2010年9月アーカイブ

中国が負けたという意見

 今日は中国が負けたという意見です。

中国人が見る中国=「船長の釈放:日本の勝ち 中国の負け」
李宗徳

 【大紀元日本9月28日】日本好きの姪が日本を観光したいということで、2か月前に、ビザ申請用の書類を作成してほしいと母親(私の姉)に頼まれた。様々な経緯を経て2週間前にやっと書類が揃った。先週、書類を受け取った姉が、「もしかして今回のことで娘のビザ申請はうまくいかないかしら」と心配そうにSkypeでチャットしてきた。

 「そんなことはないよ」と私は姉にはっきりと言い、観光制限の話は中国政府側が出したもので、日本は中国国民に難色を示さないはずだと返答した。「それは分かっている。だって、ZG(中共を指す。ネット検閲を避けるため)は、領土への関心は全くないでしょ。東北部の領土だってロシア人に譲ったじゃない」と、家庭の主婦である姉もが指摘した。

 今回起きた日中間の漁船衝突問題を巡って、中国のネット伝言板では、中国国民の反日感情が高まっていると伝えられているが、望ましくない発言を削除する体制の伝言板に果たして本当の状況が反映されているのか。毎日伝言板を覗いてネットユーザーの発言をつぶさに追っているが、政権への不満が反日感情と同じぐらい高まっている。

 昨日、多くの掲示板に転載されたネットユーザーの発言を見かけた。国家の首相までが乗り出して来た中国に強要され、日本が中国の船長を釈放したことについて、中国当局のメンツが保たれたというのが一般的な理解だが、この発言者は「完全に日本の勝ち、中国の負けだ」と主張している。

 「日本人が勝った」理由として、この発言者は5つ挙げている。▼「アメリカに態度表明をさせた点で成功した。米政府は釣魚島(尖閣諸島の中国名)は日米安保体制の管理範囲内にあると発言し、日本の同島に対する現在の管理権を認めた」▼「中国のボトムラインを見極める意味で成功した。中国政府の釣魚島問題に対する態度とボトムラインが前面に押し出されたおかげで、その後の解決案を日本人はうまく把握することができた。今回の事件後、中国の外交辞令が強硬になっただけで、大使を日本から召還するという発言もなく、激しい行動もとっていない。中国内部の足並みが揃っていないことを浮き彫りにした」▼「釈放された船長を、日本側が飛行機を飛ばして中国に戻したのではなく、中国が飛行機を飛ばして迎えに行った。しかも船長を釈放したのは日本の地方の検察庁であり、日本政府ではない。つまり、最終的に、日本の国内司法問題として片付けられ、外交問題として扱われていない。外交上では日本の勝ちであった」▼「船長釈放の当日、日本国内では大規模なパレードが行われ、日本政府の黙認で反中感情を扇動した(事実ではないが、中国国内ではこのようなうわさがあった?筆者)」▼「中国当局が民衆の抗議デモを禁止したことによって、国外には弱気だが国内では強気な無能な政府であることを、日本側に示した」

 一方、今回の対応で中国は完全に負けたと書き込むこのネットユーザーは、その理由として4つ挙げている。▼「(漁船衝突後)即座に立場を正しく表明しなかった。主権の侵害の場合、国際的慣習では、大使を召喚し、外交関係を断ち切る。どうしてそうしなかったのか。勇気がないからだ」▼「即座に経済交流を切断し制裁するということをしなかった」「日本人に中国の弱気を気付かせた。一旦経済に影響が及ぶと、中国政府も配慮することだろう。民衆が失業したら矛先は政府に行く。中国政府が恐れているのは、自国民と社会が不安定になることだと日本人に表明した」▼即座に国内の世論を動員しなかった。それは政府が国民を信頼せず、国民も政府を支持せず、民心が離れていることを表している」「これは、中国という国には、奴隷は存在するが、国民は存在しないということを、日本人に示したことになる」▼「日本に謝罪させずに、中国は自国の飛行機で船長を迎えに行ったことは、全くの失策だ。……気骨がある人なら、名誉が回復されなければ釈放されても簡単には帰らないだろう」

