覚書 090314

伊藤さゆり「3月 BOE 金融政策委員会:0.5%に利下げ、量的緩和も開始」ニッセイ基礎研究所『経済・金融フラッシュ』No.08-159、2009年3月6日。
・イングランド銀行(BOE)は、4-5日に金融政策委員会(MPC)を開催、50bpの利下げを決め、政策金利を過去最低水準の0.5%に引き下げた。これと同時にBOEの資金で国債等の買い取りを行う量的緩和に踏み切ることを公表した。
・今回の声明文では、利下げ幅を50bpに留めた理由は「低すぎる政策金利は市場の機能や銀行の貸出余力に対して逆効果を及ぼす」、量的緩和に踏み切った理由は、2月の「インフレ報告」で示したように、「利下げのみでは2%のインフレ目標を下回る大きなリスクが残る」と説明された。
・声明文によれば、当初、量的緩和のための資産買い取り枠は750億ポンドに設定、この枠を向こう3カ月間で消化するとの方針が示されている。企業金融支援のためのCPや社債等の買い取りも行なうが、「主たる買い取り対象は中長期の国債」とされている。買い取りの規模は最大1500億ポンドまで拡大する可能性がある。声明文は、「MPCは今後、量的緩和の効果を注視し、買い取りのスピードや規模を調整する」と締めくくられている。BOEの利下げは0.5%で打ち止めとなる可能性が濃厚であり、今後は量的緩和のスピードや規模の調整が金融政策の主要な手段となろう。

「にぎわう関西に向けた地域観光戦略 実態調査に基づく分析」関西社会経済研究所マクロ経済分析プロジェクト、2009年3月。
・日英の観光事情を比較する上でまず注目したい数字が、両国の国際観光収支である。2007年の英国の国際環境収支は、34,700(百万米ドル)もの支出超過となっており、日本も17,200(百万米ドル)の支出超過と、両国とも大幅な支出超過である。世界各国・地域の国際観光支出上位(7位の日本まで)をみていくと、支出超過なのは1位ドイツと3位の英国だけである。支出・収入の規模に日英で違いがあるため一概に比較・断定はできないが、観光に関しては英国は日本と同じ悩みをもっていると見受けられる。
・英国観光事情をさかのぼってみていくと、1990年代後半にやはり国際観光収入(外国人観光客)を増加させようという政策がとられていた。それがクール・ブリタニアである。クール・ブリタニアとはもっと広義な政策のことで、「伝統・保守・旧態依然」という英国がもつ従来イメージからの脱却を計り、「創造性・革新性・オリジナリティのあるクールでモダンな国」へとイメージ転換させるために実施された国家ブランディング戦略のことである。この中で、「才能のある人間の集積」「国際貿易・投資への経済効果」「政治的地位の向上」といった観点とともに、「国際観光客の誘致」といった観点からもこの国家戦略は議論されていった。英国における2003年の入国者が2,470万人、出国者が6,140万人であったのに対し、2007年は入国者3,250万人で、出国者7,000万人と入国者数は確実に増加し、一定の成果があった。ただしこれを出入国者数の差で比較すると、2003年で3,670万人の出国者超過、2007年で3,750万人の出国者超過とほぼ横ばいという結果になっている。入国者数は着実に増加しているものの、なかなか出国者超過が改善されないというのもまた事実なのである。

「米国・欧州主要国の景気概況」三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部『調査レポート』08/64、2009年2月号、2009年3月9日。
・英国の景気は低迷している。2008年10-12月期の実質GDP成長率は前期比マイナス1.5%(年率換算でマイナス6.0%)と、1980年以来28年ぶりの大幅なマイナス成長となった。企業部門では、12月の製造業生産は前年比10.2%減と9ヶ月連続で減少した。家計部門では、12月の小売り売り上げが前年比3.6%と持ち直したが、1984年の統計開始以来最大の下落幅となった住宅価格下落の影響により、消費の基調は弱い。物価動向をみると、1月の消費者物価の上昇率は前年比3.0%と4ヶ月連続で低下し、9ヶ月ぶりの低い伸びにとどまった。BOE(イングランド銀行)は3月4、5日に開催された金融政策委員会(MPC)で、過去最低水準にある政策金利をさらに0.5%引き下げ0.5%とした。利下げは6ヶ月連続となる。また、同時に総額750億ポンドにのぼる国際など金融資産の買い取りを通じ、市場に資金供給を行なう量的緩和政策の実施を決定した。金利の引き下げ余地が限られる中、今後は量的緩和の拡充が政策の焦点となる見通しである。

