Japan Ecological Footprint Report 2009

 今日はJapan Ecological Footprint Report 2009(PDF 14.1MB)です。

 日本は必要な資源を輸入に頼っており、国土に見合った生活をしていない、とするWFFによる報告書です。具体的には、日本の一人当たり資源の消費量は世界平均の1.5倍である一方で、その3分の1程度しか国土から供給できていないため、世界全体が日本並の生活をすると、地球が2.3個も必要になると算出しています。その上で、多くの資源を輸入に依存している日本は、国土が供給できる資源とのバランスを考えるべきだと警告しています。

 報告書の根幹となっている指標の1つは、題名にもあるEcological Footprintです。これは一国における資源の消費量を数値化したものであり、国内での生産に投入された資源に、輸入に投入された資源を加えて、そこから、輸出に投入された資源を引いて算出されています。輸出分が引かれる理由は、輸出しなければ国内で消費されるためであり、逆に、輸入分のほうは、国外で消費されるはずだった資源を国内で消費しているため加算されます。

 その一方で、国土が供給できる資源量はBiocapacityで示されています。こちらは内訳や計算式が明記されていません。資源の埋蔵量などに基づいて算出されていると推測されますが、よくわかりません。なお、Ecological FootprintもBiocapacityも、Global Hectaresという指標に変換されて表示されているのみであり、元々のデータはよくわかりません。そもそも、Ecological FootprintはGDP統計とほぼ同じような計算式ですが、GDPがEcological Footprintへ、さらにGlobal Hectaresへと変換されています。

 加工の過程が不明瞭な指標を掲げている点がこの報告書の特徴です。それを端的に示してるのが世界全体の総量です。つまり、Ecological Footprintは世界全体で17.1(billion Global Hectares)ですが、Biocapacityのほうは11.9(billion Global Hectares)となっています。地球全体の国土が供給できる以上の資源を地球全体で消費していることになっています。おかしな数値です。Ecological Footprintが過多に、あるいは、Biocapacityが過少に計算されていると思われます。

 さらに指摘すべき特徴は、自由貿易による経済発展を否定している点です。報告書の立場は、国土に資源がない国が貿易を通じて生活水準を向上させようとすれば、他国から資源を輸入することになるため、環境に大きな負担をかける、というものです。これはもちろん、島国である日本への攻撃となりますが、それ以外にも、英国やシンガポール、台湾なども貿易を拡大して経済成長することは否定されます。基本的に国土面積が小さい国には生活水準を向上させることが許されていません。

 その一方で、貿易をしないほうが環境への負担が軽いことは、報告書では何も示されていません。貿易が反環境的であるとの見解は、Ecological FootprintとBiocapacityを比較して、前者が後者よりも多くなっていることが唯一の論拠です。しかしながら、この2つの指標は、先に確認したように、いまいち信頼性に欠けます。始めからEcological Footprintのほうが多くなるように計算されているように思われます。

 報告書ではいくつか数値が示されているため、ぱっと見ると説得的な内容に見えてしまいますが、中身を読んでみるとそうでもありません。貿易は悪だとか、人間の活動は環境に悪影響を与えているとか、そうしたことを言いたいのは理解できますが、もう少し科学的な報告書を提示するべきでしょう。環境対策が進まない要因は、こうした似非科学的環境主義がはびこっていることが主因であろうと思いました。

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benyamin ♂

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