 最後に同発言者は「この発言はきっと削除されるだろう」と付け加えた。案の定、私がこの発言を見かけた際、すでに多くの転載先からリンクが削除されていた。

 話は戻るが、姪に、今回の事件で日本に対する印象が変わったかどうか聞いたところ、「あれは政府のアリバイ工作で、私たち市民とは関係ないでしょう。日本製品不買と言いながら、本当に実行する人がいるの?いい国産品があれば教えてください。粉ミルク?それとも地溝油?」と20代初めの姪はさらりと答えた。

http://www.epochtimes.jp/jp/2010/09/html/d28016.html

 先日の尖閣諸島における漁船衝突事件において、船長を中国に引き渡した日本の対応は間違っていた、とする論調が日本では支配的です。いつもの政府批判といえばそれまでですが、同じことを同じように言っている論者があまりにも多くて辟易しています。

 そうしたなか、少し別角度から分析した意見が今日紹介する記事です。日本の外交上の失敗と決定づけられそうな今回の事件ですが、今日の記事では意外にも中国側の外交戦略のまずさを指摘しています。事の真偽はどうあれ、興味深いと思いました。

 要点は中国政府が国内世論を過度に意識している姿を強調している点でしょう。世論を恐れて日本に対して強気に出たものの、慎重な戦略がないままの対応だったので、尖閣諸島に対する中国政府の要求度合いが暴露されてしまった、との視点は参考になりました。

 その一方で、逮捕された船長を中国政府に取りに来させ、しかもその対応を沖縄検察庁にさせた日本政府は、今回の事件への対応としては外交戦略として妥当ではないか、との指摘も新鮮です。面子を気にする中国らしい細かな分析と言えるでしょうか。

 海外の新聞などでも、日本側の対応はそれほど批判されていません。むしろ、問題はあったものの、落としどころとしては良いのではないか、との意見が多い印象をもっています。私もそのあたりが今回の事件に対する、さしあたり評価としては適当かと思います。

 日本の対応を強く批判しているのは日本国内の論者だけではないでしょうか。いや、批判が悪いとは言いませんが、ただ民主党を嫌っているだけのような批判が多くて、もうお腹いっぱいです。冷静な現状分析を望みます。

V.A.C.A.T.I.O.N

 今日はV.A.C.A.T.I.O.Nです。


 We're on vacation, till the start of the Fall !

尖閣諸島問題に思わぬ参戦者が!

 今日は尖閣諸島問題に思わぬ参戦者が!です。

日本の領有は正当
尖閣諸島 問題解決の方向を考える

 沖縄の尖閣(せんかく)諸島周辺で今月、中国の漁船が海上保安庁の巡視船に衝突し、漁船の船長が逮捕されたことに対し、尖閣諸島の領有権を主張する中国側の抗議が続いています。日本共産党は、同諸島が日本に帰属するとの見解を1972年に発表しています。それをふまえ、問題解決の方向を考えます。

歴史・国際法から明確

 尖閣諸島(中国語名は釣魚島)は、古くからその存在について日本にも中国にも知られていましたが、いずれの国の住民も定住したことのない無人島でした。1895年1月に日本領に編入され、今日にいたっています。

 1884年に日本人の古賀辰四郎が、尖閣諸島をはじめて探検し、翌85年に日本政府に対して同島の貸与願いを申請していました。日本政府は、沖縄県などを通じてたびたび現地調査をおこなったうえで1895年1月14日の閣議決定によって日本領に編入しました。歴史的には、この措置が尖閣諸島にたいする最初の領有行為であり、それ以来、日本の実効支配がつづいています。

 所有者のいない無主(むしゅ)の地にたいしては国際法上、最初に占有した「先占(せんせん)」にもとづく取得および実効支配が認められています。日本の領有にたいし、1970年代にいたる75年間、外国から異議がとなえられたことは一度もありません。日本の領有は、「主権の継続的で平和的な発現」という「先占」の要件に十分に合致しており、国際法上も正当なものです。

中国側の領有権主張は70年代から

 中国、台湾が尖閣諸島の領有権を主張しはじめたのは1970年代に入ってからです。1969年に公刊された国連アジア極東経済委員会(ECAFE)の報告書で、尖閣諸島周辺の海底に石油・天然ガスが大量に存在する可能性が指摘されたことが背景にあります。台湾が70年に入って尖閣諸島の領有権を主張しはじめ、中国政府も71年12月30日の外交部声明で領有権を主張するにいたりました。

 たしかに、尖閣諸島は明代・清代などの中国の文献に記述が見られますが、それは、当時、中国から琉球に向かう航路の目標としてこれらの島が知られていたことを示しているだけであり、中国側の文献にも中国の住民が歴史的に尖閣諸島に居住したことを示す記録はありません。中国が領海法に尖閣諸島を中国領と書き込んだのは92年のことでした。それまでは、中国で発行された地図でも、尖閣諸島は中国側が「領海」とする区域の外に記載されていました。

