新鮮でした。とはいえ、専門家だからこそ現状に好意的なのかもしれないと思いました。

 と言うのは、言葉は単純民主主義が貫徹する世界だからです。正しい日本語というのは制度的に設定することは可能ですが、それを人々が日常的に話したり書いたりしなければ意味がありません。制度的な決まりよりも、実際に人々が使っている点に、言葉としての生命力があると思います。

 端から見たら間違っている言葉遣いであろうとも、多くの人々が用いているのであれば、それは1つの言葉として認めなければなりません。正しいか間違っているかどうかよりも、それを用いている人が一定数いることが言葉の存在意義です。でなければ、方言は常に否定されるべき存在になってしまいます。

 本書は言葉における純粋民主主義を理解した上でまとめられていると思いました。正しい日本語を振りかざして問題な日本語を一刀両断するのではなく、そうした日本語を用いている人がいる以上、それも1つの言葉だと真摯に受け止めています。言葉と長年向き合ってきた専門家に相応しい態度であると思いました。

ジャーナリズムの試金石

 今日はジャーナリズムの試金石です。

民主・小沢代表の秘書逮捕 規正法違反の疑い 東京地検
2009年3月3日 18時31分

 国内で多額の裏金を作っていたとされる準大手ゼネコン「西松建設」(東京)の政治献金に絡み、東京地検特捜部は3日、小沢一郎民主党代表の資金管理団体「陸山会」の会計責任者で、小沢代表の公設第1秘書を務める大久保隆規容疑者(47)、西松建設前社長の国沢幹雄容疑者(70)=外国為替及び外国貿易法違反の罪で起訴=ら計3人を、政治資金規正法違反(虚偽記載)の疑いで逮捕し、東京都港区の陸山会など関係先の捜索に乗り出した。

 特捜部の調べでは、大久保秘書は03〜06年、実際は西松建設の政治献金であることを知りながら、陸山会の政治資金収支報告書に、西松建設のOBが代表を務めていた政治団体「新政治問題研究会」(95年設立、06年解散)と、「未来産業研究会」(98年設立、06年解散)から計2100万円の寄付を受けたとする虚偽の記載をした疑いなどが持たれている。

 西松建設元幹部などによると、西松建設は社名を出さずに国会議員の政治団体に献金する仕組みを作り、OBが代表の政治団体を通じて国会議員側に資金提供をしていたという。

 政治資金規正法は、他人名義での献金や政党側以外への企業献金を禁止している。

http://www.asahi.com/national/update/0303/TKY200903030171.html

 民主党代表である小沢さんの公設秘書が逮捕されました。容疑はありきたりの献金問題ですが、いわゆる政治と金の結びつきを忌避する昨今の風潮からすれば、大問題であると言えるのではないでしょうか。

 マスコミはこれまで政治と金の問題を激しく糾弾してきました。実際の世論がどうあれ、政治と金は関係があってはならぬとマスコミが煽り、それが世論だと吹聴して、大臣を辞職させたり、議員を辞任させたりしてきました。

 それが頂点に達したのが、最近では、安倍内閣の時でした。事務所費問題で文部科学大臣の伊吹文明が責任追求され、同じ問題を追及されていた農林水産大臣の松岡利勝が議員宿舎で自殺するという結末を迎えました。

 後の安倍改造内閣でも閣僚の収支報告書がマスコミによって逐一確認されました。内閣としての政策路線や閣僚個人の政策方針などはまったく議論されずに、政治資金だけが連日延々と話題にされていました。

 そうした流れを受けて、小沢代表にも政治と金の問題が浮上しました。今回の献金問題はいわば公然の秘密であったような周知の事実です。なぜか今まで放置されていましたが、東京地検特捜部がついに逮捕と捜査に踏み切りました。

 誰がどう見ても政治と金が結びついている事件です。さて、政治と金の問題をこれまで厳しく糾弾してきたマスコミがどのような態度を見せるのでしょうか。今後の展開が楽しみです。これもある意味メシウマ状態と言えるでしょうか。

 なお、今回の事件はおそらく陰謀です。次のような小沢代表の発言が彼らに嫌われたのでしょう。

「日本の防衛は日本が責任を」 民主・小沢氏が発言
2009年2月25日 22時1分

 民主党の小沢代表は25日、神奈川県横須賀市に拠点を置く米海軍第7艦隊を引き合いに「第7艦隊で米国の極東におけるプレゼンスは十分だ」と24日に発言したことに関し、「(在日)米軍がひくことによって、日本の防衛は日本が責任を果たしていけばいい」と記者団に語った。日本の防衛で在日米軍への依存を減らし、外交努力と自衛隊の活用の組み合わせで補う考えを示したとみられる。