「域外からの受け入れ条件を厳格化 雇用情勢悪化で内務省引き締め策」労働政策研究・研修機構『海外労働情報』2009年3月。
・統計局が発表した2008年第4四半期の就業者数は、イギリス人労働者の約15万人減に対して、外国人労働者は6万人あまり増加している。うちEU域内の労働者はむしろ4000人減少しており、増分は基本的に域外からの労働者だ。特に、東欧諸国(A8)からの労働者の減少が著しく、前期比で3万4000人減の46万9000人となった。イギリス国内の景気の悪化による雇用機会の減少や、ポンドの下落、母国での好況などの影響とみられる。ただし、農業関係者は、外国人労働者の減少に伴う人手不足のため、季節農業労働者スキーム(SAWS)の受け入れ枠の5000人分の拡大を政府に要請している。同スキームは、現在ルーマニアおよびブルガリアからの労働者を対象に実施されているもので、既に昨年には、農業労働者不足の緩和を目的に受け入れ枠を5000人分拡大し、2万1250人としていた。関係者によれば、農業労働はほぼ最賃レベルの低賃金と重労働のため、国内で募集をかけてもイギリス人労働者の応募はほとんどないという。しかし、小売企業からはコスト抑制を迫られるため、賃金の引き上げが難しいことから、外国人の受け入れでこれに充てたいというのが彼らの主張だ。

「加盟国間の建設労働者の派遣めぐり労使紛争」労働政策研究・研修機構『海外労働情報』2009年3月。
・大規模な建設事業をめぐり、他のEU加盟国からの進出企業が母国などから外国人労働者を呼び寄せて、イギリス人労働者の雇用機会を奪っているとの不満が建設業労働者の間で噴出し、労使紛争に発展した。1月末から約一週間にわたり、全国20カ所以上の精油所や発電所などで数千人が非公認ストや同情ストなどに参加したとみられる。発端となったイギリス中東部の精油所では、政府機関の介入を経て労使合意が成立したものの、不況により多くの産業で雇用が落ち込む中、国内の雇用機会をめぐる摩擦は今後も続きそうだ。
・イギリス人労働者に平等な機会を与えよ、との労組側の主張に理解を示す一部の労働党議員は、政府に対策を講じるよう要請した。しかしブラウン首相は、国内労働者の雇用への不安には理解を示したものの、労使間の対話を通じて問題の解決をはかるべきであるとして違法ストを批判、自らの発言については、保護主義的な意味合いではなく、あくまで技能水準を高めて就業に結び付けたいとする従来の説明を繰り返すにとどまった。また、労使関係を所管するビジネス・企業・規制改革相は、外国人労働者を呼び寄せるという企業の選択は法律に違反しておらず、加盟国の労働者の自由な移動を保障することは国外で働くイギリス人とっても重要であるとして、制度的な対応を求める意見を批判した。ストに対する批判や懸念の声は、イタリア・ポルトガル両国の外相や欧州委員会、さらにはイタリアの労組(CGIL)など国外からも聞かれた。
・ストの進展に伴って、改めてクローズアップされたのは、進出企業に母国からの労働者の派遣を認める海外派遣指令の存在だ。域内の企業には、欧州共同体設立条約(EC条約)によって他の加盟国でのサービス提供の自由が認められており、海外派遣指令は、これに伴う他国への一時的な労働者の送り出しに際して、受け入れ国が法律や労使協約などを通じて設定している労働時間や賃金、安全衛生などの基準の順守を義務付けている。ただし、労使協約が基準とみなされるためには、全国レベルの労使によって締結され、全国一律に適用される協約や、対象となる地域や職種・業種に属する全ての企業を対象とすることを宣言する仕組みを通じた協約であることを要する。このため、企業ごとの労使協約などに賃金水準等の設定を委ねている加盟国では、こうした協約に基づく基準を進出企業および派遣された労働者に課すことの当否が裁判で争われるなど、EUレベルでも数年にわたり議論がなされているところだ。これについて、欧州司法裁判所は2007年、企業のサービス提供の自由を阻害するとして、これを基準とは認めないとの判断を示したが、欧州議会やETUCはこの判断に異議を唱えており、個別的な労使協約を基準として認める指令の改正を求めている。欧州委員会は、当面は指令改正の必要はないとしたうえで、欧州裁の判決の各国への影響を検討するためのプロジェクトを立ち上げる意向を示している。イギリスには、全国レベルで協約の効力を確保する制度はなく、今回のケースでこれに近い位置づけにある「全国協定」も、建設業企業全般に適用されるものではない。このため、賃金水準については、適用される基準は全国最低賃金のみとなる。労働組合や労働党議員の間には、進出企業による外国人労働者の派遣で国内労働者の雇用機会が圧迫されることと同時に、現時点では「全国協定」に準拠した賃金や労働条件の設定に合意しても、先々には合法的に賃金などの切り下げが可能であることから、国内の労働条件の低下につながりかねないとの懸念があるという。