日本の主張の大義を国際的に明らかに再発防止の交渉を

 日本共産党は72年、「尖閣列島問題にかんする日本共産党の見解」(同年3月31日付「赤旗」、『日本共産党国際問題重要論文集9』掲載)を出し、日本の領有権は明確との立場を表明しました。これは、歴史的経過や国際法の研究にもとづき、これらの島とその周辺が日本の領土・領海であると結論したものです。

 その後明らかになった歴史資料に照らしても、当時のこの見解を訂正しなければならない問題は、あらわれていません。

 領海は、国際法上、その国が排他的に主権を行使する領域です。尖閣諸島付近の日本の領海で、中国など外国漁船の違法な操業を海上保安庁が取り締まるのは、当然です。

 同時に、紛争は領土をめぐるものを含め「平和的手段により国際の平和、安全、正義を危うくしないように解決しなければならない」のが、国連憲章や国連海洋法の大原則です。その精神に立って日本外交には、第一に、日本の尖閣諸島の領有権には明確な国際法上の根拠があることを国際舞台で明らかにする積極的活動が必要です。

 第二に、今回のような事件の再発防止のため必要な交渉をおおいにすすめることが求められています。

 中国側も、事実にもとづき、緊張を高めない冷静な言動や対応が必要でしょう。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-09-20/2010092001_03_1.html

 みんな大好き赤旗新聞の9月20日の記事です。書いてある内容は至極まっとうなことなのですが、書いている新聞がそれほどまっとうではなかったので、思わず取り上げてしまいました。

 左の代打の切り札かと思っていた選手が、意外に右でも強打者だった、みたいな感覚です。スタメン落ちした阪神の金本が代打で右打席に入り、鉄腕クローザーである中日の岩瀬からフェンス直撃のライナーを打つ、ようなものです。

 いずれにせよ、日本共産党にも論破される中国様のいちゃもんですが、今後の動向が密かに気になっています。今のところ強気に対応している日本政府が、「だったら台湾は日本の領土だ」とか言い出してくれないかと楽しみにしています。

ペットが飼えない人のための器具

 今日はペットが飼えない人のための器具です。

 ペットが飼えない代わりにハタキを買った人がいるようです。なで心地が意外に良いものの、ほこりまみれになるのがやや難点、とレビューしています。

 これはありえないと話題になっていますが、しかし、よくあることです。

 かくいう私も猫好きですが、猫を飼えない環境であるため、夜な夜なウェーブをなでなでしています。もふもふすると気持ち良いですよ。安上がりですし、特別な世話もいりません。

 ふふふ。

恨み節

 今日は恨み節です。

 カラオケ練習用です。

『青雲の大和』

 今日は八木荘司『青雲の大和』(2008年、角川書店)を読みました。

 飛鳥時代の中臣鎌足を中心にした小説です。上下巻になっており、上巻がいわゆる大化の改新前後、下巻が唐の朝鮮半島への進出、といった年代区分になります。

 上巻では、中臣鎌足が中大兄皇子とともに蘇我入鹿を殺害し、父の蘇我蝦夷を自殺に追い込んだ事変を皮切りに、鎌足が政界の重鎮としてのし上がっていく過程を描いています。下巻では、唐が新羅と近づいて百済を滅ぼそうとする動きが強まり、日本が自国防衛のために百済の見方として唐と新羅の説得に乗り出す様子が描かれています。こちらは鎌足よりも、その命を受けた高向玄理が主人公となっています。

 歴史小説として面白いのは上巻でしょうか。大化の改新の端緒として知られる事変については諸説がありますが、本書では中臣鎌足が首謀者のように描かれています。天皇家を差し置いて帝になろうとする蘇我入鹿に対して、そうした革命を起こせば唐と同様に権力争いが耐えない国になってしまうと反対した鎌足が、中大兄皇子を立てて事変を画策した、との筋書きです。小説の主人公だけあって鎌足が非常に国思いの良い人になっています。

 とはいえ、一方の蘇我入鹿も権力を欲するだけの凡人では決してなく、当時の日本外交が百済に偏重していたことを危惧した結果の行動であったことが示されています。唐が大陸で勢力を増すなか、百済だけを頼りにするより、周辺国との協調により、自国の脅威を退けようと入鹿は考えていました。それを実現するとともに、日本の国作りを加速させて、唐と対抗できないまでも対等な関係を築きたいと、帝になろうとしたのです。国際情勢に対する彼なりの現実的な判断があったというわけです。

