『日本の雇用終了』

 今日は労働政策研究・研修機構編『日本の雇用終了』(2012年、労働政策研究・研修機構)を読みました。

 本書は、題名だけを見ると、日本の雇用はもうおしまいですっ!という内容に思われますが、実際は、日本の職場で労働者がどのように解雇されるのかについて、個別労働紛争の事例を調査したものです。つまり、裁判に持ち込まれずに、労働局による斡旋が行われた事例を丁寧に調査しています。

 本書で取り上げる事例において、労働者が解雇される理由は、ほとんどが労働者の態度となっています。職場で上司の指示に従わなかったり、同僚と上手く意思疎通ができなかったり、遅刻や無断欠席を繰り返したり、そうした態度によって解雇されています。労働者の能力や仕事との適性ではなく、態度が主要な解雇理由です。

 もちろん、こうした態度による解雇は労働法では厳しく規制されています。裁判所に持ち込まれれば確実に企業側が負けるでしょう。しかし、労働局の斡旋が行われるような中小企業や零細企業では労働組合が組織されていないこともあり、裁判に持ち込まれることはありません。つまり、日本の職場では労働法を超えて、態度を理由に解雇するというような規則的なものが通用しています。

 日本では労働法による規制のため、本来であれば解雇になることはないと言われています。学問的にもそのように論じられています。そうした認識は裁判に持ち込まれた判例に基づいたものです。しかし、実際の職場ではもっと解雇事例は発生しています。この実情に本書は迫っていると思います。

 しかも、その理由は労働者の態度です。能力や適正ではなく、職場の人間関係に適合するかどうかが重要なのです。ここに日本社会の特殊性が示されていると思います。労働者が企業の価値を高めていくことよりも、職場で一緒に仲良く働いていくことが重視されています。

 態度に重点を置いた労働者の評価が良いかどうかは議論されるべきですが、その一方で、これが日本の職場における現実であると受け止める必要もあると思います。企業が求める人材にとって必須の能力はコミュニケーション能力となっていますが、これも職場でのこうした現状を踏まえてのことでしょう。コミュニケーション能力がない労働者は日本ではいらないのです。

 また、解雇の理由となる態度にも、一般的に許容されるべきものもあります。遅刻や無断欠席はもちろん、職場の人や顧客の悪口を言いふらす、職場の備品を盗む、といった事例も多くあります。労働者として、というか、人として基本的なことができない労働者はクビにするべきでしょう。こうした人たちまで労働法で守る必要はありません。

 本書は日本における解雇事例の実態を明らかにしており、非常に意義のある内容であると思います。いままさに現場にいる労働者も読むべきですが、これから労働の現場に出て行く高校生や大学生こそ読むべきだと思います。もちろん、それは態度で解雇が決まることの善し悪しを議論するためではなく、こうした現実を前にしてどのように準備をするかを考えてもらうためです。就職活動の時期になってからでは遅いのです。

 とはいえ、本書は360ページくらいあり、高校生や大学生が気軽に読むことが難しいです。簡易的な要約版が出版されないかと願っています。

自己紹介

benyamin ♂

2013年1月

    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    

月別アーカイブ

Powered by Movable Type 5.13-ja
Support Wikipedia