後藤あす美「英国経済見通し 量的緩和だけでは効果は限定的」大和総研、2009年3月10日。
・3月5日、BoEは市場予想通り政策金利を50bpt引き下げ、0.5%にすることを決定した。同時に、前月から示唆されていた量的緩和に関しても開始を表明した。声明文によれば、BoEは引き続き、英景気が下振れリスクに晒されており、一段の対策が必要とされていると判断している。2008年10-12月期の実質GDP成長率は前期比マイナス1.5%で、民間消費の大きな落ち込みが確認された。また、外部環境の悪化は顕著で、純輸出ベースではプラス寄与であったものの、輸出には急ブレーキがかかってしまった。
・今回の金融政策委員会でBoEは量的緩和の開始を表明し、英国の金融政策は新たな局面に突入した。量的緩和に関しては早い段階から、議論がなされてきたが、「漸く」の実施となった。今後、基本的にはBoEは政策金利を据え置き、ベースマネーを拡大してゆくことが主な仕事となるだろう。利下げが打ち止めになる理由として、利下げの有効性に疑問が出てきたことが挙げられる。これまで大幅利下げを敢行してきた理由は、2つ存在する。1つは家計・企業のローン支払い負担の軽減を図り、家計・企業のマインドの下支えをすること。もう1つは金融機関の貸し渋り改善への圧力であった。家計・企業の利払い負担等は多少軽減してきている様子が窺える。モーゲージ金利負担の推移は歴史的な下落率を記録している。そして、消費者マインドの購入意欲指数に関しては、2008年10月の世界同時利下げを機に、大きく改善した。ただ、住宅ローン金利の動向を確認すると、2007年12月から2008年4月までの利下げ、及び2008年10月の世界協調利下げ以降の利下げを反映しきれていないのが実情である。調達コストとの比較をしても、スプレッドの縮小は見られない。そして、BoE発表のマネーサプライ、英銀行による融資の統計からは、家計と非金融民間企業の資金繰りの難しさが浮き彫りとなっている。M4は前年比で拡大しているにも拘わらず、非金融民間企業の保有額に関しては、1993年以来久々に前年割れとなっている。金融機関からの融資状況を確認すると、セクター間で格差はあるが、総じて抑制傾向にある。投資関連業の打撃は説明する必要もないほどだろうが、個人サービス関連や建設業、昨年末から倒産が相次いだ小売業1などへの融資が極端に圧縮されたことが確認された。家計の場合、2008年10-12月期に前期比で429億ポンドも融資残高が圧縮された。家計・非金融民間企業は手元資金の欠如という状況からは脱していないようだ。
・今後、量的緩和が金融安定化策の軸となってゆくだろうが、手法には改善が必要と考える。量的緩和のスキームは以下の通り。今後3ヶ月で750億ポンド(最大1500億ポンド)相当の買い入れを行う。3月11日から国債の買い入れを開始。11日の買い入れは20億ポンド規模。買い入れ対象は、残存期間が5-25年の国債(11日の買取対象は2014-2018年満期の国債)。入札は週2回(月曜日と水曜日)。国債以外の資産(社債・CP・ABS)の買取も方針に含まれている。準備預金残高の目標は決めず。準備預金残高には政策金利で利息の支払いを行う。
・BoEはマネタリーベースの拡大が、金融機関からの融資拡大に繋がることを狙っている。英国債の発行残高は5370.2億ポンド(マーケット価格ベース、物価連動債を除く、2008年末時点)である。規模に問題は無いと思われる。ただ、国債によるスキームはこれまでも行っており、金融機関が処理にてこずっている資産は国債以外のリスクのある資産である。2月13日からは一足先に500億ポンドのCP買取で民間部門へ直接資金の供給を実施しているが、出来るだけ早い段階で社債とABSの買取も開始しなければ、量的緩和の効果が確認されるまで、相当な時間が掛かってしまうだろう。そして、より融資拡大を確実にするために、英政府は2月26日にはRBSと、3月7日にはロイズTSBと不良資産に対する政府保証スキーム(アセット・プロテクション・スキーム:APS)で合意に達した。これで、RBSは3250億ポンドの資産の政府保証と引き換えに(うち195億ポンド超の損失は政府が肩代わり)、今後2年で融資を500億ポンド増額する義務を負うことに。現在の融資残高3000億ポンドに上乗せする。ロイズTSBも156億ポンドの手数料を支払って、2600億ポンドの資産の保証と引き換えに(うち250億ポンド超となった損失を政府が肩代わり)、今後2年間で280億ポンドの融資拡大を行う見通しだ。国有化されているノーザン・ロックは既に今後2年間で140億ポンドの新規住宅ローン貸出を行う6方針を明らかにしている。