 蘇我入鹿は百済偏重外交を貫こうとする鎌足と対立して殺害されます。しかしながら、本書の下巻では、百済が弱体化するなかで、鎌足の路線が朝鮮半島の現実の前に崩壊していく過程が描かれています。物語は白村江の戦いの前で終わってしまいますが、外交戦略としては中臣鎌足よりも蘇我入鹿のほうが時代に即していた、と言いたげな印象を受けました。こうした蘇我入鹿の評価はなかなか斬新ではないでしょうか。もしかすると最近の歴史研究で入鹿に関する考察が進んでいるのかもしれません。

 本書で扱う飛鳥時代は、日本史の教科書では数ページでしか紹介されない部分ですが、日本の黎明期とも言える時代です。そうした大切な時代を知るきっかけとして、本書のような小説を読んでみてはいかがでしょうか。

 なお、飛鳥時代を題材にしたもので言えば、私の愛読書でもある里中満智子の『天上の虹』もオススメです。こちらは持統天皇を主人公にした漫画です。天皇家中心で、やや貴族への言及が薄いですが、きっと飛鳥時代への関心を引き出してくれるでしょう。

 ちなみに、『天上の虹』では、中大兄皇子は冷静冷徹に改革を進める政治家として描かれています。今回の記事で取り上げた『青雲の大和』では、おおらかな指導者として好意的に扱われています。私は『天上の虹』の中大兄皇子のほうが、大化の改新を推進した人物像としては適当だと思ってしまいます。『青雲の大和』での描き方は、どちらかと言えば大海人皇子の印象があります。この点も最近の研究成果を反映して、より史実に近い人物像に再構成されているのかもしれません。