 小沢氏は「アジアには非常に不安定要因が大きいので、米国のプレゼンスは必要だ」と指摘。この地域に米軍がもたらす抑止力には理解を示したが、「それは第7艦隊の存在で十分」と改めて語った。

 また、「日本はグローバルな戦略を米国と話し合って役割分担し、責任をもっと果たしていかなくてはならない」と強調。「米国に(日本の防衛を)おんぶに抱っこになってるから唯々諾々と言うことをきくことになる」と語り、持論の「対等な日米同盟」の実現には在日米軍削減が欠かせないとの認識を示した。

http://www.asahi.com/politics/update/0225/TKY200902250292.html

 対米従属からの離脱は彼らが許しません。決して言ってはいけない禁忌です。えっ? 彼らって誰かって? さあ? そんなこと私に聞かれても。

大学生とカルト宗教

 今日は大学生とカルト宗教です。

カルト宗教から大学生を守れ 45大学が立ち上がる
2009.3.1 18:33

 カルト宗教から大学生を守ろうと、大学職員やカルト問題を専門に研究する教授らが今月中旬、キャンパス内の勧誘情報を交換するネットワークを立ち上げる。大学を横断するカルト対策は初めてだという。これまでに45大学の計50人が参加を表明。勧誘が盛んになる入学シーズンを前に、ネットワークによる情報共有で、カルト宗教による学生の被害を防ぐのが狙いだ。

 「カルトは姿を隠して近づいてくる。対策には情報戦が不可欠」。発起人の川島堅二・恵泉女学園大学教授はこう話す。

 カルト問題を研究する「日本脱カルト協会」によると、カルト宗教は本来の名称や目的を隠したサークルで、「大学生活について先輩から話を聞こう」「就職に向けて自己分析をしよう」などと学生を勧誘。正体を明かさぬまま、ノルマを課した物販や新規勧誘に駆り出したり、親密になった後に「辞めると不幸になる」と脅して入信させ、お布施を強要するなどしているという。

 過去には警察当局の調べで、オウム真理教が偽装サークルで学生を勧誘していた事例が判明。同協会関係者には、カルト入信者の家族から寄せられる脱会相談が現在も絶えないという。

 これまでは、各大学ごとにカルトをテーマにした講習会や討論会で注意を喚起してきたが、川島教授らは「彼らは多くの大学で同じ名前や手口で活動している。情報の共有でみえてくることがある」として、入学シーズンを前に取り組みを始めることにした。

 参加者は大学の教員や学生課職員、カウンセラーなど。メーリングリストに登録し、学生から寄せられる偽装サークルや、いかがわしい勧誘の情報を電子メールで一斉に送受信する。必要に応じ、カルト問題を研究している教授が勧誘の断り方や脱会方法をアドバイスするほか、新入生にオリエンテーションなどで注意を促すとしている。

 「カルトの線引き」や「信教の自由との兼ね合い」などを課題として指摘する声もあるが、川島教授は「うそをついて勧誘するのは、そもそも詐欺行為。活動にどっぷり漬かると本分である学業を全うできなくなることが多い。学生を守るのは大学側の社会的、教育的な責任」と話している。

http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090301/crm0903011835021-n1.htm
http://sankei.jp.msn.com/affairs/crime/090301/crm0903011835021-n2.htm

 大学生がカルト宗教にはまらないように大学側が対策を講じているようです。今日の記事を読んで驚いたことは、今でもカルト宗教が大学で勧誘活動をしていること、また、そのカルト宗教の勧誘にだまされてしまう大学生がいること、でした。

 いくつかの大学が連携をとってまで対策しようとしているわけですから、カルト宗教の勧誘活動も、それにだまされる大学生も、一定程度以上の規模で現存しているということです。20世紀末のオウム事件後は、いずれも消え失せていると考えていました。

 こういうと誤解されるかもしれませんが、私はカルト宗教の勧誘を受けてみたいと思っています。次々と大学生をだますような勧誘文句とはどれほどのものなのか、さぞかし心揺さぶられる台詞が聞けることだろう、と期待しているところがあります。

 しかしながら、いかんせん、私は一度もカルト宗教の勧誘を受けたことがありません。見た目が怖い人系列なので、さすがに連中も近寄ってこないのです。それどころか、普通の人からも遠巻きにされ、友達もできn……いや、話がずれました。

 私はカルト宗教を全否定はしません。いろいろな考え方があることは当然ですから、その1つとして勉強してみる姿勢は必要だと思います。が、他の考え方を許容できないのがカルト宗教でしょうから、その狭隘さゆえに忌避すべきであると思います。

 とはいえ、他の考え方を許さないのは、何もカルト宗教だけの専売特許ではないような気もします。たいていの学問はそうした性質を有していますし、一定の共同体は他の共同体を否定する要素を含んでいます。

 果たしてカルト宗教とは何か。記事にもあるように、線引きが難しい問題だと思いました。

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benyamin ♂

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