山崎加津子「ユーロ圏経済見通し 金融対策を急げ」大和総研、2009年3月10日。
・同じ欧州の中でイギリスは2月末に銀行の不良資産から発生する損失を国が肩代わりする損失保証スキームを始動させ、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランドとロイズ・バンキング・グループがその適用を受けることになった。同様の枠組みを他の欧州諸国が設定できるかが注目される。4月2日にロンドンで開催されるG20サミットを前に、新しい金融システム構築のための動きを欧州から起こそうとしているが、その一環として金融機関の不良資産処理の具体策を進められないと、金融不安がいつまでも解消されないことになってしまうであろう。

Morgan Stanley『Strategy Forum』2009年3月11日。
・現下の経済/金融危機への対応を強化するために、イングランド銀行は先週5日、量的緩和の導入を決めた。量的緩和は、間を置かずに早急に実行に移されるだろう。イングランド銀行は、ギルト債を中心に、また企業が資金調達のために発行するコマーシャル・ペーパーや社債も購入対象として、大量の資産を今後購入していく。今回採用されたこうした方法は、イングランド銀行のバランスシートの大幅な拡大に繋がり、商業銀行が中央銀行に預け入れることになっている準備預金残高、そして英国の狭義・広義のマネーサプライを押し上げることになるだろう。
・向こう3ヵ月間の資産買い取り枠は当初750億ポンドに設定され、この大半はギルト債の購入に充てられる。この買い取り枠750億ポンドは、英国のGDPの約5%に相当するが、この先買い取り規模は拡大され、対GDP比率はこの倍に達する可能性がある。バランスシートの拡大に際して原則上イングランド銀行は何ら制約を受けない。
・ イングランド銀行が打ち出した量的緩和プログラムの買い取り枠は、ギルト債全発行残高の約15%に相当する。また、重要なのは、イングランド銀行が買い取りに充てようとしている期間。イングランド銀行は、3ヵ月を目標としている。これは、買い取り規模に照らして見た場合、驚くべきペースと言えよう。イングランド銀行が買い取り対象としているのがギルト債市場のうち償還期限が5-25年の中長期セクターである点を鑑みれば、実のところ、計画されている買い取り規模は、中長期ギルト債発行残高の25~30%に相当する。

「英国が独自の月面探索機計画を発表」技術開発機構『NEDO 海外レポート』1040、2009年3月11日。
・2008年2月15日に英国国立宇宙センターは、英国の主導が予定されている月面探査機計画を発表した。この計画はMoonLITEと呼ばれ、米国航空宇宙局(NASA)の協力を得ながら進めていく。MoonLITEとはMoon Lightweight Interior and Telecom Experimentの略称であり、MoonRakerと呼ばれる別の計画と対になったもので、無人探査機を月面に送り込み、測定装置を月の内部に射入して地質構造や組成を調べ、あわよくば水や有機物の存在を確認しようとするきわめて意欲的なものである。この計画については、既に2007年1月には構想が示されていたが、今回の発表はNASAとの共同作業で内容を詰めてきた結果である。
・MoonLITE計画の主眼は月の地質学的な調査である。今回のミッションでは、衛星を月周回軌道に乗せ、月面にダーツ(penetrator)を打ち込み、ダーツに備えられた測定器を月面地下に射入し月の内部構造を調べる。そのうえで、月がどのようにして形成されたかを研究するためのデータを取得する。周回軌道上の衛星は、その後は月面上の測定器ネットワークと地球とを結ぶ通信基地として作動し、測定器の1年間の寿命の間にわたって、月の地震(Moonquake) の規模と頻度、ならびに月表面外皮と中心核の厚さに関する情報を地球に中継する。当面はその実現可能性(フィージビリティ)を確かめるための技術研究に焦点が当てられている。