覚書 100904

  • 信金中央金庫 地域・中小企業研究所「多様な広がりが期待されるカーボン・オフセット 中小企業の利用可能性を探る」産業企業情報22-4、2010年9月1日。
  • 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 田中理「EU Indicators 欧州経済指標コメント:8月英国製造業PMI 製造業活動のモメンタムはピークアウト、先行きの生産鈍化を示唆」2010年9月2日。
  • 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 田中理「EU Indicators 欧州経済指標コメント:8月英国GfK消費者信頼感 6ヶ月振りに改善したが、消費者の先行き不透明感は根強い」2010年8月31日。
  • 第一生命経済研究所 経済調査部 主任エコノミスト 田中理「EU Indicators 欧州経済指標コメント:4-6月期英国GDP(一次改定値) 足元の好調を確認するも、先行きの景気減速は避けられない」2010年8月27日。
  • 三菱UFJ信託銀行「Monthly Economics」2010年9月号。
  • 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「国際マネーフローレポート 主要国(地域)間の証券投資の動向」No.52、2010年8月。
    • 日本を中心に資金の流れを概観すると、英国からは資金が流入、ユーロ圏、英国、アジアへは資金が流出という動きがこのところ続いている。
    • 米国を中心に資金の流れを概観すると、このところ、英国、アジア(除く日本)からの資金の流入、ユーロ圏への資金の流出という動きが続いている。
  • 中央総合研究所 調査部 マクロ経済研究センター「海外経済展望」2010年9月。
  • 吉田健一郎「英国で13年ぶりの政権交代が実現 問われるキャメロン新首相の手腕」みずほ総合研究所『みずほリサーチ』2010年6月号。
    • 650議席のうちデイビット・キャメロン党首が率いる保守党が306議席で前回選挙より97議席伸ばした。一方、労働党は258議席(前回選挙比マイナス91議席)であり、躍進が予想されていた自由民主党は57議席(同マイナス5議席)にとどまった。
    • キャメロン首相は、組閣後50日以内に新しい予算の策定を表明しており、まずその中身が注目を集めることになる。無駄の削減だけで赤字削減が達成できるかどうかはわからない。また、その他の保守党政権の主要政策として、欧州連合(EU)とは距離をおきユーロ参加には慎重なスタンスの維持や、イングランド銀行の個別行に対する包括的な金融監督権の強化、非EU諸国からの移民受け入れに対する上限の設定などが挙げられる。
  • 佐藤創「亡命希望者たちの苦難:イギリスにおける「市場メカニズムに基づくアプローチ」による法律扶助改革の影響についての雑感」IDE-JETRO、2010年8月。
    • 難民あるいは亡命希望者にかかわる事件の根本的な問題は、地域紛争や世界的な富の偏在といった構造的なものであることに疑いはないでしょう。また法政策的なレベルでも、難民の認定や残留許可の取得は、多かれ少なかれどこの国でも困難であるという世界共通の制度上の問題でもあるでしょう。ただし、直接的な原因は、イギリスにおいて、こうした難民が依存せざるをえないlegal aid(国費による法律費用の扶助制度:法律扶助)に変化が起こっているという、よりスペシフィックな制度の問題もあったようなのです。
    • 一般に、難民たちがイギリスにて難民認定をえるための申請手続きを自ら遂行することは困難であり、ソリシタ(事務弁護士)の助けが必要です。そして、そのソリシタの費用は法律扶助制度により賄われます。それゆえ、ソリシタとその費用の支払いをアレンジしてくれる法律扶助団体の支援をうることが個々の難民にとって決定的に重要になります。
    • RMJ(the Rafugee and Migrant Justice)は、破産に追い込まれた原因につき、イングランドとウェールズの法律幇助システムを統制する法律サービス委員会(the Legal Service Commission:法務省の下にある独立委員会)が採用した利払い方法に問題があると述べています。以前は、同委員会から法律扶助諸団体への法律扶助額の支払いは、事件の進行中におこなわれていたのですが、こうした難民関連の事件は何年もかかることが多いため、RMJはキャッシュフローにおいて行き詰まり、破産に追い込まれたということです。
    • イギリスの法律幇助支出額は、ここ数年は、年間およそ20億ポンドあまりで推移しており、納税者一人あたりに換算すると100ポンドあまりと世界でもっとも高額だと報告されてきました。2009/10年度では、そのうち移民および亡命関連の法律補助支出額は9,000万ポンドであったそうです。増大しつづける法律扶助支出に対処するために、政府は改革を検討し、2006年にLoad Carter’s Review of Legal Procurement, “Legal Aid : A Market-based Approach to Reform”が提出され、副題にあるとおりの「市場メカニズムに基づいたアプローチ」に基づき、法律扶助の支出が膨らまないよう、入札制度の改革や、(時間ではなく事件ごとの)固定報酬額制度の導入、そして後払い方法への変更などが提案されました。荒っぽく要約すれば、法律扶助の予算を握る法律サービス委員会がいくつかの法分野ごとに入札広告をだし、個々の法律事務所やNPO団体は事件何件をいくらで契約したいと、競争入札するイメージです。
    • 今後、イギリスにおいて穂率扶助制度がどのような方向に改革されるのか、そもそも実際に改革されるのかどうかも、また不透明です。とくに難民の法律扶助については、一般の民事刑事事件おける法律扶助のは若干異なる側面があります。後者については「国民」の権利の問題であり、イギリス司法制度の高い信頼性に寄与しているという認識があるように思われるのですが、難民移民事件における法律扶助は受益者が国民ないし納税者ではないというセンシティブな問題が存在するからです。また、難民および移民政策一般についても、つい先ごろ、移民担当大臣Damian Greenが国外退去制度を強化すると述べるなど、保守化傾向が垣間見えます。そもそも、難民たちは、彼らの権利を代表する政治的な代表者をどの国の議会にも当然ながらもっておらず、イギリスの議会においても、難民の法律扶助へのアクセスの問題に積極的に取り組むインセンティブは、どの議員もあまり持っていないと予測されます。
  • 武川正吾「特集:イギリスの社会保障 ニューレイバーの10 年 趣旨」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 所道彦「ニューレイバーの社会保障の10年」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 丸谷浩介「イギリスの公的・私的年金制度改革」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 菊地英明「イギリスにおける低所得者対策 所得保障と就労支援」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 松田亮三「ブレア政権下のNHS改革 構造と規制の変化 」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 長澤紀美子「ブレア労働党政権以降のコミュニティケア改革 高齢者ケアに係わる連携・協働と擬似市場における消費者選択」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 津崎哲雄「ニューレイバーの児童(・家族)施策 平等なライフチャンス保障実験」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 小川善道「障害者福祉 ダイレクト・ペイメントの行方」『海外社会保障研究』Winter 2009、No.169、2009年12月。
  • 科学技術振興機構 研究開発戦略センター「英国:新連立政権樹立による科学・イノベーション政策への影響」2010年8月。

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benyamin ♂

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