「光合成内部の仕組みが強力な新しいレーザー技術により明らかに 太陽エネルギーの植物内部での移動を示す瞬間写真を初めて撮影」技術開発機構『NEDO 海外レポート』1040、2009年3月11日。
・これらの瞬間写真は、地球で最も効率的な太陽エネルギープロセスである光合成内部の仕組みについて明らかにするであろう。太陽エネルギーを食物として格納したり、二酸化炭素を取り入れる化学反応を促進するために、太陽エネルギーは光合成タンパク質の内部で分子を横切って効率的に移動する。化石燃料に替わる新しいエネルギーの解決策を探求する時に、研究者はこのプロセスを利用したいと望んでいる。これを利用するためには、このエネルギー輸送プロセスをより詳細に理解する必要がある。
・エネルギー輸送の理解は、地球で最も効率的な太陽エネルギープロセスである光合成の仕組みに対する新しい洞察力を与えることになる。これまでの、大きな障害の1つは、分子と電子の間のエネルギーの流れに関する基礎的なメカニズムを調べる直接的な方法が欠如していたことにあった。

佐野邦明「諸外国の年金制度における公的年金と企業年金の役割分担について」三菱UFJ信託銀行、企業年金政策研究会資料、2009年2月18日。
・公的年金(2階建て) 基礎年金:定額年金。全国民共通。付加年金:所得比例年金。被用者が対象。主に職域年金のない企業の給付を補う。
・職域年金(企業年金)、個人年金 職域年金(または個人年金)が付加年金以上に充実している場合は、付加年金に加入しなくて良い。適用除外職域年金(または適用除外個人年金)
・ステークホルダー年金 確定拠出型の個人年金。加入は任意であり、職域年金、適用除外個人年金との選択制。
・公的年金:公的年金の水準が低い。(付加年金を含めても、平均給与の48%)。基礎年金額は、毎年、男子労働者平均賃金の約20%の水準に、夫婦の場合はその約1.6倍の水準に設定される。満額年金週額(独身:87.30ポンド、夫婦:139.60ポンド)、月額(独身:約349ポンド、83,760円、夫婦:約558ポンド、133,920円)(2007年)。物価スライドあり(支給開始時は賃金スライドあり)。支給開始年齢:男子は65歳、女子は60歳(2010-2020年に65歳に段階的引き上げ)。財政は、賦課方式、原則国庫負担なし。
・企業年金:企業年金(職域年金)への加入率が低い(個人勘定の創設へ)。従業員は、職域年金か個人年金か選択可能(公務員を除く職域年金加入率が低下、1991年40%から2005年25%)。DBの設計は、通常、最終所得×1/60×勤続年数。終身年金で物価スライドがあるのが通常(長寿リスク)。受け取り方法は、DB・DC制度とも、原則年金。DC制度では、一時金で受け取り可能なのは残高の25%まで。DC制度では退職時に個人年金を購入。
・2004年年金法:年金保護基金(PPF)の設立。年金監督機関の強化(TPR)。積立基準の変更(制度固有積立基準)。
・2007年年金法:支給開始年齢の引き上げ(2046年までに、段階的に68歳へ)。確定拠出型による適用除外を廃止。基礎年金の給付額改善のため物価スライドから賃金スライドへ。個人勘定のための準備機関を創設。
・2008年年金法:2012年に、従業員は強制的に加入する確定拠出型制度である個人勘定を創設(事業主が従業員を自動加入させること)。掛金は、従業員4%、企業3%、国1%。

「危機シナリオ作成にあたって:イギリス、北欧諸国における危機シナリオを事例として」『危機管理政策の国際比較 危機対応の経済政策論に向けて』RIETI Policy Discussion Paper Series 08-P-002、2008年5月。
・危機シナリオの作成にあたり、大きく分けて二種類のシナリオがあるという点を理解する必要がある。一つは「予測的シナリオ(proactive scenario)」、もう一つは「反応的シナリオ(reactive scenario)」である。この二種類のシナリオは、想定された危機に対するアプローチが各々異なっており、両者の相違を最初に認識することがシナリオ作成の第一歩となる。「予測的シナリオ」とは、ある想定された危機に至るまでの発生のプロセスについてのシナリオである。このシナリオにおいては、「どのような経路をたどって」そして「どのような要素がどの程度影響することによって」予測対象となる危機へといたるのか、という点に焦点が置かれることになる。つまり、ある一定度の確率を伴って予測、予見が可能であるような危機について、その発生に至るまでのプロセスを予測するものがこの「予測的シナリオ」に該当する。一方「反応的シナリオ」とは、ある危機が発生してから現状復帰にいたるまでのプロセスについてのシナリオのことを指す。地震、風水害などの突発的な自然災害や疫病、労働災害、あるいはテロリズムといった、事前の発生予測が極めて難しいものがこのシナリオにおける対象となっている。
・イギリスにおけるコンティンジェンシー・プランは次の二つに分類される。一つはロンドンをはじめとする大都市におけるテロリズムを想定した、ビジネス継続性の確保を目的としたものである。もう一つは、鳥インフルエンザやSARSを代表とする感染症発生を想定した、ビジネス継続性の確保と市民生活の早期回復についてである。前者についてはイギリス内務省(UK Home Government)やその付属機関であるMI5(治安総局)を中心に、後者についてはNHS(国立保健局)を中心に数多くの資料が公開されている。特に前者については、2005年、2007年のテロの影響のためか、非常に詳細かつ実践的なプランが数多く見受けられる。首都におけるテロリズムの被害を過去に経験しており、テロリズム対策のための「予測的シナリオ」「反応的シナリオ」の両側面において詳細なシナリオ作成がなされていた。コンティンジェンシー・プランとは文字通り「偶発的に発生した危機への対応計画」を示すが、イギリスの場合特筆すべきは、そうした「偶発的に発生する危機」をも「予測的シナリオ」において予測、未然防止を目指している点である。例えば、テロリストの大都市侵入の未然防止、またテロリストが実際に侵入してしまったという前提のもと、いかに彼らを発見、監視するかという点についてのネットワーク網の構築など、文字通りあらゆるケースを想定しながらテロリズム発生の「予測的シナリオ」を作成している点である。テロリズム対策のシナリオ作成においておそらく問題となる点は、どの程度そうしたシナリオを一般向けに公開するか、という問題である。テロリズムに国境はなく、従ってテロリズム対策は地域、国を横断して取り組まれなければその有効性は限定されたものとなるであろう。その点で、テロリズム対策シナリオの積極的な公開を通じて、国レベル・民間レベルを問わず意識を高めることは今後欠かせない課題となるであろう。しかし同時に、テロリズム対策シナリオの公開は、国内政治の事情から機密にしておきたい情報をも公開してしまう可能性が常に存在する、という点である。特にインターネット上で閲覧可能な対策シナリオは文字通り誰でも閲覧することが可能であり、テロリストらがこうした対策シナリオを先回りする形で行動をとり、結果的に対策シナリオが機能しなくなってしまう可能性も否定できない。
・イギリス国内における感染症シナリオは、鳥インフルエンザ発生のそれが大多数であり、国レベルだけでなく地方政府レベルにおいても共通の課題として取り組まれていた。鳥インフルエンザは東南アジア諸国という、ヨーロッパ諸国からは比較的遠隔な地域を発生源とした疫病ではあるが、食肉としての鶏肉の輸入、または家禽としての鶏の輸入を通じて感染が拡大する恐れがあり、決して対岸の火事ではないというイギリス政府の認識を垣間見ることができる。鳥インフルエンザの猛威を実際に経験しているイギリスでは、将来において発生が予測される疫病対策として、イギリス中央政府だけでなく各地方政府(ウェールズ、スコットランド、北アイルランド各地方政府)においても綿密な対策シナリオが組まれている。これは疫病対策が国レベルの対策だけでなく、国と地方との連携とコミュニケーションの重要性が強く認識されていることの表れであるといえるだろう。またイギリスに特徴的な感染症シナリオは、口蹄疫(foot and mouth disease)のそれであった。イギリス国内で過去三回発生し、猛威をふるったこの疫病に対する危機意識は相当強く、農家に直接対策を呼びかけるようなプランも見受けられた。例えば農家用に配布されたパンフレットにおいては、口蹄疫発生に際してとるべき対策が箇条書きにしてまとめられていた。このような配布物も、その内容は簡単ながら「危機シナリオ」として考えることが可能である。この疫病は、大陸への食用牛肉輸出にも大きな影響を与えるため、口蹄疫関連の感染症シナリオはビジネス・コンティンジェンシー・プランとしても読み替えることが可能であろう。
・イギリスにおける気候変動シナリオは、特にスコットランド政府が精力的に取り組んでいる印象が見受けられ、最も多くみられた災害シナリオは「海水面上昇」と「洪水」についてのそれであった。これは気候変動にともなう気温の上昇がその直接の原因となって引き起こされると分析されており、特に後者については一見意外だが、季節循環サイクルの変化、および高地に残存する積雪が融解することによって引き起こされると説明されている。海水面上昇についても、黒海、北極海沿岸地域(おもにスコットランド地方が対象)において2010年、2050年、2100年というタイムスパンを取った時にどの程度の沿岸地域の海水浸食が想定されるか、という分析がなされていた。このような災害は、都市部・非都市部また沿岸部・内陸部において被害の程度は異なるであろうし、被害対策も当然その地域が固有に有する地理的制約条件を考慮にいれなければ、効果的な自然災害シナリオを作ることは難しいであろう。
・イギリスにおける国民保護計画はテロリズム関連、そして疫病関連が多数を占める。前者については、テロ関連の法案が21世紀に入ってから新しく、ないし従来の治安関連の法律を改正する形で次々と施行されてきている。テロ関連法案が多くみられるもう一つの理由は北アイルランド紛争によるところも大きく、実際北アイルランド政府は独自の保護計画を作っているようである。9/11テロなどの武力テロだけではなく、CBRN兵器(生物・化学・放射能兵器)による生物・化学テロリズムの懸念も同時に高いことから、様々な可能性を含んだ保護計画を作成しているのが現状である。また疫病についての保護計画も、テロのそれに劣らず数多く立案、作成されている。これはイギリス国内におけるBSE(狂牛病(、口蹄疫(foot and mouth disease)など家禽類への疫病の大量感染が近年立て続けに発生していることとも無関係ではなく、実際これらの疫病拡大の阻止のための、農家向けの防止マニュアル、パンフレットも多く見られた。コンティンジェンシー・プラン同様、疫病など発生後の被害拡散が極めて速い危機が想定されている場合には、こうした一般市民向けの平易なマニュアルも法律と同様、場合によってはそれ以上の効用を発揮しうるのであり、「国民保護計画」が最終的には国民自身の自覚をいかに促すかという点に懸っているともいえる。したがって、「国民保護計画」の想定に当たっては、具体的な「法」「対策計画」といった法律・行政面での整備もさることながら、一般市民向けの危機管理マニュアルの配布といった活動も、「国民保護計画」の欠くべからざる要素の一つであるという点についての自覚が必要であろう。

「ヨーロッパにおけるワークライフバランス」労働政策研究・研修機構『JILPT 資料シリーズ』No.45、2008年7月。
・イギリスでは、出産休暇、育児休暇をとることを労働者の権利として認めることを義務付けるというEUの政策に対応して、子供が5歳になるまでの間に、両親の双方が、それぞれ、3カ月ずつの育児休暇をとることができるようになっている。また、2003年以降、子供が幼い雇用者は雇用主に対し、パートタイムあるいはフレックス制度で働くことを要求できるようになった。さらに、2005年、Department for Trade and Industry(DTI:現在は、Department for Business Enterprise and Regulatory Reformビジネス・企業・規制改革省)は、従来の出産休暇を拡張する法案を提出した(Department for Trade and Industry 2006)。この法律は2007年4月に施行されたが、それによると、従来から行われている26週間の通常出産休暇(Ordinary Maternity Leave)を義務付ける。加えて、雇用者は26週間の追加出産休暇(Additional Maternity Leave)を要求できる。通常出産休暇を取っている女性は解雇されず、休暇期間は法律で定められた雇用者の権利のための期間に含められるほか、年功、年金、その他の給与にかかわる制度のための就業期間とみなされる。出産休暇をとる女性は、休暇期間中も雇用者であり、雇用主と円滑なコミュニケーションをとることが推奨されている。また、実際の訓練や会議への出席などを要する仕事が出産休暇中に生じた場合、最高10日まで、こうした仕事をするために出社が許される(Keeping in touch days)。これらの仕事に対する報酬は、雇用主と雇用者の間での交渉に委ねられる。雇用者が育児休暇をとるためには、出産が予定されている週より15 週前に雇用主に、出産予定日といつから出産休暇をとるかを知らせなければならない。出産休暇をいつから始めるかについては、28日前までなら、変更が可能。また、出産休暇は出産が予定されている週より11週前以前からは始めることはできない。ただし、4週間前に妊娠にかかわる理由で雇用者が休暇をとった場合は、自動的にその日より出産休暇が始まる。通常の出産休暇を終え、仕事に戻る時は、8 週間前までなら変更が可能。復職の意思がない場合は、個別の雇用契約で定められている期間に従ってこれを雇用主に知らせなければならない。通常の出産休暇後を終了して復職する際は、出産休暇の前に行っていたものと同じ仕事に就くことができる。出産休暇中の給与は、39週間にわたって保証される。2006年に成立したWork and Families Act 2006によって、出産休暇中の保証期間が26週から39週に変更された。このうち、最初の6週間は雇用者の週給の平均の90%、残りの33週は定額の112.75ポンドあるいは、女性の週給の平均の90%のいずれか少ない方が支払われる。これらの法定の出産休暇中の給与については、雇用主側に対する特待制度がある。前の財政年度の間に支払った法定の出産休暇中に払った給与のうち、最大92%が、党外の機関に支払う源泉徴収税、社会保険料、学生ローンなどから差し引かれる。前年に支払った税金の総額が45,000ポンド以下の小企業に対しては、100%が差し引かれ、さらに税金の4.5%が免除される。
・新しく子どもが生まれる父親には、父親休暇(paternity leave)をとる権利が与えられる。ただし、出産予定日の15週前までに、26週間連続して同じ雇用主のもとで働いていなければならない。父親休暇の期間は、子供が生まれてから8週間以内に1-2週の連続した休暇をとることができる。女性の出産休暇と同様、112.75ポンドあるいは週給の90%のいずれか少ない額の給与を受給できる。
・イギリス政府のビジネス・企業・規制改革省(Department for Business Enterprise and Regulatory Reform:以下BERRと略称)では、2000年以来、Work-Life Balance Surveyとよばれる調査を企業と雇用者の双方を対象に行ってきた。調査時点から2年前の間に女性従業員が出産休暇をとった例がある企業は全体で32%。少なくとも1人の女性従業員が妊娠したという企業では94%が出産休暇をとった例があると回答した。
・イギリスのWork and Family Actでは、育児休暇をとった女性は、休暇終了後、休暇に入る前についていたのと同じ、もしくは類似した仕事に就くことができるとされている。2006年に行われたWork-Life Balance Surveyで、過去2年間に出産休暇、育児休暇をとった女性が休暇終了後に以前と同じ仕事に就いたか否かを尋ねている。育児休暇をとった女性が復職しなかった場合を除くと、休暇をとった女性がいると答えた企業の83%で、休暇取得者は同じ仕事に復職していた。しかし、同じ仕事に復職しなかった場合でも、休暇をとった女性が復職後の仕事に不満を持っているわけではないという回答が大勢を占めている。出産休暇や育児休暇をとった女性が復職する時のために仕事を用意しておくことに困難を感じている企業の比率は約20%であった。特に、民間企業、組合のない企業、小企業などで相対的に困難を感じている企業が多かった。民間企業では、その24%が困難を感じているのに対し、公的部門の事業所で困難を感じていると答えた企業は8%であった。組合のない企業では26%が困難を感じていると答えたが、組合のある企業で困難を感じていると答えた企業の比率は12%だった。また、従業員が1000人未満の企業の28%が困難を感じているとしたのに対し、従業員が1000人以上いる企業で困難を感じていると答えた企業の比率は9%だった。困難を感じていると答えた企業の62%は民間の企業で、従業員数が5から24人の小企業であり、それらの企業の79%が労働組合を持っていない。出産休暇や育児休暇をとった女性のために仕事を用意しておくことに困難を感じている企業の約半分は、この問題は深刻なものだと答えている。困難の内容については、休暇取得中の間に、一時的に仕事をカバーする要員の確保を上げるものが最も多かった(67%)。次に、多い答えは、こうした一時的要員を確保するためにコストがかかるとするものだった。この結果は、前に示したEUで行われた調査の結果とも一致する。そのほかに挙げられた課題は、事業のパフォーマンスにネガティヴな影響が出た、熟練したスタッフが出産休暇をとったことによって組織内にスキルのギャップが生まれてしまったというものだった。このように、イギリスの企業においても出産休暇、育児休暇の制度の導入は積極的に進められているが、休暇取得者がやっていた仕事をどのようにカバーするかという人事上の課題は残っている。出産休暇、育児休暇に関するもう一つの問題は、休暇を取得した後に復職しない女性が相当数いるということである。特に、高い技能を持つもの、長い勤務経験を持つものが復職しない場合には問題は深刻になる。
・BERRが行った第3回Work-Life Balance Surveyの結果をみると、調査対象となった企業の29%が、過去2年の間に男性の従業員が、妻あるいはパートナーの女性の出産前後に休暇をとった例があると報告している。また、約11%の企業で、こうした例が2 件以上あった。該当する男性従業員は、法定の父親出産休暇をとる権利があるのだが、すべての場合で父親出産休暇を取得したわけではない。父親出産休暇をとることを選択せずに、年次有給休暇をとった例が少なからずあった。この場合、給与が全額支払われるからである。子供が生まれる前後に休暇をとった男性従業員のうち88%が法定の父親出産休暇を取得している。

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benyamin ♂

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